癌の原因は何か、考えられる要因を整理
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「なぜがんになるのか」という問いには、残念ながら1つの答えはありません。喫煙・飲酒・食事・感染症・加齢・遺伝など、複数の要因が長い年月をかけて絡み合い、細胞の設計図(遺伝子)に変化が積み重なることで、がんが発生すると考えられています。
本記事では、国立がん研究センターをはじめとする公的情報をもとに、癌の原因として知られる主な要因を整理します。「何かできることはないか」と考える方のための予防の視点と、「気になることがある」という方への受診の目安も合わせて解説します。
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)の立場について
当院は在宅療養支援診療所・地域のかかりつけ医として、がんの検診結果の相談、精密検査・専門病院への紹介、治療中の体調管理、在宅療養の支援を担います。手術・抗がん剤などのがん治療そのものは、がん診療連携拠点病院などの専門施設が担います。「治療の専門施設」と「療養を支える地域医療機関」が役割を分担しながら連携することが、がんと向き合う上で重要です。
癌の原因は1つではない|まず知っておきたい基本
がんは「遺伝子の変化」が積み重なって起こる
私たちの体を構成するおよそ37兆個の細胞には、分裂・増殖を制御する遺伝子が備わっています。がんは、この遺伝子に変化(変異)が1つではなく、複数、長い年月をかけて積み重なることで、細胞が無制限に増殖し、正常な組織を侵すようになった状態です。
変異の原因は「外から来るもの(たばこの煙・ウイルスなど)」「生活習慣によるもの(食事・飲酒・肥満など)」「もともと持っているもの(遺伝的な体質)」が組み合わさっています。どれか1つが決定的な原因というよりも、複数の要因が長期にわたって影響し合う点が特徴です。
原因が特定できないがんもある
現在の医学をもってしても、あるがんが「なぜその人に生じたか」を一意に特定することはできません。リスク因子(かかりやすくなる可能性を高める要因)を知ることと、「原因が何であったか」を断定することは、医学的に異なります。リスク因子を減らすことで発症確率を下げる努力はできますが、「完璧に予防できる」とは言い切れないのが現状です。
がんの原因として考えられる主な要因
国立がん研究センターが公表している研究データ(多目的コホート研究/JPHC研究)では、日本人のがんに影響するとされるリスク因子が整理されています。
喫煙
たばこの煙には70種類以上の発がん性物質が含まれており、肺がん・食道がん・胃がん・大腸がん・膀胱がんなど多くのがん種のリスクを高めることが科学的に示されています。国立がん研究センターの推計では、日本人のがんの原因の約3割が喫煙に関連するとされています(※)。受動喫煙もリスクになるため、周囲の人への配慮も重要です。
※ 国立がん研究センター がん情報サービス「日本人のためのがん予防法」より
飲酒
アルコールは国際がん研究機関(IARC)がグループ1(ヒトに対する発がん性が確認されている)に分類しています。口腔・咽頭・食道・肝臓・大腸・乳房などのがんリスクと関連します。少量であれば安全という根拠は現時点では確立しておらず、飲酒量は少ないほどリスクが低くなる傾向が示されています。
食事・体重・運動不足
肥満(特に内臓脂肪型)は、大腸がん・閉経後乳がん・子宮体がん・食道がん(腺がん)などのリスクと関連します。一方、身体活動量が多いほど大腸がんや乳がんなどのリスクが低くなる傾向も示されています。食事については後述しますが、特定の食品よりも「食事全体のパターン」が重要です。
感染症
日本国内のがんの約20%が感染症に起因すると推定されています(国立がん研究センター)。代表的なものとして以下があります。
| 病原体 | 関連するがん種 |
|---|---|
| ヘリコバクター・ピロリ菌 | 胃がん |
| B型・C型肝炎ウイルス | 肝臓がん |
| ヒトパピローマウイルス(HPV) | 子宮頸がん、咽頭がんなど |
| EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス) | 一部のリンパ腫など |
| ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1) | 成人T細胞白血病 |
感染症が原因のがんは、予防・除菌・ワクチンによって一定程度リスクを低減できます。たとえば胃がんの主な原因であるピロリ菌は、除菌治療によって胃がんリスクを下げることが示されています。
加齢
がんは年齢とともにリスクが上昇します。遺伝子変異が長年にわたって蓄積すること、免疫機能の変化などが理由と考えられています。60代以降でがんの罹患率が大きく上昇するデータがあり、「加齢そのもの」が避けられないリスク因子の1つです。
遺伝的な要因
がんの一部(全体の5〜10%程度)は、特定の遺伝子変異が親から子に受け継がれる「遺伝性腫瘍」として発症します。代表例はBRCA1/2遺伝子変異による遺伝性乳がん・卵巣がん症候群、リンチ症候群(遺伝性大腸がん)などです。ただし「家族にがん患者がいる=必ず遺伝する」ではなく、あくまで特定の状況での評価が必要です(詳細は後述)。
放射線・紫外線などの環境要因
紫外線(UV)は皮膚がんのリスクを高めます。放射線被曝(自然放射線・医療被曝・職業被曝など)も発がんリスクと関連することが知られています。ただし医療で使われるX線・CT検査などのリスクはごく低く、必要な検査のメリットを上回ることはありません。アスベストや一部の化学物質も、職業的な長期曝露においてがんリスクと関連します。
癌になりやすい食べ物と、食事で意識したいこと
塩分のとりすぎ
塩分の多い食事(塩蔵食品・高塩分の食品)は、胃がんのリスクと関連することが国際的な研究で繰り返し示されています。日本人の食生活では食塩相当量の摂取が多い傾向があり、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では成人男性7.5g/日未満、成人女性6.5g/日未満が目標値とされています。
加工肉・赤肉のとり方
IARCは、加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)をグループ1(発がん性あり)、赤肉(牛・豚・羊など)をグループ2A(おそらく発がん性あり)に分類しています。特に大腸がんとの関連が示されており、大腸がんの予防という観点からも摂取量を意識することが望まれます。完全に避ける必要はありませんが、頻度・量を意識することが現実的な対応です。
野菜・果物・食物繊維の考え方
野菜・果物・食物繊維の豊富な食事は、大腸がんや胃がんなど複数のがん種のリスクを低下させる可能性が示されています。食物繊維は大腸がんとの関連で特に多くの研究で支持されています。ただし、特定の食品を食べれば確実にリスクが下がる、と断定できる根拠はありません。食事全体のバランスが重要です。
「これを食べれば予防できる」とは言えない理由
インターネット上には「〇〇を食べればがんを防げる」という情報が溢れていますが、現時点の科学的根拠に基づけば、単一の食品でがんを確実に予防できるとは言えません。国立がん研究センターが提示する「日本人のためのがん予防法」でも、食事は「特定食品への傾倒」より「食事全体の多様性・バランス」を重視しています。
がん予防として今日からできる生活習慣
禁煙が最も重要な予防策の1つ
科学的根拠が最も明確な予防策の1つが禁煙です。禁煙後5年以上経過すると、肺がんをはじめ複数のがん種のリスクが低下していくことが示されています。禁煙外来(保険適用あり)の活用も選択肢です。
飲酒量を見直す
「適量なら大丈夫」という考え方には注意が必要です。飲酒とがんリスクの関係は量に依存する傾向があり、できる限り少量にとどめることが推奨されます。
体重管理と身体活動
BMI(体格指数)を適正範囲(18.5〜25.0未満)に保つこと、週150〜300分程度の中等度の有酸素運動(厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」参照)を継続することが、複数のがん種の予防に有効とされています。
感染予防とワクチン
- ピロリ菌の検査・除菌: 胃がんリスクの低減につながります。
- B型肝炎ワクチン: 肝臓がんリスクの低減に有効です。
- HPVワクチン: 子宮頸がんなどの予防に有効で、公的接種の対象になっています。
- B型・C型肝炎の治療: 感染がある場合は適切な治療でリスクを下げられます。
健診・がん検診を受ける意義
がんを「予防」するだけでなく、「早期に発見」することも重要な戦略です。国が推奨するがん検診(胃・大腸・肺・乳・子宮頸部)は、自治体が費用助成を行っています。20代からのがん検診と予防の基本についても、早めに確認しておくことをお勧めします。
公的データでみる「がんの原因」とリスクの考え方
国立がん研究センターが示す主な危険因子
国立がん研究センターが日本人を対象に行った多目的コホート研究(JPHC研究)をはじめとする研究データでは、日本人のがんの原因として「喫煙・感染・飲酒・食事・肥満・身体活動不足」が主要なリスク因子として挙げられています。
統計は「個人の予測」ではないこと
「喫煙者のがん罹患リスクは非喫煙者の〇倍」という数値は、大規模な集団を対象にした統計値です。これはある集団での平均的な傾向を示すものであり、「喫煙したから必ずがんになる」「喫煙していないからがんにならない」ということを意味しません。統計データは個人の予測には直接使えない点を、ご理解ください。
リスクが高い人・低い人の違い
がんになりやすい人の特徴と予防の考え方でも詳しく解説していますが、リスクは複数の因子が重なるほど高まる傾向があります。一方、すべてのリスク因子を持っていてもがんを発症しない方もいれば、リスク因子が少ない方でもがんになる場合があります。「リスクを下げる努力をしながら、定期的な検診で早期発見を目指す」という両立が現実的な対策です。
遺伝と家族歴はどこまで関係するのか
家族にがん患者がいると必ず遺伝するわけではない
「親や兄弟ががんだった」という場合、その方も心配になることがあります。しかし、がんの多くは遺伝性ではなく「孤発性(散発性)」であり、家族内に複数のがん患者がいる場合も、共通の生活習慣や環境要因が背景にあるケースが少なくありません。「家族歴がある=自分もがんになる」とは言い切れません。
遺伝性腫瘍が疑われる場面
以下のような状況では、遺伝性腫瘍の可能性を専門家に相談することが検討されます。
- 若年(50歳未満)でがんを発症した近親者がいる
- 同一血縁者に同じがん種が複数いる
- 一人で複数のがんを発症した経歴がある
- BRCA1/2変異に関連する乳がん・卵巣がんが家系内にある
不安があるときの相談先
遺伝的なリスクが気になる場合は、遺伝カウンセリングの専門家(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー)への相談が有効です。当院では、状況をお聞きしたうえで適切な専門機関をご紹介することができます。
受診・相談の目安
生活習慣の見直しだけでよいか相談したいとき
症状はないが生活習慣が気になる、検診を受けたことがない、という場合は、かかりつけ医(当院など)への相談から始めることができます。必要な検診や生活習慣の見直し方について一緒に考えます。
家族歴や若年発症が気になるとき
家族にがん患者が複数いる、若い年齢でのがんがあるという場合は、遺伝性腫瘍の専門相談や、年齢・リスクに応じた検診スケジュールの見直しが必要な場合があります。まずはかかりつけ医への相談を入口にしてください。がん検診を受けるべき人の特徴も参考にしてください。
検診で異常を指摘されたとき
検診結果で「要精密検査」などの指摘があった場合、結果を受け止めることは不安を伴います。当院では、AI搭載の胃・大腸内視鏡検査を鎮静下で実施しており、微小な病変を見落としにくい環境で検査を行っています。検査結果はその日のうちにご説明し、精密検査や専門医療機関への紹介が必要かどうかを当日中に判断します。後日まで待つことなく次の一手を進められるのが当院の運用上の強みです。
しこり、出血、体重減少など症状があるとき
- 体重の急激な減少(意図しない体重減少が続く場合)
- 血便・便に血が混じる(食道がんの初期サインや大腸がんなど消化器がんの可能性も)
- しこりや腫れが継続する場合
- 黄疸(皮膚・眼が黄色くなる)、右脇腹の痛み(肝臓がんのサインとして現れることも)
- 嚥下困難(食べ物が飲み込みにくい)
上記のような症状がある場合は、早めに受診してください。当院では院内のCTスキャン・超音波装置・血液検査により初期評価を行い、必要に応じてがん診療連携拠点病院への速やかな紹介を行います。
ご予約・お問い合わせはWebまたはお電話(045-909-0117)で受け付けています。
当院での診療から
当院は在宅療養支援診療所として、がん診断後の患者さんとご家族に寄り添う役割を担っています。手術・抗がん剤といったがん治療そのものは、がん診療連携拠点病院などの専門施設が行い、当院はその「並走者」として機能します。
具体的には、基幹病院での治療方針に沿いながら、在宅での疼痛・症状緩和、服薬調整、栄養や日常生活の相談、そして必要な場合には看取りまで継続して対応しています。地域連携クリティカルパスを用いた情報共有により、治療施設と当院のあいだで患者さんの状態が途切れなく共有され、必要時には速やかな紹介・逆紹介を行います。
外来では、検診結果の受け止め方、どの専門医療機関を受診すべきか、といった相談にも対応しています。「どこに相談したらよいかわからない」という段階からでも、患者さんとご家族が次の一歩を踏み出しやすいよう、一緒に考えます。
よくある質問(FAQ)
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参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「日本人のためのがん予防法」
- 国立がん研究センター がん統計
- 厚生労働省 がん対策
- Minds ガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門: 消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
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TEL: 045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
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免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。