体温を上げるには?原因・症状・対処を内科医が解説
「いつも手足が冷たい」「体温を測ると36℃を下回ることが多い」——そのような悩みを抱えている方は少なくありません。体温が低い状態(低体温)は、生活習慣の乱れや筋肉量の低下、自律神経の不調などが重なって起こることが多く、日常の工夫で改善が期待できる場合もあります。一方で、甲状腺の病気や貧血など、背景に内科的な疾患が潜んでいることもあるため、症状が長引く場合は医師への相談が大切です。本記事では、体温を上げるための方法を中心に、低体温の原因・症状・受診の目安まで、医学的な根拠に基づいてわかりやすく解説します。
体温を上げるには?まず知っておきたい「低体温」とは
体温が低いと感じるのはどんな状態か
一般的に、日本人成人の平常時の体温は36.0〜37.0℃前後とされています。腋窩(わきの下)で測定した場合、35℃台が続く状態を「低体温」と呼ぶことがあります。ただし、個人差があるため、「何度以下が異常」と一律に断定することはできません。自分のふだんの体温を把握しておくことが、変化に気づく第一歩です。
体温と基礎代謝・血流の関係
体温は、筋肉・肝臓などの臓器が栄養素を分解してエネルギーを産生する「基礎代謝」によって維持されています。基礎代謝が低下すると産熱量が減り、体温が下がりやすくなります。また、血流が滞ると熱が体の末端まで届きにくくなるため、冷えの自覚症状につながります。
低体温が続くと気づきやすいサイン
体温が慢性的に低い状態が続くと、「だるさ」「疲れやすさ」「手足の冷え」「集中力の低下」「肌荒れ」といった不調が現れやすくなります。これらは低体温に特有の症状というわけではありませんが、複数重なる場合は生活習慣の見直しや受診のきっかけにしてみてください。
体温が下がる主な原因
生活習慣の影響(食事・睡眠・運動不足)
食事量が少なすぎる、または偏った食事が続くと、エネルギー産生が低下して体温が上がりにくくなります。睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、体温調節機能に影響を与えます。また、運動不足は筋肉量の低下を招き、産熱量の減少につながります。
ストレスや自律神経の乱れ
体温調節は自律神経(交感神経・副交感神経)が担っています。慢性的なストレスや過労によって自律神経が乱れると、末梢血管の収縮・拡張がうまく調整できなくなり、冷えや体温低下を引き起こしやすくなります。腹式呼吸は自律神経を整える手段のひとつとして注目されています。
筋肉量の低下
筋肉は体内で最も多くの熱を産生する組織です。加齢・運動不足・過度なダイエットなどによって筋肉量が減ると、基礎代謝が低下し、体温を維持しにくくなります。
冷えやすい体質・環境要因
冷房の効いた室内に長時間いる、薄着をしている、冷たい飲食物をとりすぎるといった環境・習慣要因も体温低下に関わります。
病気が隠れていることもある
甲状腺機能低下症(橋本病など)、鉄欠乏性貧血、糖尿病などの内科的疾患が体温低下や冷えの原因になることがあります。これらは血液検査で発見できることが多いため、症状が続く場合は受診を検討してください。
体温を上げるには?日常でできる対処法
まずは食事を整える
1日3食を基本に、たんぱく質・脂質・炭水化物をバランスよく摂取することが大切です。極端な食事制限は避けましょう。
こまめに体を動かして筋肉を使う
ウォーキング・ストレッチ・軽い筋力トレーニングなど、無理のない範囲で継続することが産熱量の維持に役立ちます。座りっぱなしの時間を減らし、こまめに立ち上がる習慣も有効です。
入浴で体を温める
38〜40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分ほどゆっくり浸かることで、血行が促進されます。熱すぎるお湯は交感神経を過度に刺激するため、やや低めの温度でリラックスしながら入浴するのがポイントです。
冷え対策の服装・室内環境を見直す
重ね着・腹巻き・靴下などで体幹・末端を冷やさないようにしましょう。冷房設定を適切に保ち、直接冷風が当たらない工夫も有効です。
睡眠と生活リズムを整える
就寝・起床時間を一定に保つことで、体内時計と自律神経のリズムが安定します。就寝前のスマートフォン使用を控え、深部体温が自然に下がるよう入浴は就寝1〜2時間前に行うと睡眠の質が向上しやすいとされています。
ストレスケアを取り入れる
深呼吸・軽いヨガ・趣味の時間など、自分に合ったリラクセーションの習慣を取り入れることで、自律神経のバランスが整いやすくなります。
「体温を上げる」ときに意識したい食事のポイント
たんぱく質を十分にとる
肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などのたんぱく質は、筋肉の合成と基礎代謝の維持に欠かせません。食事の際に意識的にたんぱく源を取り入れましょう。
エネルギー不足を避ける
過度な食事制限はエネルギー不足を招き、産熱量の低下につながります。適切なカロリーを確保することが体温維持の基本です。
冷たいもののとりすぎに注意する
冷たい飲み物や食べ物を大量にとると、内臓が冷えて血流が滞る可能性があります。季節を問わず、常温〜温かい飲み物を意識的に取り入れることをお勧めします。
温かい食事を取り入れる工夫
汁物・スープ・鍋料理など、食事に温かいメニューを加えることで体を内側から温めやすくなります。生姜・ネギ・根菜類などは伝統的に「体を温める」とされており、日常的に取り入れやすい食材です(ただし、これらの食材摂取で体温が医学的に上昇するという確立されたエビデンスは限定的であり、食事全体のバランスが重要です)。
低体温と間違えやすい症状・関連する不調
だるさ・疲れやすさ
低体温と類似した不調として、慢性疲労・貧血・甲状腺疾患なども同様の症状を呈します。自己判断せず、症状が長引く場合は医師に相談しましょう。
むくみ・肩こり
血行不良による末梢のむくみや、筋肉の緊張による肩こりは、冷えや低体温に伴いやすい不調です。
便秘・食欲低下
腸の動きは体温・自律神経の影響を受けるため、冷えが続くと消化機能が低下し、便秘や食欲不振につながることがあります。
月経不順や冷えの自覚
女性では、冷えや低体温が月経周期の乱れと関連することがあります。婦人科的な原因も考えられるため、気になる場合は専門医への相談をお勧めします。喉の違和感など、他の体の不調が重なる場合も、内科受診の目安になります。
体温を上げたいときに避けたい行動
無理なダイエット
極端なカロリー制限・断食は筋肉量の低下と基礎代謝の低下を招き、体温がさらに下がりやすくなります。体重管理は医師や管理栄養士に相談しながら、無理のない範囲で行いましょう。
過度な薄着や冷房の当たりすぎ
「鍛える」目的で寒さに無理に耐えることは体温調節機能を過剰に疲弊させる可能性があります。適切な防寒対策を怠らないようにしましょう。
体調不良を我慢して続けること
低体温に伴う不調を「体質だから仕方ない」と放置することは、背景にある疾患の発見が遅れるリスクがあります。
こんなときは病院を受診しましょう
低体温が続く・急に変化した
体温が35℃台の日が続く、あるいは急激に体温が下がったと感じる場合は、内科での診察をお勧めします。
発熱以外の症状を伴う
体重減少・強い倦怠感・むくみ・動悸・息切れなどが伴う場合は、内科的な疾患の可能性を考える必要があります。
甲状腺の病気や貧血が疑われる場合
甲状腺機能低下症は冷え・むくみ・だるさを主な症状とし、血液検査(甲状腺ホルモン値・TSH)で診断できます。貧血(鉄欠乏性など)も同様に血液検査で確認可能です。
受診の目安と診療科の考え方
まずはかかりつけの内科・一般内科への受診が適切です。症状に応じて、甲状腺専門(内分泌内科)・婦人科・消化器内科などへ紹介されることもあります。受診の際は、ご予約・お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
医師が行う主な診察・検査
問診で確認すること
いつから体温が低いか、体温低下に伴う症状(倦怠感・冷え・むくみなど)、生活習慣・食事・服薬状況、月経の状態(女性)などを詳しく伺います。
必要に応じて行う血液検査など
甲状腺ホルモン(FT3・FT4・TSH)、血算(貧血の有無)、血糖・HbA1c、肝機能・腎機能などを確認します。必要に応じて超音波検査なども行います。
原因に応じた治療が優先される理由
体温が低い状態そのものを直接治療するのではなく、原因となる疾患(甲状腺機能低下症・貧血など)の治療が優先されます。原因を明らかにせずに自己流の対処を続けることは、診断の遅れにつながる可能性があるため、気になる場合は早めの相談をお勧めします。
体温を上げることと「免疫力」の関係
体温だけで免疫力は判断できない
「体温が1℃上がると免疫力が上がる」という情報がインターネット上に散見されますが、この表現は医学的に単純化されすぎており、体温だけで免疫機能を評価することはできません。免疫系は非常に複雑で、体温以外のさまざまな因子が関係しています。
生活習慣全体を整えることが大切
食事・運動・睡眠・ストレスケアといった生活習慣全体を整えることが、体温の維持と健康の維持に寄与すると考えられています。一つの指標にとらわれすぎず、体全体のバランスを意識することが大切です。
よくある質問(FAQ)
体温は何度以下だと低体温ですか?
腋窩体温が35℃台(35.0〜35.9℃)の状態を一般的に「低体温」と呼ぶことがあります。ただし、個人差があるため、「この数値以下が必ず異常」とは言い切れません。自分のふだんの体温を把握し、普段より低い状態が続く・症状が伴う場合は受診の目安とするとよいでしょう。
体温を上げるには運動と入浴のどちらが大切ですか?
どちらも体温の維持・改善に有益で、それぞれ異なる働きをします。運動は筋肉量を増やして基礎代謝を高める長期的な効果があり、入浴は血行を一時的に促進する即効的な効果があります。両方を生活に取り入れることが理想的です。
サプリメントで体温は上がりますか?
生姜エキス・鉄分・ビタミン類などを含むサプリメントが販売されていますが、特定のサプリメントが体温を医学的に有意に上昇させるというエビデンスは現時点では限られています。食事で十分な栄養が摂れない場合の補助として活用することは考えられますが、あくまで食事・運動・睡眠などの基本的な生活習慣の改善が優先されます。
低体温は病気のサインのことがありますか?
はい、甲状腺機能低下症・貧血・低栄養・糖尿病などの内科的疾患が低体温や冷えの原因になることがあります。生活習慣の改善を試みても体温が上がらない、他の症状(むくみ・倦怠感・体重変化など)を伴う場合は、内科への受診をお勧めします。
子どもや高齢者の体温が低いときはどう考えますか?
高齢者は加齢により基礎代謝・産熱能力が低下し、体温が低めになりやすい傾向があります。一方、急に体温が低下した場合は低体温症(体幹部の体温が35℃未満になる状態)の可能性もあり、速やかな医療機関への対応が必要です。子どもの場合も、ふだんより著しく体温が低い・元気がない場合は早めに受診してください。
受診するなら内科でよいですか?
まずは一般内科への受診が適切です。問診・血液検査などを通じて原因を調べ、必要に応じて内分泌内科・婦人科・消化器内科などへご案内します。たまプラーザ近郊にお住まいの方は、ご予約・お問い合わせからお気軽にご相談ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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