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サルコペニアとは|原因・症状・診断・予防まで医師がわかりやすく解説

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サルコペニアとは|原因・症状・診断・予防まで医師がわかりやすく解説

「最近、歩くのが遅くなった」「転びやすくなった気がする」「ペットボトルのふたが開けにくい」――こうした変化を「年のせい」と片づけていませんか。このような変化の背景に、サルコペニアと呼ばれる状態が関係している可能性があります。

サルコペニアは、加齢や生活習慣、疾患などを原因として骨格筋の量・筋力・身体機能が低下した状態を指します。転倒・骨折・寝たきりのリスクを高めるだけでなく、生活の質(QOL)にも大きく影響することが知られており、近年では高齢者医療において注目度の高いテーマとなっています。

本記事では、サルコペニアの定義から原因・症状・診断方法・予防対策まで、消化器外科専門医の立場から医学的根拠に基づいてご説明します。なお、本記事はあくまでも一般的な医学情報の提供を目的としており、個人の診断・治療を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してご相談ください。


サルコペニアとは何か

サルコペニア(Sarcopenia)という言葉は、ギリシャ語で「肉・筋肉」を意味する”sarx”と「喪失」を意味する”penia”を組み合わせた造語です。日本老年医学会や欧州のAWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)などが定義を整備しており、単に「筋肉量が少ない」だけでなく、筋力(主に握力)の低下身体機能(歩行速度など)の低下を組み合わせて診断される概念です。

フレイル・ロコモティブシンドロームとの違い

混同されやすい概念として「フレイル」と「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」があります。

概念 主な特徴
サルコペニア 骨格筋の量・筋力・身体機能の低下に焦点
フレイル 身体的・精神的・社会的な多面的な虚弱状態(体重減少・疲労感・活動量低下・歩行速度・握力を評価)
ロコモティブシンドローム 骨・関節・筋肉など運動器全体の障害による移動機能低下

サルコペニアはフレイルやロコモと重なり合う部分がありますが、筋肉に特化した概念として独立して扱われています。


サルコペニアが起こる原因

サルコペニアの原因は大きく一次性(加齢性)二次性に分類されます(AWGS2019など参照)。

一次性(加齢性)
加齢に伴い、筋肉を構成する筋線維(特に速筋線維)が減少します。成人では30歳代以降から筋肉量が徐々に低下し、60歳代以降は年に約1〜2%程度の筋肉量が失われると報告されています。

二次性(活動量低下・疾患・栄養不良)

  • 活動量の低下:長期臥床、座位中心の生活、入院・療養など
  • 低栄養・たんぱく質不足:食欲低下、偏食、摂食嚥下障害など
  • 慢性疾患:心不全、慢性腎臓病、糖尿病、COPD、悪性腫瘍(がん)など
  • 炎症:慢性炎症は筋タンパク質の分解を促進します
  • ホルモン変化:テストステロンや成長ホルモン、ビタミンDの低下

サルコペニアは高齢者だけの問題ではなく、若年〜中年層でも低栄養や病気・活動量低下が重なると起こりうることが指摘されています。


サルコペニアの主な症状

サルコペニアの症状は徐々に進行するため、「気づいたら進んでいた」というケースが少なくありません。日常生活での主なサインには以下のようなものがあります。

  • 握力の低下:ペットボトルのふたが開けにくい、荷物が持ちにくいと感じる
  • 歩行速度の低下:横断歩道を青信号のうちに渡りきれない、周囲より歩くのが遅くなった
  • 立ち上がりにくさ:椅子やソファから立ち上がる際に手をついてしまう
  • 疲れやすさ・持久力の低下:少し歩いただけでも疲れる、外出が億劫になる
  • 転倒しやすくなる:つまずきが増えた、バランスが崩れやすい

サルコペニアの症状についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。


サルコペニアのセルフチェック

自己判断には限界がありますが、以下のような簡易的な確認が医療現場でも参考にされています。あくまでも受診の目安としてお使いください。

1. 指輪っかテスト(ふくらはぎ周囲径の目安)
両手の親指と人差し指でつくった輪をふくらはぎの最も太い部分に当て、すき間が生じる場合は筋肉量が少ない可能性が示唆されます(健康長寿ネット等に紹介されている目安)。

2. 握力の確認
男性28kg未満・女性18kg未満が低筋力の一つの目安とされています(AWGS2019より)。

3. 椅子立ち上がりテスト
両腕を胸の前で組んだ状態で、椅子から5回立ち上がるのにかかる時間を計ります(12秒以上かかる場合は注意が必要とされることがあります)。

4. 歩行速度
6mまたは4mを通常歩行で歩いた速度が0.8m/秒以下を目安とする場合があります(AWGS2019参照)。

これらはあくまでも参考指標であり、セルフチェックの結果のみで診断はできません。心配な場合は医療機関への受診をご検討ください。


サルコペニアの診断方法

サルコペニアの診断は、医師による総合的な評価に基づいて行われます。自己判断は適切ではありません。

医療機関では主に以下のような検査・評価が行われます。

  • 問診:体重変化、食欲、活動量、既往症、服薬状況など
  • 身体計測:身長、体重、BMI、ふくらはぎ周囲径など
  • 握力測定:握力計(ハンドグリップダイナモメーター)による計測
  • 歩行速度測定:一定の距離を歩く時間を計測
  • 筋肉量評価:DXA法(二重エネルギーX線吸収法)やBIA法(生体電気インピーダンス法)による筋肉量の測定

AWGS2019の基準では、筋肉量の低下に加えて、握力または歩行速度・椅子立ち上がりテストなどの身体機能評価を組み合わせて診断が行われます。診断は必ず専門医による診察と適切な検査に基づいて行う必要があります。


サルコペニアのリスクが高い人

以下に該当する方は、サルコペニアのリスクが相対的に高い可能性があります。早めに医療機関でご相談されることが望ましいと考えます。

  • 65歳以上の高齢者
  • 体重が最近減少している(特に意図していないのに6か月で2〜3kg以上)
  • 食欲が低下していて食事量が少ない
  • たんぱく質を十分にとれていない
  • 座位時間が長く、ほとんど体を動かさない
  • 糖尿病・慢性腎臓病・がん・心不全などの慢性疾患がある
  • 長期入院や療養後で体力が落ちている

サルコペニアの予防・対策

サルコペニアの予防や対策として、現在のエビデンスが積み上がっているのは主に栄養管理運動(身体活動)の組み合わせです。

栄養面での対策

  • たんぱく質の確保:日本人の食事摂取基準(2020年版)では、高齢者のたんぱく質推奨量は体重1kgあたり約1.0g/日以上が目安とされています。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを意識的に取り入れることが勧められます。
  • エネルギー不足を避ける:摂取カロリーが不足すると、たんぱく質が筋肉のエネルギーとして使われてしまいます。
  • ビタミンD:ビタミンDは筋機能に関わることが知られており、日光浴や魚類の摂取が参考になります。

なお、サプリメントの必要性は個人の食事状況や疾患によって異なります。安易な自己判断による使用は避け、医師や管理栄養士にご相談ください。

運動面での対策

  • レジスタンス運動(筋力トレーニング):スクワット、壁に向かっての腕立て伏せ、椅子を使った立ち上がり運動など、無理のない範囲で継続することが重要です。
  • 有酸素運動:ウォーキングや水中歩行なども身体機能の維持に寄与します。
  • 転倒予防のバランス運動:片足立ち(手すりそばで安全に行う)などが参考になります。

運動の種類・強度・頻度については、年齢や既往症によって適切な内容が異なります。特に心疾患・骨粗しょう症・関節疾患などがある場合は、必ず主治医に相談してから始めてください。


日常生活でできる工夫

特別な器具がなくても、日常生活の中で筋肉を維持するための工夫はできます。

  • 食事の回数や内容:1日3食を基本とし、毎食にたんぱく質源(卵・豆腐・魚など)を意識して含める
  • 調理の工夫:噛む力が低下している場合は、煮込み料理や刻み食など食べやすい形に調理する
  • 歩く機会を増やす:買い物は歩いて出かける、エレベーターではなく階段を使うなど、無理のない範囲で
  • 座りっぱなしを避ける:テレビのCM中に立ち上がる、1時間に1度は立つなど、こまめに体を動かす

既往症がある方や服薬中の方は、食事内容や運動内容を主治医に事前に確認されることをお勧めします。また、16時間ダイエットのような食事制限を伴う方法は、高齢者や低栄養のリスクがある方には不適切な場合があるため、安易に取り入れることは避け、医師に相談してください。


受診の目安

以下のような変化がある場合は、一度医療機関にご相談されることをお勧めします。

  • 意図しない体重減少(6か月で2〜3kg以上の目安)
  • 握力の低下・物が持てなくなってきた
  • 転倒が増えた、バランスが悪くなった
  • 歩くスピードが明らかに低下してきた
  • 食欲がなく、食事量が減っている

受診先としては、内科・老年科(老年内科)・整形外科・リハビリテーション科などが考えられます。かかりつけ医に相談したうえで、必要に応じて専門科を紹介してもらうことも一つの方法です。


よくある質問

サルコペニアとフレイルはどう違いますか

サルコペニアは骨格筋の量・筋力・身体機能の低下に特化した概念です。一方フレイルは、体重減少・疲労感・活動量低下・歩行速度・握力などを含む多面的な虚弱状態を指します。サルコペニアはフレイルの重要な構成要素の一つであり、両方が重なるケースも多くみられます。

サルコペニアは若い人にも起こりますか

サルコペニアは高齢者に多い状態ですが、若年・中年層でも低栄養、長期的な活動量低下、消化器疾患やがんなどの慢性疾患を背景に起こりうることが指摘されています。年齢に関わらず、リスク要因がある場合は注意が必要です。

筋トレだけで改善しますか

運動(筋力トレーニング)はサルコペニアの対策として有効ですが、栄養状態が不十分なままでは効果が十分に発揮されません。また、基礎疾患が原因の場合はその治療が必要なこともあります。運動・栄養・疾患管理を総合的に見直すことが重要です。

サプリメントは必要ですか

たんぱく質やビタミンDなどのサプリメントが研究で注目されることもありますが、必要性は個人の食事内容や疾患の状況によって大きく異なります。食事から必要な栄養素を摂ることが基本であり、サプリメントの使用を検討する際は医師や管理栄養士にご相談ください。自己判断による過剰摂取は健康上のリスクをもたらす可能性もあります。


まとめ

サルコペニアは、単に「筋肉が細くなる」だけでなく、筋力低下・身体機能低下を含む複合的な状態です。転倒・骨折・要介護状態のリスクを高め、生活の質に大きな影響を与えることが知られています。

一方で、適切な栄養管理と継続的な身体活動によって、ある程度の予防・進行抑制に取り組むことができるとされています。重要なのは、自己流の対策に偏らず、症状や変化に早めに気づいて医療機関に相談することです。

「最近なんとなく体力が落ちた気がする」「転びやすくなった」と感じたら、サルコペニアの症状について詳しく確認したうえで、ぜひかかりつけ医や専門医にご相談ください。また、サルコペニアに関する総合的な情報については関連記事もあわせてご参照ください。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。


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