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脂肪便とは?|内科医がわかりやすく解説

脂肪便とは?|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】

便が油っぽく見える、水に浮く、便器にこびりつく——そのような便の変化が気になったことはないでしょうか。脂肪便(しぼうべん)とは、消化・吸収されなかった脂肪が便に多く含まれる状態を指します。食事内容の影響で一時的に起こることもありますが、膵臓や胆道などの消化器疾患が背景にある場合もあるため、繰り返すときや他の症状を伴うときは消化器内科への相談が大切です。本記事では脂肪便の特徴・原因・受診の目安をわかりやすく解説します。

この記事は、便の色とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】 の関連(クラスター)記事です。便の色全般については親ページもあわせてご覧ください。


脂肪便とは?まずは正常な便との違いを知ろう

脂肪便の定義

脂肪便とは、便中に含まれる脂肪(中性脂肪や脂肪酸)の量が異常に増加した状態を指します。医学的には「脂肪吸収不全(脂肪吸収障害)」の結果として現れ、英語ではSteatorrhea(ステアトレア)とも呼ばれます。健常な成人では摂取した脂肪の約95%が小腸で吸収されますが、何らかの原因でこの吸収が妨げられると余分な脂肪が便とともに排出されます。

便が油っぽい・浮く・悪臭が強いときの見え方

脂肪便は見た目や性状に特徴があります。「なんとなく便がいつもと違う」と感じたときに参考になるポイントを以下でご紹介します。


脂肪便で見られやすい特徴

水に浮きやすい

便中の脂肪量が増えると、密度が低くなるため水に浮きやすくなります。ただし、ガスを多く含む便も浮くことがあるため、浮くだけで脂肪便と断定はできません。

便の表面に脂がつく

便の表面がテカテカと光って見えたり、油膜のようなものが便の周囲に広がったりすることがあります。

便器にこびりつきやすい

脂肪分が多いため便器の壁面に付着しやすく、水を流してもすっきり落ちにくいのが特徴のひとつです。

白っぽい・灰色っぽい便になることがある

胆道の問題で胆汁の分泌が不十分になると、便が白色〜灰色っぽくなることがあります(白色便・灰白色便)。この場合は胆管や胆のうの疾患が疑われるため、特に注意が必要です。


脂肪便の主な原因

脂肪の消化・吸収がうまくいかないと起こる

脂肪を消化・吸収するには、①膵臓からのリパーゼ(脂肪分解酵素)、②肝臓でつくられ胆のう・胆管を通じて分泌される胆汁、③正常な小腸の粘膜の3つが正常に機能する必要があります。これらのいずれかが障害されると脂肪便が生じやすくなります。

膵臓の病気

慢性膵炎は脂肪便の代表的な原因です。膵臓の炎症が続くことで消化酵素(リパーゼ等)の分泌が低下し、脂肪の消化が不十分になります。膵がんや膵管閉塞でも同様の状態が起こりえます。

胆のう・胆道の病気

胆汁は脂肪の乳化(消化しやすくする作業)を担います。総胆管結石や胆管がんなどで胆汁の流れが妨げられると、脂肪の吸収効率が下がり脂肪便につながることがあります。

小腸の病気

小腸でのクローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸疾患)、短腸症候群などは腸粘膜の吸収能を低下させ、脂肪便の原因となります。

胃切除後・腸の手術後

胃切除後症候群では、食物が急速に十二指腸・小腸に流れ込み、消化酵素や胆汁と混合する時間が短くなるため吸収不全を起こすことがあります。

薬の影響や食事内容が関係することもある

脂質吸収阻害薬(オルリスタットなど)は作用の仕組みとして脂肪便を生じることがあります。また、ごくまれに高脂肪食の過剰摂取後に一時的に油っぽい便が出る場合もありますが、その場合は通常1〜2回で改善します。


脂肪便のときに伴いやすい症状

下痢や軟便

脂肪吸収不全は浸透圧を変化させ、下痢や軟便を引き起こしやすくなります。

体重減少

脂肪が吸収されずに排出されるため、カロリー不足が続き体重が落ちることがあります。

お腹の張り・腹痛

未消化の脂肪が腸内細菌によって発酵・分解されることで、腹部膨満感やガス、腹痛が生じることがあります。

栄養不足のサイン

慢性的な脂肪吸収不全では、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収も低下します。疲れやすさ、皮膚の乾燥、筋力低下などが現れることがあります。

ビタミン不足が問題になることもある

ビタミンDの欠乏は骨粗鬆症リスクを高め、ビタミンKの欠乏は出血しやすくなるなど、全身への影響が広がることがあります。


受診の目安

1回だけの変化か、繰り返すかで考える

高脂肪食を摂った翌日に便が油っぽくなり、その後改善する場合は一時的な変化の可能性があります。一方、繰り返す場合や2週間以上続く場合は受診を検討してください。

便の変化に加えて気をつけたい症状

体重減少、黄疸(皮膚や白目の黄染)、腹痛、発熱などを伴う場合は早めに受診することをお勧めします。

早めに消化器内科を受診したほうがよいケース

  • 脂肪便が繰り返す・長引く
  • 明らかな体重減少がある
  • 便が白色〜灰白色になっている
  • 以前に膵臓・胆のう・消化管の疾患を指摘されたことがある

緊急性が高い症状

強い腹痛・発熱・黄疸・真っ黒な便(タール便)・血便などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。


医療機関ではどんな検査をする?

問診と診察

いつから・どのような便か・食事内容・服薬歴・体重変化などを詳しくお聞きします。

血液検査

膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)、肝機能・胆道系酵素(AST・ALT・γ-GTP・ALP・ビリルビン)、栄養状態(アルブミン・脂溶性ビタミン)などを確認します。

便検査

便中の脂肪量を測定する「便中脂肪定量検査」で脂肪吸収不全の程度を評価することがあります。

腹部エコー・CTなどの画像検査

膵臓・胆のう・胆管・腹部リンパ節などを画像で確認し、疾患の有無を調べます。

必要に応じた内視鏡検査

胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸カメラ、さらに胆管・膵管を詳しく調べる検査(MRCP・ERCPなど)を行う場合があります。


脂肪便の治療・対処は原因に応じて行う

原因疾患の治療が基本

慢性膵炎・膵がん・胆道疾患・小腸疾患など、原因となっている疾患を診断・治療することが最優先です。

食事の工夫が必要な場合

脂質の摂取量を一時的に制限し、消化しやすい食事に切り替えることが症状の緩和に役立つ場合があります。ただし、食事療法の内容は病態によって異なるため、医師・管理栄養士の指導のもとで行うことが大切です。

膵酵素補充などを行うことがある

慢性膵炎による消化酵素不足には、膵酵素製剤(消化酵素補充療法)が用いられることがあります。

自己判断での市販薬使用は注意

消化酵素系の市販薬は症状を一時的に和らげることがあっても、原因疾患の診断・治療にはなりません。繰り返す脂肪便は自己判断で対処するより、まず受診して原因を特定することが大切です。


脂肪便を放置しないほうがよい理由

栄養障害につながるおそれ

脂肪吸収不全が長期に続くと、エネルギー不足・脂溶性ビタミン欠乏・体重減少などの栄養障害が進行する可能性があります。

原因疾患の見逃しにつながるおそれ

膵臓・胆道・小腸の疾患の中には、早期に診断・治療することで予後が改善するものもあります。「たいしたことないだろう」と繰り返す脂肪便を放置することは、診断の遅れにつながるおそれがあります。


便の状態で気になるときのセルフチェックポイント

色・におい・浮きやすさ

便の色(白っぽい・黄色っぽいなど)、臭いの強さ、水に浮くかどうかを確認しましょう。

回数・量・腹部症状

1日何回か、量が増えていないか、腹痛・膨満感はあるかを記録しておくと受診時に役立ちます。

食事や服薬との関連

高脂肪食を摂った翌日だけに起こるのか、食事と無関係に続くのかを確認してください。また、新しく服用を始めた薬がある場合はメモしておきましょう。

記録して受診時に伝えると役立つこと

いつから始まったか、どのくらいの頻度か、体重の変化、伴う症状(発熱・腹痛・黄疸など)を受診時に伝えると、スムーズな診察につながります。


たまプラーザで消化器内科を受診するなら

受診前に準備しておくとよい情報

  • 便の変化に気づいた時期と頻度
  • 体重の変化(増減)
  • 現在服用中の薬・サプリメント
  • 過去の消化器系疾患の既往歴
  • 最近の食事内容の変化

相談しやすい症状の伝え方

「便が油っぽく見える」「水に浮く」「便器にこびりつく」「においが強い」など、具体的に伝えていただくと診察がスムーズです。恥ずかしく感じる方もいらっしゃいますが、便の状態は消化器疾患を診る上で大切な情報です。遠慮なくお伝えください。


よくある質問(FAQ)

脂肪便は食べ過ぎや脂っこい食事だけで起こりますか?

高脂肪食を大量に摂った後に一時的に油っぽい便が出ることはあります。ただし、繰り返したり食事内容と無関係に続いたりする場合は、膵臓・胆道・小腸などの疾患が関係している可能性があります。食事改善だけで様子を見るよりも、消化器内科に相談することをお勧めします。

脂肪便と下痢は同じものですか?

異なります。脂肪便は便中の脂肪量が増えた状態を指し、必ずしも水様性の下痢ではありません。ただし、脂肪吸収不全が起こると軟便や下痢を伴いやすくなるため、両方が重なることはよくあります。

脂肪便が1回だけなら様子見でもよいですか?

脂肪分の多い食事の翌日に1回だけ見られ、その後正常に戻る場合は、すぐに緊急性が高いわけではありません。ただし、繰り返す・長引く・体重減少や腹痛などを伴う場合は早めに受診してください。迷ったときは受診相談を利用してみてください。

子どもでも脂肪便は起こりますか?

起こることがあります。乳幼児では牛乳アレルギーやセリアック病、先天性の消化酵素欠損症が原因になる場合があります。子どもの便の変化が続く場合は小児科・小児消化器科に相談することをお勧めします。

どの診療科を受診すればよいですか?

消化器内科が最初の相談先として適しています。膵臓・胆道・腸などを専門的に診ることができ、必要な検査をまとめて行える体制が整っています。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)

略歴:

1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。

公的役割:

厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。


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