お通じとは?便が出る仕組みから整える方法まで消化器外科専門医が解説
「お通じ」という言葉は日常的によく使われますが、正確にはどのような状態を指すのでしょうか。また、「良いお通じ」とはどういうものなのか、意外と曖昧なまま過ごしている方も多いかもしれません。この記事では、消化器外科専門医の立場から、お通じの基本的な仕組みや目安、乱れる原因、日常でできる対策について、医学的根拠をふまえてわかりやすく解説します。なお、症状の診断や治療方針については、必ず医師の診察を受けたうえでご判断ください。
お通じとは何を指すのか
「お通じ」は「排便」を指す一般的な言葉で、便の回数・形状・排出のしやすさなど、排便全体の状態を含めて使われることが多い表現です。医学的には「排便」「便通」という言葉が用いられますが、日常会話ではお通じという言葉がより広く使われています。
お通じの基本:便が出る仕組み
食べ物は口から食道・胃・小腸を経て消化・吸収され、大腸へと運ばれます。大腸では内容物から水分が吸収され、適度な硬さの便が形成されていきます。最終的に直腸に便がたまると、脳に「便がたまった」というサインが送られ、便意が生じます。
便の成分と大腸の役割
便の成分は、水分が全体の約70〜80%を占め、残りは腸内細菌・食物繊維の残渣・腸の粘膜細胞などで構成されています。大腸での水分吸収が過剰になると便が硬くなり、逆に不十分だと軟らかく水様になります。大腸の動き(蠕動運動)が便の性状に大きく影響しています。
排便反射とタイミング
直腸に便がある程度たまると、直腸壁が伸展し、神経を介して脳に便意のシグナルが伝わります。このタイミングでトイレに行かず便意を繰り返し我慢すると、直腸の感受性が低下し、便意を感じにくくなることがあります。これが慢性的な便秘につながりうる一因とされています。
良いお通じとは?目安になる便の状態
「良いお通じ」を判断するうえでは、排便の回数だけでなく、便の形・硬さ、排便時の負担、残便感なども総合的に確認することが重要です。
便の回数の目安
一般的には「週3回〜1日3回」の範囲内であれば、回数としては概ね正常とされています(日本消化器病学会のガイドラインでも参考値として示されています)。ただし個人差が大きく、毎日排便がなくても体調に問題がなければ、直ちに異常とはいえません。
便の形・硬さの目安
便の性状を客観的に評価するツールとして、英国で開発されたブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)があります。7段階に分類されており、タイプ3〜5(なめらかなソーセージ状〜柔らかくひび割れのある半固形)が理想的とされています。タイプ1・2は硬い便(便秘傾向)、タイプ6・7は水様便(下痢傾向)を示します。
排便時の困りごと
以下のような困りごとが続く場合は、生活習慣の見直しや医療機関への相談を検討されることをお勧めします。
- 強くいきまなければ出ない
- 排便時に痛みがある
- 残便感が残る
- 下痢と便秘を繰り返す
お通じが乱れる主な原因
お通じの乱れは一つの原因ではなく、複数の要因が重なって起こることがほとんどです。
食物繊維や水分不足
食物繊維は便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促す働きに関係します。また、水分が不足すると便が硬くなりやすくなります。現代の食生活では食物繊維が不足しがちとされており、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも、成人の食物繊維摂取目標量が示されています。
運動不足と生活リズムの乱れ
身体を動かす習慣が少ないと腸の蠕動運動が低下しやすくなります。また、起床・食事・就寝の時間が不規則だと、腸のリズムが乱れ、便意のタイミングが不安定になることがあります。
我慢の習慣とトイレ環境
多忙な生活や職場環境などで便意を繰り返し我慢すると、前述のように直腸の感受性が低下しやすくなります。トイレへの心理的抵抗も、排便習慣に影響することがあります。
ストレスと自律神経
腸の動きは自律神経と密接に関わっています。精神的なストレスや緊張が続くと、腸の動きが乱れ、便秘や下痢を起こしやすくなることがあります。過敏性腸症候群(IBS)はその代表例として知られています。
薬の影響
一部の薬(鉄剤・カルシウム拮抗薬・鎮痛薬・抗コリン薬など)は便秘を起こしやすくする場合があります。また、抗生物質などが下痢の原因になることもあります。服薬中に排便の変化が気になる場合は、自己判断で服薬を中止せず、処方医または薬剤師にご相談ください。
病気が背景にある場合
大腸がん・過敏性腸症候群・甲状腺機能低下症・糖尿病性神経障害などが、便秘や下痢として現れることがあります。長引く排便異常は自己判断せず、専門医への受診をお勧めします。
お通じを整えるために日常でできること
食物繊維を意識した食事
食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維(便のかさを増やす)と、水に溶ける水溶性食物繊維(便を柔らかくする)があります。どちらもバランスよく摂ることが大切です。急激に増やすとかえってお腹の張りや不快感を招くこともあるため、少しずつ増やすことをお勧めします。
水分をこまめにとる
こまめな水分補給は、便を適度な柔らかさに保つうえで基本的なケアのひとつです。ただし、腎機能や心機能に問題がある方は摂取量について主治医にご確認ください。
発酵食品や食事の工夫
ヨーグルト・味噌・納豆などの発酵食品は、腸内環境と関わる栄養素を含む食品として知られています。ただし特定の食品に頼りすぎず、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせた食事全体を整えることが基本です。
適度な運動
ウォーキングや軽い体操など、継続しやすい有酸素運動は腸の動きを助けるとされています。特別な運動習慣がない方も、日常の歩数を少し増やすことから始めてみると取り組みやすいでしょう。
朝の排便習慣をつくる
朝食後は「胃・結腸反射」と呼ばれる腸の動きが活発になる時間帯とされています。朝食を摂ったあとにトイレに座る習慣をつくることで、自然な便意を促す助けになることがあります。
無理のない排便姿勢
いきみすぎは肛門への負担を増やすことがあります。足台(踏み台)を使って膝を腰より少し高くする姿勢は、直腸の角度を変え、排便しやすくなる可能性があるとして注目されています。
お通じに関係する栄養素と食品
食物繊維を含む食品
野菜(ごぼう・ブロッコリー・キャベツなど)、海藻(わかめ・こんぶなど)、きのこ類、豆類(大豆・いんげん豆など)、雑穀・全粒穀物などが食物繊維を多く含む食品として知られています。
オリゴ糖を含む食品
オリゴ糖は砂糖とは異なり、腸内細菌のエサとなることで腸内環境に関わるとされています。バナナ・玉ねぎ・大豆などに含まれています。
乳酸菌・発酵食品
ヨーグルト・チーズ・納豆・味噌・キムチなどは乳酸菌や発酵成分を含む食品です。菌の種類や個人差によって効果の感じ方は異なるため、合うものを継続して取り入れることが大切です。
やってはいけない自己判断
市販薬の使い方に注意が必要なケース
便秘薬には刺激性・浸透圧性・膨張性など複数の種類があります。医者がすすめる市販の便秘薬を参考にすることも一つの方法ですが、長期にわたって使用が必要な場合や、薬を変えても改善しない場合は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。自己判断での常用は、腸の自然な動きに影響を与えるおそれがあります。
便秘と下痢を繰り返す場合
便秘と下痢を交互に繰り返す場合は、過敏性腸症候群(IBS)などが背景にある可能性があります。また、宿便が気になる方も、自己流の対処を続ける前に専門医に相談することをお勧めします。浣腸の乱用や極端な食事制限は、症状を悪化させる場合もあります。
受診の目安
早めに受診したい症状
- 便秘や下痢が2〜3週間以上続く
- 便に血が混じっている(血便)
- 原因不明の体重減少がある
- 発熱・吐き気・嘔吐を伴う
- 強い腹痛が繰り返される
- 便が細くなった、形が変わった
すぐに受診を検討すべき症状
- 便もガスもまったく出ない
- お腹の張りが非常に強い
- 黒色のタール状の便が出た(上部消化管出血の可能性)
- 急激に発症した激しい腹痛
これらの症状は、放置せずに速やかに医療機関を受診されることをお勧めします。
よくある質問
お通じは毎日ないと便秘ですか
排便の頻度には個人差があります。週3回以上あり、いきみすぎや残便感がなければ、回数だけで便秘と断言することは難しいとされています。不快な症状が続く場合は受診をご検討ください。
便が細いのは異常ですか
一時的に細い便が出ることはありますが、細い便が続く場合や、形が急に変わった場合は大腸の病変が原因のこともあるため、早めに受診されることをお勧めします。
市販の便秘薬は毎日使ってもよいですか
薬の種類や使用目的によって異なります。長期使用が続く場合は、腸の動きへの影響もあるため、医師または薬剤師にご相談ください。
便秘にヨーグルトは効きますか
腸内環境に関わる食品として注目されていますが、効果の感じ方には個人差があります。特定の食品に頼るだけでなく、食事全体のバランスを整えることが基本となります。
子どもや高齢者のお通じで注意することはありますか
年齢や持病、服薬状況によって適切な対処法が異なります。特に高齢者では薬剤の影響や基礎疾患が関与することも多いため、自己判断は避け、かかりつけ医にご相談ください。
まとめ:お通じは「回数」だけでなく「状態」も見る
お通じの良し悪しは、排便の回数だけで判断するものではありません。便の形・硬さ・排便時の負担・残便感といった状態を総合的に見ることが大切です。また、うんち(便)の状態は体の変化を知る重要なサインでもあります。食事・運動・睡眠・排便習慣の見直しは、日常から取り組めるセルフケアの基本です。症状が長引く場合や気になるサインがある場合は、自己判断せず、消化器外科専門医にご相談ください。
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
AIプラスクリニックたまプラーザ 診療のご案内
「お通じが気になる」「便秘や下痢が続いている」など、排便に関するお悩みは、消化器外科専門医にお気軽にご相談ください。症状が軽くても、長引くようであれば早めのご受診をお勧めします。
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