マーガリン体に悪いとは?原因・症状・対処を内科医が解説
「マーガリンは体に悪い」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、その根拠を正しく理解している方は意外に少ないかもしれません。結論から申し上げると、現在の日本市場で流通しているマーガリンは、製造技術の改善によりトランス脂肪酸の含有量が大幅に低減されており、通常の食生活において直ちに健康被害をもたらすものではありません。ただし、脂質全体の摂りすぎや食習慣のバランスには引き続き注意が必要です。本記事では、内科・消化器専門医の監修のもと、マーガリンに関する疑問を医学的根拠に基づいて解説します。
マーガリンは体に悪い?まず結論から
「体に悪い」と言われる背景
マーガリンが「体に悪い」と言われるようになった主な理由は、製造過程で生じるトランス脂肪酸への懸念です。1990年代以降、欧米を中心にトランス脂肪酸と心血管疾患リスクとの関連が研究で示され、大きな社会問題となりました。その影響が日本にも広まり、「マーガリン=危険」というイメージが定着した経緯があります。
マーガリンとバターの違いを簡単に整理
バターは牛乳の乳脂肪から作られる動物性油脂です。一方、マーガリンは主に植物油脂を原料とし、常温で固体に近い状態にするために製造された加工油脂です。かつては「水素添加」という技術でトランス脂肪酸が多く生じていましたが、現在は製造法が大きく改善されています。
マーガリンの何が問題視されてきたのか
トランス脂肪酸とは何か
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種で、構造上「トランス型」の二重結合を持つものです。摂取量が多いと、LDL(悪玉)コレステロールを増加させ、HDL(善玉)コレステロールを低下させる可能性があるとされています。世界保健機関(WHO)は工業由来のトランス脂肪酸の摂取を可能な限り減らすことを推奨しており、複数の国・地域で規制が設けられています。
以前のマーガリンに多かった理由
植物油に水素を添加して固める「部分水素添加」という旧来の製造工程では、副産物としてトランス脂肪酸が生じやすい状態でした。このため、かつてのマーガリンには比較的多くのトランス脂肪酸が含まれていたことが問題視されました。
現在のマーガリンでは何が変わったのか
現在の国内メーカーの多くは、エステル交換技術やパーム油などの活用により、部分水素添加油の使用を大幅に削減しています。農林水産省が公表しているデータでも、日本人のトランス脂肪酸平均摂取量はWHOの目標値(総エネルギー比1%未満)を下回っていることが示されています(農林水産省「食品に含まれるトランス脂肪酸」)。ただし、特定の加工食品には依然として含まれる場合があるため、原材料表示を確認する習慣は有用です。
マーガリンの摂取で気をつけたいこと
食べ過ぎたときに増えやすい栄養バランスの乱れ
マーガリン自体はカロリーが高く(大さじ1杯あたり約90〜100kcal程度)、使いすぎると脂質・カロリー過多になりやすい食品です。菓子パンや加工食品との組み合わせでは、知らず知らずのうちに脂質摂取量が増えることがあります。
脂質のとりすぎと生活習慣病リスク
脂質の過剰摂取は、脂質異常症・肥満・動脈硬化などの生活習慣病リスクと関連します。マーガリンに限らず、食事全体の脂質バランスを整えることが重要です。日本動脈硬化学会のガイドラインでも、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の過剰摂取を控えることが推奨されています。
「マーガリンだけ」が問題なのではない理由
健康リスクは一つの食品だけで決まるものではありません。食習慣全体・運動・睡眠・ストレスなど多くの要因が絡み合っています。マーガリンを極端に悪者扱いするよりも、食事全体のバランスを見直すことが先決です。
マーガリンを避けたほうがよい人はいる?
脂質異常症や心血管リスクが気になる人
LDLコレステロール値が高い方や、動脈硬化・心疾患のリスクが指摘されている方は、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の合計摂取量を管理することが望ましいとされています。主治医や管理栄養士に相談のうえ、食事内容を調整することをおすすめします。
食事全体で脂質管理が必要な人
腎疾患・糖尿病・肥満など、食事療法が必要な基礎疾患を持つ方は、マーガリン単体だけでなく食事全体の脂質量・カロリーを医療者と一緒に管理することが大切です。
アレルギーや原材料表示を確認したい人
マーガリンには乳成分・大豆・植物油の種類など、アレルギーの原因となり得る原材料が含まれる場合があります。食物アレルギーが疑われる方は、必ず原材料表示を確認し、不明な点は医師に相談してください。
マーガリンを選ぶときのポイント
原材料表示で確認したいこと
「部分水素添加油脂」の記載がないものを選ぶとよいでしょう。また、原材料の配合順(量の多い順に記載)も参考にしてください。
「トランス脂肪酸ゼロ」表示の見方
「トランス脂肪酸ゼロ」とは、含有量がゼロであることを意味するのではなく、食品表示基準に基づき一定量未満(0.3g/100g未満)であることを示す場合があります。表示だけでなく、原材料全体のバランスも確認するようにしましょう。
スプレッドやファットスプレッドとの違い
「ファットスプレッド」はマーガリンより油脂含有率が低いものです。カロリーや使用感が異なるため、用途に応じて選ぶとよいでしょう。
バター・マーガリン・オリーブオイルはどう使い分ける?
風味や用途による選び方
バターは風味が豊かで、焼き菓子や料理の仕上げに向いています。マーガリンは扱いやすく日常的なパン塗りや炒め物に使いやすい食品です。オリーブオイルはオレイン酸を多く含み、ドレッシングやソテーに適しています。
毎日の食事で意識したい脂質のバランス
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、脂質の目標量は総エネルギーの20〜30%とされています。動物性・植物性の脂質をバランスよく取り入れることが重要です。
パンに塗るならどれがよいか
特定の油脂が「絶対によい」と断言できるわけではありませんが、オリーブオイルやアボカドを活用する方法も選択肢の一つです。量を控えめにすることが、どの油脂においても共通して大切なポイントです。
マーガリンの食べ方で工夫できること
量を決めて使う
1回の使用量を小さじ1〜大さじ1程度に決めておくことで、カロリー・脂質の過剰摂取を防ぎやすくなります。
主食・主菜・副菜のバランスを整える
パンにマーガリンを使う場合も、主菜・副菜・汁物を揃えた食事構成を意識することで、食事全体の栄養バランスが整いやすくなります。
菓子パンや加工食品との重なりに注意する
菓子パン・クッキー・スナック菓子などにも油脂が多く含まれています。マーガリンを使うパン食の日は、加工食品の摂取量を意識して調整することをおすすめします。
こんな症状・状況があれば受診を検討
食事内容の見直しだけでよいケース
健診で異常がなく、体調に変わりがない場合は、まず食習慣の見直しから始めることが適切です。かかりつけ医や管理栄養士への相談も有効です。
生活習慣病の指摘がある場合
健診でLDLコレステロール・中性脂肪の異常、高血圧、血糖値の異常などを指摘された方は、食事指導を含めた医療的な管理が有益です。自己判断での対処には限界があるため、医師への相談をおすすめします。
なお、脂質異常症や胃・食道の不調(例:胸やけ・逆流感)が重なっている場合には、食道裂孔ヘルニアとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】も参考にしてください。逆流性食道炎との関連で油脂摂取が症状に影響することがあります。
また、胃酸を抑える薬(PPI)について詳しく知りたい方は、ppiとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご覧ください。
胸痛・息切れ・強い体調不良がある場合
胸痛・息切れ・動悸・強いだるさなどの症状がある場合は、心疾患や他の疾患の可能性も否定できません。速やかに医療機関を受診することをおすすめします。症状が強い場合は救急対応をご検討ください。
医師が伝えたい「マーガリン体に悪い」の正しい捉え方
一つの食品だけで健康は決まらない
医学的に見て、「マーガリンを食べると必ず病気になる」「バターなら安全」といった単純な二項対立は成立しません。健康リスクは食事全体・生活習慣・遺伝的背景など複合的な要因で決まります。
食習慣全体を見直すことが重要
大切なのは、マーガリンという一品目にこだわるのではなく、食事全体の脂質量・カロリー・栄養バランスを整えることです。食物繊維・野菜・魚・大豆製品なども積極的に取り入れた食習慣が、生活習慣病予防の基本です。
不安があるときは自己判断せず医療機関へ
インターネット上には科学的根拠が不明確な情報も存在します。食事・脂質・体重・血液検査値などに不安がある場合は、自己判断に頼りすぎず、医療機関での相談をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
マーガリンは毎日食べても大丈夫ですか?
現在の国内製品は多くがトランス脂肪酸を低減しており、少量を日常的に使用すること自体が直ちに問題となる根拠は現時点では乏しいとされています。ただし、量や食事全体のバランスには注意が必要です。
トランス脂肪酸ゼロなら安全と考えてよいですか?
「ゼロ表示」は一定基準以下であることを示す場合があります。また、トランス脂肪酸が少なくても飽和脂肪酸やカロリー自体は含まれているため、食べすぎには注意が必要です。
バターとマーガリンはどちらが体に悪いですか?
一概にどちらが悪いとは言えません。バターは飽和脂肪酸が多く、現代のマーガリンはトランス脂肪酸が少ないものが増えています。いずれも適量を守り、食事全体のバランスを整えることが重要です。
子どもが食べても問題ありませんか?
現在の国内製品であれば、少量を食事の一部として用いることは一般的に行われています。ただし、成長期の子どもは食事全体の栄養バランスが特に重要です。不安がある場合は小児科・内科医にご相談ください。
ダイエット中はマーガリンを避けるべきですか?
ダイエット中は総カロリー管理が重要です。マーガリンに限らず、油脂全般の使用量を適切に管理することが有益です。全面的に排除するより、量と頻度を意識することをおすすめします。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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