カルチノイドとは?|内科医がわかりやすく解説
カルチノイドとは、消化管や肺などに発生する「神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう)」の一種です。一般的ないわゆる「がん」とは性質が異なり、進行が緩やかなことが多い一方、状況によっては転移・悪性化するケースもあります。本記事では、カルチノイドの特徴・症状・検査・治療について、医学的根拠にもとづきわかりやすく解説します。気になる症状のある方は、まず医師の診察を受けることをおすすめします。
カルチノイドとは?まずは意味をわかりやすく解説
カルチノイドは「神経内分泌腫瘍」の一種
カルチノイドとは、ホルモンなどの生理活性物質を分泌する細胞(神経内分泌細胞)が腫瘍化したものです。医学的には「神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine Tumor:NET)」と呼ばれ、消化管・肺・膵臓など、さまざまな臓器に発生します。日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)のガイドラインでも、カルチノイドはNETの範疇に含まれると整理されています。
「がん」とは何が違うのか
一般的な「がん(癌腫)」は上皮細胞ががん化したものですが、カルチノイドは神経内分泌細胞に由来します。進行が比較的ゆっくりしているケースが多く、良性に近い挙動を示すこともありますが、腫瘍の大きさや悪性度によっては転移・再発する可能性があるため、「良性」と単純に割り切ることはできません。
カルチノイドができやすい部位
胃
胃のカルチノイドは、内視鏡検査で偶然発見されることも少なくありません。萎縮性胃炎やピロリ菌感染を背景に発生するケースがあります。
腸
小腸(とくに回腸)に発生することが多く、腸管内での発見が遅れやすい部位のひとつです。腸管に多発することもあります。
直腸
直腸のカルチノイドは、大腸内視鏡検査や直腸鏡検査で見つかることがあります。小さいものは内視鏡的切除が可能な場合があります。
肺
肺カルチノイドは、肺腫瘍全体の中では比較的まれな種類ですが、咳や血痰などの呼吸器症状で気づかれることがあります。
そのほかの臓器にできることもある
膵臓・胸腺・卵巣など、神経内分泌細胞が存在する臓器であれば、どこにでも発生しうる可能性があります。
カルチノイドでみられる症状
初期は症状がないこともある
腫瘍が小さい段階では自覚症状が乏しいことが多く、健診や内視鏡検査などで偶然発見されるケースも少なくありません。
腹痛・便通異常・血便などの症状
消化管に発生したカルチノイドでは、腹痛・下痢・便秘・血便などの消化器症状が現れることがあります。ただし、これらはほかの消化器疾患でもみられる一般的な症状であるため、自己判断は禁物です。
顔のほてり、動悸、下痢などがみられることもある
腫瘍からセロトニンなどの生理活性物質が過剰に分泌される「カルチノイド症候群」が起きると、顔や首のほてり(フラッシング)・動悸・下痢などの症状が出ることがあります。ただし、これは腫瘍が肝臓に転移した場合などに多くみられる状態です。
カルチノイドが疑われるときに行う検査
問診と身体診察
症状の経緯・発症時期・既往歴・家族歴などを丁寧に確認し、腹部の触診なども行います。
血液検査・尿検査
血中クロモグラニンA、尿中5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)などの腫瘍マーカーを測定することがあります。ただし単独での診断は難しく、あくまで補助的な指標として活用されます。
画像検査
CTやMRI、超音波検査などで腫瘍の位置・大きさ・周辺臓器への広がりを確認します。ソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)やPET検査が行われることもあります。
内視鏡検査と組織検査
消化管のカルチノイドが疑われる場合は、上部消化管内視鏡(胃カメラ)や大腸内視鏡(大腸カメラ)を行い、組織を採取して病理診断(生検)を行います。組織検査による確定診断が不可欠です。
病期や広がりを調べる検査
転移の有無を調べるために、肝臓・リンパ節・肺などを対象とした画像検査が追加されることがあります。
カルチノイドの診断で大切なポイント
腫瘍の大きさ
腫瘍径が大きいほど転移リスクが高まる傾向があり、治療方針を決定するうえで重要な情報となります。
悪性度や増殖の速さ
病理検査でKi-67指数(細胞増殖のマーカー)などを確認し、腫瘍の悪性度(グレード)を判定します。グレードによって治療方針が変わります。
転移の有無
リンパ節・肝臓などへの転移があるかどうかが、治療法の選択や予後に大きく影響します。
神経内分泌腫瘍としての分類
WHO分類に基づき、NET G1・G2・G3、神経内分泌癌(NEC)などに分類されます。この分類が治療方針の基本となります。
カルチノイドの治療法
手術
切除可能な場合は外科的切除が基本となります。腫瘍の部位・大きさ・転移の有無を総合的に判断して術式が選択されます。
薬物療法
ソマトスタチンアナログ(オクトレオチドなど)、分子標的薬(エベロリムス・スニチニブ)、化学療法などが、腫瘍のグレードや進行度に応じて選択されます。
内視鏡治療
直腸や胃などの早期・小型のカルチノイドでは、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われる場合があります。
経過観察が選ばれる場合
腫瘍が非常に小さく悪性度が低い場合は、定期的な画像検査・内視鏡検査による経過観察が選択されることもあります。いずれの場合も、医師の判断のもとで方針を決定することが大切です。
カルチノイドは早期発見が大切
受診を考えたほうがよい症状
以下のような症状が続く場合は、消化器内科や内科への受診をご検討ください。
- 繰り返す腹痛・下痢・便秘
- 原因不明の血便
- 顔のほてりや動悸が続く
- 体重の減少が続く
不安を感じるほどの症状でなくても、気になる症状が続くときは早めに医師へ相談することをおすすめします。
健診や検診で見つかることがあるケース
カルチノイドは症状が乏しいことが多いため、定期的な健康診断・人間ドック・大腸内視鏡検査などを受けることが早期発見につながる場合があります。
何科を受診すればよいか
消化器内科・呼吸器内科・外科などの受診目安
発生部位によって受診先が異なりますが、腹部症状がある場合はまず消化器内科が窓口となることが一般的です。肺に症状がある場合は呼吸器内科が適しています。
受診時に伝えるとよいこと
- 症状が始まった時期と経緯
- 症状の頻度・程度
- 既往歴・家族歴
- 服用中の薬やサプリメント
- これまでに受けた検査の結果(健診結果・紹介状など)
情報を整理してお伝えいただくと、より適切な診察・検査につながります。
カルチノイドと生活上の注意点
食事や運動について
カルチノイド症候群の症状がある場合は、セロトニン産生を増やす可能性のある食品(チーズ・アルコールなど)を控えるよう指導されることがあります。食事・運動の具体的な内容については、主治医の指示に従ってください。
治療中・経過観察中の注意点
定期受診と検査を欠かさず行うことが最も重要です。体調の変化や新たな症状が出た際は、次の診察を待たず速やかに相談することをおすすめします。
再発や転移に備えた定期フォロー
治療後も再発・転移のリスクがあるため、定期的な画像検査・血液検査・内視鏡検査によるフォローアップが推奨されています。
カルチノイドと他の病気との違い
良性腫瘍との違い
良性腫瘍は転移しませんが、カルチノイドは腫瘍の大きさや悪性度によっては転移する可能性があります。一見良性に近い挙動でも、専門的な評価が必要です。
ほかのがんとの違い
一般的な腺癌などと比較して進行が緩やかな場合が多いとされていますが、高悪性度の神経内分泌癌(NEC)は急速に進行することがあります。カルチノイド=「大丈夫」とは一概に言えません。
カルチノイド症候群との違い
「カルチノイド」は腫瘍そのものを指す言葉であり、「カルチノイド症候群」とは腫瘍が産生する生理活性物質によって引き起こされる症状の総称です。カルチノイドがあっても、必ずしもカルチノイド症候群を呈するわけではありません。
なお、消化器症状の背景には食道裂孔ヘルニアなど他の疾患が関係していることもあります。詳しくは食道裂孔ヘルニアとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
また、消化器症状でよく使われる薬であるPPIについては、ppiとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】でも詳しく解説しています。
たまプラーザで相談を検討している方へ
医師の診察が必要な理由
カルチノイドは症状が乏しいことが多く、自己判断では発見・評価が困難です。画像検査・内視鏡検査・病理検査などを組み合わせた専門的な診察が不可欠であり、治療方針も個々の状態に合わせて決定される必要があります。
気になる症状があるときの相談先
腹痛・下痢・血便・原因不明の体重減少・顔のほてりなど、気になる症状がある場合はお早めにご相談ください。ご予約・お問い合わせより受診のご相談が可能です。
よくある質問(FAQ)
カルチノイドは完治しますか?
腫瘍の大きさ・悪性度・転移の有無など、個々の状態によって異なります。早期で小さな腫瘍であれば内視鏡治療や手術で完全切除が期待できる場合もありますが、治療結果には個人差があります。必ず主治医に詳しく確認してください。
カルチノイドは遺伝しますか?
多くは孤発性(遺伝と無関係)ですが、多発性内分泌腫瘍症(MEN)などの遺伝性疾患の一部としてカルチノイドが発生することがあります。家族歴がある場合は医師へお伝えください。
健康診断で見つかることはありますか?
内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を含む人間ドックや、CTなどの画像検査で偶然発見されることがあります。定期的な検診の受診が早期発見につながる場合があります。
カルチノイドは放置してよいですか?
腫瘍の性質や状態にかかわらず、自己判断で放置することは推奨されません。小さく低悪性度のものでも定期的な経過観察が必要であり、専門医の管理のもとで方針を決定することが重要です。
カルチノイドと神経内分泌腫瘍は同じですか?
厳密には、カルチノイドは神経内分泌腫瘍(NET)の中でも比較的低悪性度のものを指す歴史的な呼称です。現在の国際分類では「神経内分泌腫瘍(NET)」という用語が標準的に使われています。同じ腫瘍を指していることが多いですが、詳しくは担当医にご確認ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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