肝臓がんの原因とは?リスクを知って予防を考える
肝臓がんの原因として最も重要なのは、B型・C型肝炎ウイルスの感染と、それに続く慢性肝炎・肝硬変です。しかし近年は、飲酒習慣がなくても肥満や糖尿病に伴う脂肪肝(NASH)がリスクになることも明らかになっています。自分のリスクを把握し、適切な検査と経過観察を続けることが、肝臓がんの予防・早期発見に向けた第一歩です。
本記事では、肝臓がんの主な原因・リスク要因・予防のポイントを、公的情報や診療ガイドラインに基づいてわかりやすく解説します。診断や治療方針は必ず主治医・専門医にご相談ください。
肝臓がんの原因とは?まず知っておきたい基本
肝臓がんには「肝細胞がん」と「胆管細胞がん」がある
肝臓に発生するがんは大きく2種類に分けられます。肝臓を構成する細胞(肝細胞)から発生する肝細胞がん(全体の約90〜95%)と、肝臓内の胆汁の通り道(胆管)から発生する肝内胆管がん(胆管細胞がん)です。日本で「肝臓がん」と呼ぶ場合、多くは肝細胞がんを指します。本記事でも主に肝細胞がんを中心に解説します(出典:国立がん研究センター がん情報サービス)。
原因は1つではなく、複数のリスクが重なって起こることがある
肝臓がんは単一の原因で発症するのではなく、ウイルス感染・生活習慣・基礎疾患などの複数のリスク要因が重なって引き起こされることがほとんどです。そのためリスクを早期に把握し、それぞれに対処することが重要です。
肝臓がんの主な原因
肝臓がんの原因として、以下が代表的なものです。
| リスク要因 | 概要 |
|---|---|
| B型肝炎ウイルス(HBV) | 持続感染により慢性肝炎・肝硬変を経てがん化 |
| C型肝炎ウイルス(HCV) | 日本の肝細胞がんの主要原因の一つ |
| 肝硬変 | 原因を問わず、肝がん発生の最大のリスク背景 |
| 長期大量飲酒 | 肝硬変を招き、肝がんリスクを高める |
| NASH・脂肪肝 | 近年リスクとして注目、肝硬変への進展も |
| 喫煙・肥満・糖尿病 | 複合的にリスクを高める要因 |
B型肝炎ウイルス感染
B型肝炎ウイルス(HBV)に持続感染(キャリア)すると、慢性肝炎から肝硬変へ進行し、肝細胞がんのリスクが高まります。母子感染や血液・体液を介した感染が主な経路です。現在は新生児へのワクチン接種が定期接種化されていますが、成人でも未感染であればワクチンで予防できます。
C型肝炎ウイルス感染
C型肝炎ウイルス(HCV)は日本における肝細胞がんの大きな原因の一つです。かつて輸血や注射針の共用で感染が広がりましたが、現在は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)によりウイルスを排除できるケースが増えています。ただし、ウイルスが排除されてもがんリスクがゼロになるわけではないため、その後も定期的な経過観察が必要です。
肝硬変
肝硬変(かんこうへん)とは、肝臓が長期間にわたって炎症を繰り返した結果、線維化(傷痕)が広がり硬くなった状態です。原因(ウイルス・アルコール・NASHなど)を問わず、肝硬変があると肝細胞がんのリスクが大幅に高まります。肝硬変と診断された方は定期的な画像検査が不可欠です。
アルコールの長期大量摂取
長期間にわたる大量飲酒は、アルコール性肝炎・肝硬変を引き起こし、肝臓がんのリスクを高めます。「適度な飲酒」にとどめることが予防につながりますが、「安全な飲酒量」には個人差があり、かかりつけ医にご相談ください。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)・脂肪肝
お酒をほとんど飲まなくても、肥満・過食・運動不足などにより脂肪肝が生じることがあります。そのなかでも炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)は、肝硬変や肝細胞がんへ進展するリスクがあります。近年の食生活の変化に伴い、NASHに起因する肝臓がんが増加傾向にあると報告されています。
その他の要因(喫煙、肥満、糖尿病など)
喫煙・肥満・2型糖尿病は、それぞれ単独でも肝臓がんのリスクを高める要因とされています。これらは生活習慣の改善によってコントロールできる部分も多く、予防の観点から重要です。
肝臓がんのリスクが高くなりやすい人
ウイルス性肝炎の既往がある人
B型・C型肝炎ウイルス感染の既往がある方は、治療によりウイルスが排除された後も、定期的な肝臓の状態確認が推奨されます。
肝硬変と診断された人
原因にかかわらず肝硬変があれば、肝臓がんのハイリスク群です。6か月ごとを目安とした超音波検査・AFP(腫瘍マーカー)の測定が一般的に行われています(日本肝臓学会「肝癌診療ガイドライン」参照)。
健康診断で肝機能異常を指摘された人
AST・ALT・γ-GTP(肝機能の指標となる血液検査の値)の異常が継続する場合、慢性肝炎や脂肪肝が背景にある可能性があります。一度専門医を受診し、原因を調べることが大切です。
飲酒量が多い人や肥満・糖尿病がある人
長期の多量飲酒、BMI25以上の肥満、糖尿病の既往がある方は、肝臓への負担が蓄積しやすく注意が必要です。定期的な血液検査と腹部超音波検査が推奨されます。
肝臓がんの予防で大切なこと
肝炎ウイルス検査を受ける
自分がB型・C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを知ることが、最初の重要なステップです。各自治体では無料または低コストで肝炎ウイルス検診を実施しています。まだ受けたことがない方はぜひ一度受診をご検討ください。
肝炎がある場合は適切に治療・経過観察を受ける
感染が判明した場合、放置せず専門医のもとで治療・経過観察を受けることが、肝臓がんへの進展を防ぐうえで最も重要です。C型肝炎は現在の抗ウイルス治療でウイルスを排除できるケースが増えています。
飲酒を控える
肝臓がんのリスクを下げるためには、過度な飲酒を控えることが有効です。すでに肝炎・肝硬変がある場合は、禁酒が強く推奨されます。
体重管理と食生活の見直し
バランスのよい食事・適度な運動により適正体重を維持することは、脂肪肝・NASH予防につながります。急激なダイエットも肝臓に負担をかけることがあるため、無理のない範囲で継続することが大切です。
糖尿病や脂肪肝の管理を続ける
糖尿病や脂肪肝がある場合は、内科・専門医のもとで継続的に管理することが、肝臓がんリスクの低減に寄与すると考えられています。自己判断で通院を中断しないようにしましょう。
公的データから見る肝臓がんの現状
肝臓がんは日本で重要ながんの一つ
国立がん研究センター がん統計(2023年公表データ)によると、肝臓がん(肝細胞がんを含む)は、日本における主要ながんの一つであり、特に男性での罹患率・死亡率が高い傾向にあります。B型・C型肝炎ウイルス対策の進展により全体の死亡者数は減少傾向にありますが、NASH関連の肝臓がんが新たな課題として浮上しています。
リスク要因と検診の重要性を公的情報で確認する
国立がん研究センター がん情報サービスや厚生労働省のウェブサイトでは、肝炎ウイルス検診の実施情報や予防に関する情報を公開しています。ご自身の自治体の検診情報もあわせてご確認ください。
肝臓がんを早く見つけるために必要な検診・経過観察
肝炎や肝硬変がある人は定期的な画像検査が重要
肝炎ウイルス感染や肝硬変がある方には、腹部超音波(エコー)検査・CT・MRIなどの画像検査と、AFP・PIVKA-IIなどの腫瘍マーカー測定を組み合わせた定期的な経過観察が推奨されています。早期に発見できれば、治療の選択肢が広がる可能性があります(統計上の傾向であり、個々の予後を保証するものではありません)。
健診異常を放置しないことが早期発見につながる
健康診断の肝機能異常(AST・ALT・γ-GTPの高値など)は「様子をみれば治る」とは限りません。慢性肝炎や脂肪肝が背景にある場合があります。繰り返し指摘された場合は、早めに内科・消化器内科を受診することをお勧めします。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)では、消化器内視鏡センターを備え、鎮静下での胃・大腸内視鏡検査を日常的に行っています。肝臓に関しては、血液検査(肝機能・腫瘍マーカー)の精査に加え、腹部の状態確認を含めた評価を実施しています。健診で肝機能異常を繰り返し指摘されている方や、肝炎・脂肪肝を指摘されたことがある方が受診されることも多く、原因の精査から経過観察の必要性の判断まで対応しています。
早期がんが疑われる所見が確認された場合は、速やかに基幹病院へご紹介し、地域連携クリティカルパスを活用した術後フォローも担っています。また在宅療養支援診療所として、在宅緩和ケア・看取りにも対応しており、患者さんとそのご家族が抱える不安に、地域のかかりつけ医として継続して寄り添う体制を整えています。どの診療科に相談すべきか迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。
受診・相談の目安
以下のような状況に当てはまる方は、早めに内科・消化器内科への受診をご検討ください。
すでに肝炎や肝硬変を指摘されている
定期的な経過観察が必要な状態です。通院が途切れている場合は再開することを強くお勧めします。
健診でAST・ALT・γ-GTPなどの異常を繰り返し指摘される
一過性でなく繰り返す場合は、慢性的な肝疾患の可能性があります。原因の精査が必要です。
黄疸、腹部膨満、体重減少などが続く
黄疸(皮膚・白目が黄色くなる)、お腹の張り、原因不明の体重減少などが続く場合は、速やかに受診してください。
どの診療科に相談すべきか迷うとき
「肝臓のことが心配だが、どこに行けばよいかわからない」という場合も、内科・消化器内科への相談が最初の入口です。ご予約・お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。
よくある質問(FAQ)
まとめ:肝臓がんの原因を知ることが予防の第一歩
肝臓がんの主な原因は、B型・C型肝炎ウイルス感染、肝硬変、長期大量飲酒、NASH・脂肪肝など多岐にわたります。複数のリスクが重なるほど発症しやすくなるため、自分のリスクを知ることが予防の出発点です。
最も大切なのは「放置しないこと」。肝炎ウイルス検査を受け、異常があれば適切に治療・経過観察を続けることが、将来の肝臓がんリスクを下げるうえで最も重要なステップです。肝臓がん・胆道がん全体の詳しい情報は肝臓がん・胆道がんの総合ガイドもあわせてご参照ください。また、胆道系の炎症や疾患については胆管炎の原因と食事の関係、胆道がんとの違いも解説もご参考にください。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお) 医師(医学博士)
AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
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TEL: 045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。