認知症改善とは?原因・症状・対処を内科医が解説
「最近、物忘れが増えた」「親の様子がいつもと違う」と感じたとき、「認知症は改善できるのだろうか」と心配される方は少なくありません。結論から申し上げると、認知症の「種類」や「発見の時期」によって、症状の進行を遅らせたり、生活の質を維持したりできる可能性があります。また、認知症に似た症状でも、治療により改善が期待できる原因が隠れているケースもあります。本記事では、認知症の原因・症状・対処法について、内科医の視点からわかりやすく解説します。
認知症は「改善」できる?まず知っておきたい考え方
「改善」と「治る」は同じではない
認知症における「改善」とは、必ずしも「完全に治る」ことを意味するわけではありません。アルツハイマー型認知症などの多くは、現時点では根本的な治癒が難しいとされています。しかし、適切な治療や生活上の工夫によって、症状の進行を遅らせる・日常生活の支障を軽減することは十分に期待できます。「治る」ではなく「うまく付き合いながら生活の質を守る」という視点が重要です。
早めの対応で進行を遅らせたり、生活のしやすさを保てることがある
認知症は早期に発見・対応するほど、その後の経過に良い影響をもたらせる可能性が高まります。軽度の段階であれば、薬物療法・非薬物療法・生活習慣の見直しを組み合わせることで、日常生活の自立度を保てる期間を延ばせることがあります。
認知症の主な原因と、改善を考える前に確認したいこと
アルツハイマー型認知症
認知症全体の約半数以上を占め、脳内に異常なたんぱく質(アミロイドβやタウ)が蓄積することで神経細胞が徐々に失われます。記憶障害から始まることが多く、ゆっくりと進行するのが特徴です。
レビー小体型認知症
幻視(実際にいない人や動物が見える)や、パーキンソン症状(手のふるえ・歩行のふらつき)を伴うことがあります。日によって症状の程度が変動しやすい点も特徴です。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で起こります。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病との関連が深く、再発予防が進行抑制の鍵になります。
うつ病や薬の影響など、認知症に似た症状
うつ病による「仮性認知症」や、複数薬剤の飲み合わせによる副作用、睡眠障害や甲状腺機能低下症なども、認知機能の低下に似た症状を引き起こすことがあります。
治療で改善が期待できる「認知症以外の原因」
正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下症・ビタミンB12欠乏症など、治療によって症状の改善が期待できる原因もあります。これらを見逃さないためにも、医療機関での適切な検査が重要です。
認知症の症状とは
記憶障害
最近の出来事を忘れる・同じ話を繰り返すなど、特に「新しい記憶」が残りにくくなります。
見当識障害
今日の日付・自分がいる場所・周囲の人が誰かわからなくなることがあります。
判断力・理解力の低下
複数のことを同時に処理したり、計画を立てたりすることが難しくなります。
性格変化や意欲低下
以前は活発だった方が無気力になる、または怒りやすくなるといった変化が現れることがあります。
幻覚・妄想、歩行の不安定さ
レビー小体型では幻視が多く、歩行がふらつきやすくなります。妄想(「財布を盗まれた」など)が見られることもあります。
認知症が疑われるときに受診すべきサイン
日常生活に支障が出てきたとき
家事・買い物・金銭管理が以前よりも難しくなってきた場合は、受診を検討する目安の一つです。
いつもと違う物忘れが目立つとき
「ヒントを言えば思い出せる」通常の物忘れとは異なり、出来事そのものを忘れていたり、記憶がすっぽり抜けていたりする場合は注意が必要です。
急に症状が進んだように見えるとき
数日~数週間で急に悪化した場合は、せん妄・脳血管障害・感染症など別の原因が関係している可能性があります。早めの受診をお勧めします。
早めに医療機関へ相談した方がよいケース
家族が「何かおかしい」と感じたときは、本人が自覚していなくても早めの相談が大切です。
医療機関ではどのように診断するのか
問診と家族からの聞き取り
いつ頃から・どのような症状が・どの程度の頻度で現れているかを詳しく確認します。ご家族からの情報が診断に非常に役立ちます。
認知機能検査
MMSE(ミニメンタルステート検査)やHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)など、標準化された検査で認知機能を評価します。
血液検査・画像検査で他の病気を確認
甲状腺機能・ビタミン値・感染症の有無などを血液検査で確認します。頭部MRI・CTにより、脳萎縮・脳血管障害・腫瘍などを調べます。
必要に応じた専門医への紹介
内科での初期評価の後、神経内科・精神科・もの忘れ外来などへの紹介が行われることがあります。
認知症の改善・進行抑制に向けた治療
薬物療法
アルツハイマー型認知症に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が使用されます。これらは症状の進行を遅らせることを目的とした薬であり、治癒を約束するものではありません。2023年以降、新たな抗アミロイド薬も国内で承認されており、今後の展開が注目されています。
非薬物療法
音楽療法・回想法・作業療法・運動療法などが、認知機能の維持や行動・心理症状(BPSD)の軽減に有用とされています。
原因疾患がある場合の治療
正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などでは、手術的治療によって症状の改善が期待できる場合があります。
生活環境の調整と家族支援
安心して生活できる環境を整えることや、介護者の負担を軽減するためのサポート体制の構築も重要です。
自宅でできる認知症の悪化を防ぐための工夫
規則正しい生活リズムを整える
起床・食事・就寝の時間を一定にすることで、脳への刺激と睡眠リズムの安定につながります。
食事・運動・睡眠を見直す
地中海食パターンや塩分制限食が認知機能維持に関連するとの研究があります。有酸素運動(ウォーキングなど)を習慣化し、十分な睡眠をとることも大切です。
服薬管理と転倒予防
多剤服用(ポリファーマシー)は認知機能に影響することがあります。お薬手帳を活用し、処方の整理を医師に相談しましょう。転倒・骨折も症状悪化の引き金になるため、自宅内の段差解消なども有効です。
会話や役割を保ち、孤立を防ぐ
家族・友人との会話、デイサービスの利用、趣味活動の継続など、社会的なつながりを維持することが認知症の進行防止に関連するとされています。
「改善」が見込めるケースと、注意したいケース
軽度認知障害(MCI)の段階
MCIは、認知症の前段階とされる状態で、日常生活は概ね自立しているものの、記憶力などに低下が見られます。この段階での介入が最も有効とされており、適切な治療・生活改善によって認知症への移行を遅らせられる可能性があります。
せん妄やうつ病、薬剤性などの可逆的な原因
これらは原因に対する治療を行うことで、症状の改善が期待できます。「認知症かもしれない」と思っていたものが、治療可能な別の病気だったというケースも少なくありません。
血管性認知症で生活習慣や再発予防が重要な場合
高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理を徹底し、脳血管障害の再発を防ぐことが、症状の悪化防止に直結します。
受診先の選び方と相談先
まずは内科・かかりつけ医へ
「どこに行けばよいかわからない」という方は、まずは内科・かかりつけ医へのご相談をお勧めします。初期評価と必要な紹介が可能です。
神経内科、精神科、もの忘れ外来の活用
症状に応じて、神経内科・精神科・もの忘れ外来が専門的な診断・治療を行います。地域の認知症疾患医療センターも相談窓口として活用できます。
家族が受診に同行するとよい理由
本人は症状を自覚していないことも多く、ご家族からの情報が診断精度を大きく高めます。できる限り同行されることをお勧めします。
たまプラーザ周辺で認知症の相談を考えている方へ
相談の前にメモしておくとよい症状
- いつ頃から気になり始めたか
- どのような症状が、どのくらいの頻度で起きているか
- 日常生活(家事・外出・服薬管理など)への影響
- 最近の変化(急な悪化・新しい薬の追加など)
受診時に持参したいもの
保険証・お薬手帳・健診結果・紹介状(お持ちの方)をご持参ください。事前にメモした症状の記録があると、診察がよりスムーズになります。
地域で継続的に支えるための考え方
認知症は長期にわたるケアが必要です。医療機関だけでなく、地域包括支援センター・介護保険サービス・家族会などと連携しながら、継続的に支える体制を整えることが大切です。
よくある質問(FAQ)
認知症は本当に改善することがありますか?
認知症の原因によって異なります。アルツハイマー型などの変性疾患は、現時点では根本的な治癒は難しいとされていますが、薬や生活の工夫で症状の進行を遅らせることは期待できます。一方、うつ病・薬剤の副作用・正常圧水頭症など、治療で改善が見込める原因もあるため、まず正確な診断が重要です。
軽度認知障害(MCI)は認知症とどう違いますか?
MCIは認知機能の一部に低下が見られるものの、日常生活は概ね自立している段階です。認知症と診断する基準には達していませんが、放置すると認知症に移行するリスクがあります。早期発見・早期介入が最も有効な段階であるため、気になる症状があれば早めにご相談ください。
物忘れが増えたら、すぐ受診した方がよいですか?
加齢による自然な物忘れとは異なり、出来事そのものを忘れる・日常生活に支障が出る・症状が進んでいると感じる場合は、早めの受診をお勧めします。「気になる」と感じた段階で相談することは決して早すぎません。
どの診療科を受診すればよいですか?
まずは内科・かかりつけ医へのご相談が入口として適しています。状況に応じて、神経内科・精神科・もの忘れ外来への紹介が行われます。「どこに行けばよいかわからない」場合も、内科で相談することで適切な受診先をご案内することができます。
家族ができるサポートはありますか?
規則正しい生活リズムの維持、服薬の確認、社会的なつながりの確保などが、ご家族にできる重要なサポートです。また、ご本人を責めず、できることを尊重する接し方が、行動・心理症状(BPSD)の軽減に関連するとされています。介護者自身の相談窓口(地域包括支援センターなど)も積極的に活用してください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・お持ちであれば健診結果や紹介状をご持参いただくとスムーズです。受診前にご心配な症状をメモしておいていただけると、診察がより充実したものになります。ご予約はWebまたはお電話で承っております。