便秘で腹痛が起こるのはなぜ?原因・対処法・受診の目安を消化器外科専門医が解説
お腹が痛いのになかなか便が出ない、あるいは便秘が続いているうちに腹痛が強くなってきた——そのような経験をお持ちの方は少なくありません。便秘による腹痛は日常的によくある症状ですが、痛みの性質や伴う症状によっては、緊急性の高い疾患が隠れている場合もあります。本記事では、便秘と腹痛の関係を医学的な視点から整理し、自宅での対処法や受診の目安をわかりやすくご説明します。なお、本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療は必ず医師の診察のもとで行ってください。
便秘で腹痛が起こるのはなぜ?まず知っておきたい基本
便が腸内に長くとどまると、腸管がその内容物によって伸展(引き伸ばされること)します。腸壁にある神経が刺激されると、不快感や痛みとして感じられます。また、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が乱れることで、腸がけいれんしたり、動きが過剰になったりして痛みが生じることもあります。さらに、腸内でガスが産生・蓄積されると腹部膨満感や張り感を伴う痛みにつながります。これらは便秘に伴う腹痛の基本的なメカニズムです。
便秘と腹痛が同時に起こる主な原因
機能性便秘による腹痛
器質的な病変(腫瘍や炎症など)がなく、腸の動きの低下や排便習慣の乱れによって生じる便秘を「機能性便秘」と呼びます。日本内科学会や日本消化器病学会のガイドラインでも広く取り上げられている病態で、食事内容の偏り・運動不足・ストレス・不規則な生活リズムなどが複合的に関与します。腸の動きが低下すると、便が大腸内に長くとどまって水分が吸収されすぎ、硬くなった便が排出しにくくなり腹痛につながります。
便が硬く詰まりやすいときの腹痛
水分摂取が少ない場合や、野菜・食物繊維が不足している食生活が続くと、便が硬くなりやすくなります(いわゆる「兎糞状便」)。硬い便を排出しようとすると腸が強く収縮し、けいれん性の痛みが起こることがあります。また、直腸付近に硬便が詰まると、下腹部に重苦しい痛みや圧迫感が生じる場合があります。便秘 お腹痛いの記事もあわせてご参照ください。
ガスがたまってお腹が張るときの腹痛
腸内細菌が食物を分解する際にガスが産生されますが、便秘によって腸の動きが悪くなるとガスが排出されにくくなります。腹部全体の膨満感や「張り」を感じたり、差し込むような断続的な痛みとして自覚されることがあります。
便秘以外の病気が隠れている場合
腹痛と便が出ない状態が重なる場合、腸閉塞(イレウス)・虫垂炎・憩室炎・過敏性腸症候群(IBS)などの疾患が原因となっている可能性もあります。これらは自己判断が難しく、症状が強い場合や発熱・嘔吐を伴う場合は早期の受診が求められます。
腹痛のタイプで考える便秘との関係
痛み方・場所・持続時間は、原因を考える手がかりになります。ただし、これらはあくまで参考であり、自己診断には限界があります。
キリキリ・差し込む痛み
腸のけいれんやガス貯留に伴うことがある痛みです。短時間でおさまることもありますが、繰り返すようであれば過敏性腸症候群なども考慮が必要です。
鈍い痛み・重苦しさ
便やガスの停滞、腹部膨満感と関連しやすいタイプです。特に食後に増強することがあります。
下腹部の痛み
直腸付近に便が貯留している場合や、排便困難感と一緒に現れることがあります。排便後 腹痛について別記事でも解説していますのでご覧ください。
左下腹部や右下腹部の痛み
左下腹部はS状結腸、右下腹部は上行結腸・盲腸・虫垂に対応します。便秘以外の疾患(虫垂炎・憩室炎など)が原因となる可能性もあり、特に突発的・持続的な痛みには注意が必要です。
自宅でできる対処法
水分摂取を見直す
便に適度な水分を保つためには、こまめな水分補給が大切です。厚生労働省の「健康のための水分補給」でも1日を通じた適切な水分摂取が推奨されています。特に朝起きてすぐの1杯の水は、胃腸の動きを促すきっかけになるとされています。ただし、心臓・腎臓に持病がある方は水分摂取量の目安を主治医にご確認ください。
食物繊維と食事のとり方
食物繊維には「不溶性」(野菜・豆類・穀類など)と「水溶性」(海藻・果物・大麦など)の2種類があり、それぞれ腸への働きが異なります。不溶性食物繊維は便のかさを増やし、水溶性食物繊維は便をやわらかくする作用が期待されます。ただし、急に大量に増やすとガスが増えてお腹が張ることがあるため、少量ずつ取り入れていくことが勧められます。便秘解消に関する詳しい情報も別記事にまとめています。
軽い運動や腹部を動かす習慣
散歩や体幹をひねるストレッチなど、無理のない範囲での身体活動は腸の蠕動運動を促す助けになると考えられています。長時間の座位が続く場合は、適宜立ち上がって歩くようにすることが望ましいです。
排便リズムを整える
朝食後は胃結腸反射(食事により腸の動きが活性化する反射)が起こりやすいため、食後にトイレへ行く習慣を意識することが排便リズムの改善に役立つ場合があります。また、便意を感じたときに我慢することを繰り返すと、直腸の感覚が鈍くなり便秘が悪化しやすくなります。
市販薬を使う前に確認したいこと
市販の下剤には「刺激性下剤」(センノシドなど)と「浸透圧性下剤」(酸化マグネシウムなど)があり、それぞれ作用の仕組みが異なります。用法・用量を守って使用することが大前提です。刺激性下剤を長期連用すると腸の動きへの依存が生じる可能性が指摘されています。妊娠中・授乳中の方、腎臓に持病のある方、お子さんへの使用については、市販薬であっても使用前に医師または薬剤師へご相談ください。
やってはいけない対処法・注意点
無理にいきむ
強いいきみは肛門周囲の血管に過度な圧力をかけ、痔(いぼ痔・切れ痔)を悪化させるリスクがあります。血圧が高い方などは特に注意が必要です。
下剤を長く使い続ける
下剤は医師の指示のもと適切な量・期間で使用することが基本です。自己判断で長期にわたって服用し続けることは、腸の機能に影響する可能性があるため、改善がみられない場合は医師に相談して処方薬への切り替えや原因の精査を行うことが望ましいです。
強い腹痛があるのに様子を見る
腸閉塞(イレウス)は腸の内容物が通過できなくなる状態で、放置すると腸管壊死に至る危険があります。強い腹痛・嘔吐・腹部の著しい膨満などが重なる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
こんな症状があれば早めに受診を
強い腹痛、発熱、嘔吐がある
これらが重なる場合は、虫垂炎・腸閉塞・憩室炎などの緊急性のある疾患が疑われます。夜間・休日であっても救急受診を検討してください。
お腹の張りが強く、ガスや便がまったく出ない
腸閉塞の可能性を考慮すべき状態です。数時間以上ガスも便も全く出ない状態が続く場合は早期の受診が必要です。
血便、黒い便、体重減少がある
これらは消化管出血や悪性腫瘍などを示す可能性のあるサインです。便秘だけが原因と決めつけず、消化器内科・外科を受診してください。
便秘と腹痛が続く、繰り返す
生活改善を1〜2週間継続しても改善しない、あるいは繰り返す場合は、専門医による原因の精査が必要です。
医療機関ではどのような診察・検査を行うか
受診時には、便秘の期間・痛みの性質・排便回数・食事内容・内服薬・既往歴などの問診が行われます。腹部の触診や聴診で腸の動きや圧痛の有無を確認します。必要に応じて血液検査(炎症の程度・電解質など)、腹部X線・超音波検査・CT検査などの画像検査が行われ、悪性疾患や炎症性疾患が疑われる場合は大腸内視鏡検査が検討されることもあります。また、うんこ(便)の状態や性状の確認も診断の重要な情報になります。
便秘と腹痛に関するよくある質問
便秘の腹痛は何日続いたら受診すべきですか?
明確な日数の基準はありませんが、腹痛が数日以上続く場合や、発熱・嘔吐・血便など他の症状を伴う場合は早めに受診することをお勧めします。痛みが強い・突然始まった場合はすぐに医療機関へご相談ください。
便秘なのに下痢っぽい便が出るのはなぜですか?
これは「溢流性下痢(いつりゅうせいげり)」または「便塞栓(ふんそくせん)」と呼ばれる状態の可能性があります。直腸に硬い便が詰まり、その上から液状の便が漏れ出てくる現象です。下痢と自己判断して下痢止めを服用すると逆効果になる場合があるため、医師の診察を受けることが大切です。
妊娠中の便秘と腹痛はどう考えればよいですか?
妊娠中はホルモンの影響や子宮による腸への圧迫から便秘になりやすい時期です。一方、腹痛は切迫早産など産科的な原因である可能性も否定できないため、自己判断せず産科または主治医にご相談ください。市販の下剤も種類によっては妊娠中に使用できないものがあります。
子どもの便秘と腹痛は大人と違いますか?
小児の便秘は、トイレトレーニング・食事の変化・環境の変化などが背景にあることが多く、日本小児栄養消化器肝臓学会などでもガイドラインが作成されています。腹痛を繰り返す場合や体重増加が良くない場合は小児科への受診をお勧めします。大人と同様、症状が強い場合は早めの受診が必要です。
まとめ:便秘の腹痛は原因を見極めて早めに対処する
便秘に伴う腹痛の多くは、水分や食物繊維の摂取、適度な運動、排便リズムの改善といった生活習慣の見直しで軽減が期待できます。しかし、痛みが強い・発熱や嘔吐を伴う・血便がある・繰り返すといった場合は、便秘だけでなく他の疾患が隠れている可能性があります。自己判断には限界がありますので、気になる症状が続くときは遠慮なく消化器内科・外科を受診されることをお勧めします。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)
AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
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