尿素呼気試験とは?|内科医がわかりやすく解説
尿素呼気試験(UBT:Urea Breath Test)は、息を吐くだけでピロリ菌(Helicobacter pylori)の感染有無を調べられる、体への負担が少ない非侵襲的な検査です。胃カメラ(内視鏡)を使わずに高い精度で判定でき、除菌後の効果確認にも広く用いられています。本記事では、検査の仕組みや流れ・注意点を、消化器外科専門医の監修のもとわかりやすく解説します。
尿素呼気試験とは?まずは検査の概要を知ろう
尿素呼気試験で何を調べる検査か
尿素呼気試験は、胃にピロリ菌が存在するかどうかを呼気(吐いた息)の成分変化で確認する検査です。採血・内視鏡・組織採取などを行わないため、身体的な侵襲がほとんどありません。
ピロリ菌感染の確認に使われる理由
ピロリ菌は胃炎・胃・十二指腸潰瘍・胃がんなどのリスク因子とされており、日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも早期発見・除菌治療の重要性が示されています。尿素呼気試験は感染の有無を全身的かつ簡便に評価できるため、スクリーニングから除菌後確認まで幅広く活用されています。
この検査が選ばれる場面
- 胃・十二指腸潰瘍の診断・治療後のフォローアップ
- 慢性胃炎でピロリ菌感染が疑われる場合
- 除菌治療後の成否確認(除菌判定)
- 胃がんリスク評価の一環としての検査
尿素呼気試験の仕組み
ピロリ菌とウレアーゼの働き
ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を産生します。ウレアーゼは尿素を「アンモニア」と「二酸化炭素(CO₂)」に分解する働きを持ちます。
呼気で判定できるしくみ
検査では、炭素の同位体(¹³C)で標識した尿素(¹³C標識尿素)を服用します。胃内にピロリ菌が存在すれば、ウレアーゼの働きで¹³C標識尿素が分解され、¹³CO₂として血液中に吸収・肺から呼気に排出されます。検査前後の呼気を専用容器に採取し、¹³CO₂の量を比較することで感染の有無を判定します。放射線被曝のない安全な同位体を使用しているため、一般的に安全性が高いとされています。
尿素呼気試験を受ける前に知っておきたいこと
検査前に必要な準備
検査前3〜4時間程度の絶食が必要です(医療機関の指示に従ってください)。また、検査の精度に影響するため、除菌薬や一部の薬剤を服用している場合は事前に担当医へ申告することが重要です。
事前に中止を検討する薬
以下の薬剤は検査結果に影響する可能性があるため、医師と相談のうえ休薬を検討します。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI):PPIについてはこちら
- H₂受容体拮抗薬(H₂ブロッカー)
- 抗菌薬・抗生物質
休薬期間の目安はPPIで2週間以上、抗菌薬で4週間以上とされることが多いですが、自己判断での中止は避け、必ず担当医の指示に従ってください。
食事や飲み物の注意点
検査当日は絶食状態で来院するのが基本です。水は少量であれば許可される場合がありますが、医療機関ごとの指示を優先してください。検査直前の喫煙・ガムの使用も避けることが推奨されます。
尿素呼気試験の流れ
検査当日の手順
- 検査前呼気採取:専用バッグ(パウチ)に息を吹き込みます
- ¹³C標識尿素の服用:錠剤または溶液を少量の水とともに服用します
- 一定時間の安静:通常20分程度、安静に待機します(医療機関により異なります)
- 検査後呼気採取:再び専用バッグに息を吹き込みます
- 検体の測定・分析:前後の呼気を機器で比較・解析します
検査時間の目安
実際の検査にかかる時間は、準備・待機を含めて30〜40分程度が目安です。
痛みや負担はあるのか
注射・内視鏡・組織採取などは一切ありません。錠剤・溶液を飲み、息を吹き込むだけのため、多くの方にとって体への負担は少ない検査です。
尿素呼気試験の結果の見方
陽性と陰性の意味
- 陽性:胃内にピロリ菌が存在する可能性が高い
- 陰性:ピロリ菌が検出されなかった(または菌量が少ない)
結果が出るまでの期間
多くの医療機関では当日または数日以内に結果をお伝えできます。詳細は受診先にご確認ください。
結果だけで判断できないこと
検査結果はあくまで参考情報の一つです。症状・他の検査結果・既往歴などを総合的に踏まえ、医師が診断・治療方針を判断します。
尿素呼気試験の精度と注意点
検査結果に影響する要因
- PPI・抗菌薬などの薬剤服用
- 胃切除後(胃の一部を切除した方)
- 検査前の食事・飲水
偽陰性・偽陽性が起こりうるケース
尿素呼気試験は感度・特異度ともに90%以上と高いとされていますが、薬剤の影響や胃切除後などの条件下では偽陰性(実際は感染しているのに陰性と出る)が生じることがあります。また、まれに偽陽性となるケースも報告されています。
胃カメラや他の検査との使い分け
胃の内部を直接観察する必要がある場合や、組織検査(生検)が必要な場合は胃カメラが選択されます。食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎が疑われる場合も内視鏡が有用です(食道裂孔ヘルニアとは?)。検査の使い分けは担当医が患者さんの状態に応じて判断します。
尿素呼気試験が必要になる代表的なケース
ピロリ菌感染が疑われるとき
胃痛・胃もたれ・げっぷ・吐き気などの症状が続く場合、ピロリ菌感染の有無を調べる目的で実施されます。喉の違和感が続く場合も消化器疾患との関連が疑われることがあり、消化器科への相談が勧められます(喉の違和感について詳しくはこちら)。
胃・十二指腸潰瘍の既往があるとき
胃・十二指腸潰瘍の大部分にピロリ菌感染が関与するとされており、潰瘍の既往がある方には感染検索・除菌治療が推奨されています。
除菌後の判定が必要なとき
除菌治療後、治療が成功したかどうかを確認するために尿素呼気試験が行われます。除菌治療終了から少なくとも4週間以上経過してから検査を受けることが推奨されています。
検査後にピロリ菌が見つかったら
除菌治療の流れ
一次除菌ではPPI(プロトンポンプ阻害薬)と2種類の抗菌薬を1週間程度内服するのが標準的な方法です。一次除菌が不成功の場合は、抗菌薬を変更した二次除菌が行われます。
除菌後に再検査が必要な理由
除菌が成功したかどうかを客観的に確認するため、治療終了後に再び尿素呼気試験などの検査を行います。除菌成功の確認は胃がんリスク低減のうえでも重要です。
再発や再感染について
除菌成功後に再感染する可能性は低いとされていますが、ゼロではありません。定期的な胃内視鏡検査を継続することが、胃の健康管理として推奨されています。
受診の目安と相談先
どんな症状があるときに医療機関を受診するか
- 胃痛・みぞおちの痛みが続く
- 胃もたれ・吐き気・食欲不振が改善しない
- 黒色便(タール便)や血便がある ※この場合は早めに受診を
- 家族にピロリ菌感染者・胃がん患者がいる
どの診療科に相談すべきか
内科・消化器内科が主な相談先です。かかりつけ医にご相談いただくか、消化器を専門とするクリニックを受診されることをお勧めします。
たまプラーザ周辺で相談を検討するポイント
AIプラスクリニックたまプラーザでは、消化器専門医が在籍し、尿素呼気試験をはじめとするピロリ菌関連の検査・相談に対応しています。症状や不安がある方はお気軽にご予約・お問い合わせください。
尿素呼気試験と他のピロリ菌検査の違い
血液検査との違い
血液検査(抗体法)は過去の感染歴を反映するため、除菌後も一定期間陽性が続くことがあります。そのため除菌後の判定には不向きです。
便中抗原検査との違い
便中にピロリ菌の抗原を検出する方法です。精度は尿素呼気試験と同程度とされますが、便の採取・保存が必要です。
胃カメラで行う検査との違い
内視鏡検査では胃粘膜の組織を採取して直接ピロリ菌の有無を調べる「迅速ウレアーゼ試験」「培養検査」「組織検査」などが可能です。胃の内部観察も同時にできる一方、侵襲度は高くなります。
まとめ:尿素呼気試験とはどんな人に向いている検査か
尿素呼気試験は、息を吐くだけで行える非侵襲的な検査で、ピロリ菌の感染スクリーニングおよび除菌後の判定に広く活用されています。胃カメラに抵抗がある方、繰り返し検査が必要な方に特に適した方法といえます。ただし、服薬状況や体の状態によって結果の解釈が変わることもあるため、検査の要否・結果の意味については必ず担当医にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
尿素呼気試験は保険適用になりますか?
ピロリ菌感染が疑われる場合や、胃・十二指腸潰瘍の診断・治療において一定の条件を満たす場合、健康保険が適用されます(2025年時点)。詳細は受診先の医療機関にご確認ください。
検査前に薬を飲んでしまった場合はどうすればよいですか?
特にPPIや抗菌薬を服用中の場合は、検査結果に影響する可能性があります。自己判断で中止せず、まずは受診先の医師・スタッフにご相談ください。検査日の変更が必要な場合もあります。
妊娠中や授乳中でも受けられますか?
使用する¹³C(炭素13)は放射線を出さない安定同位体であり、一般的に安全性は高いとされています。ただし、妊娠中・授乳中の方は事前に担当医へ必ずお申し出ください。
子どもでも受けられますか?
小児においても尿素呼気試験は実施可能とされており、日本小児科学会等のガイドラインでも使用が認められています。対象年齢・実施方法については受診先にご相談ください。
陽性なら必ず治療が必要ですか?
陽性と判定された場合でも、治療の必要性は症状・基礎疾患・胃の状態などを踏まえて医師が総合的に判断します。自己判断で治療を開始・中止することは避け、医師の指示に従ってください。
検査はどのくらい正確ですか?
尿素呼気試験の感度・特異度はいずれも90%以上と報告されており、非侵襲的なピロリ菌検査の中では精度が高い部類に入ります。ただし、薬剤の影響などにより結果が変わることがあるため、状況に応じて他の検査と組み合わせて判断することもあります。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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