「最近、疲れが抜けにくい」「髪にコシがなくなった気がする」――こうした体の変化の背景に、タンパク質の摂取が関係しているケースがあります。タンパク質は炭水化物・脂質と並ぶ三大栄養素のひとつであり、体のあらゆる機能を支える基盤となる栄養素です。本記事では、タンパク質が体内でどのような役割を担うのか、不足・過剰それぞれの考え方、食事での取り入れ方まで、医学的根拠に基づいて整理します。なお、診断や治療はかならず医師の診察を前提としてください。
タンパク質(たんぱく質)は、アミノ酸が鎖状に結びついてできた高分子の栄養素です。食品から摂取されたタンパク質は消化の過程でアミノ酸に分解・吸収され、体内でさまざまな機能を果たすタンパク質として再合成されます。
体重のおよそ15〜20%をタンパク質が占めており、水分に次いで体内に多く存在します。エネルギー供給を主な目的とする炭水化物・脂質とは異なり、タンパク質は「体をつくり、体の働きを調整する材料」としての側面が特に重要です。
タンパク質の種類や構造的な分類については、タンパク質 種類もあわせてご参照ください。
筋肉・臓器・皮膚・髪・爪など、体を構成するほぼすべての組織にタンパク質が含まれています。体の組織は一定の周期で新しいものに入れ替わる「ターンオーバー」が行われており、成長期はもちろん、成人以降も組織の維持・修復のために継続的なタンパク質の供給が欠かせません。
骨格筋のタンパク質は数週間〜数ヵ月単位で入れ替わるとされており、食事からの摂取が途絶えると合成が滞り、筋肉量の低下につながる可能性があります。
体内の化学反応を促す酵素の多くはタンパク質でできています。食べ物を消化する消化酵素(アミラーゼ・プロテアーゼ・リパーゼなど)も、その代表例です。
また、血糖値の調整に関与するインスリンや成長ホルモンなどのホルモン、ウイルスや細菌から体を守る抗体(免疫グロブリン)も、タンパク質を主成分として構成されています。体の恒常性を維持するうえで、タンパク質は不可欠な役割を担っています。
血液中に含まれるアルブミンなどの血漿タンパク質は、血管内外の水分バランス(浸透圧)を調整する働きを持ちます。タンパク質が著しく不足すると、血漿浸透圧が低下し、組織に水分がたまってむくみ(浮腫)が生じることがあります。
さらに、タンパク質は体液のpHを一定範囲に保つ緩衝作用にも関わっています。
タンパク質は1gあたり約4kcalのエネルギーを産生します。ただし、体のなかでエネルギー源として優先的に使われるのは炭水化物や脂質であり、タンパク質が積極的にエネルギー源として動員されるのは、他の栄養素が不足している状況に限られます。通常、タンパク質の主たる役割はあくまでも「体の材料」です。
タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、そのうち体内で合成できない9種類を必須アミノ酸(ヒスチジン・イソロイシン・ロイシン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・スレオニン・トリプトファン・バリン)と呼びます。必須アミノ酸は食事から摂取するほかなく、いずれか1種類でも不足すると体内でのタンパク質合成が制限されます。
食品に含まれるアミノ酸のバランスを示す指標として「アミノ酸スコア」があります。動物性食品は一般的にアミノ酸スコアが高い傾向にありますが、植物性食品でも組み合わせ次第で必要なアミノ酸を補い合うことができます。
タンパク質が体内でどのように分解・利用されるかについては、タンパク質 分解で詳しく解説しています。
タンパク質が慢性的に不足すると、以下のような変化が現れることがあります。
- 筋肉量・筋力の低下:筋肉の合成よりも分解が上回る状態が続く
- 体力・疲労回復の低下:組織の修復に使われる材料が不十分になる
- 皮膚・髪・爪の変化:弾力の低下、パサつきなど
- 免疫機能への影響:抗体産生に必要な材料の不足
- 高齢者:食欲の低下や消化吸収能の変化により摂取量が減りやすい
- 食事量が全体的に少ない方:ダイエット中や小食の方
- 偏食がある方:特定の食品・食品群を避けている方
- 回復期の方:術後・病後は需要が増加することがある
体重減少・強いだるさ・むくみ・脱毛などはタンパク質不足以外の疾患が原因となっている場合もあります。自己判断で補おうとするよりも、症状が続く場合はかかりつけ医や内科への相談をご検討ください。
通常の食事の範囲では、健康な方がタンパク質をとりすぎることで直ちに問題が生じるとは言い切れません。ただし、食事全体のバランスが偏る(野菜・炭水化物が不足するなど)可能性や、特定の疾患がある場合には留意が必要です。
タンパク質の摂取量を増やしたい場合、ブロッコリー タンパク質のように食物繊維も豊富な食品を活用すると、食事全体のバランスを整えやすくなります。
慢性腎臓病などがある場合、タンパク質の摂取量の調整が必要になることがあります。病状の段階によって目標量が異なるため、必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。自己判断での制限・増量はいずれも避けることが大切です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人のたんぱく質の推奨量として、体重1kgあたりおよそ0.8〜1.0gを目安に設定しています(例:体重60kgの成人で約50〜60g程度)。ただし、活動量・年齢・病状・妊娠・授乳などの条件により異なります。
公的基準はあくまでも目安であり、一律に当てはめるものではありません。個人の状態に応じて柔軟に考えることが重要です。
高齢になると筋肉量が低下しやすい(サルコペニア)ことが知られています。食事摂取量が少なくなりがちな高齢者では、1日のなかで意識的にタンパク質を各食に分散して確保する工夫が有用とされています。
※数値は文部科学省「食品成分データベース」をもとにした参考値です。
動物性食品はアミノ酸スコアが高いものが多い一方、植物性食品は食物繊維や各種ビタミン・ミネラルを同時に摂取できるメリットがあります(食物繊維)。どちらかに偏るのではなく、両者を組み合わせることで食事全体のバランスが整いやすくなります。
- 主菜に肉・魚・卵・豆腐などのタンパク源を必ず1品
- 副菜に大豆製品・乳製品などを組み合わせる
- 1日3食を意識し、1食あたりの偏りを少なくする
1日に必要な量を1食で一度にとるよりも、複数の食事に分散させるほうが体内での利用効率が高まるとされています。
朝食でタンパク質を省くと、その日の不足を昼・夕食で補いにくくなります。卵・ヨーグルト・チーズ・豆乳など、手軽に取り入れられる食品から始めることをお勧めします。
- サラダチキン、ゆで卵
- 豆腐・納豆の小鉢
- ギリシャヨーグルト
- 定食の魚・肉の主菜
筋肉は運動(特に筋力トレーニング)による刺激とタンパク質の供給が組み合わさることで維持・増強されやすくなります。ただし、運動習慣や目的によって最適な量・タイミングは異なります。過剰なタンパク質摂取が筋肉量を際限なく増やすわけではないため、運動量に見合った摂取を心がけることが大切です。
1日全体の量を確保することが最優先ですが、複数の食事に分けてとることで体内での合成効率が高まるとされています。毎食意識する習慣が助けになります。
プロテイン(タンパク質補助食品)は食事が困難な場合の補助手段として活用できますが、食事はタンパク質以外の栄養素もまとめて摂取できる点で基本です。食事を主体とした上での補完的使用を考えるのが適切です。
大豆・豆類・穀類などを適切に組み合わせることで、植物性食品のみでも必須アミノ酸を補い合うことは可能です。ただし、食事内容の工夫が必要であり、心配な方は管理栄養士への相談も選択肢のひとつです。
はい、年齢・体格・活動量によって推奨量は異なります。厚生労働省の食事摂取基準にも年齢区分ごとの目安が設定されており、個別の状況に合わせて考えることが重要です。
慢性腎臓病では病期によってタンパク質制限が必要になる場合があります。一方で、過度な制限もリスクをともなうため、必ず主治医の指示のもとで対応してください。自己判断での制限は避けてください。
食事内容を見直しても以下のような症状が続く場合は、医療機関への相談をご検討ください。
- 体重の減少が続いている
- 強いだるさや疲労感がとれない
- 足や顔のむくみが気になる
- 筋力・体力の低下が著しい
これらはタンパク質不足以外の疾患が関与している可能性もあるため、自己判断よりも専門家への相談が安心です。
- かかりつけ医・内科:まず全身状態の確認を
- 管理栄養士による栄養相談:食事内容の具体的な見直しに
- 消化器外科専門医:消化吸収に関わる問題が疑われる場合
タンパク質は、筋肉・臓器・皮膚などの体の材料となるだけでなく、酵素・ホルモン・免疫に関わる体の機能全体を支える栄養素です。不足すれば筋肉量の低下や体力の低下、過剰・偏りがあれば食事バランスが崩れる可能性があります。年齢・体格・活動量・病状により必要量は異なるため、公的な指標を参考にしながら、個人の状況に合わせて食事全体のバランスで考えることが大切です。気になる症状がある場合は、ぜひ専門医にご相談ください。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
「食事を気をつけているのに体重が減り続けている」「むくみや体力の低下が気になる」など、タンパク質の摂取や消化吸収に関するご不安は、消化器外科専門医にお気軽にご相談ください。
まずは診療案内・受診のご案内をご確認いただき、ご都合に合わせてご予約ください。
- Web予約:https://ai-tamaplaza.reserve.ne.jp/sp/index.php
- 公式サイト:https://aiplusclinic-tamaplaza.com/
- TEL:045-909-0117
- 所在地:神奈川県横浜市青葉区美しが丘1-5-5 Retetamaplaza-1F(たまプラーザ駅 最寄り)