内科医が解説する 腸閉塞症状ガイド
イレウスの症状|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】
腸の内容物(食べ物・消化液・ガスなど)の流れが止まり、強い腹痛や嘔吐・お腹の張りが生じる状態を「イレウス(腸閉塞)」といいます。重症化すると腸の血流が途絶え、腸管壊死や腹膜炎につながることがあるため、症状が強い場合は早めに医療機関を受診することが大切です。本記事では、イレウスの症状・原因・種類・治療・受診の目安を消化器外科専門医の監修のもとわかりやすく解説します。
本記事は医学的情報の提供を目的としています。強い腹痛、繰り返す嘔吐、お腹の急激な張り、発熱、ぐったりするなどの症状がある場合は、様子を見ずに早めの受診をご検討ください。
イレウスとは?腸閉塞との違いもわかりやすく解説
イレウスで起こること
腸管の内容物が正常に流れなくなると、腸の中にガスや液体が貯留し、腹部膨満・腹痛・嘔吐・排便・排ガスの停止などが起こります。腸が拡張して腸壁への血流が低下すると、腸管壊死・腹膜炎といった重篤な状態に進行する危険があります。
「腸閉塞」と「イレウス」の呼び方の違い
日本では「イレウス」と「腸閉塞」がほぼ同義に使われることが多いですが、厳密には欧米の定義では異なります。日本消化器病学会などのガイドラインでは、物理的な詰まりによるものを「機械的腸閉塞(腸閉塞)」、腸の動きが低下・停止することで生じるものを「機能的腸閉塞(麻痺性イレウスなど)」と分類しています。本記事では日本の一般的な用法に合わせ、両者をまとめて「イレウス」と表記します。
イレウスの主な症状
お腹の張り・膨満感
腸内にガスや液体が貯留すると、お腹全体がパンパンに張った感覚(腹部膨満)が現れます。
腹痛
腸が内容物を押し流そうと強く収縮するため、波のように繰り返す疝痛(せんつう)が生じることが特徴です。持続的な強い痛みに変わった場合は、腸管壊死などの重篤な状態が疑われます。
吐き気・嘔吐
内容物の逆流により吐き気・嘔吐が起こります。閉塞が小腸の上部に近いほど早期から嘔吐が現れ、大腸に近い場合は腹部膨満が先行することがあります。
便やガスが出にくい
排便・排ガスの減少や停止はイレウスの典型的なサインです。ただし、閉塞部位より末梢側に残っていた便が出る場合もあるため、「少し便が出た」からといって安心できないことがあります。
食欲低下・お腹の音が弱いとき
機械的イレウスの初期は腸雑音(グル音)が亢進しますが、病態が進行したり麻痺性イレウスになると腸雑音が減弱・消失し、食欲も著しく低下します。
受診を考えるべき危険な症状
強い腹痛が続く
波のある腹痛が持続的な激痛に変わった場合、腸管の血流障害(絞扼性イレウス)が起きている可能性があります。
繰り返す嘔吐や水分がとれない
水分・電解質の喪失が急速に進み、脱水・ショックに至ることがあります。
お腹の張りが急に強くなる
急激な腹部膨満は腸管穿孔や腹膜炎のサインとなりえます。
発熱・冷や汗・ぐったりしている
高熱・頻脈・冷や汗・意識の変化などは敗血症性ショックに至っている可能性を示します。すぐに救急受診を検討してください。
血便や黒い便があるとき
タール便(黒色便)や血便は消化管出血や腸管壊死を示唆することがあります。
イレウスの原因
手術後の癒着
開腹手術後の腸管癒着(ちょうかんゆちゃく)は、イレウスの最も多い原因のひとつです。術後数年〜数十年が経過してから発症することもあります。
腫瘍や炎症による通過障害
大腸がん・小腸腫瘍・クローン病などの炎症性腸疾患が腸管を狭窄させ、通過障害を起こすことがあります。
便秘や薬の影響で起こることがある場合
高度の便秘、オピオイド系鎮痛薬・抗コリン薬・向精神薬などの服薬が腸管の動きを低下させ、麻痺性イレウスや糞便性イレウスの原因となることがあります。
まれな原因として考えられるもの
ヘルニア嵌頓(腸がヘルニア門に挟まれる)、腸重積、腸軸捻転(とくに大腸・S状結腸)、胆石イレウスなどがあります。
イレウスの種類
機械的イレウス
腸管の内側(腫瘍・便・異物など)または外側(癒着・ヘルニアなど)からの物理的な閉塞。血流が保たれている「単純性」と、腸管壁の血流が障害される「絞扼性(こうやくせい)」に分かれます。
麻痺性イレウス
腸管の蠕動(ぜんどう)運動そのものが低下・停止した状態。腹部手術後・腹膜炎・電解質異常(低カリウム血症など)・薬剤の影響が主な原因です。
緊急性が高い場合に注意したいタイプ
絞扼性イレウス・腸軸捻転・ヘルニア嵌頓は腸管壊死に至る危険が高く、緊急手術が必要となることがあります。強い腹痛・発熱・ショック徴候を伴う場合は特に注意が必要です。
イレウスが疑われたときの診断
問診で確認する内容
腹痛の性状・発症時期・排便・排ガスの有無・嘔吐の有無・手術歴・服薬歴・基礎疾患などを確認します。
触診・聴診
腹部の硬さ・圧痛・反跳痛(腹膜炎の徴候)を触診で確認します。聴診では腸雑音(亢進・消失)を評価します。
血液検査
白血球数・CRP(炎症反応)・電解質・腎機能・乳酸値などを確認し、感染・脱水・腸管壊死の有無を評価します。
レントゲン・CT検査
腹部単純X線では腸管の拡張・鏡面像(ニボー)を確認します。腹部CTはイレウスの確定診断や閉塞部位・原因の特定、絞扼性イレウスの評価に有用で、現在では標準的な検査となっています。
イレウスの治療
保存的治療で行うこと
軽度の癒着性イレウスや麻痺性イレウスでは、絶食・輸液による腸管の安静と体液管理が基本となります。
点滴・絶食が必要になる理由
腸管内の食物や消化液の流入を止め、腸管への負担を軽減するために絶食が行われます。嘔吐による脱水・電解質異常は点滴で補正します。
胃管・イレウス管を使うことがある場合
鼻から細いチューブ(胃管・イレウス管)を挿入して腸内の液体・ガスを吸引し、腸管の過膨張を軽減する処置が行われることがあります。
手術が検討されるケース
絞扼性イレウス・腸管壊死・穿孔・保存的治療で改善しない場合などは外科手術が検討されます。腫瘍が原因の場合は腫瘍切除が同時に行われることもあります。
自宅で様子を見てよいか、すぐ受診すべきかの目安
すぐに救急受診を考える症状
- 激しい腹痛・持続的な腹痛
- 繰り返す嘔吐・水分がとれない
- 発熱・冷や汗・意識の変化
- お腹が急激に硬く張ってきた
- 血便・黒色便
当日中に内科・消化器内科へ相談したい症状
- 腹部膨満・排ガス・排便の減少が数日続いている
- 軽度の腹痛・吐き気が継続している
- 食事をすると不快感が増す
既往歴がある人が特に注意したいポイント
腹部手術歴がある方は、癒着性イレウスのリスクがあります。腹痛・嘔吐・腹部膨満が現れた際は早めに消化器科を受診することを検討してください。なお、PPIなどの薬剤を服用中の方は服薬との関係についても医師に相談ください(参考:PPIとは?原因・症状・対処を内科医が解説)。
イレウスの予防と再発を防ぐためにできること
手術歴がある方の日常生活での注意
術後は腸管癒着が起こりやすいため、適度な体を動かす習慣・水分摂取・バランスのとれた食事が勧められます。症状が疑われる場合は早期に受診することが再発時の重症化を防ぐポイントです。
便秘対策と生活習慣
慢性的な便秘は糞便性イレウスのリスク因子になることがあります。食物繊維・水分の摂取、規則正しい排便習慣の確立が重要です。腹式呼吸など腹圧を高めない排便習慣についても参考にしてください(参考:腹式呼吸とは?原因・症状・対処を内科医が解説)。
服薬中の薬について医師に相談したいこと
オピオイド・抗コリン薬・向精神薬などを服用中の方は、腸管蠕動の低下による麻痺性イレウスリスクがあります。便秘や腹部症状が続く場合は処方医または消化器内科に相談してください。
イレウスに関するよくある誤解
便秘との違い
便秘は排便回数の減少や排便困難ですが、腸管の通過路は保たれています。イレウスは腸管の通過が物理的または機能的に障害された状態で、腹痛・嘔吐・腹部膨満が急激に出現する点が異なります。ただし高度の便秘がイレウスに発展するケースもあります。
「少し様子を見る」でよいケースと危険なケース
軽度の腹部不快感で排ガス・排便がある場合は経過をみられることもありますが、排ガス・排便が完全に止まっている・嘔吐を繰り返している・強い腹痛がある場合は、様子見は危険なことがあります。判断に迷う場合は早めに医療機関に相談することをおすすめします。
食事を続けてもよいかの判断
イレウスが疑われる状況での食事継続は症状を悪化させる可能性があります。嘔吐・腹痛・腹部膨満が強い場合は医師の診察を受けるまで食事を控え、受診の判断については医療機関へご相談ください。
受診先の選び方
何科を受診すればよいか
イレウスが疑われる場合は消化器内科・外科を受診してください。どちらを受診すべきか迷う場合は「内科・消化器内科」でも対応可能です。
夜間・休日に症状が出た場合の対応
激しい腹痛・持続的な嘔吐・高熱・意識の変化などがある場合は、救急外来を受診してください。症状が比較的軽い場合は翌朝の消化器内科受診を検討し、症状が変化する場合はためらわず救急へ連絡してください。
AIプラスクリニックたまプラーザで相談できること
AIプラスクリニックたまプラーザでは、腹痛・嘔吐・お腹の張りなど、イレウスが疑われる症状についてご相談いただけます。受診の目安や必要な検査、消化器症状全般の見分け方について丁寧にご説明いたします。
「便秘との違いがわからない」「手術歴があり心配」という方も、お気軽にご相談ください。
📞 TEL:045-909-0117
よくある質問(FAQ)
Q1. イレウスの初期症状は何ですか?
A. 腹部膨満(お腹の張り)・波状の腹痛・排ガスの減少・吐き気などが初期に現れやすい症状です。手術歴がある方でこれらの症状が出現した場合は早めに医療機関を受診することを検討してください。
Q2. 便は出ているのにイレウスのことはありますか?
A. あります。閉塞部位より下(肛門側)に残っていた便が排泄されることがあるため、「便が出た=イレウスではない」とは限りません。その後も腹痛・膨満・嘔吐が続く場合は受診が必要です。
Q3. イレウスは自然に治ることがありますか?
A. 軽度の癒着性イレウスや麻痺性イレウスでは、医療機関での管理(絶食・輸液・腸管減圧)により改善することがあります。ただし自己判断で放置することは状態の悪化につながる危険があるため、医師の診察を受けることが必要です。
Q4. イレウスと便秘はどう見分けますか?
A. イレウスでは腹痛・嘔吐・腹部膨満が比較的急激に現れ、排ガスも止まることが多い点が便秘との違いです。便秘は緩やかに経過することが多いですが、区別が難しい場合もあるため、症状が強い・急に悪化したと感じる場合は医師に相談してください。
Q5. イレウスが疑われるとき、食事はしても大丈夫ですか?
A. イレウスが疑われる場合は食事を控え、早めに医療機関を受診してください。食事を続けると腸管内容物が増加し、症状が悪化する可能性があります。
Q6. イレウスは再発しますか?
A. 癒着性イレウスは再発するリスクがあります。手術後の癒着は完全に防ぐことが難しく、腹痛・嘔吐・腹部膨満が再び現れた場合は早期受診が重要です。生活習慣の見直し(便秘予防・水分摂取・適度な活動)が再発予防に役立つとされています。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。