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下痢のときの水分補給|何を・どれくらい・どう飲むか、医師が解説

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下痢のときの水分補給|何を・どれくらい・どう飲むか、医師が解説

下痢が続いているとき、「水を飲んでもよいのだろうか」「何を飲めばよいか迷う」という疑問をお持ちの方は少なくありません。実は下痢のときこそ水分補給は重要であり、何を・どのように補給するかによって回復の経過にも影響します。本記事では、下痢の際の水分補給について、医学的な根拠をもとにわかりやすく整理します。


下痢のときに水分補給が大切な理由

下痢の状態では、消化管を通過する水分の吸収が十分に行われないため、便とともに大量の水分が体外へ排出されます。問題はそれだけではありません。水分とともにナトリウム・カリウム・クロールなどの電解質(ミネラル)も失われる点が重要です。

電解質のバランスが崩れると、単純な「のどの渇き」を超えて、倦怠感・筋肉のけいれん・意識の低下といった症状があらわれることがあります。これが脱水症の怖さです。

世界保健機関(WHO)や日本小児科学会も、下痢・嘔吐による脱水に対しては経口からの水分・電解質補給(経口補水療法)を推奨しています。水分補給を「控えたほうがよい」という考え方は医学的に根拠がなく、むしろ積極的に補給することが基本方針となっています。


下痢のときの基本の水分補給方法

こまめに・少量ずつが原則

一度に多量の水分を摂ると、胃腸への負担が増し、吐き気や腹痛を悪化させる場合があります。一度に大量に飲むのではなく、ひと口(約30〜50mL)をゆっくりと、5〜10分おきに繰り返すことが基本です。

吐き気がある場合は、5〜10mLをスプーン1杯ずつ口に含む程度から始め、嘔吐せずに飲み込めることを確認しながら量を増やしていきます。

飲みやすいタイミングと目安

強い便意や腹痛のピーク時に無理に飲もうとすると、返って気分が悪くなることがあります。症状が一時的に落ち着いたタイミングを見計らいながら、ひと口ずつ補給するとよいでしょう。

1日の補給量の目安として、成人では下痢の排出量に加えて通常の維持水分量(体重×30〜35mL/日程度)を意識することが参考になります。ただし具体的な必要量は体格・発汗・症状の程度によって異なるため、あくまで目安としてご参照ください。

何を飲むとよいか

経口補水液(ORS)は、水・ナトリウム・ブドウ糖をWHO推奨の配合比率に近い形で含んでおり、腸管からの吸収効率が高い飲み物です。脱水症状が出ているとき、嘔吐・下痢が激しいとき、高齢者や乳幼児など脱水リスクが高い場合に、とくに有用な選択肢として位置づけられています。

水・白湯は手軽に入手できますが、電解質を含まないため、長時間・大量の下痢が続く場合は水だけでは電解質の補給が不十分になることがあります。症状が軽度で短時間であれば、水・白湯でも基本的な水分補給には役立ちます。

薄めたスポーツドリンクは市販の製品を水で2倍程度に希釈することで利用する方法もあります。ただし、原液のままでは糖分が多く、浸透圧の関係から腸管への水分吸収を妨げることがあるため、希釈するか量を控えめにする配慮が必要です。


下痢のときに避けたい飲み物

以下の飲み物は、腸への刺激や浸透圧の影響から、下痢を悪化させる可能性があります。

飲み物 理由
アルコール 腸管の蠕動運動を乱し、脱水を促進する
コーヒー・緑茶(カフェインを多く含む飲料) 腸管を刺激し、下痢を悪化させることがある
果汁100%ジュース(濃いもの) 浸透圧が高く、腸内の水分バランスを崩す
炭酸飲料(甘いもの) 糖分・炭酸による腸への刺激
牛乳 乳糖不耐の傾向がある場合、下痢を助長することがある

脱水を見分けるサイン

以下のような症状が見られる場合は、脱水が進んでいる可能性があります。

  • 口の中が乾燥している、のどが強く渇く
  • 尿の量が明らかに減っている、または6時間以上出ていない
  • 尿の色が濃い茶色・橙色になっている
  • 立ちくらみ・ふらつきがある
  • 極端な倦怠感や頭痛がある
  • 皮膚をつまんだ後、もとに戻るのが遅い(皮膚ツルゴールの低下)

これらの症状が複数あてはまる場合は、自己対処だけで様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診することをお勧めします。


子ども・高齢者・持病がある人で注意したいこと

乳幼児・小さなお子さんは体重に対する体液量の割合が大きく、また自分で「のどが渇いた」と訴えることが難しいため、脱水の進行に気づきにくい点が特徴です。日本小児科学会は乳幼児の下痢には経口補水液の活用を推奨しており、症状が強い場合は早めに小児科を受診することが大切です。

高齢者はもともと体内水分量が少ない上、口渇感が鈍くなるため脱水を起こしやすい状態にあります。本人が「まだ大丈夫」と感じていても、周囲が様子を見ながら積極的に水分を勧めることが重要です。

持病のある方(腎臓病・心疾患・糖尿病など)は、水分・電解質の補給量の調整が必要なことがあります。かかりつけ医に「下痢のときの水分補給の目安」を事前に確認しておくことをお勧めします。


食事も含めた回復期の過ごし方

水分補給とあわせて、症状が落ち着いてきたら食事の再開も検討します。回復初期は消化管への負担を減らすために、おかゆ・うどん・食パン・煮たじゃがいも・豆腐など、脂質が少なくやわらかい食品を少量から始めるとよいとされています。

脂っこい料理・香辛料の強い料理・生もの・乳製品・食物繊維の多い野菜(ごぼう・こんにゃく等)は、腸への刺激が強くなりやすいため、症状が完全に落ち着くまでは控えめにすることが一般的です。

下痢 水便下痢 水っぽいの状態が続く場合は、腸が十分に水分を吸収できていないサインであることも多いため、食事の再開は無理せず、主治医の指示に従うことが大切です。


下痢の原因によって対応が異なる場合

下痢の原因はさまざまであり、対応も異なります。

  • 感染性胃腸炎・食中毒:ウイルスや細菌による腸への感染で、水分補給が特に重要。一方で「下痢を止める薬」を安易に使うと、細菌・毒素の排出を妨げることがあるため、医師に相談してから使用するのが原則です。
  • 薬の副作用による下痢:抗生物質など服用中の薬が原因のこともあります。処方医・薬剤師への相談が必要です。
  • 過敏性腸症候群(IBS)や慢性炎症性腸疾患:ストレスや免疫の問題が関与する場合があり、長期的な管理が必要です。お腹がゴロゴロ鳴る 下痢 水っぽいが繰り返す方は、一度専門医に相談されることをお勧めします。

自己判断による薬の使用や、原因不明のまま様子を見続けることは、症状の悪化や診断の遅れにつながる可能性があります。


よくある質問

下痢のとき、水だけ飲めば十分ですか?

症状が軽度で短時間であれば、水・白湯でも水分補給の基本的な役割は果たせます。ただし、下痢が数時間以上続く場合や、嘔吐を伴う場合は、水分と同時に電解質(ナトリウム・カリウム等)も失われているため、経口補水液や塩分を含む食品も意識することが望ましいとされています。

経口補水液は毎回必要ですか?

軽度の下痢で脱水の兆候がない場合は、経口補水液は必須ではありません。ただし、脱水リスクが高い状況(下痢が続く・嘔吐がある・高齢者・乳幼児等)では、積極的な活用が推奨されます。薬局で市販されているほか、家庭でも作成のガイドラインが公開されています(塩・砂糖・水を用いたWHOのレシピ等)。

下痢のとき、スポーツドリンクは飲んでもよいですか?

市販のスポーツドリンクは電解質を含んでいますが、糖分が多く浸透圧が高いため、腸管での水分吸収を妨げることが指摘されています。飲む場合は水で2倍程度に希釈する、少量にとどめるなどの工夫を行ってください。乳幼児・高齢者には経口補水液のほうが適しています。


受診の目安

以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 便に血が混じっている(血便)
  • 38℃以上の発熱を伴っている
  • 激しい腹痛がある
  • 嘔吐がひどく、飲み物を口にできない
  • 口の渇き・尿量の減少・ふらつきなど、脱水が疑われるサインがある
  • 下痢が2〜3日以上改善しない
  • 乳幼児・高齢者で症状が続いている

「少し様子を見てから」と考えがちですが、脱水は比較的速く進行することがあります。症状が強いと感じた場合は、遠慮なく受診することが大切です。


まとめ

下痢のときの水分補給は「控える」ではなく「こまめに補給する」が基本です。ポイントは以下のとおりです。

  1. 少量をこまめに飲む:一度に大量ではなく、ひと口ずつを繰り返す
  2. 飲み物を選ぶ:症状の程度に応じて、経口補水液・水・薄めたスポーツドリンクを使い分ける
  3. 避けたい飲み物を知る:アルコール・カフェイン・濃い糖分飲料は控える
  4. 脱水のサインを把握する:尿量の減少・口の渇き・ふらつきなどに注意する
  5. 気になる症状は医師に相談する:自己判断での対応には限界がある

下痢が続くとき、ご自身や大切な方の症状が心配なときは、専門医への相談を早めに検討してください。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師・医学博士/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。


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