肝臓の役割とは?原因・症状・対処を内科医が解説
肝臓は体内最大の臓器であり、代謝・解毒・胆汁産生など500種類以上の働きを担います。「沈黙の臓器」とも称され、働きが低下しても初期には自覚症状が出にくいため、定期的な検査による早期発見が重要です。本記事では、肝臓の役割・負担がかかる原因・症状・対処法を内科医監修のもと解説します。
肝臓の役割とは?まず知っておきたい基本
肝臓は体の”化学工場”といわれる理由
肝臓は、食事から吸収した栄養素をエネルギーや体の構成成分に変換したり、アルコールや薬の成分など体に有害な物質を分解・無毒化したりするなど、多岐にわたる化学的処理を担っています。その機能は500種類以上ともいわれ、「体の化学工場」と表現されるのはこのためです。
肝臓がある場所と大きさの目安
肝臓は腹部の右上、横隔膜のすぐ下に位置します。成人では重さ約1,000〜1,500gほどあり、体内では最も大きな臓器のひとつです。肋骨に守られているため、通常は体の外から直接触れることはできません。
肝臓の主な役割
栄養をたくわえ、必要に応じて使いやすくする
小腸から吸収されたブドウ糖は、肝臓でグリコーゲンとして蓄えられ、血糖値が下がったときにブドウ糖として再び血液中に放出されます。このバッファー機能により、エネルギー供給が安定します。
糖・脂質・たんぱく質の代謝を調整する
糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素は、いずれも肝臓で代謝・変換されます。たとえば脂肪酸からケトン体が合成されたり、アミノ酸がエネルギーや糖に変換されたりします。この代謝機能が低下すると、血糖や血中脂質のバランスにも影響が及ぶことがあります。
体に必要な物質をつくる
胆汁やアルブミン、血液凝固に関わる物質
肝臓は胆汁(脂肪の消化・吸収を助ける消化液)を産生し、十二指腸へ分泌します。また、血液中のたんぱく質の一種であるアルブミンを合成するほか、出血を止めるために必要な血液凝固因子の多くも肝臓でつくられます。肝機能が低下すると、浮腫(むくみ)や出血傾向として現れることがあります。
体に入った有害物質を分解・解毒する
アルコール・薬剤・食品添加物・体内で生じたアンモニアなど、有害な物質を無毒化する解毒作用は肝臓の重要な役割です。解毒が追いつかない場合、血中に有害物質が蓄積し、さまざまな症状が生じることがあります。
免疫や老廃物の処理に関わる
肝臓にはクッパー細胞と呼ばれる免疫細胞が存在し、血液中の細菌や異物を取り除く役割を担います。また、赤血球が壊れて生じるビリルビン(老廃物)の処理も肝臓が行い、胆汁として排出します。
肝臓の働きが落ちるとどうなる?
初期は自覚症状が出にくい
肝臓は再生能力が高く、機能の70〜80%が障害されても症状が現れないことがあります。このため「沈黙の臓器」とも呼ばれ、定期的な血液検査による肝機能チェックが重要です。
見られやすい症状の例
倦怠感
エネルギー代謝が低下することで、疲労感や全身のだるさが続くことがあります。
食欲低下
胆汁分泌の低下や代謝異常により、食欲が落ちたり、食後の不快感が生じたりする場合があります。
黄疸
ビリルビンの処理が滞ると、皮膚や白目が黄色みを帯びる「黄疸」が現れることがあります。尿が濃い褐色になることも特徴のひとつです。
むくみ
アルブミン合成が低下すると血漿浸透圧が下がり、水分が血管外に漏れ出してむくみ(浮腫)や腹水が生じることがあります。
かゆみ
胆汁の流れが悪くなると胆汁酸が皮膚に沈着し、全身のかゆみを引き起こすことがあります。
肝臓に負担がかかる主な原因
アルコールの飲みすぎ
過剰な飲酒は肝細胞への直接的な障害を引き起こし、アルコール性脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変へと進行する可能性があります。厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日当たり純アルコール約20g(ビール中瓶1本程度)を目安に示しています。
脂肪肝と生活習慣の乱れ
過食・運動不足・肥満などにより、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態が脂肪肝です。脂肪肝とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】 も参考にしてください。非アルコール性脂肪肝(NAFLD/MASLD)は近年増加傾向にあり、放置すると肝炎・肝硬変に進行するリスクがあります。
ウイルス性肝炎
B型・C型肝炎ウイルスは慢性肝炎・肝硬変・肝がんの主要な原因です。感染していても無症状のことが多いため、検査による確認が大切です。
薬やサプリメントの影響
処方薬のほか、市販の解熱鎮痛薬・健康食品・サプリメントでも薬物性肝障害が生じることがあります。複数の薬剤を服用している方は、医師・薬剤師への相談をお勧めします。
まれにみられるその他の原因
自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・ウィルソン病(銅代謝異常)など、比較的まれな疾患が原因となる場合もあります。
肝機能を調べる検査とは
血液検査でわかる項目
AST・ALT・γ-GTP など
肝機能の代表的な血液検査項目を以下に示します。
- AST(GOT)・ALT(GPT): 肝細胞が障害されると血中に漏れ出す酵素。ALTは肝臓への特異性が高い指標です(ALTとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】)。
- γ-GTP: 飲酒や薬剤性肝障害の指標として用いられます(γ-GTPとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】)。
- 総ビリルビン: 胆汁の流れや肝細胞の障害程度を反映します。
必要に応じて行う追加検査
腹部エコー、CT、MRI など
血液検査で異常が確認された場合、脂肪肝・腫瘍・胆道系の異常などを調べるために画像検査が行われます。腹部超音波(エコー)は侵襲が少なく、日常的に用いられる検査です。
肝臓を守るためにできる対処法
飲酒量を見直す
過度な飲酒は控え、週に数日の休肝日を設けることが推奨されています。
食事と体重管理を意識する
高カロリー・高脂肪食を控え、野菜・魚・大豆食品をバランスよく摂ることを心がけましょう。肥満は脂肪肝のリスクを高めるため、適正体重の維持も重要です。
適度な運動を続ける
ウォーキング・水泳など有酸素運動を週150分程度行うことが、肝臓の脂肪蓄積を減らすうえで効果的とされています(厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を参考)。
睡眠・ストレス・服薬を見直す
睡眠不足や慢性ストレスは代謝に悪影響を及ぼします。また、医師の処方外の薬剤・サプリメントは自己判断で多用しないようにしましょう。
受診の目安
こんな症状があれば内科受診を検討する
慢性的な倦怠感・食欲低下・腹部の不快感が続く場合は、内科を受診し肝機能を確認することをお勧めします。
健康診断で肝機能異常を指摘されたら
「要再検査」「要精密検査」と指摘された場合は、自覚症状がなくても医療機関での精査が望ましいです。
強い黄疸、腹部膨満、意識の変化がある場合
これらの症状は肝機能が高度に障害されているサインである可能性があり、速やかな受診が必要です。
医師に相談するときに伝えること
飲酒歴、内服薬、サプリメント
いつ頃から・どの程度飲酒しているか、現在服用中の薬剤・健康食品・サプリメントの種類と量を、できるかぎり具体的に伝えましょう。
これまでの健診結果や症状の経過
過去の血液検査結果や画像検査の記録があれば持参すると、医師が経過を把握しやすくなります。
肝臓の病気を予防するために大切なこと
定期的な健診を受ける
年1回以上の健康診断で肝機能(AST・ALT・γ-GTPなど)を確認する習慣が、早期発見につながります。
B型・C型肝炎の検査や対策を確認する
B型・C型肝炎ウイルスの感染は血液検査で確認できます。感染が判明した場合は、専門医のもとで適切な管理・治療を受けることが重要です。B型肝炎ウイルスについては予防ワクチンも利用可能です。
よくある質問(FAQ)
肝臓は悪くなっても症状が出ないことがありますか?
はい、肝臓は予備能力が高く、機能の多くが低下するまで自覚症状が現れないことが珍しくありません。「沈黙の臓器」といわれるゆえんです。症状がなくても定期的な検査を受けることが大切です。
肝臓の数値が高いと必ず病気ですか?
必ずしもそうではありません。一時的な過労・飲酒・激しい運動でも一過性に上昇することがあります。ただし、継続して異常値が続く場合は精査が必要です。自己判断せず、医師への相談をお勧めします。
肝臓に良い食べ物はありますか?
特定の食品で肝臓の病気を治療・予防できると断定することはできませんが、バランスの良い食事(野菜・魚・大豆食品・食物繊維の摂取)や過食・飲酒の回避が肝臓への負担を減らすうえで大切です。
サプリメントで肝臓は改善しますか?
一部のサプリメントは薬物性肝障害の原因になることがあるため、自己判断での多用には注意が必要です。肝機能の改善については医師に相談のうえ、適切な治療・生活改善を行うことが基本です。
健康診断で肝機能異常を指摘されたら、まず何をすべきですか?
再検査・精密検査の指示に従い、内科を受診してください。受診の際は飲酒歴・内服薬・健診結果の持参をお勧めします。自覚症状がなくても、早期に原因を確認することが重要です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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