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胃潰瘍の原因を正しく知る|ピロリ菌・薬剤・ストレスとの関係を専門医が解説

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胃潰瘍の原因を正しく知る|ピロリ菌・薬剤・ストレスとの関係を専門医が解説

導入:胃潰瘍の「原因」を正しく理解するために

「胃潰瘍はストレスが原因」というイメージをお持ちの方は少なくないかもしれません。しかし現在の医学的な整理では、胃潰瘍の主な原因はピロリ菌(Helicobacter pylori)感染と、痛み止めなどの薬剤使用であることがわかっています。

胃潰瘍は胃の粘膜が深く傷ついた状態であり、放置すると出血や穿孔(胃に穴が開くこと)といった合併症を引き起こすリスクがあります。原因を正しく理解することは、適切な受診のきっかけや、治療後の再発予防にもつながります。本記事では、消化器外科専門医の立場から、胃潰瘍の原因・症状・診断・治療について丁寧に解説します。


胃潰瘍とは?まずは基本を整理

胃潰瘍とは、胃の内壁を覆う粘膜が、胃酸や消化酵素(ペプシン)によって深く傷ついた(潰瘍化した)状態を指します。粘膜の表面だけが軽く傷ついた状態を「胃炎」と呼ぶのに対し、胃潰瘍は粘膜の下の層(粘膜下層以深)まで及ぶ傷を指す点で区別されます。

詳しい定義や病態については胃潰瘍とはもあわせてご参照ください。


胃潰瘍の主な原因

ピロリ菌感染

ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)は、胃の粘膜に棲みつく細菌で、慢性的な炎症を引き起こすことが知られています。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、ピロリ菌感染は胃潰瘍の主要な背景因子の一つとして位置づけられています。

ピロリ菌に感染していても、すべての方が胃潰瘍を発症するわけではありませんが、感染がある場合には胃粘膜の防御機能が低下しやすく、潰瘍が生じやすい状態になると考えられています。

NSAIDs(解熱鎮痛薬・一部の抗血栓薬など)

ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリンなどに代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、胃粘膜を保護するプロスタグランジンという物質の産生を抑制するため、胃粘膜障害の原因になりうることがわかっています。

特に高齢の方や、長期間・高用量で服用している場合にリスクが高まるとされています。ただし、これらの薬剤は痛みや炎症、血栓予防など重要な目的で処方されることが多く、症状が気になっても自己判断で服用を中止することは危険です。必ず処方した医師にご相談ください。

ストレスは原因になるのか

強いストレスは交感神経や消化管の働きに影響を与え、胃粘膜の血流低下や胃酸分泌の変化に関係する可能性が指摘されています。ただし、日常的なストレス単独で胃潰瘍が引き起こされるというよりも、ピロリ菌や薬剤などの主要な原因が存在する中で、ストレスや生活習慣の乱れが粘膜の回復を妨げる補助的な要因になりうると整理する見方が一般的です。

なお、手術や重篤な全身疾患に伴う「ストレス潰瘍」は医学的に別に定義されており、急性に発症する点が特徴です。

喫煙・飲酒・不規則な生活

喫煙は胃粘膜の血流を低下させ、粘液の産生を抑制するなど、粘膜の防御力を弱める要因として知られています。飲酒については、大量・習慣的な飲酒が胃粘膜への刺激となる可能性があります。いずれも胃潰瘍の直接原因というよりは、粘膜の回復を妨げたり、潰瘍が悪化しやすい環境を作ったりする補助的な要因と考えられています。

まれな原因・背景疾患

頻度は低いですが、ガストリンという消化液の分泌を促すホルモンが過剰に分泌されるゾリンジャー・エリソン症候群では、難治性・多発性の潰瘍がみられることがあります。通常の治療に反応しにくい潰瘍では、こうした背景疾患の検索も必要になる場合があります。


胃潰瘍の原因別にみる特徴

ピロリ菌が関係する場合の特徴

ピロリ菌感染が背景にある胃潰瘍では、みぞおちの鈍い痛みや慢性的な胃もたれ、食後の不快感などが長期にわたって続くケースがみられます。胃潰瘍は十二指腸潰瘍と比較して、食後に症状が出やすい傾向があるとも言われていますが、個人差があります。

薬剤が関係する場合の特徴

NSAIDsなどの薬剤が原因の場合、症状が目立たない(無症候性の)潰瘍が生じることがあり、気づかないうちに進行して吐血や黒色便で初めて発覚するケースもあります。定期的に痛み止めを服用されている方は、症状がなくても医師に相談しておくことが大切です。


胃潰瘍の症状

よくある症状

胃潰瘍でみられやすい症状には、以下のようなものがあります。

  • みぞおち(上腹部)の痛み・不快感
  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲の低下
  • 胸やけ・げっぷ
  • 食後の膨満感

これらは胃炎や機能性ディスペプシアなど他の疾患でも共通してみられる症状です。症状だけで病態を区別することは難しく、確定診断には医師の診察と検査が必要です。

初期症状の詳しいセルフチェックについては胃潰瘍 初期症状 チェックもご活用ください。

すぐに受診が必要な症状

以下の症状がある場合は、出血や穿孔などの合併症が疑われるため、速やかに医療機関を受診してください。

  • 吐血(血を吐く)
  • 黒色便・タール便(コールタールのような黒くドロっとした便)
  • 突然の激しい腹痛
  • 顔面蒼白・ふらつき・冷や汗などを伴う場合

胃潰瘍の診断方法

問診で確認すること

診察では、症状の経過・程度、NSAIDsや抗凝固薬などの服薬歴、喫煙・飲酒習慣、既往歴などを詳しく確認します。これらの情報が原因の絞り込みや検査方針の決定に役立ちます。

胃カメラ検査でわかること

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、胃潰瘍の診断において中心的な役割を担います。潰瘍の有無・部位・大きさ・出血の有無を直接確認でき、必要に応じて組織の一部を採取する生検を行うことで、悪性腫瘍との鑑別も可能です。

ピロリ菌検査

ピロリ菌の検査方法には、内視鏡を用いる方法(培養・組織診・迅速ウレアーゼ試験)と、内視鏡を使わない方法(尿素呼気試験・血液検査・便抗原検査)があります。どの検査を選択するかは、患者さんの状態や保険適用の要件をもとに医師が判断します。


胃潰瘍の治療

診断・治療は必ず医師の指示に基づいて行うことが前提です。自己判断での薬の服用や中止は、症状の悪化や原因の見落としにつながる可能性があります。

胃酸を抑える治療

プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの胃酸分泌抑制薬が、胃潰瘍治療の中心となります。これらは胃酸の過剰な分泌を抑え、傷ついた粘膜の回復を助けることを目的に使用されます。

ピロリ菌除菌治療

ピロリ菌感染が確認された場合、抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を組み合わせた除菌治療が行われます。除菌が成功したかどうかは、治療終了後に検査で確認することが重要です。除菌後のフォローアップについても、担当医の指示に従ってください。

薬剤が原因の場合の対応

NSAIDsなどが原因と考えられる場合は、原因薬の中止や代替薬への変更、胃粘膜保護薬の併用などが検討されます。ただし、薬剤の変更・中止は必ず処方した医師と相談した上で行ってください。

生活上の注意点

禁煙・節酒、規則正しい食事、刺激の強い食品(香辛料・アルコール・炭酸飲料など)の過剰摂取を控えることは、治療の補助として有用です。ただし、生活習慣の改善だけで胃潰瘍そのものを治療することはできません。あくまで医療的な治療と並行して取り組む補助的な対応として位置づけることが大切です。


胃潰瘍の原因を考えるときに注意したいこと

胃がん・十二指腸潰瘍・機能性ディスペプシアとの違い

みぞおちの痛みや胃の不調は、胃潰瘍だけでなく、十二指腸潰瘍・胃がん・機能性ディスペプシア・逆流性食道炎など、さまざまな病態で現れます。機能性ディスペプシアの原因については別記事でも詳しく解説しています。症状だけで自己診断することは難しく、内視鏡検査を含む医師の診察が確定診断に必要です。

市販薬で様子を見る前に確認したいこと

市販の胃薬が一時的な症状緩和に役立つ場合はありますが、症状が2週間以上続く場合、黒色便や吐血を伴う場合、体重減少や食欲不振が著しい場合などは、市販薬のみで対応せず医療機関を受診することをお勧めします。


よくある質問

胃潰瘍の原因はストレスだけですか?

ストレス単独では胃潰瘍の主な原因とは考えにくく、現在の医学的な整理では、ピロリ菌感染や薬剤(NSAIDsなど)が主要な原因として位置づけられています。ストレスや生活習慣の乱れは、潰瘍の回復を妨げる補助的な要因になりうると考えられています。

胃潰瘍は食事で治せますか?

食事の工夫は症状を悪化させる要因を避ける点で補助的に役立つ場合がありますが、食事だけで胃潰瘍を治療することはできません。医師の診察に基づく薬物療法など、適切な医療的対応が必要です。

胃潰瘍は再発しますか?

原因(ピロリ菌感染や薬剤使用など)が残ったままの場合、再発するリスクがあることが知られています。治療後のフォローアップや原因に対する対処が、再発予防の観点から重要です。

胃潰瘍は放置しても大丈夫ですか?

放置すると出血(吐血・黒色便)や穿孔(胃に穴が開く状態)などの重篤な合併症につながるリスクがあります。症状が続く場合や出血が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。


受診の目安

以下に該当する場合は、医療機関への受診をご検討ください。

  • みぞおちの痛みや胃の不快感が2週間以上続いている
  • 吐血・黒色便・強い腹痛がある(→ 速やかに受診)
  • NSAIDsや抗凝固薬を長期服用していて胃の症状がある
  • 体重減少・食欲不振が著しい
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

まとめ

胃潰瘍の主な原因は、ピロリ菌感染とNSAIDsなどの薬剤使用です。ストレスや喫煙・飲酒・不規則な生活は、直接的な原因というよりも粘膜の回復を妨げる補助的な要因として理解することが適切です。

症状だけで胃潰瘍かどうかを判断することは難しく、胃がんや機能性ディスペプシアなど他の病態との鑑別を含めて、医師の診察と検査が不可欠です。気になる症状がある場合は、自己判断で経過をみるのではなく、早めに消化器科・内科を受診されることをお勧めします。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。


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