「お腹が痛いのに便が出ない」「便意はあるのにトイレで何も出てこない」——そんな経験をお持ちの方は少なくありません。多くの場合は便秘によるものですが、なかには早めの受診が必要な状態が隠れていることもあります。本記事では、原因・自宅でできる対処法・受診の目安を、消化器専門の医学博士が医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
詳しい腹痛全般については、親ピラーページ「お腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】」もあわせてご参照ください。
便意を感じているのに排便できない状態は、直腸性便秘(直腸に便が溜まっているが排出できないタイプ)や弛緩性便秘(大腸全体の動きが低下して便が進まないタイプ)などが代表的です。腸内に便やガスが停滞することでお腹の張りや痛みが生じやすくなります。
強くいきみすぎると、肛門周囲の血流が悪くなり痔を悪化させるリスクがあります。また、腹圧をかけ続けることで直腸や骨盤底への負担も増します。「出ない=力む」ではなく、まずは原因に合わせた対処を行うことが大切です。
大腸内に便が長時間留まると水分がさらに吸収され、排出しにくくなります。
水分不足や食物繊維不足により便が固くなると、直腸に達しても排出しにくい状態になります。
運動不足や自律神経の乱れにより、大腸のぜん動運動(内容物を押し出す動き)が低下することがあります。
食物繊維は便のかさを増やし腸の動きを助けます。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人の食物繊維目標量として男性21g以上、女性18g以上(18〜64歳)が示されています。
腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど自律神経と密接に関わっています。ストレスや睡眠不足が腸の動きに影響することが知られています。
鉄剤・鎮痛薬(NSAIDs)・一部の降圧薬・抗コリン薬などは便秘を引き起こしやすいとされています。服用中の薬がある場合は、主治医や薬剤師にご相談ください。
1日の水分摂取量の目安は体格や活動量によって異なりますが、食事以外に約1〜1.5Lを目安に水や麦茶などを少量ずつ補給することが推奨されています。
腹部を温めることで腸の血流が改善し、動きが促される場合があります。温かいタオルや使い捨てカイロ(直接肌に当てない)を活用しましょう。
ウォーキングなどの有酸素運動は腸のぜん動運動を助けると言われています。1日15〜20分程度の歩行から始めるのが無理のない方法です。
食後(特に朝食後)は「胃・結腸反射」という腸が活発になる生理的なタイミングです。この時間帯に余裕をもってトイレに座る習慣をつけることが有効とされています。
水溶性食物繊維(海藻・ごぼう・りんごなど)と不溶性食物繊維(玄米・豆類など)をバランスよく摂取することが大切です。ヨーグルトなどの発酵食品も腸内環境を整える助けになります。
便意を感じたら速やかにトイレへ。長時間我慢することで直腸の感覚が鈍くなり、さらに出にくくなる悪循環につながります。
市販の便秘薬(酸化マグネシウム系・刺激性下剤など)は一時的な使用にとどめるのが基本です。特に刺激性下剤(センナ・ビサコジルなど)は習慣的な使用により腸が薬に依存しやすくなる可能性があります。
浣腸や強い下剤を繰り返すことで、腸の自然な動きが低下するリスクがあります。
妊娠中の方や高齢者、腎機能・心機能に持病がある方は、市販薬でも使用前に医師や薬剤師への相談をおすすめします。
以下の症状がある場合は、便秘以外の原因(腸閉塞・虫垂炎・大腸がんなど)が疑われることがあります。速やかに医療機関を受診してください。
- 強い腹痛が続く(波のような激しい痛み、または持続する鋭い痛み)
- 吐き気・嘔吐がある
- お腹の張りが強い(腹部が膨らんで硬い)
- 発熱がある
- 血便がある
- 何日も便もガスも出ない
- 体重減少や食欲低下を伴う
下腹部に強い痛みを感じる場合は「下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】」も参考にしてください。
排便の頻度・便の性状(硬さ・形)・いつから・随伴症状(発熱・血便・体重変化)・服用中の薬などを詳しく伺います。
腹部X線、超音波検査(エコー)、血液検査、場合によっては大腸内視鏡検査などを組み合わせて評価します。
大腸がん・過敏性腸症候群(IBS)・甲状腺機能低下症なども便秘の原因となりえます。「いつもの便秘」と思っていても、症状が変化したときは専門的な検査が重要です。
上記の「自宅で試せる方法」を毎日の習慣にすることが予防の基本です。
毎日同じ時間帯にトイレに行く習慣をつくることで、腸が「排便の時間」を学習しやすくなります。
睡眠・食事・活動のリズムを整えることが自律神経を安定させ、腸の動きを支えます。
処方薬の副作用として便秘が起きている場合は、主治医に相談することで対処できる場合があります。自己判断で服用を中断しないようご注意ください。
2〜3日使用して症状が変わらない場合は、受診を検討してください。
繰り返す場合は、過敏性腸症候群など慢性的な病態が背景にある可能性があります。
「いつもの便秘とは違う」と感じたときは、ためらわずに受診を。
初めて経験する強い腹痛・お腹の張りは、緊急性の高い病態を除外するために受診が勧められます。
腹痛の治療全般については「腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】」もご覧ください。
- 数日の排便がなく、軽度の張り感・鈍痛がある
- 食事・水分摂取が少ない日が続いた
- 旅行など生活リズムの変化後
- 随伴症状(発熱・血便・嘔吐)がない
- 強い腹痛・高熱・嘔吐が同時にある
- ガスも便も全く出ない
- 血便・粘血便がある
- 数週間以上続く体重減少や食欲不振を伴う
「いつもの便秘かな」と思っても、症状が強い・長引く・いつもと違うと感じたときは受診のサインです。自己判断で対処を続けるより、早めに専門家に相談することをおすすめします。
まず水を1杯飲み、軽く腹部をさする(臍周囲を時計回りに)か、軽くウォーキングしてみましょう。強くいきむことは避け、トイレで長時間力み続けないようにしてください。
まずは内科・消化器内科の受診が適しています。発熱・激しい腹痛・嘔吐が伴う場合は、救急外来への受診も検討してください。
酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤は比較的習慣性が低いとされますが、長期・頻回の使用は医師に相談することが望ましいです。刺激性下剤(センナ等)は特に習慣的な使用に注意が必要です。
一般的に3〜4日以上排便がなく、腹痛・張り・不快感が強い場合は受診を検討する目安とされています。ただし、発熱・血便・強い痛みがあれば日数に関係なく速やかに受診してください。
ガスも便も全く出ない状態(腸閉塞の可能性)は、緊急性が高い場合があります。腹部の強い張り・嘔吐を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- お腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】(親ピラーページ)
- 下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】
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佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで「お腹が痛い」「便が出ない」「お腹の張りが続く」などの消化器・内科の症状が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。受診の目安や必要な検査について、丁寧にご説明いたします。
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