肝機能障害とは?原因・症状・対処を内科医が解説
健康診断の結果に「肝機能障害」と記載されていても、自覚症状がないためそのままにしてしまう方は少なくありません。しかし肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、かなり傷んでいても症状が出にくい臓器です。本記事では、肝機能障害の原因・症状・検査の見方・対処法について、内科医の立場からわかりやすく解説します。気になる数値がある方は、ぜひ参考にしてください。
肝機能障害とは?まずは「肝機能の異常」との違いを整理
「肝機能障害」とは、血液検査や画像検査などで肝臓の働きに何らかの異常が認められる状態の総称です。厳密な疾患名ではなく、検査結果をもとに「肝臓に負担がかかっている可能性がある」と判断される段階を指します。
肝機能障害で見つかることが多い検査異常
健康診断では、主にAST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTP(ガンマGTP)といった酵素の数値が確認されます。これらが基準値を超えると「肝機能異常」と判定され、程度によっては「肝機能障害」と表記されます。
肝臓の働きと、異常が起きるとどうなるか
肝臓は①栄養素の代謝・貯蔵、②有害物質の解毒、③胆汁の生成・分泌、④タンパク質(アルブミン・凝固因子など)の合成、という多彩な機能を担っています。これらの機能が低下すると、全身の代謝バランスが崩れ、さまざまな症状や検査異常として現れます。
肝機能障害の主な原因
脂肪肝・アルコール・ウイルス性肝炎
最も多い原因の一つが脂肪肝です。カロリー過多・運動不足などを背景に肝臓に脂肪が蓄積します。詳しくは脂肪肝とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】をご参照ください。アルコール性肝障害は、長期的な過剰飲酒が主な原因です。また、B型・C型肝炎ウイルスへの感染による肝炎も代表的な原因であり、輸血歴や母子感染などが関係します。
薬剤性肝障害やサプリメントによる影響
処方薬・市販薬・健康食品・サプリメントが原因となる「薬剤性肝障害」も決して珍しくありません。特定の成分が肝細胞に直接ダメージを与えるケース(中毒性)と、免疫反応によるケース(アレルギー性)があります。
自己免疫性肝炎、胆道系の病気など
免疫系が自分の肝細胞を攻撃する自己免疫性肝炎、胆汁の流れが障害される原発性胆汁性胆管炎(PBC)、胆石・胆道の炎症なども肝機能検査に影響します。
生活習慣や体質が関係するケース
肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧といったメタボリックシンドロームは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のリスクを高めます。遺伝的体質が関与する場合もあります。
肝機能障害で現れやすい症状
自覚症状がないことも多い
肝臓は痛覚神経が少ないため、初期〜中等度の障害では自覚症状がほとんど現れません。健康診断での血液検査が発見の契機となることが多いのはこのためです。
倦怠感・食欲不振・吐き気などの症状
肝機能が低下してくると、全身の倦怠感・疲れやすさ・食欲不振・吐き気・右上腹部の不快感などが現れることがあります。これらは他の病気でも起こりうる非特異的な症状のため、見過ごされやすいのが特徴です。
黄疸、尿の色の変化、かゆみが出る場合
ビリルビン(胆汁色素)が血液中に増えると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、尿が濃い茶色になる、皮膚のかゆみが生じます。これらは肝機能が相当低下しているサインであり、早めの受診が必要です。
健康診断で「肝機能障害」と言われたときに見る検査項目
AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPの意味
- AST(GOT):肝細胞・心筋・筋肉などに含まれる酵素。肝炎や筋肉疾患で上昇。
- ALT(GPT):主に肝臓に含まれ、肝細胞が傷んだときに血液中に漏れ出す。肝障害の指標として特異性が高い(詳しくはaltとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】を参照)。
- γ-GTP:胆道系の酵素で、アルコールや薬剤の影響を受けやすい(詳しくはγ-gtpとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】を参照)。
ALP・ビリルビン・アルブミン・血小板など
- ALP:胆道系の異常や骨の病気で上昇。
- ビリルビン:肝臓や胆道の機能を反映。黄疸の指標。
- アルブミン:肝臓で合成されるタンパク質。低値は肝機能低下のサイン。
- 血小板:肝硬変が進むと減少する傾向がある。
数値の見方は単独ではなく全体で判断する
一項目だけの異常で重大な疾患を意味するわけではありません。複数の数値の組み合わせ・推移・生活背景を総合して評価することが重要です。自己判断は避け、医師による総合的な解釈を受けることが大切です。
肝機能障害が疑われるときの対処
まずは再検査・追加検査の必要性を確認する
健康診断で異常値を指摘された場合は、医療機関での再検査・精密検査を検討しましょう。一時的な変動の場合もありますが、継続的な異常は原因の特定が必要です。
飲酒・食事・服薬・サプリを見直す
飲酒量の減少・食事内容の改善(高脂肪・高カロリーの見直し)・不要なサプリや市販薬の整理は、肝臓への負担軽減につながります。
自己判断で中断しないほうがよい薬もある
服用中の薬が肝機能に影響している可能性があっても、自己判断で中断することで病気のコントロールが乱れる場合があります。必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。
受診の目安と、何科を受診すべきか
内科・消化器内科を受診する目安
健康診断でAST・ALT・γ-GTPのいずれかが基準値を超えていた場合は、内科または消化器内科を受診することをお勧めします。
早めの受診が望ましい症状
- 倦怠感が続く・食欲がない状態が1〜2週間以上続く
- 右上腹部の重苦しさ・不快感がある
- 体重が急に減少している
緊急性が高いサイン
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 皮膚・目の白目が黄色くなっている(黄疸)
- 尿が濃茶色になっている
- 腹部が急激に膨らんでいる(腹水の疑い)
- 意識がぼんやりする・言動がおかしい(肝性脳症の疑い)
医療機関で行う主な検査と診断の流れ
問診・診察で確認するポイント
飲酒歴・服薬歴・サプリ使用歴・家族歴・既往歴・食生活・体重の変化などを丁寧に確認します。
血液検査、腹部エコー、追加の画像検査
血液検査で肝機能の全体像を把握し、腹部超音波(エコー)で脂肪肝・胆石・肝臓の形状などを確認します。必要に応じてCT・MRIを追加します。
必要に応じて行うウイルス検査や自己抗体検査
B型・C型肝炎ウイルスの検査、自己免疫性肝炎の自己抗体(ANA・抗ミトコンドリア抗体など)の検査を行うことがあります。
肝機能障害の治療と経過観察
原因に応じた治療が基本
ウイルス性肝炎には抗ウイルス薬、自己免疫性肝炎にはステロイドなど、原因によって治療法が異なります。脂肪肝・アルコール性肝障害では生活習慣の是正が中心となります。
薬物治療・生活指導・経過観察の考え方
軽度の場合は生活指導と定期的な血液検査による経過観察が基本です。原因が明確な場合はその治療を優先し、改善の度合いを確認しながら方針を調整します。
重症化を防ぐために大切なこと
定期的な検査を怠らず、医師の指示に従って経過を観察することが、肝硬変や肝がんへの進行を防ぐうえで重要です。
肝機能を守るために日常生活でできること
飲酒習慣の見直し
純アルコール量で男性1日40g以上、女性20g以上の飲酒は肝臓への負荷が大きいとされています(厚生労働省「健康日本21」参照)。休肝日を設ける、飲酒量を減らすといった習慣の見直しが助けになります。
食事・体重管理・運動習慣
脂質・糖質の過剰摂取を避け、野菜・良質なタンパク質・食物繊維を意識した食事を心がけましょう。有酸素運動(ウォーキングなど)を週150分程度行うことが、脂肪肝の改善に有益とされています。
サプリメントや市販薬の使い方に注意する
「自然由来だから安全」とは限りません。特定の健康食品・漢方薬・プロテインなどが薬剤性肝障害の原因となった事例が報告されています。複数のサプリを同時に使用する際は、医師・薬剤師に相談することをお勧めします。
放置するとどうなる?考えられるリスク
慢性肝炎、肝硬変、肝がんにつながることがある
肝機能障害を放置して炎症が持続すると、慢性肝炎→肝硬変→肝がんへと進展するリスクがあります。特にウイルス性肝炎は無症状のまま進行することがあり、定期的な検査が不可欠です。
早期発見・早期対応が重要な理由
肝臓は比較的早い段階であれば再生能力があります。早期に原因を特定し、適切に対応することで、進行を抑えられる可能性があります。
当院での肝機能障害の診療について
たまプラーザで受けられる相談内容
AIプラスクリニックたまプラーザでは、健康診断後の肝機能異常に関するご相談、血液検査・腹部エコーによる精密検査、生活習慣改善のアドバイスまで、消化器内科の専門的な視点でサポートします。
健康診断後の再検査・精密検査にも対応
「数値が高かったが症状はない」「どの科を受診すべかわからない」という場合も、お気軽にご相談ください。ご予約・お問い合わせよりWebまたはお電話でご予約いただけます。
よくある質問(FAQ)
肝機能障害は自然に治りますか?
原因が一時的なもの(過労・飲みすぎなど)であれば、安静・節酒・食事改善で数値が改善する場合があります。ただし、ウイルス感染・自己免疫疾患・薬剤が原因の場合は自然に改善しないこともあるため、医師の診察を受けることをお勧めします。
AST、ALT、γ-GTPが高いときはすぐ受診すべきですか?
基準値の2〜3倍以上の上昇、または複数項目の異常が続く場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。単回の軽度上昇であっても、再検査で推移を確認することが大切です。
症状がなくても受診したほうがよいですか?
はい。肝臓は自覚症状なく障害が進行することが多い臓器です。健康診断で異常を指摘されたにもかかわらず症状がないからと放置することで、発見が遅れるケースがあります。症状の有無にかかわらず、医師への相談をお勧めします。
お酒をやめれば改善しますか?
アルコール性肝障害の場合、禁酒・節酒によって数値が改善することは多く見られます。ただし、すでに肝硬変が進行している場合や、他の原因が重なっている場合は、禁酒だけでは不十分なこともあります。医師と相談しながら対応を決めることが大切です。
サプリメントで肝機能障害になることはありますか?
はい。健康食品・ハーブ系サプリ・プロテイン・ダイエット系食品などによる薬剤性肝障害の報告は国内外で認められています。「自然由来」でも肝臓への負担になる成分が含まれる場合があるため、使用中の製品を医師に伝えることが重要です。
どのくらいの数値から危険と考えますか?
一般的にASTまたはALTが基準値(施設によりやや異なりますが概ね30〜40 IU/L程度)の3倍以上であれば、医療機関での精査が推奨されます。ただし、数値の高さだけでなく、上昇のパターン・経過・症状・他の検査値との組み合わせが重要です。必ず医師による総合的な評価を受けてください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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