肝炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説
この記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状や検査値が気になる方は、必ず医師の診察をお受けください。
肝炎とは?まずは病気の基本をわかりやすく解説
肝炎で肝臓に何が起きるのか
肝臓は、栄養素の代謝・解毒・胆汁の生成など多くの機能を担う臓器です。肝炎とは、何らかの原因によって肝細胞が傷つき、炎症が起きている状態を指します。炎症が続くと肝細胞が壊れ、血液検査でALT(GPT)やAST(GOT)などの肝機能値が上昇します。
急性肝炎と慢性肝炎の違い
肝炎は経過の長さによって「急性肝炎」と「慢性肝炎」に分けられます。急性肝炎は数週間〜数か月以内に症状が現れ、多くは回復しますが、まれに劇症化することもあります。一方、慢性肝炎は炎症が6か月以上続く状態で、自覚症状に乏しいまま緩やかに進行し、肝硬変や肝がんへ移行するリスクがあります(日本肝臓学会ガイドライン参照)。
肝炎の主な原因
ウイルス性肝炎
日本における肝炎の主な原因はウイルス感染です。A型・B型・C型・E型などが知られており、それぞれ感染経路や経過が異なります。詳しくは後述の「ウイルス性肝炎の種類と特徴」をご参照ください。
アルコールや脂肪肝による肝炎
長期にわたる過剰な飲酒は「アルコール性肝炎」を引き起こします。また、肥満・糖尿病・脂質異常症などを背景に脂肪が蓄積した「脂肪肝」が進行すると、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」へと移行することがあります。
薬剤性肝炎や自己免疫性肝炎
市販薬・処方薬・健康食品・サプリメントが原因となる「薬剤性肝炎」も起こりえます。また、免疫の異常によって自分の肝細胞を攻撃してしまう「自己免疫性肝炎」は、中年女性に比較的多くみられます。原因不明の肝機能異常が続く場合は、これらも鑑別の対象となります。
ウイルス性肝炎の種類と特徴
A型肝炎
主に汚染された食品や飲料水を介して経口感染します。急性肝炎を起こしますが、多くは数週間〜数か月で回復し、慢性化はまれです。ワクチンによる予防が可能です。
B型肝炎
血液・体液を介して感染します。成人が感染した場合は急性肝炎として経過することが多いですが、乳幼児期の感染では慢性化しやすい特徴があります。慢性B型肝炎は肝硬変・肝がんのリスク因子です。ワクチン接種(2016年より定期接種化)が有効な予防手段です。詳しくはB型肝炎の感染経路について詳しく解説した記事もご参照ください。
C型肝炎
主に血液を介して感染します。感染者の約70〜80%が慢性化するとされており(厚生労働省「肝炎総合対策推進国民運動事業」より)、自覚症状なく進行するケースが多い点が問題です。現在は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)によって高い確率でウイルスの排除が期待できるようになっています。
E型肝炎
主に十分に加熱されていない豚肉・鹿肉・猪肉などを介して感染します。国内でも散発的な感染事例が報告されており、急性肝炎として発症します。免疫機能が低下している方では重症化する場合もあるため注意が必要です。
肝炎の感染経路
食べ物・水・衛生環境による感染
A型肝炎・E型肝炎は主に経口感染です。生水や十分に加熱されていない食材を介して感染します。衛生環境が整っていない地域への旅行時は特に注意が必要です。
血液・体液を介した感染
B型肝炎・C型肝炎は血液・体液を介して感染します。輸血や注射針の使い回し、性行為、医療事故などが主な経路です。かつての医療環境下での輸血を経験した方は、C型肝炎への感染歴を確認することが推奨されています。
母子感染や日常生活で気をつけたいこと
B型肝炎は出産時に母から子へ感染する「母子感染」が重要な経路です。現在は出生直後のワクチン接種と免疫グロブリン投与によって予防が図られています。日常生活(食事・会話・抱擁など)による感染リスクは非常に低いとされていますが、血液が付着したカミソリや歯ブラシの共有は避けるよう配慮が必要です。
肝炎でみられる症状
初期に出やすい症状
急性肝炎の初期には、疲労感・食欲不振・吐き気・右上腹部の鈍い痛み・発熱などが現れることがあります。風邪に似た症状で始まるため見逃されることもあります。
進行するとみられる症状
炎症が強くなると、皮膚や白目が黄色くなる「黄疸」、尿の色が濃くなる(褐色尿)、全身のかゆみなどが現れることがあります。これらは肝機能が著しく低下しているサインであり、速やかに医療機関を受診することが望ましい状態です。詳しい症状については肝炎の症状について詳しく解説した記事もあわせてご覧ください。
症状がないまま進むこともある理由
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、炎症があっても自覚症状が出にくい特徴があります。慢性肝炎では長年にわたり症状がほとんどなく、健診で初めて肝機能異常を指摘されて発見されるケースも少なくありません。
肝炎を放置するとどうなるか
慢性肝炎から肝硬変・肝がんへ進む可能性
慢性的な炎症が続くと、肝細胞が線維組織に置き換わる「肝硬変」へと進行する可能性があります。さらに肝硬変の状態が続くと「肝細胞がん」の発生リスクが高まります。厚生労働省の統計でも、肝がんの背景疾患として慢性B型・C型肝炎が多くを占めていることが示されています。
早期発見が大切な理由
適切な段階で治療を開始することで、炎症を抑制し進行を遅らせることが期待できます。特にC型肝炎は、現在の治療薬によってウイルスの排除を目指せるようになっているため、早期発見のメリットが大きい疾患です。
受診の目安
こんな症状があれば内科・消化器内科へ
- 原因不明の疲労感・食欲不振が1〜2週間以上続く
- 皮膚や白目の黄染(黄疸)、褐色尿がある
- 右わき腹〜右上腹部の違和感や鈍痛がある
健診で肝機能異常を指摘されたとき
AST・ALT・γ-GTPなどの数値が基準値を超えていた場合は、症状がなくても専門医への相談をご検討ください。数値の異常が持続するかどうかの確認が重要です。
感染の心当たりがあるとき
過去に輸血を受けた経験がある方、注射針の使い回しに該当する可能性がある方、B型肝炎の母親から生まれた方なども、一度検査を受けることが推奨されます。
医療機関で行う主な検査
血液検査で確認する項目
AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTP・総ビリルビン・アルブミン・PT(プロトロンビン時間)などを確認します。肝細胞の傷みの程度や肝臓の合成能力を評価します。
ウイルス検査と画像検査
HBs抗原(B型肝炎)・HCV抗体(C型肝炎)・HA抗体(A型肝炎)などのウイルスマーカーを検査します。腹部超音波(エコー)検査で肝臓の大きさ・形態・線維化の程度を確認することも重要です。
肝炎の原因を見分けるポイント
問診(飲酒歴・服薬歴・輸血歴・海外渡航歴・食歴など)と検査結果を総合して、原因を鑑別します。自己抗体検査(自己免疫性肝炎の疑い時)や追加のウイルス検査が必要になる場合もあります。
肝炎と診断された場合の対処
原因に応じた治療の考え方
治療は原因によって異なります。B型・C型肝炎には抗ウイルス薬が用いられます。自己免疫性肝炎にはステロイド薬などが使われることがあります。アルコール性肝炎では禁酒が基本です。いずれも治療方針は主治医が個別に判断します。
生活上で気をつけたいこと
過度な飲酒を避ける、バランスのよい食事を心がける、適度な体重管理を行う、疲労を蓄積しないといった生活習慣の改善が、肝臓への負担を軽減するうえで重要です。
家族や周囲への感染予防
B型肝炎が確認された場合、同居家族も感染の有無を検査し、未感染であればワクチン接種を検討することが推奨されます。血液が付着した可能性のあるものの共有を避けることも大切です。
日常生活での予防と感染対策
ワクチンで予防できる肝炎
A型肝炎・B型肝炎はワクチンで予防できます。特に海外渡航(衛生状態が懸念される地域)を予定している方、医療従事者、B型肝炎ウイルスキャリアの家族・パートナーがいる方などはワクチン接種を主治医に相談することをお勧めします。
食事・手洗い・衛生管理のポイント
A型・E型肝炎の予防には、手洗いの徹底・食材の十分な加熱・生水を避けることが有効です。野生動物由来の肉(豚・鹿・猪など)は中心部まで十分に加熱してから食べるよう心がけましょう。
血液や体液に触れる場面での注意
ケガの手当てや介護などで血液に触れる可能性がある場合は、使い捨て手袋の着用が望ましいです。歯ブラシ・カミソリの共有は避けてください。
たまプラーザで肝炎が気になる方へ
まずは内科・消化器内科で相談を
「健診で肝機能の異常を指摘された」「疲れやすい・食欲がない状態が続いている」「過去の輸血歴が気になっている」といった方は、まずは内科・消化器内科にご相談ください。症状の有無にかかわらず、適切な検査によって早期に状況を把握することが大切です。
早めの受診が望ましいケース
黄疸・褐色尿・強い倦怠感など急性肝炎を疑う症状がある場合は、できるだけ早めに受診することをお勧めします。また、長年未受診の方でも、血液検査・腹部エコーで現状を確認することが肝疾患の早期対処につながります。
よくある質問(FAQ)
肝炎はうつりますか?
肝炎がうつるかどうかは原因によって異なります。A型・E型肝炎は経口感染、B型・C型肝炎は血液・体液を介した感染です。日常的な接触(食事・会話・握手など)でB型・C型肝炎がうつることはほとんどないとされています。ただし血液が付着したものの共有は避けることが大切です。
健康診断の肝機能異常だけで肝炎といえますか?
肝機能値(AST・ALT・γ-GTPなど)の上昇は、肝炎の可能性を示す重要なサインですが、それだけで「肝炎」と診断するものではありません。原因の特定には問診・ウイルス検査・画像検査などが必要です。異常を指摘された場合は専門医への受診をご検討ください。
肝炎は治りますか?
原因と病期によって異なります。急性肝炎の多くは適切な治療と安静で回復が期待できます。C型慢性肝炎は現在の抗ウイルス薬によってウイルスの排除が期待できるようになっています。一方、すでに肝硬変まで進行している場合は根本的な回復が難しいこともあり、定期的な管理が必要になります。
自覚症状がなくても検査は必要ですか?
はい、必要なケースがあります。慢性肝炎は自覚症状なく進行することが多く、症状が出たときにはすでにかなり進行していることもあります。健診での肝機能チェックや、感染リスクがある場合のウイルス検査は、症状がなくても意義があります。
肝炎の家族がいる場合、何に注意すべきですか?
B型肝炎の場合は、同居家族への感染リスクがあります。家族全員でウイルス検査を受け、未感染かつワクチン未接種であればB型肝炎ワクチンの接種を検討することが推奨されます。血液が付着した可能性のある歯ブラシ・カミソリの共有を避けること、ケガの際は手袋を使うことなども重要な対策です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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