膵臓とは?がんとの関係もわかる基礎知識
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膵臓(すい臓)は、食べ物の消化と血糖値の調整という2つの重要な機能を担う臓器です。胃の裏側に位置するため体の外からは触れにくく、病変が生じても気づきにくいという特徴があります。「膵がん(膵臓がん)」は進行しやすいがんとして知られていますが、膵臓の働きや体への影響を正しく理解しておくことで、症状に気づいたときに適切に行動するための判断材料になります。本記事では、膵臓の基礎知識からがんとの関係、検査・治療の考え方まで、患者さんとご家族にわかりやすく解説します。
膵臓とは?まず知っておきたい役割
膵臓の場所と大きさ
膵臓は、胃の後ろ側(背中寄り)に横たわるように位置しており、右側(十二指腸に接する側)を「頭部」、中央を「体部」、左側(脾臓に近い側)を「尾部」と呼びます。長さはおよそ15〜20cm、重さは60〜100g程度の細長い形をした臓器です。
腹腔の深部に位置することから、腹部の触診や通常のX線だけでは状態を把握しにくく、超音波(エコー)検査やCT・MRIなどの画像検査が診断に重要な役割を果たします。詳しい位置関係については膵臓の位置や周囲の臓器との関係をやさしく解説した記事もあわせてご覧ください。
膵臓が担う2つの働き:消化液とホルモン
膵臓の働きは大きく2つに分けられます。
| 機能 | 名称 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 外分泌機能 | 消化酵素の分泌 | アミラーゼ(糖質分解)、リパーゼ(脂質分解)、プロテアーゼ(たんぱく質分解)などを含む膵液を十二指腸へ分泌する |
| 内分泌機能 | ホルモンの分泌 | 膵島(ランゲルハンス島)からインスリン(血糖を下げる)、グルカゴン(血糖を上げる)などを血液中に分泌する |
外分泌機能は食べたものを消化・吸収するために、内分泌機能は血糖値を一定範囲に保つために欠かせません。
膵臓の働きが乱れるとどうなる?
消化に関わる症状と体への影響
膵臓の外分泌機能が低下すると、消化酵素が不足し、食べ物—とくに脂質—を十分に消化・吸収できなくなります。その結果として、腹痛、消化不良、脂肪便(脂っぽい便・水に浮く便)、体重減少などが現れることがあります。急性膵炎や慢性膵炎では、みぞおちから背中にかけた強い痛みが特徴的です。
血糖値に関わる症状と体への影響
内分泌機能が障害されると、インスリンの分泌が不足し、血糖値のコントロールが乱れます。「膵性糖尿病」と呼ばれるこの状態は、口渇・多尿・体重減少などを引き起こします。膵がんに伴って糖尿病が発症したり、既存の糖尿病が急に悪化したりすることがあると報告されており、注意が必要です。
膵臓とがんの関係
膵がん・膵臓がんとはどんな病気か
膵がん(膵臓がん・膵臓癌)とは、膵臓の細胞が異常に増殖して悪性腫瘍になった状態の総称です。約90%以上は膵管の細胞に由来する「膵管腺がん(すいかんせんがん)」です。膵臓がん全体の概要については膵臓がんの症状・検査・治療・生活支援までを総合的に解説したガイドをご参照ください。
膵臓癌が見つかりにくいといわれる理由
膵臓がんが発見しにくい主な理由は以下のとおりです。
- 臓器の位置が深い:周囲の臓器に囲まれており、小さな病変は画像でも見えにくい
- 早期症状が乏しい:初期には自覚症状がほとんどなく、症状が出たときには既に進行していることが多い
- 通常の健診では検出されにくい:胸部X線や便潜血検査では膵臓は評価できず、腹部超音波でも膵尾部は描出が難しい場合がある
これらの理由が重なり、診断時にすでに周囲組織や他臓器への転移を伴っている場合も少なくありません。
膵臓がんでみられる主な症状
初期に起こりうる症状
- 食欲不振・体重減少
- みぞおちや上腹部の鈍い痛み
- 消化不良・もたれ感
- 血糖コントロールの悪化(糖尿病の新規発症・急激な悪化)
これらは他の消化器疾患と重なることが多く、初期段階での鑑別が難しいとされています。
進行に伴って出やすい症状
- 黄疸(おうだん):皮膚や白目が黄色くなる。胆管が腫瘍に圧迫されることで起こる
- 背部痛(はいぶつう):腰や背中の持続的な痛み。後腹膜への浸潤が原因になりうる
- 腹水・浮腫:進行期に腹腔内に液体が貯まる
- 著しい体重減少・全身倦怠感
黄疸は病院受診のきっかけになりやすい症状ですが、このころには既に進行していることが多いとされています。発覚のきっかけや症状の詳細については膵臓がんの発覚きっかけと症状・検査について解説した記事もご参照ください。
膵臓がんの主な危険因子
喫煙、肥満、糖尿病などの関連
国立がん研究センターがん情報サービスが公表している情報によると、膵がんのリスクを高めると考えられている主な要因は以下の通りです。
| 危険因子 | 概要 |
|---|---|
| 喫煙 | 最もエビデンスが確立された危険因子のひとつ |
| 糖尿病 | 長期罹患による膵臓への影響のほか、膵がん発症に伴う二次的な糖尿病との関連も |
| 慢性膵炎 | 膵臓の慢性的な炎症は膵がんのリスクを高めるとされる |
| 肥満 | 体格指数(BMI)が高い場合にリスクが上昇するという報告がある |
| 過度な飲酒 | 慢性膵炎を介してリスクに関わる可能性がある |
家族歴や遺伝との関わり
2親等以内の血縁者に膵がん患者が複数いる場合、「家族性膵がん」として注意が必要とされています。また、BRCA1/BRCA2遺伝子変異や、リンチ症候群などの遺伝的素因との関連も報告されています。家族歴が気になる場合は、専門医への相談や遺伝カウンセリングの検討が選択肢になります。
膵臓がんの検査と診断の流れ
画像検査・血液検査でわかること
| 検査の種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 腹部超音波(エコー)検査 | 腫瘤の有無・胆管拡張の確認(スクリーニングとして) |
| CT検査(造影CT) | 腫瘍の大きさ・位置・血管への浸潤・転移の評価 |
| MRI / MRCP | 膵管・胆管の詳細な描出 |
| 超音波内視鏡(EUS) | 小さな病変の描出・組織採取(生検)に有用 |
| 腫瘍マーカー(CA19-9、CEA) | 診断の補助・治療効果の評価に活用(単独での確定診断は困難) |
CA19-9(カーボハイドレートアンチゲン19-9)は膵がんでしばしば上昇が見られる腫瘍マーカーですが、良性疾患でも上昇することがあり、正常値でも膵がんを否定できないため、画像検査との組み合わせが重要です。
診断はどの診療科で受けるのか
膵臓に関する精密検査は、消化器内科・消化器外科・肝胆膵外科などで対応しています。健診や他科での腹部超音波で「膵臓に異常の疑い」と指摘された場合は、これらの専門科に紹介・受診することが推奨されます。膵の腫瘤を指摘された場合の流れについては膵の腫瘤を疑われたときの考え方を解説した記事もご参照ください。
公的データでみる膵臓がん
がん統計からみた患者数と年齢の傾向
国立がん研究センターのがん統計(2024年公表データ)によると、膵臓がんの年間罹患数は男女合わせて約4万5千人超と推計されており、がんによる死亡原因の上位に位置しています。好発年齢は50歳代以降で、加齢とともにリスクが高まる傾向があります。
統計を見るときの注意点
がん統計の生存率や罹患数はあくまで集団全体の傾向を示す数値であり、個々の患者さんの経過や予後を直接示すものではありません。診断された方の状況は、腫瘍の部位・大きさ・進行度・全身状態・治療への反応など多くの要因によって異なります。統計的な数字は参考情報として捉えていただき、具体的な見通しについては必ず担当医にご相談ください。
膵臓がんの治療の考え方
治療法の基本:手術・薬物療法・放射線治療
| 治療法 | 概要 |
|---|---|
| 外科手術 | 根治を目指す基本的な治療。膵頭部がんには膵頭十二指腸切除術(PD)、体尾部がんには膵体尾部切除術などが行われる |
| 薬物療法(化学療法) | 抗がん剤による治療。手術前後の補助療法や、切除不能例の標準治療として用いられる |
| 放射線治療 | 局所進行がんに対して薬物療法と組み合わせて行われることがある |
| 支持療法・緩和ケア | 症状を和らげ生活の質を維持するためのケア。治療の早期から並行して行うことが推奨される |
治療法の選択は日本膵臓学会・日本癌治療学会のガイドラインに基づき、腫瘍の切除可能性(手術で取り切れるかどうか)、患者さんの全身状態、合併症の有無などを総合的に判断して行われます。
病状や全身状態で治療方針が変わること
同じ「膵臓がん」という診断であっても、腫瘍の進行度(病期・ステージ)、周囲の血管への浸潤の程度、転移の有無、また患者さんの年齢や体力・心肺機能などによって、適切な治療方針は一人ひとり異なります。治療の選択については、担当医・専門医と十分に話し合うことが重要です。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備えており、鎮静下での胃・大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。腹部症状や健診結果に関するご相談も随時受け付けており、腹部超音波検査を含む初期評価を外来で行っています。
膵臓に異常を疑う所見が見つかった場合は、速やかに消化器専門科や肝胆膵を専門とする基幹病院へご紹介しています。紹介後も地域連携クリティカルパスを活用し、術後フォローや経過観察を当院が継続して担当することで、患者さんが安心して治療を受けられる体制を整えています。また、在宅療養支援診療所として在宅緩和ケアや看取りにも対応しており、治療の各段階に応じた継続的なサポートをご提供できます。「健診で膵臓の異常を指摘された」「症状が気になる」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
受診・相談の目安
早めに医療機関へ相談したい症状
以下の症状が続く場合は、早めに消化器内科・内科を受診することをお勧めします。
- 原因がはっきりしない上腹部・みぞおちの痛みが2週間以上続く
- 体重が短期間(1〜2か月)で著しく減った(目安:5kg以上または体重の5%以上)
- 皮膚や白目が黄色くなった(黄疸)
- 便の色が白っぽくなった、または濃い茶褐色の尿が出た
- 背中・腰の持続的な痛みがある
- 食欲不振・消化不良が改善しない
- 糖尿病がない方で急に血糖値が高いと指摘された、または糖尿病がコントロール困難になった
健診や他科受診で指摘されたときの対応
腹部超音波や健康診断の腹部エコーで「膵臓に嚢胞(のうほう)がある」「膵管が拡張している」「精密検査をすすめます」と言われた場合は、自覚症状がなくても消化器専門科を受診してください。さらに詳しい画像検査(造影CTやMRI、超音波内視鏡など)が必要になることがあります。
受診のご予約・ご相談はこちらからオンラインで承っています。お電話でのご予約も可能です(TEL: 045-909-0117)。
よくある質問(FAQ)
膵臓はどこにありますか?
膵臓は胃の後ろ側、背骨の前あたりに横たわるように位置しています。右側から十二指腸と接する「頭部」、中央の「体部」、左側で脾臓に近い「尾部」に分けられます。体表からは触れることができない深部の臓器です。詳しい位置については膵臓の場所とがんとの関係を解説した記事もご参照ください。
膵臓がんは早期発見できますか?
膵臓がんは自覚症状が出にくく、通常の健診では発見が難しいとされています。ただし、腹部超音波・造影CT・超音波内視鏡・腫瘍マーカーなどを組み合わせた検査で、比較的早い段階に発見できるケースもあります。糖尿病・慢性膵炎・家族歴などリスク因子がある方は、定期的に消化器専門科への受診・画像検査を検討することが重要です。
背中の痛みだけで膵臓がんを疑うべきですか?
背中の痛みは、筋肉・骨・腎臓・脊椎などさまざまな原因で起こります。ただし、みぞおちから背中にかけて持続する鈍い痛みや、前かがみで和らぎ仰向けで強まる痛みは、膵臓に由来する可能性があります。「背中が痛いだけだから」と自己判断で見逃さず、症状が2週間以上続く場合は医療機関への相談をお勧めします。
健診で異常がなくても受診したほうがよいことはありますか?
はい。通常の健診では膵臓の異常を十分に評価できないことがあります。特に、①50歳以上で喫煙歴がある、②2型糖尿病が急に悪化した、③2親等以内に膵がん患者がいる、④慢性膵炎と診断されたことがある、という方は、健診で異常がなくても定期的な腹部エコーや専門科受診を検討されることをお勧めします。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお) 医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医 専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。