マーガリン トランス脂肪酸とは?原因・症状・対処を内科医が解説
マーガリンに含まれるトランス脂肪酸は、摂りすぎることで心血管疾患のリスクに関与するとされ、世界保健機関(WHO)や各国の保健機関が注目してきた成分です。ただし、日本人の平均的な摂取量はWHOの目標値(総エネルギーの1%未満)を下回るとされており、過度に恐れるより正しく理解して付き合うことが大切です。本記事では、消化器・内科の専門医の監修のもと、トランス脂肪酸の基礎知識から日常的な対処法までわかりやすく解説します。
トランス脂肪酸の基本的な仕組み
脂肪酸には「シス型」と「トランス型」という分子構造の違いがあります。自然界の植物油に多く含まれる不飽和脂肪酸は本来シス型ですが、水素を添加(部分水素添加)して硬化する工程でトランス型の構造に変化したものがトランス脂肪酸です。また、牛や羊などの反芻動物の消化管でも天然にトランス脂肪酸が生成されるため、牛肉や乳製品にも微量含まれます。
どんな食品に含まれやすいのか
工業的に生産されるトランス脂肪酸は、マーガリン・ファットスプレッド・ショートニングに多く含まれてきました。これらを原材料とするビスケット、クッキー、パイ、ドーナツ、スナック菓子、インスタント食品なども摂取源となります。一方、植物油を高温で精製する工程でも微量のトランス脂肪酸が生成されることが知られています。
摂りすぎが心血管リスクに関係するとされる理由
複数の疫学研究や系統的レビューにより、トランス脂肪酸の過剰摂取はLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を増加させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を低下させる方向に働くとされています。これが動脈硬化を促進し、虚血性心疾患のリスクを高める可能性があると指摘されています。WHOは2023年までに食品からの工業由来トランス脂肪酸を排除する目標を掲げており、国際的に規制が進んでいます。
バターや他の油脂との違い
バターは飽和脂肪酸を多く含み、LDLコレステロールを上昇させる可能性がある点では共通した課題があります。ただし、バターに含まれるトランス脂肪酸は天然由来が中心で、工業由来とは異なる影響を持つとする研究もあります。オリーブ油や菜種油などの植物油は不飽和脂肪酸(とくに一価不飽和脂肪酸やオメガ3系)を多く含み、心血管リスクの観点から注目されています。
商品や製法による違い
農林水産省の調査によると、日本国内のマーガリン製品は製法の改良(部分水素添加油脂の削減・非使用)が進み、以前と比較してトランス脂肪酸含有量が大幅に低減した製品が増えています。一方で製品によって含有量にばらつきがあるため、購入時に成分表示を確認することが望ましいです。
「ゼロ表示」や「低減」表示を見るときの注意点
日本では食品表示基準上、トランス脂肪酸について義務表示はありませんが、任意表示として「トランス脂肪酸0g」などの記載が見られます。ただし「0g表示」は含有量が100g(または100mL)当たり0.3g未満の場合に表示可能であり、完全にゼロである保証ではない点に注意が必要です。複数の食品から少量ずつ摂取することで積み重なる場合もあります。
すぐに自覚しやすい症状は基本的に少ない
トランス脂肪酸を含む食品を食べたことで、食後すぐに特定の症状が現れるという科学的根拠は現時点では明確ではありません。アレルギー反応などは別の話であり、トランス脂肪酸そのものによる即時的な症状は確認されていません。
長期的な健康リスクとして考えられること
問題とされるのは長期にわたる過剰摂取による影響です。動脈硬化の進行、脂質異常症、心疾患リスクの上昇などが研究で指摘されています。これらの変化は自覚症状として現れにくく、健康診断や血液検査で初めて気づく場合も多くあります。
マーガリン以外に注意したい食品
ショートニングを使ったパイやクロワッサン、市販のクッキー・ビスケット類、揚げ物に使われる植物性油脂、ポップコーンなども摂取源となりやすい食品です。
外食・加工食品で気をつけたい場面
ファストフードの揚げ物、冷凍食品、市販の菓子パンなどは製法によってはトランス脂肪酸を含む場合があります。外食が多い生活では原材料の把握が難しくなるため、全体的な脂質量を意識することが現実的な対策となります。
日常でできる摂取量の考え方
厚生労働省は「トランス脂肪酸の摂取量をできるだけ少なくすること」を推奨しています。マーガリンを完全にやめる必要はありませんが、使用量を適切に管理し、加工食品の摂取頻度を見直すことが現実的なアプローチです。
使い方を見直す際のポイント
トーストに塗る量をスプーン1杯程度に抑える、頻度を週数回にとどめるなどの工夫が考えられます。製品を選ぶ際は「部分水素添加油脂不使用」と記載された製品を参考にするのも一つの方法です。
油脂を選ぶときの考え方
オリーブ油・菜種油・えごま油・亜麻仁油などは不飽和脂肪酸(とくにオメガ3・オメガ9系)を多く含み、心血管系の健康維持に関する研究データが豊富です。ただし、いずれも高カロリーであるため適量を守ることが前提です。
朝食や調理で置き換えやすい例
トーストにはアボカドをペースト状にして塗る方法、またはオリーブ油を少量かける方法が取り入れやすいです。炒め物にはオリーブ油や菜種油を活用すると、トランス脂肪酸の摂取を自然に抑えられます。脂質異常症やPPI(プロトンポンプ阻害薬)との関連を医師から指摘されている方は、食事全体の見直しを合わせて検討することをおすすめします。
高血圧・脂質異常症・糖尿病がある場合
これらの疾患をお持ちの方は、食事中の脂質の種類と量が健康管理に大きく影響します。自己判断で食品を制限したり追加したりするより、医師または管理栄養士の指導のもとで食事内容を調整することが望ましいです。
胸痛、息切れ、強い動悸などがある場合
これらの症状は心臓や血管の問題を示すサインである可能性があります。食習慣との直接的な因果関係は診察なしには判断できません。症状が気になる場合はお早めにご予約・お問い合わせからご相談ください。
食事全体のバランスで考えることの重要性
マーガリンだけを取り上げて「良い・悪い」と判断することには限界があります。日本人の食事摂取基準においても、特定の食品の是非より、食事全体のパターン(野菜・魚・全粒穀物を中心とする食生活)が重視されています。トランス脂肪酸を過剰摂取しても、全体的な食習慣が良好であれば健康リスクは相対的に低くなると考えられます。
また、食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎のある方は脂質の多い食事が症状を悪化させることがあります。詳しくは食道裂孔ヘルニアとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
個人の健康状態で注意点が変わる
心疾患の既往がある方、LDLコレステロールが高めの方、肥満傾向の方などは、脂質の種類を含めた食事管理がより重要になります。一方で、健康な方が適量のマーガリンを使用することを必要以上に制限する根拠は現時点では薄いとされています。個人の状況に応じたアドバイスは医師にご相談ください。
マーガリンは毎日食べても大丈夫ですか?
現時点で日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量はWHOの目標値(総エネルギーの1%未満)を下回るとされています。毎日使う場合でも1回の使用量を少量にとどめ、全体的な脂質バランスを意識することが大切です。脂質異常症や心疾患のある方は医師にご確認ください。
バターとマーガリンはどちらが健康にいいですか?
どちらが「優れている」とは一概に言えません。バターは飽和脂肪酸が多く、旧来のマーガリンはトランス脂肪酸が多いという違いがありましたが、近年は低トランス型マーガリンも普及しています。使用量を控えつつ、植物油脂を上手に取り入れることが現実的です。
トランス脂肪酸はゼロなら完全に安心ですか?
「0g表示」でも微量(0.3g未満/100g)含まれる可能性があります。また、飽和脂肪酸の摂りすぎや全体的なカロリーバランスも重要です。トランス脂肪酸のみに注目するより、食事全体を見直す視点が大切です。
子どもや高齢者は特に避けたほうがよいですか?
子どもは成長段階にあり、高齢者は心血管疾患のリスクが高まりやすいため、いずれも過剰摂取に注意することが望ましいとされています。ただし、特定の食品を完全に除外する必要はなく、食事全体のバランスを保つことが基本です。
どの食品表示を見ればよいですか?
栄養成分表示欄の「脂質」の記載とともに、原材料名に「部分水素添加油脂」「硬化油」などの記載がないかを確認することが参考になります。また「トランス脂肪酸○g」の任意表示がある場合は参照できます。腹式呼吸など生活習慣全般の見直しと合わせて、日々の食品選びを意識してみましょう。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。脂質異常症・高血圧・胸部症状など、食習慣に関連した健康上の不安についても、受診の目安や必要な検査についてお気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
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