上行結腸とは?原因・症状・対処を内科医が解説
上行結腸(じょうこうけっちょう)は大腸の一部であり、腸内の水分吸収や便の形成に重要な役割を果たしています。この部位に病変が生じても初期段階では自覚症状が出にくいことがあるため、気になるお腹の症状が続く場合は早めに医療機関へご相談ください。本記事では、上行結腸の場所・はたらきから主な症状・原因・検査・治療・予防まで、消化器専門医の監修のもとわかりやすく解説します。
上行結腸とは?まずは場所と役割を確認
大腸の中で上行結腸がどこにあるか
大腸は盲腸・結腸・直腸・肛門管から構成されます。結腸はさらに上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸に分かれ、上行結腸は盲腸(虫垂が付いている部分)の上から続き、腹部の右側を縦に走って肝臓のすぐ下あたりで横行結腸に移行します。この折れ曲がり部分を肝彎曲(かんわんきょく)と呼びます。
上行結腸の主なはたらき
上行結腸の主な役割は、水分・電解質の吸収と腸内細菌による発酵・代謝です。小腸から送られてきた消化物はこの段階ではまだ液状に近く、上行結腸を通過する間に水分が吸収されて半固形状の便へと変化します。そのため上行結腸に病変が生じると、便通や便の性状に影響が出やすくなります。
上行結腸に関連してみられる主な症状
腹痛やお腹の張り
上行結腸は腹部右側に位置するため、右側腹部の鈍い痛みや張り感として感じられることがあります。ガスの貯留や蠕動(ぜんどう)運動の亢進により、周期的な痛みを伴う場合もあります。
便通異常(下痢・便秘・便が細いなど)
水分吸収が障害されると下痢傾向に、狭窄などが生じると便秘や便が細くなるなどの変化が現れることがあります。これらの症状が急に始まったり、以前と明らかに変わったりした場合には注意が必要です。
血便・黒色便・貧血
上行結腸は肛門から遠いため、出血があっても赤い血便ではなく黒色便(タール便)として現れたり、肉眼ではわからない程度の微小出血が続くことで鉄欠乏性貧血を引き起こしたりすることがあります。疲労感・動悸・息切れが気になる方は貧血の精査も重要です。
体重減少や食欲低下
明確な原因がないのに体重が減少したり、食欲低下が続く場合は消化管の病変が関与している可能性があります。他の症状と合わせて総合的に評価することが大切です。
上行結腸の症状が起こる主な原因
便秘や腸内環境の乱れ
食物繊維不足・水分不足・運動不足・ストレスなどによる便秘や腸内フローラの乱れは、腹部不快感や腹痛の一般的な原因です。
炎症性腸疾患や感染性腸炎
クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)は大腸全体に影響しうる疾患です。また細菌・ウイルスによる感染性腸炎も腹痛・下痢・発熱を引き起こします。
腸閉塞などの緊急性を伴う病気
腸管が閉塞すると、急激な腹痛・嘔吐・腹部膨満が生じます。緊急性が高い状態であるため、こうした症状が突然現れた場合は速やかな受診が必要です。
上行結腸がんなどの病気
上行結腸は大腸がん(結腸がん)が発生しうる部位の一つです。詳しくは次のセクションで解説します。
上行結腸がんとは
上行結腸がんの特徴
上行結腸がんは、大腸の内側を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍です。大腸がんの発生部位としては右側結腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)が約30〜40%を占めるとされており(日本大腸癌研究会「大腸癌取扱い規約」参照)、決して少なくありません。
結腸がん・大腸がんとの違い
大腸がんは結腸と直腸の両方を含む総称です。そのうち直腸以外の部分に発生するものを結腸がんと呼び、上行結腸がんはその一種です。便潜血検査の対象となる「大腸がん」は、こうした部位すべてを含みます。
進行により現れやすい症状
初期は無症状のことが多く、進行とともに血便・貧血・腹痛・腹部腫瘤(しこり)・体重減少などが現れやすくなります。右側結腸は管腔が広く、腫瘍が大きくなるまで狭窄症状が出にくい傾向があるため、貧血や体重減少が最初のサインとなることもあります。
受診の目安|どのようなときに内科・消化器内科を受診するか
早めの受診が望ましい症状
- 2〜3週間以上続く下痢・便秘・腹痛
- 便に血が混じる、または黒色便
- 原因不明の体重減少(数か月で数kg以上)
- 疲労・動悸など貧血を疑う症状
救急受診を考えるべき症状
- 突然の激しい腹痛
- 嘔吐・腹部の強い膨満・排ガスが完全に止まった
このような場合は、腸閉塞や消化管穿孔(せんこう)などの緊急疾患の可能性があります。夜間・休日でも救急を受診してください。
何科を受診すればよいか
消化器内科・一般内科が窓口として適しています。症状の経過・家族歴・健診結果などを携えて受診すると、より正確な評価につながります。ご予約・お問い合わせはこちらからも承っております。
医療機関で行う主な検査
問診・腹部診察
症状の経過・排便状況・既往歴・服薬歴・家族歴を丁寧に聴取し、腹部の触診・聴診を行います。
血液検査・便検査
血液検査では貧血・炎症の程度・肝臓や腎臓の状態を確認します。便潜血検査は大腸がんのスクリーニングとして厚生労働省も推奨している検査です(40歳以上を対象とした対策型検診)。
腹部エコー・CT検査
腸管の状態・腫瘤の有無・周囲臓器への影響を評価します。CT検査は大腸がんの進行度(ステージ)判定にも用いられます。
大腸内視鏡検査
腸管内部を直接観察し、ポリープや腫瘍の組織を採取(生検)できる最も確実な検査です。発見された良性ポリープはその場で切除できるケースもあります。
上行結腸の症状に対する対処
自宅でできる生活上の工夫
水分を1日1.5〜2L程度確保し、食物繊維(野菜・豆類・海藻など)を意識的に摂ることで腸内環境を整えましょう。適度な運動・規則正しい生活・十分な睡眠もお腹の調子に影響します。腹式呼吸はストレス軽減・自律神経の安定を通じて腸のはたらきを助けることが期待されます。
市販薬を使う前に注意したいこと
下痢止め・便秘薬は一時的な対症療法として用いられますが、症状の原因によっては使用が適切でない場合もあります。特に血便を伴う場合や症状が長引く場合は、自己判断で継続使用せず、医師に相談してください。
症状が続くときの考え方
「しばらく様子を見る」という選択を続けているうちに、より治療が複雑になるケースも報告されています。2週間以上症状が続く場合は受診を検討することをお勧めします。
上行結腸がんの主な治療
手術治療
上行結腸がんの根治的治療の中心は外科手術(結腸切除術)です。上行結腸を切除し、リンパ節を含めて摘出する手術が標準的に行われます。近年は腹腔鏡(ふくくうきょう)手術も広く普及しており、体への負担が軽減されています。
薬物療法(抗がん薬治療)
術後の再発予防を目的とした補助化学療法、転移・再発例に対する化学療法が行われます。日本大腸癌研究会のガイドラインに基づき、病期や全身状態に応じた治療方針が選択されます。
放射線治療が行われる場面
結腸がんでは直腸がんと比較して放射線治療の適応は限られますが、術前・術後補助療法や症状緩和を目的として用いられることがあります。
予防・早期発見のためにできること
食生活・運動・禁煙などの生活習慣
国立がん研究センターの研究では、赤肉・加工肉の過剰摂取・飲酒・喫煙・肥満・運動不足が大腸がんのリスク要因として示されています。野菜・果物・食物繊維の摂取、適切な体重管理、禁煙を心がけることが予防につながると考えられています。
定期的な検診と便潜血検査
厚生労働省は40歳以上を対象とした大腸がん検診(便潜血検査・年1回)を推奨しています。陽性(要精検)と判定された場合は、必ず大腸内視鏡検査などの精密検査を受けるようにしてください。
大腸内視鏡検査を検討する目安
- 便潜血検査で陽性判定
- 家族に大腸がん・大腸ポリープの既往がある
- 以前にポリープを切除したことがある
- 40〜50歳以上で一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない
たまプラーザ周辺で相談したい方へ|医療機関受診のポイント
気になる症状をそのままにしないために
上行結腸の病変は初期に症状が出にくいケースがあるため、「大したことはないだろう」と放置することにはリスクが伴います。特に血便・貧血・体重減少・排便の変化が続く場合は、専門機関での評価を受けることをお勧めします。たまプラーザ周辺にお住まいの方は、AIプラスクリニックたまプラーザへのご予約・お問い合わせをご活用ください。
受診前に整理しておきたい症状の経過
- 症状が始まった時期・頻度・強さ
- 便の形状・色の変化
- 体重の変化
- 服用中の薬・サプリメント
- 家族の消化器疾患歴(大腸がん・炎症性腸疾患など)
こうした情報を事前にまとめておくと、診察がスムーズに進みます。
よくある質問(FAQ)
上行結腸が痛いときは何が考えられますか?
右側腹部の痛みは便秘・ガス貯留・感染性腸炎・炎症性腸疾患・虫垂炎・腸閉塞・大腸がんなど多様な原因が考えられます。痛みが強い・突然発症した・発熱や嘔吐を伴うなどの場合は速やかに受診してください。
上行結腸がんは初期症状が出にくいですか?
はい。上行結腸は管腔が広く、内容物が液状に近いため、初期の腫瘍では閉塞症状が現れにくく、貧血や体重減少として現れることがあります。そのため便潜血検査や大腸内視鏡検査による定期的な確認が重要です。
便秘だけでも上行結腸の病気が隠れていることはありますか?
便秘が唯一の症状であっても、大腸ポリープや腫瘍が隠れている可能性を完全に否定はできません。便秘が急に悪化した・排便習慣が変わった・便が細くなったなどの変化がある場合は、医師への相談をお勧めします。
検査はどれくらいで受けたほうがよいですか?
気になる症状が2〜3週間以上続く場合、または便潜血検査で陽性が出た場合は、できるだけ早めに(目安として数日〜2週間以内に)精密検査を受けることが望ましいです。
上行結腸の異常は健康診断で見つかりますか?
職場健診や市区町村の大腸がん検診で行われる便潜血検査で、出血を伴う病変がある程度スクリーニングできます。ただし小さなポリープや出血を伴わない病変は便潜血検査では検出が難しいため、大腸内視鏡検査が最も精度の高い方法とされています。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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