内臓脂肪は、腸や胃などの消化器官のまわりに蓄積する脂肪です。一方、皮下脂肪は皮膚のすぐ下に存在し、つまめる脂肪として実感しやすいのが特徴です。内臓脂肪はお腹まわりに集中しやすく、腹囲の増加として現れることが多いとされています。
内臓脂肪が蓄積しやすい要因として、過食・早食い・高脂肪・高糖質な食生活、運動不足、慢性的な睡眠不足、ストレスの蓄積などが挙げられます。また、男性ホルモンの影響で男性は皮下脂肪より内臓脂肪が優先的に蓄積しやすい傾向があるとされています。
内臓脂肪が過剰に蓄積すると、さまざまな生理活性物質(アディポカイン)の分泌バランスが乱れ、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病リスクが高まることが知られています(日本内科学会・日本肥満学会のガイドラインより)。早期からの対策が重要とされる理由の一つです。
最初に取り組みやすいのは食事の記録です。1日に何をどれだけ食べているかを把握するだけで、食べすぎや栄養の偏りに気づきやすくなります。その上で、運動習慣の追加、睡眠・ストレス管理という順で少しずつ改善していくのが現実的なアプローチです。
内臓脂肪は皮下脂肪に比べて分解・動員されやすいとされていますが、急激な食事制限では筋肉量も落ちやすく、基礎代謝の低下を招くことがあります。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、無理のない継続的な取り組みが推奨されています。
体重1kgあたりの適正エネルギーは活動量によって異なりますが、まずは1日の摂取カロリーを把握し、消費カロリーとのバランスを意識することが出発点です。
精製度の高い白米・白パン・菓子類などの急激な血糖上昇を招く糖質を減らし、玄米・雑穀・野菜など血糖値の上がりにくい食品に置き換えることが効果的とされています。
飽和脂肪酸(バター・ラード・脂身の多い肉など)の過剰摂取を控え、青魚に含まれるEPA・DHA、植物油に含まれるオレイン酸などを積極的に取り入れることが勧められています。
野菜・海藻・きのこ・豆類などの食物繊維は、食後血糖値の急上昇を抑え、満腹感を持続させる効果が期待されます。食事の最初に野菜から食べる「ベジファースト」も手軽な工夫の一つです。
アルコールは肝臓での脂肪合成を促進し、内臓脂肪の蓄積に関与するとされています。日本人の食事摂取基準でも節度ある飲酒が推奨されており、1日あたり純アルコール20g程度を上限の目安とする考え方があります。
空腹感を抑えるために間食をとる場合は、糖質・脂質の多いスナック菓子より、小魚・ナッツ・ヨーグルトなどを選ぶと血糖値の急上昇を抑えやすくなります。夜遅い時間帯の食事は脂肪として蓄積されやすいため、夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませることが望ましいとされています。
ウォーキング・ジョギング・水泳・自転車などの有酸素運動は、脂肪をエネルギーとして利用する効率が高く、内臓脂肪の減少に有効とされています。厚生労働省のガイドラインでは、週150分以上の中強度の有酸素運動が推奨されています。
筋肉量を維持・増加させることで基礎代謝が上がり、安静時にも消費されるエネルギーが増えます。スクワット・腹筋・腕立て伏せなど器具不要の自重トレーニングから始めることも可能です。なお、筋肉量の維持は加齢に伴うサルコペニアの予防にも関連しています。
エレベーターよりも階段を使う、一駅分歩く、家事をこまめに行うなど、まとまった運動時間が取れなくても日常の活動量(NEAT)を意識することが有用です。
最初から高強度・長時間の運動を目指す必要はありません。「今より10分多く歩く」という小さな目標を積み重ねることで、継続しやすくなります。
睡眠時間が短いと食欲抑制ホルモン(レプチン)が減り、食欲促進ホルモン(グレリン)が増えることで過食につながりやすいとする研究報告があります。7時間前後の睡眠確保を意識しましょう。
慢性的なストレスはコルチゾールの分泌増加を通じて内臓脂肪の蓄積を促すとされています。ストレス発散に食事を利用するパターンに気づき、散歩・入浴・趣味などの別の発散方法を取り入れることが助けになります。
毎日同じ時間に起床・就寝・食事をとることで体内時計が整い、代謝の安定につながるとされています。
消費者庁に届出された機能性表示食品の中には、内臓脂肪低減に関する研究結果を根拠とするものがあります。ただし、効果には個人差があり、食事・運動の改善なしに単独で大きな効果を期待することは難しい場合があります。
成分・届出番号・研究の根拠(臨床試験の有無)を確認し、誇大な宣伝文句には注意が必要です。
医薬品は有効性・安全性について国の承認審査を経ていますが、サプリや機能性表示食品はその審査対象ではありません。既存の薬を服用中の場合は医師・薬剤師へ事前確認をお勧めします。
一般的に、1週間あたり0.5〜1kg程度の緩やかな体重減少が筋肉量を保ちながら脂肪を落とす目安とされています。腹囲は内臓脂肪の目安として測定しやすい指標であり、男性85cm・女性90cmが特定保健指導の対象基準(日本肥満学会)です。
体重が変わらなくても体組成が変化していることがあります。体重計のみに頼らず、腹囲・体脂肪率・歩行距離などの複数の指標で評価することが有用です。
腹囲増加に加え、血圧・血糖・中性脂肪など複数の検査値が基準値を超えている場合は、メタボリックシンドロームの可能性があります。
健診で指摘があった場合は自己判断で放置せず、医療機関で詳しい評価を受けることをお勧めします。
意図しない体重の急激な変動、強い疲労感、食欲の大幅な低下などは別の疾患が背景にある可能性もあります。
生活習慣の改善を3〜6か月継続しても体重・腹囲に変化がない場合や、持病がありダイエットの方法に迷う場合は、専門医への相談が安心です。
内科では血圧・血糖・脂質プロファイルを総合的に評価し、必要に応じて生活習慣指導や薬物療法の適応を判断します。
血液検査(血糖・HbA1c・脂質・肝機能・甲状腺機能など)、腹部超音波検査などが選択される場合があります。
食事指導・運動指導・体重管理プログラムの紹介、薬物療法の適応判断など、生活習慣全般について相談することができます。
脂肪は全身のエネルギーバランスによって増減するため、腹筋運動だけでお腹の脂肪を選択的に落とすことは難しいとされています。部分痩せを期待するより、全身の脂肪を減らすアプローチが現実的です。
著しいカロリー制限は空腹感・疲労感・筋肉量低下を招き、リバウンドにつながりやすいとされています。適切な栄養素を確保しながら無理のない範囲でカロリーをコントロールすることが重要です。
汗をかいても、それは主に水分の排出です。体重が一時的に減ったように見えても、水分補給で戻るため脂肪が減ったわけではありません。体重計の数値だけで一喜一憂しないことが大切です。
内臓脂肪対策は「何か一つを頑張る」より、食事・運動・睡眠をバランスよく整えることが遠回りに見えて最も確実です。一人での取り組みに限界を感じたら、専門家のサポートを活用することも選択肢の一つです。
健診で腹囲や検査値の異常を指摘された場合、または自分での改善が難しいと感じた場合は、かかりつけ医や内科への受診を検討されることをお勧めします。「受診するほどではないかも」と感じる段階でも、早期に相談することで対策の選択肢が広がります。
食事のカロリー適正化と有酸素運動の組み合わせが、内臓脂肪減少に対してもっとも根拠のある方法とされています。どちらか一方より、両方を無理のない範囲で継続することが大切です。
生活習慣の改善を始めてから体重・腹囲の変化が実感できるまで、個人差はありますが数週間〜数か月程度かかることが多いとされています。体重ではなく腹囲や体組成の変化で評価するとわかりやすい場合があります。
食事改善のみでも内臓脂肪を減らすことは可能とされています。ただし、運動を組み合わせることで筋肉量を維持しながら脂肪を減らしやすくなるため、可能であれば並行して取り組むことが勧められます。
ウォーキングは手軽に始められる有酸素運動として有効です。毎日20〜30分以上の継続を目標にしつつ、体力がついてきたら筋力トレーニングを少しずつ加えると、より効果的に体組成の改善が期待できます。
基本的なアプローチ(食事・運動・生活習慣の改善)は共通しています。男性は内臓脂肪が蓄積しやすく落ちやすい傾向があり、女性は閉経後に内臓脂肪が増えやすくなる傾向があります。年齢・ホルモンバランスを考慮した指導が必要な場合は医師への相談をお勧めします。
機能性表示食品などのサプリは、食事・運動の改善をベースにした上での補助的な位置づけです。サプリのみで大幅な内臓脂肪減少を期待することは、現時点の根拠では難しいとされています。
内科(特に生活習慣病・メタボリックシンドロームの診療を行っているクリニック)への受診が適しています。健診結果をお持ちの場合は合わせてご持参いただくと、より具体的な指導が受けられます。ご予約・お問い合わせからお気軽にご相談ください。
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佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。内臓脂肪や生活習慣病に関する受診の目安・検査についてお気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。