急性胃腸炎の症状・原因・治療|医学博士が解説する対処法と予防 - AIプラスクリニックたまプラーザ
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急性胃腸炎の症状・原因・治療|医学博士が解説する対処法と予防



突然の腹痛、下痢、嘔吐―これらの症状に襲われた経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。医療法人社団康悦会で30年以上にわたり消化器疾患の診療を行ってきた経験から、急性胃腸炎は年齢を問わず最も頻繁に遭遇する疾患の一つです。

急性胃腸炎は、胃や腸の粘膜に急性の炎症が生じる疾患で、主にウイルスや細菌の感染によって引き起こされます。多くの場合は数日で自然に回復しますが、適切な対処を行わないと脱水症状や重症化のリスクがあります。

福島県立医科大学大学院で医学博士を取得し、国立国際医療研究センター病院、横浜医療センター救命救急センター副部長として数多くの急性胃腸炎患者を診療してきた経験と、最新の医学研究に基づいて、急性胃腸炎の症状、原因、適切な対処法、予防方法まで詳しく解説いたします。

急性胃腸炎とは?基本を理解する

急性胃腸炎は、医学的には「急性胃炎」と「急性腸炎」の総称で、胃や腸の粘膜に急性の炎症が生じた状態を指します。

急性胃腸炎の定義

急性胃腸炎(Acute Gastroenteritis)

  • 胃・小腸・大腸の粘膜に急性炎症が生じる疾患
  • 下痢、嘔吐、腹痛などの症状が急激に発症
  • 通常、数時間~数日以内に発症
  • 多くは自然経過で1週間以内に改善

発症のメカニズム

急性胃腸炎は、主に以下のメカニズムで発症します:

1. 病原体の侵入

  • ウイルス、細菌、寄生虫などが口から体内に侵入
  • 汚染された食品、水、人との接触が原因

2. 粘膜の炎症

  • 病原体が胃や腸の粘膜に付着・侵入
  • 炎症反応が起こり、粘膜がダメージを受ける

3. 症状の出現

  • 炎症により消化液の分泌異常
  • 腸の水分吸収能力の低下→下痢
  • 胃の収縮異常→嘔吐
  • 神経刺激→腹痛

疫学データ

最新の疫学研究によると:

  • 日本での年間発症数:約3,000万~5,000万件(推定)
  • 冬季の増加:ノロウイルス流行により11月~3月に多発
  • 夏季の増加:細菌性胃腸炎が6月~9月に多発
  • 子どもの発症率:年間2~3回罹患することも珍しくない

急性胃腸炎の主な症状

横浜医療センター救命救急センターでの経験から、急性胃腸炎の典型的な症状をご紹介します。

【主要症状】

1. 下痢

  • 最も多い症状(90%以上)
  • 水様便~泥状便
  • 1日3回以上(重症では10回以上)
  • 血便が混じることもある(細菌性の場合)

2. 嘔吐・吐き気

  • 特にウイルス性で顕著(70~80%)
  • 突然の激しい嘔吐
  • 食事や水分を受け付けない
  • 嘔吐は通常1~2日で軽快

3. 腹痛

  • 下腹部や臍周囲の痛み(80%)
  • 差し込むような痛み(疝痛)
  • 排便後に一時的に軽減
  • 持続的な激痛は要注意

4. 発熱

  • 37~39℃の発熱(50~70%)
  • ウイルス性:38℃前後
  • 細菌性:39℃以上のことも
  • 通常2~3日で解熱

5. 全身症状

  • 倦怠感、脱力感
  • 頭痛
  • 筋肉痛
  • 食欲不振

【重症化のサイン】

以下の症状がある場合は、直ちに医療機関を受診してください:

脱水症状

  • 尿量の著しい減少(8時間以上排尿なし)
  • 口の乾燥、唇の乾き
  • 皮膚の弾力性低下
  • めまい、ふらつき
  • 意識レベルの低下
  • 幼児:涙が出ない、大泉門の陥没

危険な症状

  • 激しい持続的な腹痛
  • 血便(黒色便、鮮血便)
  • 高熱(39℃以上)が3日以上続く
  • 激しい嘔吐で水も飲めない
  • けいれん
  • 意識障害

急性胃腸炎の原因

急性胃腸炎の原因は多岐にわたりますが、大きく感染性と非感染性に分類されます。

【感染性胃腸炎】(約90%)

1. ウイルス性胃腸炎(最多、約70~80%)

ノロウイルス
  • 特徴:冬季に多発(11月~3月)
  • 潜伏期間:24~48時間
  • 主症状:激しい嘔吐、下痢、腹痛
  • 感染経路:経口感染、接触感染
  • 治療:対症療法のみ(特効薬なし)
  • 期間:1~3日で改善
ロタウイルス
  • 特徴:乳幼児に多い
  • 潜伏期間:1~3日
  • 主症状:白色水様便、嘔吐、発熱
  • 感染経路:経口感染
  • 治療:対症療法
  • 予防:ワクチン接種が効果的
アデノウイルス
  • 特徴:年間を通して発症
  • 潜伏期間:3~10日
  • 主症状:下痢、発熱、呼吸器症状
  • 期間:5~7日

医学的解説:ウイルス性胃腸炎は、ウイルスが腸管上皮細胞に感染し、細胞を破壊することで発症します。特にノロウイルスは感染力が非常に強く、10~100個のウイルス粒子で感染が成立します。また、アルコール消毒が効きにくい特徴があります。

2. 細菌性胃腸炎(約10~20%)

カンピロバクター
  • 特徴:日本で最も多い細菌性食中毒
  • 感染源:鶏肉(特に生・加熱不十分)
  • 潜伏期間:2~5日
  • 主症状:下痢(血便)、腹痛、発熱
  • 合併症:ギラン・バレー症候群(稀)
サルモネラ
  • 感染源:卵、鶏肉、ペット(特に爬虫類)
  • 潜伏期間:6~72時間
  • 主症状:激しい下痢、高熱、腹痛
  • リスク:乳幼児、高齢者で重症化
病原性大腸菌
  • O157など:ベロ毒素産生大腸菌
  • 感染源:生肉、加熱不十分な肉、生野菜
  • 潜伏期間:3~5日
  • 主症状:激しい腹痛、血便
  • 合併症:溶血性尿毒症症候群(HUS)
腸炎ビブリオ
  • 特徴:夏季の海産物による食中毒
  • 感染源:生の魚介類
  • 潜伏期間:8~24時間
  • 主症状:激しい腹痛、水様下痢
黄色ブドウ球菌
  • 特徴:毒素型食中毒
  • 感染源:おにぎり、弁当(手指からの汚染)
  • 潜伏期間:1~6時間(非常に短い)
  • 主症状:激しい嘔吐、腹痛
  • 特徴:発熱は少ない

医学的解説:細菌性胃腸炎は、細菌自体の感染(感染型)と、細菌が産生する毒素(毒素型)によって発症します。感染型は潜伏期間が比較的長く、毒素型は短時間で発症する特徴があります。

【非感染性胃腸炎】(約10%)

1. 薬剤性

  • 抗生物質
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • 抗がん剤

2. アレルギー性

  • 食物アレルギー
  • 好酸球性胃腸炎

3. 虚血性

  • 腸管虚血(高齢者に多い)

4. その他

  • ストレス性
  • 放射線性

急性胃腸炎の治療と対処法

30年以上の臨床経験から、効果的な治療と自宅での対処法をご紹介します。

【基本的な治療方針】

急性胃腸炎の治療の基本は「対症療法」と「脱水の予防・治療」です。

1. 水分・電解質の補給(最重要)

経口補水療法(ORT:Oral Rehydration Therapy)

脱水予防の最も重要な治療法です。

推奨される飲料:
経口補水液(ORS)

  • OS-1、アクアライトORS、ソリタ-T など
  • 最も推奨される
  • Na、K、糖質が適切なバランス
  • 吸収が最も良い
スポーツドリンク

  • ポカリスエット、アクエリアス など
  • 経口補水液ほどではないが可
  • 糖分が多いため、水で2倍に薄める
飲み方のコツ:
  • 一度に大量に飲まない
  • 少量ずつ頻回に(スプーン1~2杯を5~10分毎)
  • 冷たすぎないものを(常温~ぬるめ)
  • 嘔吐後30分~1時間は休む
  • 1日に体重1kgあたり50~100mLが目安

医学的解説:経口補水液は、WHOと国際小児科学会が推奨する組成で、Na濃度が通常の飲料より高く設定されています。腸管での水分吸収には、Na と糖質の同時輸送システム(SGLT1)が重要で、経口補水液はこの比率が最適化されています。

避けるべき飲み物:
  • コーヒー、紅茶(カフェイン:利尿作用)
  • 炭酸飲料(腹部膨満を悪化)
  • 果汁100%ジュース(浸透圧が高く下痢を悪化)
  • 牛乳(乳糖不耐症を誘発)

2. 食事療法

急性期(発症~2日目)
  • 無理に食べない
  • 食欲がなければ絶食でも可
  • 水分補給を最優先
回復期(3日目以降)

症状が軽快したら、少しずつ食事を開始します。

推奨される食品(消化に良いもの):
主食

  • おかゆ、うどん(柔らかく煮たもの)
  • 食パン(トーストせず)
  • バナナ
タンパク質

  • 白身魚(煮魚、蒸し魚)
  • 豆腐
  • 卵(半熟、茶碗蒸し)
  • 鶏ささみ
その他

  • りんご(すりおろし)
  • ヨーグルト(プレーン)
  • ゼリー
BRAT食事療法(国際的に推奨)
  • Bananas(バナナ)
  • Rice(ごはん)
  • Applesauce(りんごソース)
  • Toast(トースト)
避けるべき食品:
  • 脂肪の多い食品(揚げ物、脂身の多い肉)
  • 辛い食品、刺激物
  • 繊維質の多い食品(ゴボウ、こんにゃく)
  • 乳製品(初期は避ける)
  • アルコール
  • カフェイン含有飲料

3. 薬物療法

対症療法として使用される薬:

整腸剤
  • ビオフェルミン、ミヤリサン など
  • 腸内環境を整える
  • 副作用が少なく、安全に使用可能
制吐剤
  • プリンペラン、ナウゼリン など
  • 嘔吐が強い場合に使用
  • 医師の処方が必要
解熱剤
  • アセトアミノフェン(カロナール)
  • 高熱で辛い場合に使用
  • 38.5℃以上が目安
重要:止痢剤(下痢止め)は原則使用しない

下痢は体内の病原体や毒素を排出する防御反応です。安易に止痢剤を使用すると:

  • 病原体の排出が遅れる
  • 症状が長引く
  • 重症化のリスク(特に細菌性)

医学的解説:特に出血性大腸炎(O157など)では、止痢剤の使用により溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症リスクが高まることが知られています。下痢は原則として自然に止まるのを待つのが基本です。

抗生物質
  • 原則として不要(ウイルス性には無効)
  • 細菌性でも軽症~中等症では使用しない
  • 重症の細菌性胃腸炎のみ使用を検討

4. 輸液療法

以下の場合は点滴治療が必要:

  • 経口摂取が全くできない
  • 高度の脱水
  • 意識レベルの低下
  • 重症感染症

【自宅での対処法】

1. 安静

  • 十分な休息
  • 無理な活動は避ける

2. 保温

  • 腹部を温める
  • 体を冷やさない

3. 衛生管理

  • 手洗いを徹底
  • 使用したトイレの消毒
  • 吐物の適切な処理
  • タオルの共用を避ける

4. 隔離

  • 可能であれば別室で休む
  • 家族への感染予防

いつ医療機関を受診すべきか

Medical Gaia Networkでの地域医療活動を通じて、適切なタイミングでの受診が重症化予防に重要であることを実感しています。

【直ちに受診が必要(救急受診)】

  • 激しい持続的な腹痛
  • 血便(黒色便、鮮血便)
  • 高熱(39℃以上)が持続
  • 嘔吐で水も飲めない
  • 8時間以上排尿がない
  • 意識がもうろうとする
  • けいれん
  • 激しい頭痛

【早めの受診が望ましい】

  • 症状が3日以上続く
  • 脱水症状がある
  • 乳幼児、高齢者、妊婦
  • 基礎疾患がある(糖尿病、心疾患など)
  • 免疫抑制状態(がん治療中など)
  • 海外渡航後の発症

【自宅療養でよい場合】

  • 軽度の下痢・嘔吐
  • 水分摂取ができている
  • 尿量が保たれている
  • 発熱が38℃以下
  • 腹痛が軽度
  • 全身状態が良好

ただし、症状の変化に注意し、悪化傾向があればすぐに受診してください。

急性胃腸炎の予防方法

予防医学の観点から、効果的な予防方法をご紹介します。

【手洗いの徹底】(最重要)

正しい手洗い方法:

  1. 流水で手を濡らす
  2. 石鹸を十分に泡立てる
  3. 手のひら、手の甲、指の間、爪の間、手首まで20~30秒かけて洗う
  4. 流水でよくすすぐ
  5. 清潔なタオルで拭く(またはペーパータオル)

手洗いのタイミング:

  • 調理前
  • 食事前
  • トイレ後
  • おむつ交換後
  • 帰宅後
  • 患者のケア後

医学的解説:手洗いは、感染症予防の最も基本的かつ効果的な方法です。研究によると、適切な手洗いにより、感染性胃腸炎の発症を約30~50%減少させることができます。

【食品衛生】

1. 食材の選択と保存

  • 新鮮な食材を選ぶ
  • 冷蔵庫の温度管理(10℃以下)
  • 冷凍庫の温度管理(-15℃以下)
  • 賞味期限・消費期限を守る

2. 調理時の注意

  • 十分な加熱(中心温度75℃、1分以上)
  • まな板・包丁の使い分け(生肉用・野菜用)
  • 調理器具の洗浄・消毒
  • 生肉を触った後は手洗い

3. 食べ方の注意

  • 生肉、生卵を避ける(特に夏季)
  • 生牡蠣などの二枚貝に注意
  • 調理後2時間以内に食べる
  • 作り置きは早めに冷蔵

【環境の消毒】

ノロウイルス対策:

ノロウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)での消毒が必要です。

消毒液の作り方:
通常の消毒(トイレ、ドアノブなど)

0.02%溶液:500mLの水にハイター10mL(キャップ2杯)

嘔吐物・便の処理

0.1%溶液:500mLの水にハイター50mL(キャップ10杯)

消毒方法:
  1. 使い捨て手袋、マスク、エプロン着用
  2. 嘔吐物・便をペーパータオルで外側から内側へ拭き取る
  3. 消毒液を染み込ませたペーパータオルで拭く
  4. 10分程度置いてから、水拭き
  5. すべてビニール袋に密閉して廃棄
  6. 手洗いを徹底

【ワクチン接種】

ロタウイルスワクチン

  • 乳児期に接種(生後6週~32週)
  • 経口ワクチン
  • 重症化を約90%予防

現在、ノロウイルスのワクチンは開発中で、まだ実用化されていません。

【その他の予防策】

  • 体調管理:十分な睡眠、バランスの良い食事
  • 免疫力の維持:ストレス管理、適度な運動
  • 流行期の注意:人混みを避ける、マスク着用
  • 二次感染予防:家族が発症したら隔離・消毒を徹底

急性胃腸炎後の注意点

回復後も注意すべき点があります。

【食事の再開】

  • 急に通常食に戻さない
  • 消化の良いものから徐々に
  • 脂っこいもの、刺激物は1週間程度避ける

【腸内環境の回復】

  • 整腸剤の継続(1~2週間)
  • 発酵食品の摂取(ヨーグルト、納豆など)
  • 食物繊維を適度に摂取

【再発予防】

  • 手洗い習慣の維持
  • 免疫力の回復(十分な休息)
  • ストレス管理

【登校・出勤の目安】

学校保健安全法による出席停止期間:

  • 明確な規定はない(インフルエンザなどとは異なる)
  • 一般的な目安:症状消失後24~48時間

職場復帰の目安:

  • 下痢・嘔吐が止まっている
  • 発熱がない
  • 全身状態が良好
  • 食品関連業務:医師の許可を得る

まとめ:急性胃腸炎は適切な対処で回復する

急性胃腸炎は、適切な水分補給と対症療法により、多くの場合1週間以内に回復します。重要なポイントをまとめます。

【対処の基本】

  1. 水分・電解質の補給が最重要
  2. 無理に食べない(食欲に応じて)
  3. 止痢剤は原則使用しない
  4. 十分な休息
  5. 脱水症状に注意

【予防の基本】

  1. 手洗いの徹底
  2. 食品の適切な保存・調理
  3. 環境の清潔保持
  4. 体調管理

【受診の判断】

  • 激しい腹痛、血便、高熱、脱水症状→直ちに受診
  • 3日以上症状が続く→早めに受診
  • 軽症で水分摂取可能→自宅療養可

福島県立医科大学大学院での研究と30年以上の臨床経験から申し上げますと、急性胃腸炎の大部分は適切な対処により自然に回復します。ただし、脱水症状の進行や重症化のサインを見逃さないことが重要です。

医療法人社団康悦会では、急性胃腸炎をはじめとする消化器疾患全般について、専門的な診療を行っております。症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。皆様の健康と安心をサポートいたします。

執筆者情報

医療法人社団康悦会理事長・医学博士
佐藤靖郎
福島県立医科大学大学院修了
国立国際医療研究センター病院、横浜医療センター救命救急センター副部長などで30年以上の臨床経験と研究実績

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