腹痛は「どこが痛いか」という場所の情報が、原因を絞り込む最初の手がかりになります。みぞおち・右上腹部・左下腹部など、痛みの部位によって疑われる疾患は大きく異なります。本記事では内科・消化器内科の観点から、腹痛の場所別に考えられる主な原因・症状・対処法をわかりやすく解説します。なお、腹痛の概要については親ピラー記事 お腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】 もあわせてご覧ください。
腹部には胃・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・子宮・卵巣など多くの臓器が密集しています。そのため、痛む部位は病変臓器の位置を反映しやすく、診断の重要な手がかりになります。一方で、「差し込むような痛み」「鈍い重苦しさ」「食後だけ痛む」「動くと悪化する」といった痛み方・タイミング・持続時間も、原因を絞り込むうえで欠かせない情報です。受診前に「いつから・どこが・どのように痛むか」をメモしておくと、診察がスムーズになります。
① 痛みの場所(右・左・上・下・広範囲) ② 痛みの強さと性質(鋭い・鈍い・締め付けられる感じ) ③ 発症のタイミング(突然か、じわじわかなど) ④ 持続時間 ⑤ 発熱・吐き気・下痢・血便など腹痛以外の症状 ⑥ 食事・排便との関係 ⑦ 既往歴・服用中の薬。
みぞおちが痛む場合、胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎・機能性ディスペプシアなどが多く見られます。空腹時に強くなって食後に和らぐ場合は十二指腸潰瘍が、食後に増悪する場合は胃潰瘍や逆流性食道炎が疑われることがあります。まれに急性心筋梗塞が「胃の痛み」として現れることもあるため、胸部症状や冷や汗を伴う場合は注意が必要です。
右肋骨の下あたりが痛む場合は、胆石症・急性胆嚢炎・急性胆管炎が代表的です。脂っこい食事後に右上腹部から右肩にかけて放散する痛み(疝痛発作)が特徴的です。また肝臓(肝炎・肝膿瘍)の疾患も同部位に鈍い違和感・痛みを生じることがあります。
左上腹部が痛む場合は、急性膵炎・膵臓疾患・脾臓の問題、または胃の疾患が原因として考えられます。急性膵炎では左上腹部~背中にかけての強い痛みと発熱・嘔吐を伴うことが多く、飲酒や脂質の多い食事が誘因になりやすいとされています。
へそ周辺の痛みは、急性胃腸炎・腸炎・過敏性腸症候群(IBS)・腸閉塞(イレウス)などで見られます。感染性腸炎では下痢・嘔吐・発熱を伴うことが多く、IBS では排便によって痛みが和らぐのが特徴です。また、虫垂炎(盲腸炎)の初期段階でへそ周囲に鈍痛が現れ、徐々に右下腹部に移動するパターンがよく知られています。
腹部全体が広く痛む場合は、胃腸炎・便秘・腸閉塞・腹膜炎などが考えられます。腹膜炎では腹部全体が板のように固く張る「腹膜刺激症状」が現れることがあり、この場合は速やかな受診が必要です。
右下腹部の痛みで最初に疑われるのが急性虫垂炎(盲腸炎)です。発熱・吐き気・食欲不振を伴い、痛みが持続・増強する場合は早急な受診が求められます。そのほか腸腰筋膿瘍・右卵巣嚢腫・卵管炎(女性)なども右下腹部に痛みを生じます。
左下腹部が痛む場合は、大腸憩室炎・過敏性腸症候群・左卵巣疾患(女性)・腸炎などが考えられます。大腸憩室炎では発熱を伴う左下腹部痛が典型的で、高齢者や食物繊維不足の方に多い傾向があります。詳しくは 下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】 もご参照ください。
膀胱炎・前立腺炎・子宮疾患(子宮内膜症・骨盤内炎症性疾患)・便秘など。女性で月経に伴う下腹部痛(月経困難症)も多く、内膜症が背景にある場合もあります。
胃炎・胃潰瘍・急性膵炎・腸閉塞・急性虫垂炎など、多くの腹部疾患に伴います。嘔吐が激しく水分補給が困難な場合は脱水に注意が必要です。
感染性腸炎・過敏性腸症候群・炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)などで下痢が生じます。排便後に痛みが軽快するケースはIBSの特徴の一つです。
感染性腸炎・急性虫垂炎・胆嚢炎・大腸憩室炎・腹膜炎などが疑われます。38℃以上の発熱と腹痛が同時に現れた場合は早期受診を検討してください。
逆流性食道炎・機能性ディスペプシア・胃潰瘍・胆石症などで食後に症状が増強しやすいです。食事内容(脂質・アルコール・刺激物)との関連も確認しましょう。
「突然・激烈な腹痛」は消化管穿孔・大動脈瘤破裂・重篤な腹膜炎などの緊急疾患を示す可能性があります。迷わず救急受診(119番)を利用してください。
ショック症状の可能性があり、一刻も早い救急受診が必要です。
消化管出血が疑われます。黒いタール状の便(タール便)は上部消化管出血のサインであることがあります。
子宮外妊娠は右または左下腹部の急激な痛みで発症することがあり、見逃すと重篤になります。高齢者や糖尿病・免疫抑制剤服用中の方は症状が典型的でないこともあるため、わずかな痛みでも早めに受診することをお勧めします。
激しい動作を避け、楽な姿勢で横になります。腹部を冷やしすぎないよう注意してください。
嘔吐・下痢がある場合はこまめに少量ずつ水分を摂りましょう。経口補水液(ORS)は脱水予防に有用です。
吐き気・嘔吐がある間は無理な食事摂取を控え、消化のよいものを少量ずつ再開してください。症状が改善しない場合は受診を優先します。
市販の鎮痛薬(NSAIDs)は胃・十二指腸潰瘍がある場合に潰瘍を悪化させる可能性があります。また痛み止めで痛みを抑えることで受診が遅れ、診断が困難になるケースもあるため、強い腹痛や持続する痛みに対して自己判断での服用は慎重にしてください。
腹痛の多くは内科・消化器内科が初診に適しています。女性で下腹部痛が強い場合は婦人科との連携が必要になる場合もあります。腹痛の治療法についての詳細は 腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】 もご参照ください。
問診(場所・性状・経過)・聴診(腸音確認)・触診(圧痛・筋性防御の有無)が基本です。「どこを押すと痛いか」が診断の重要な手がかりになります。
血液検査(炎症・肝胆膵酵素・白血球など)・尿検査・腹部エコー・腹部CT・上部/下部消化管内視鏡などが行われます。
食物繊維を適切に摂り、暴飲暴食・脂質の摂りすぎ・アルコール過剰を避けることが大切です。排便習慣の乱れも腹痛の誘因になります。
過敏性腸症候群(IBS)など機能性消化管疾患は、心理的ストレスと密接に関連しています。睡眠・休息を十分に確保し、ストレスを蓄積しない生活習慣を意識しましょう。
規則正しい食事時間・適度な運動・禁煙・節酒が、消化管疾患の予防と再発防止に役立つとされています。症状が繰り返す場合は、生活習慣の見直しとあわせて定期的な受診・検査を検討してください。
痛む場所は原因の絞り込みに役立ちますが、場所だけで病気を確定することはできません。痛み方・随伴症状・経過なども総合的に評価する必要があり、確定診断には医師の診察と検査が必要です。
急性胃腸炎・過敏性腸症候群・腸閉塞などが比較的多く見られます。虫垂炎の初期にもへそ周囲の痛みが現れることがあるため、痛みが右下腹部に移動してきた場合や発熱を伴う場合は速やかに受診してください。
急性虫垂炎(盲腸炎)が最も代表的です。そのほか、女性では卵巣疾患・卵管炎も考えられます。痛みが持続・増強する場合は早急な受診をお勧めします。
軽度の胃もたれや軽い腹部不快感には市販の胃腸薬が使われることがありますが、強い腹痛・発熱・血便を伴う場合や、NSAIDs(鎮痛薬)の使用は症状を隠す可能性もあるため注意が必要です。自己判断が難しい場合は薬剤師や医師にご相談ください。
痛みが数時間以上持続・増強する、発熱や嘔吐・血便を伴う、日常生活が困難なほど痛む、という場合は早めの受診をお勧めします。急激に始まった強い腹痛は緊急受診の目安です。
子どもは症状をうまく伝えられないことがあり、食欲不振・機嫌の悪さなどから腹痛を疑う場合があります。高齢者は腹膜刺激症状が出にくく、重篤な疾患でも症状が軽く見えることがあるため、「いつもと違う」と感じたら早めに受診することが重要です。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター 外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院 副理事長、日立おおみか病院 理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで腹痛・消化器症状など内科全般のお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。「痛む場所や症状から何の検査を受けるべきかわからない」という方も、受診の目安から丁寧にご説明いたします。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳、お持ちであれば健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。