放射線治療の痛みはある?症状と対処の考え方
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放射線治療を受けるにあたって、「痛いのではないか」「副作用がつらいのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。結論から述べると、照射そのものは痛みを伴わないのが一般的です。ただし、治療の経過とともに照射部位の炎症や皮膚症状として痛みやつらさが現れることがあります。本記事では、放射線治療中の痛みが起こる仕組みと対処の考え方を、公的情報をもとにわかりやすくお伝えします。
この記事の位置づけ:がん全般に共通する放射線治療の基礎知識を扱います。個々の治療方針や症状への対応は、必ず担当医とご相談ください。
放射線治療で「痛み」は起こる?まず知っておきたい基本
放射線治療そのものは痛くないのか
MRIやレントゲン撮影と同様に、放射線が体を通過する瞬間に痛みや熱さを感じることはほとんどありません。国立がん研究センター「がん情報サービス」も、照射中は「音も感じも特にない」と説明しています。患者さんが「治療は痛くなかった」と話される一方で、数日から数週間後にさまざまな不快症状が現れることがあります。
痛みが出るのは「治療中」か「治療後」か
放射線治療に伴う症状は、大きく急性期(治療開始から終了後数週間まで)と晩期(終了後数か月〜年単位)に分けられます。急性期には粘膜炎や皮膚炎、晩期には組織の線維化や神経への影響が起こりえます。痛みの時期と性質を正確に把握しておくことが、適切な対応への第一歩です。
放射線治療で痛みが出る主な原因
がんそのものによる痛み
がんが骨や神経・内臓などを圧迫・浸潤することで生じる痛みは、放射線治療の副作用とは別の問題です。骨転移への緩和照射は痛みをやわらげることを目的として行われますが、照射直後に一時的に痛みが増すことがあります(フレアリアクション)。
治療で起こる炎症や粘膜のただれ
口腔・咽頭・食道・直腸など粘膜のある部位に照射すると、放射線性粘膜炎が起こりえます。粘膜が薄くなり、ただれた状態になることで、ものを飲み込む際の痛みや排便時の不快感につながります。食道がんの治療中に生じる飲み込みの症状と似た状況が、頭頸部・胸部への照射でも起こりえます。
皮膚の赤み・乾燥・やけどのような症状
照射野の皮膚には、日焼けに似た赤みや乾燥・かゆみが現れやすく、重症では湿性落屑(皮膚がただれて液体がにじむ状態)に至ることがあります。こすったり市販の刺激の強いクリームを塗ったりすることで悪化するため、スキンケアの方法を医療チームに確認することが大切です。
骨・胸・腹部など部位によって違う痛みの出方
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療を受ける方へ」
痛みと一緒にみられやすい症状
のどの痛み、飲み込みにくさ
頭頸部や食道への照射では、粘膜炎により食事が飲み込みにくくなることがあります。食事量が減ると体力低下につながるため、栄養士や医師への早めの相談が勧められます。胃がんの症状と飲み込みの変化についても参考にしてください。
皮膚のヒリヒリ感、かゆみ
皮膚の変化は照射開始から2〜3週間ごろに目立ってくることが多く、終了後しばらく続くこともあります。がんの初期症状とかゆみの関係で解説しているように、皮膚症状は原因の見極めが大切です。
咳、息苦しさ、だるさ
胸部への照射後には放射線性肺炎が起こることがあり、咳が止まらない、発熱、息苦しさが続く場合は早めの受診が必要です。だるさ(倦怠感)は部位を問わず多くの患者さんが経験する症状で、治療中から終了後数週間続くことがあります。
腫瘍熱のような発熱が気になるとき
がんそのものや治療に伴って発熱することがあります。いわゆる腫瘍熱は、解熱薬が効きやすい傾向があるとされていますが、感染症による発熱との区別は自己判断が難しいため、38℃以上の発熱が続く場合は必ず医療チームに連絡してください。
放射線治療中の痛みはどのくらい続く?
治療中に出る痛みと、終わってから出る痛み
急性期の粘膜炎や皮膚炎は、治療終了後おおむね2〜4週間で回復することが多いとされています。ただし晩期障害(治療終了後6か月以降に現れる変化)は長期にわたることもあります。
症状が強くなりやすいタイミング
多くの場合、照射が重なるにつれて(治療後半〜終了直後)症状が強くなります。治療が終わった後に症状が一時的に悪化したように感じる方もいますが、その後緩やかに改善していくことが多いです。
個人差が大きいことと、統計の見方
症状の出方は照射部位・線量・照射範囲・個人の体質により大きく異なります。統計的な数値は「多くの患者さんの平均的な傾向」であり、特定の個人に当てはまるとは限りません。ご自身の状態は主治医・放射線治療担当医に直接確認することが最も確かな方法です。
痛みがあるときの対処の考え方
まず主治医・放射線治療担当医に伝える
「どの部位が」「いつから」「どんなときに強いか」を具体的に伝えることで、適切な対応につながります。我慢して伝えずにいると、症状の評価や投薬の調整が遅れることがあります。
鎮痛薬や保湿など、症状に合わせた対応
- 鎮痛薬:WHO方式のがん疼痛治療法に基づき、痛みの強さに応じた鎮痛薬(非オピオイド・オピオイド等)が選択されます。
- 粘膜炎のケア:うがい薬や軟膏、栄養補助食品の活用が勧められます。
- 皮膚炎のケア:医師・看護師から指示された保湿剤や外用薬を使用します。
治療を続けるために我慢しすぎないこと
痛みを我慢すると食事量の低下・睡眠障害・意欲の低下につながり、全身の状態に影響することがあります。治療の継続のためにも、つらさは早めに伝えることが大切です。
市販薬や自己判断で避けたい対応
照射部位への市販の消炎鎮痛スプレーや、アルコール含有の製品・刺激の強いローション類の使用は、皮膚炎を悪化させる可能性があります。セルフケアの方法は必ず担当医・看護師に確認してください。また、急な体重減少などの体の変化が重なるときは、自己判断で様子をみすぎないことが重要です。
受診・相談の目安
早めに相談したい症状
- 照射部位のひりひり感・かゆみが強くなってきた
- 食事が飲み込みにくく、食事量が減っている
- だるさが強く、日常生活に支障が出ている
- 皮膚に水ぶくれや湿ったただれが現れた
すぐに連絡したい症状
- 38℃以上の発熱が続く
- 強い息苦しさや胸の痛みが出現した
- 激しい腹痛・血便・血尿が現れた
- 痛み止めが全く効かないほどの強い痛みがある
緊急受診を考える症状
- 呼吸困難が急速に悪化している
- 意識の混濁・ろれつが回らない
- 大量出血(口・肛門・尿路からの止血できない出血)
上記のような状態が現れた場合は、自己判断せず担当医療機関または救急外来に連絡してください。ご受診のご相談はこちらからもお気軽にどうぞ。
放射線治療の痛みと、がんの種類・部位との関係
のど・胸・腹部・骨への照射で注意したいこと
- のど・頭頸部:口内炎・嚥下痛が強くなりやすい。食形態の工夫や経管栄養を検討することもある。
- 胸部(食道・肺):放射線性食道炎・肺炎の兆候(発熱・せき・胸痛)に注意。食道がんの症状との関連で症状の変化を確認することが勧められます。
- 腹部・骨盤:下痢・頻尿・排便時の痛みが出やすい。大腸がん診療の経験が豊富な消化器専門医への相談も一つの選択肢です。
- 骨転移部位:照射後の一時的な痛みの増悪(フレアリアクション)を担当医に事前に説明してもらうと安心です。
咳が止まらない、呼吸器症状があるときの考え方
咳が止まらない症状は、放射線性肺炎・感染・腫瘍の進展など複数の原因が考えられます。治療中に新たに咳が始まった場合や、以前からの咳が悪化した場合は、放射線治療担当医に速やかに相談してください。
脾臓癌の初期症状として相談されやすい内容との違い
左上腹部の重だるさや腹部膨満感を「脾臓の異常ではないか」と心配されて相談される方がいます。これらの症状は放射線治療の腹部照射後の炎症でも起こりえますが、脾臓自体の病変(脾臓癌など)との鑑別は画像検査が必要です。治療部位周辺に新たな症状が出た場合は、自己判断せず担当医に伝えることが大切です。
当院での診療から
消化器がん診療の経験から申し上げると、放射線治療中の痛みについて「どの部位が、いつから、どんなときに強いか」を具体的に整理することで、担当医への情報共有がスムーズになります。外来や在宅療養の相談では、食事量・飲み込みの変化・皮膚症状・発熱の有無をあわせて確認し、主治医へ伝える内容を一緒に整えるようにしています。当院は在宅療養支援診療所として訪問診療・在宅緩和ケアにも対応しており、つらさを我慢しないための受診目安を明確にして、必要なときに早めの対応につなげることを大切にしています。
よくある質問(FAQ)
放射線治療は毎回痛いですか?
照射そのものは音も感触も特にないのが一般的です。痛みは照射中ではなく、照射を重ねるにつれて皮膚や粘膜に炎症が生じることで起こることが多いです。
痛み止めを使いながら放射線治療は続けられますか?
はい、鎮痛薬の使用は放射線治療と並行して行われることが一般的です。WHO方式のがん疼痛治療の考え方に基づいて、痛みの強さに応じた薬を使いながら治療を継続します。どの鎮痛薬が適切かは担当医に相談してください。
痛みが強いと治療を中断することになりますか?
痛みの程度や原因によって判断は異なります。治療を一時休止することもありますが、こまめに症状を伝えることで、中断を避けながら症状をコントロールできるケースも少なくありません。我慢せずに早めに伝えることが大切です。
放射線治療後に痛みが出るのは副作用ですか?
治療後に現れる皮膚炎・粘膜炎・倦怠感などは急性期副作用として知られており、多くは時間とともに回復していきます。ただし治療終了から数か月以上経って現れる晩期障害もあるため、治療後も症状の変化があれば担当医に報告してください。
どの診療科に相談すればよいですか?
治療中・治療後の症状は、まず放射線治療を担当した科(放射線科・放射線腫瘍科)や主治医に相談するのが基本です。皮膚科・消化器科・緩和ケア科など、症状に応じて専門の科を紹介してもらえることもあります。
まとめ
放射線治療の痛みは「治療そのもの」より「照射部位の炎症やがんによる痛み」が中心
照射中に痛みを感じることはほとんどなく、症状の多くは照射部位の皮膚や粘膜への炎症、あるいはがん自体による痛みです。部位や線量によって現れ方は大きく異なりますが、早期に把握して適切なケアにつなげることが可能です。
我慢せず、早めに主治医へ共有することが大切
痛みやつらさを「仕方がない」と放置せず、具体的な言葉で担当医・看護師に伝えることが、治療を安全に続けるための最も重要なポイントです。がん全般の症状と治療の全体像についてはこちらの総合ガイドもご参照ください。
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参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がんの痛みとその対処法」
- 厚生労働省 がん対策
- Minds ガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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