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認知症予防と食べ物の関係|医師が解説する食事の考え方と日常の工夫

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認知症予防と食べ物の関係|医師が解説する食事の考え方と日常の工夫

認知症予防に食べ物は関係ある?まず知っておきたい基本

「認知症を防ぐ食べ物がある」という情報をインターネットや雑誌で目にする機会が増えています。しかし、現時点の医学的知見では、特定の食べ物や食品成分だけで認知症を予防できるという根拠は確立されていません。

世界保健機関(WHO)や厚生労働省が参照する認知症対策のガイドラインでも、食事・身体活動・禁煙・血圧や血糖の管理・社会参加など、複数の生活習慣を組み合わせた総合的なアプローチが重要とされています。食事はその重要な一要素ではありますが、「〇〇を食べれば大丈夫」という単純な話ではないことを、まず念頭に置いてください。

認知症の予防で食事が注目される理由

なぜ食事が認知症予防と関連して語られるのでしょうか。主な背景として、以下の点が挙げられます。

  • 脳血管の健康:高血圧や動脈硬化は脳血管性認知症のリスク要因とされており、食塩の過剰摂取や脂質の偏りが血管に影響しうる
  • 慢性炎症:過剰な加工食品や糖分の摂取が体内の慢性的な炎症を助長し、神経細胞へ間接的に悪影響を及ぼす可能性が研究されている
  • 栄養状態:ビタミンB群・D・Eなどの不足が認知機能に関連するという観察研究がある
  • 生活習慣病との連鎖:糖尿病は認知症リスクを高めるとされており、食事による血糖管理は重要

いずれも「関連が示唆されている」段階であり、因果関係の証明は現在も研究が続いています。

認知症予防に役立つ可能性がある食べ物

地中海食(Mediterranean diet)やDASH食(高血圧予防食)、あるいはその両者を組み合わせたMIND食は、認知機能の低下を緩やかにする可能性があるとして複数の研究で注目されています。これらの食事パターンに共通して登場する食品群を紹介します。

なお、認知症にならない食べ物として注目される4つの食品群についても、別記事でより詳しく取り上げています。あわせてご参照ください。

魚類

青魚(サバ・イワシ・サンマなど)に多く含まれるEPA・DHAといったn-3系(オメガ3系)脂肪酸は、脳の細胞膜成分として重要とされています。週に複数回、魚を主菜に取り入れる食習慣が、地中海食でも推奨されています。缶詰や干物を上手に活用すると、日常的に取り入れやすくなります。

野菜・果物

緑黄色野菜や淡色野菜、果物には、ビタミンC・E、β-カロテン、ポリフェノールといった抗酸化成分や食物繊維が含まれています。食物繊維は腸内環境を整えるとともに、血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待されており、生活習慣病管理の観点からも積極的に摂りたい栄養素です。ただし、特定の野菜や果物に”特効”があるわけではなく、種類を変えながらバランスよく摂ることが大切です。

大豆製品・豆類

豆腐・納豆・味噌・豆乳などの大豆製品は、良質なたんぱく質を含み、肉類の代替としても活用できます。高齢になるとたんぱく質摂取量が低下しがちですが、大豆製品は主菜にも副菜にも使いやすいため、食卓に取り入れやすい食品群です。

ナッツ類

くるみ・アーモンド・カシューナッツなどのナッツ類には、不飽和脂肪酸・ビタミンE・マグネシウムなどが含まれています。間食の置き換えとして少量(片手一握り程度)活用する方法が紹介されることがありますが、高カロリーであるため食べ過ぎには注意が必要です。また、市販品は塩分が多いものもあるため、無塩・素焼きタイプを選ぶことをお勧めします。

全粒穀物

白米・白パンだけでなく、玄米・雑穀米・全粒粉パン・オートミールなどを組み合わせることで、食物繊維やビタミンB群を補いやすくなります。血糖値の急上昇を抑える効果も期待でき、糖尿病予防の観点からも取り入れる価値のある食品群です。

控えたい食べ方・食品

塩分の多い食事

日本人の食塩摂取量は世界的に見ても多い傾向があり、高血圧の主な要因の一つとされています。汁物・漬物・加工食品・インスタント食品などは塩分が高くなりがちです。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人の食塩摂取目標量を男性7.5g未満、女性6.5g未満としています。

糖質・甘味飲料のとりすぎ

清涼飲料水・甘いコーヒー飲料・スポーツドリンクなどには多量の糖分が含まれています。習慣的に摂取すると血糖管理が乱れやすくなるため、日常の飲み物はなるべく水やお茶を中心にすることが勧められます。

加工肉・超加工食品

ハム・ソーセージ・ウインナーなどの加工肉や、スナック菓子・ファストフード・即席麺などの超加工食品は、塩分・飽和脂肪酸・添加物を多く含む傾向があります。便利な食品ですが、頻繁に摂取することで食事の偏りにつながりやすいため、手作りや他の食品との置き換えを意識することが大切です。

認知症予防を意識した食事の組み立て方

1食の基本バランス

「主食・主菜・副菜」をそろえることが、日本の食育でも基本とされています。主食(ご飯・パン・麺)でエネルギーを確保し、主菜(魚・肉・卵・大豆製品)でたんぱく質を摂り、副菜(野菜・海藻・きのこ)で食物繊維やビタミンを補う構成が望ましいとされています。食べ過ぎを防ぐためにも、ゆっくりよく噛むことが助けになります。

和食で気をつけたい点

和食は野菜・魚・大豆製品を使う点で優れた食文化ですが、汁物・煮物・漬物など塩分が多くなりやすい料理も多くあります。だし(昆布・かつお・煮干し)をしっかりきかせる、香味野菜(ねぎ・しょうが・みょうが)や酸味(酢・かぼすなど)を活用するといった工夫で、塩分を抑えながらおいしく食べることができます。

高齢者で特に大切なこと

高齢になると食欲が低下しやすく、低栄養や脱水のリスクが高まります。たんぱく質・カルシウム・ビタミンDが不足すると、筋力低下(サルコペニア)にもつながります。噛む力や飲み込む力(嚥下機能)に変化がある場合は、食材の硬さや形状を調整するとともに、かかりつけの医師や管理栄養士・歯科医師への相談も検討してください。

サプリメントや機能性食品は必要?

「認知症予防に効く」とうたうサプリメントや機能性食品が多く販売されていますが、食事の代わりとなるものではありません。機能性表示食品や健康食品の表示は、疾病の治療・予防を目的としたものではないことが法令上も明確にされています(消費者庁ガイドライン参照)。

また、特定の成分を大量に摂取することで、薬との相互作用や副作用が生じる可能性もあります。服薬中の方や持病のある方は、サプリメントを使用する前に必ず医師・薬剤師にご相談ください。

食事以外であわせて取り組みたい認知症予防

WHO(2019年)の認知機能低下および認知症のリスク低減ガイドラインでは、食事に加えて以下の生活習慣が推奨されています。

  • 身体活動:ウォーキングや水泳など有酸素運動を習慣的に行う
  • 禁煙:喫煙は脳血管疾患リスクを高める
  • 節度ある飲酒:過度な飲酒は脳への影響が懸念される
  • 睡眠:睡眠中に脳内の老廃物が排出される機序が示唆されており、質の良い睡眠が重要
  • 社会参加・知的活動:会話・趣味・学習などが認知機能の維持に関連するとされる
  • 血圧・血糖・脂質の管理:生活習慣病を適切にコントロールする

食事はあくまでも生活全体のバランスの中に位置づけることが大切です。

よくある質問

認知症予防に一番よい食べ物はありますか?

特定の食品を一つ挙げることは難しい状況です。研究で注目されているのは特定の食品ではなく、地中海食やMIND食のような食事パターン全体です。野菜・果物・魚・豆類・全粒穀物・良質な油脂を組み合わせ、塩分・糖分・加工食品を控えるというバランスの考え方が基本となります。

肉は控えたほうがよいですか?

肉類は良質なたんぱく質・鉄・ビタミンB12の供給源でもあり、特に高齢者では低栄養予防のためにも適量の摂取が重要です。加工肉(ハム・ソーセージなど)の頻繁な摂取や、飽和脂肪酸の多い食べ方には注意が必要ですが、赤身肉を週に数回程度食べることを過度に心配する必要はありません。

コーヒーやお茶は認知症予防に役立ちますか?

コーヒーのカフェインやポリフェノール、緑茶のカテキンと認知機能の関係を調べた研究は複数存在しますが、現時点では「予防効果がある」と断言できる段階ではありません。飲み過ぎや、就寝前の摂取による睡眠への影響も考慮する必要があります。持病や服薬中の方は、医師・薬剤師にご相談ください。

サプリメントで予防できますか?

現時点では、特定のサプリメントが認知症を予防するという十分な根拠はありません。まずは日々の食事と生活習慣の見直しを基本とし、不足が心配な栄養素がある場合は医師・管理栄養士に相談されることをお勧めします。

受診の目安

以下のような状況がある場合は、かかりつけ医や専門医療機関への受診・相談をご検討ください。不安を大きく感じる前に、早めに相談されることをお勧めします。

  • 物忘れが日常生活に支障をきたすほど増えてきた
  • 以前できていたことが急にできなくなった
  • 食欲の著しい低下や体重の急な減少がある
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症などの持病の管理が気になる
  • 服用中の薬と食事・サプリメントの関係が心配

認知症にならないための食習慣について詳しく知りたい方はこちらもあわせてご参照ください。

まとめ

認知症予防において食事は重要な生活習慣の一つですが、「この食べ物だけ食べれば大丈夫」という特効薬的な食品は現在のところ存在しません。野菜・果物・魚・豆類・全粒穀物をバランスよく摂り、塩分・糖分・加工食品を控えるという食事パターンを日常に取り入れることが、生活習慣病の予防を通じて認知機能の維持につながる可能性があると考えられています。

食事と並行して、身体活動・良質な睡眠・社会参加・持病の管理といった生活習慣全体を見直すことが、より包括的なアプローチとなります。気になることがあれば、ぜひ医療機関にご相談ください。

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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)

医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長

専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。

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