「納豆は体によい」という印象をお持ちの方は多いと思います。その理由の一つとして、食物繊維が含まれていることが挙げられます。しかし、「実際にどれくらい摂れるのか」「他の食品と比べて多いのか少ないのか」は、意外と知られていません。
食物繊維は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においても積極的な摂取が推奨されている栄養素です。成人(18〜64歳)の目標量は男性で1日21g以上、女性で18g以上とされています。一方、現代の日本人の平均的な摂取量はこれを下回っているとも指摘されており、食物繊維をどの食品から補うかは多くの方にとって現実的な課題といえます。
本記事では、納豆に含まれる食物繊維の量や特徴を整理しながら、日常の食事で上手に活用するための考え方をご紹介します。なお、具体的な食事指導や体調管理については、かかりつけ医や管理栄養士にご相談ください。
文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」によると、糸引き納豆100gあたりの食物繊維総量は約6.7gとされています。市販の納豆は1パック約40〜50gの商品が多いため、1パックあたりの食物繊維量は約2.7〜3.4gが目安となります。
ほうれん草(ゆで)100gあたり約3.6g、ごぼう(ゆで)100gあたり約6.1gなどと比較すると、納豆は同等かやや少ない水準ですが、「加熱不要で手軽に摂れる」という点で継続しやすい食品の一つです。ただし、商品によって含有量に差があるため、詳しくは各商品の栄養成分表示をご参照ください。
食物繊維は大きく2種類に分けられます。
- 水溶性食物繊維:水に溶けてゲル状になり、糖質や脂質の吸収をゆるやかにする働きが知られています。昆布、わかめ、オーツ麦などに多く含まれます。
- 不溶性食物繊維:水に溶けず、便のかさを増やして腸の動きをサポートする働きが知られています。野菜、豆類、きのこなどに多く含まれます。
納豆(大豆)に含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維が大部分を占めています。水溶性食物繊維の比率は比較的低いため、バランスよく摂るためには昆布や海藻などの食材と組み合わせることが参考になります。
納豆は大豆を納豆菌で発酵させたものです。発酵の過程でビタミンK2(メナキノン-7)が増加するほか、大豆たんぱく質の一部が分解されてアミノ酸に変化し、消化・吸収が変わる可能性が指摘されています。また、納豆特有の成分であるナットウキナーゼも含まれています。
一方で、食物繊維の総量は大豆から納豆になっても大きく増えるわけではなく、ほぼ大豆由来の食物繊維がそのまま残る形となります。発酵によって「食物繊維が増える」わけではない点は整理しておくとよいでしょう。
納豆は加熱の必要がなく、パックを開けてそのまま食べられる手軽さが大きな特徴です。調理の手間がかからないため、毎日の食事に継続して取り入れやすいという生活者目線のメリットがあります。食物繊維摂取で大切なのは一時的な量よりも日々の積み重ねであり、続けやすい食品を選ぶことは合理的な考え方といえます。
納豆は食物繊維だけでなく、植物性たんぱく質・カルシウム・鉄・マグネシウムなどのミネラルも含んでいます。1パックで複数の栄養素を一度に補えるため、食事全体のバランスを整える一助となります。ただし、納豆だけで1日の栄養需要をすべて賄えるわけではなく、あくまで食事全体の中の「一品」として位置づけることが大切です。
食物繊維の摂取に「食べる時間帯による効果の差」が明確に示されているわけではありません。朝食のご飯にのせる、昼食の定食の副菜にする、夕食の冷ややっこと合わせるなど、生活リズムに合ったタイミングで無理なく続けることが重要です。
1日の食物繊維目標量(成人女性18g以上、成人男性21g以上)を納豆だけで満たすことは現実的ではありません。野菜・海藻・きのこ・豆類を組み合わせることで、不溶性・水溶性の両方をバランスよく摂りやすくなります。たとえば、納豆ごはんに具だくさんの味噌汁(わかめ・豆腐・ごぼうなど)を添えることで、食物繊維の種類と量を補うことができます。
白米よりも玄米・雑穀米・麦ごはんは食物繊維が豊富です。全粒粉パンやライ麦パンも同様です。納豆を玄米ごはんや雑穀ご飯と組み合わせると、食物繊維の摂取量を増やしやすくなります。急に主食を切り替えると消化器症状が出る場合もありますので、徐々に取り入れることをお勧めします。
納豆ごはん自体は食物繊維を摂りやすい食べ方ですが、ごはんの量が多くなりすぎると糖質が過多になる場合もあります。また、トッピングや付け合わせの内容によって食事全体の栄養バランスが変わります。「納豆を食べているから安心」と一品に依存せず、野菜や汁物などとの組み合わせを意識することが大切です。
健康な方が一般的な量(1〜2パック/日)を食べることで大きな問題が生じることは少ないとされていますが、過剰摂取は腹部膨満感や軟便・下痢につながる場合があります。腸が敏感な方(過敏性腸症候群の疑いがある方など)や、消化器系の疾患がある方は、食べる量について主治医や管理栄養士にご相談ください。食物繊維のとりすぎについては別記事でも詳しく解説しています。
納豆に付属のたれやからしを使うと塩分が加わります。高血圧や腎疾患などで塩分制限を指示されている方は、タレの量を減らす・薄めのしょうゆに替えるなど工夫されることをお勧めします。塩分管理が必要な方は、食事指導を受けている医師や管理栄養士にご確認ください。
- 大豆アレルギーのある方は納豆を避ける必要があります。症状が出た場合はすみやかに医療機関を受診してください。
- ワルファリン(抗凝固薬)を服用中の方は、納豆に豊富なビタミンK2が薬の効果に影響を及ぼす可能性があるため、担当医から指示を受けている場合は必ず医師・薬剤師にご相談ください。
- その他、持病や服薬がある場合は、自己判断せず必ず医療専門家にご確認ください。
上記はあくまで一例です。食事は個人の健康状態・好み・生活リズムに合わせて調整することが基本であり、特定の疾患をお持ちの方は医師や管理栄養士のご指導のもとで食事内容をご検討ください。
コンビニでは、納豆巻き・納豆パック・もずく酢・海藻サラダなどが手軽に選べます。外食でも、定食の副菜にひじきの煮物やきんぴらごぼうを追加するなど、食物繊維を意識した選択がしやすくなっています。コンビニのおにぎりを玄米・もち麦入りのものに替えるのも一つの工夫です。
健康な方が1〜2パック/日を目安に食べることは、一般的な食生活の範囲内と考えられています。ただし、大豆アレルギー・抗凝固薬の服用・特定の疾患がある方は制限が必要な場合があります。体調の変化があれば自己判断せず、医師にご相談ください。
便通は食事内容だけでなく、水分摂取量・運動量・睡眠・ストレスなど多くの要因に影響を受けます。食物繊維を含む食品を組み合わせて摂ることは腸内環境を整える一助になるとされていますが、「納豆を食べれば必ず便通が改善する」と断言することはできません。便秘が続く場合は、生活習慣全体の見直しと医療機関への相談をお勧めします。
文部科学省の成分表によると、糸引き納豆(100g:食物繊維6.7g)とひきわり納豆(100g:食物繊維5.9g)では、糸引き納豆のほうがやや多い傾向があります。ただしこれは平均的な数値であり、製法やメーカーにより異なる場合があります。選ぶ際は商品ごとの栄養成分表示をご確認ください。
納豆はたんぱく質・食物繊維を含みつつカロリーが比較的低い食品です。ただし、「納豆を食べれば体重が減る」といった効果が保証されているわけではありません。食事全体のカロリーバランスと栄養バランスを整えることが基本であり、ダイエット目的の食事管理は管理栄養士や医師にご相談されることをお勧めします。
以下のような症状が続く場合は、自己判断せず医療機関を受診されることをお勧めします。
- 2週間以上続く便秘・下痢
- 腹痛や腹部の張り感が強い・繰り返す
- 便に血が混じる(血便・タール便)
- 体重の急激な減少
- 食欲不振や嘔気・嘔吐が続く
これらは消化器疾患のサインである可能性があります。食物繊維の摂取量を増やすなどの食事改善を試みる前に、まず症状の原因を確認することが重要です。
納豆は1パック(約40〜50g)で食物繊維を約2.7〜3.4g摂ることができ、調理不要で毎日の食事に取り入れやすい食品の一つです。ただし、1日の食物繊維目標量(成人で18〜21g以上)を納豆だけで補うことは難しく、野菜・海藻・きのこ・豆類・雑穀など多様な食材と組み合わせることが大切です。
また、大豆アレルギーのある方や抗凝固薬を服用中の方など、摂取に注意が必要なケースもあります。体調や持病がある場合は、医師や管理栄養士のご指導のもとで食事内容をご検討ください。納豆を「食事の一品」として無理なく続けることが、食物繊維を日常的に補う現実的なアプローチといえるでしょう。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
「最近お腹の調子が気になる」「食事内容について専門家に相談したい」など、気になる症状やご不安があれば、消化器外科専門医にお気軽にご相談ください。
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- Web予約:https://ai-tamaplaza.reserve.ne.jp/sp/index.php
- 公式サイト:https://aiplusclinic-tamaplaza.com/
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- 所在地:神奈川県横浜市青葉区美しが丘1-5-5 Retetamaplaza-1F(たまプラーザ駅 最寄り)
症状が気になる場合は、早めにご相談されることをお勧めします。