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びらん性胃炎とは?原因・症状・治療法を消化器外科専門医が解説

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びらん性胃炎とは?原因・症状・治療法を消化器外科専門医が解説

胃の不快感や痛みが続くとき、「びらん性胃炎」という診断を受けた方もいらっしゃるかもしれません。「びらん」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、胃の粘膜に生じる浅いただれのことを指します。本記事では、びらん性胃炎の原因・症状・診断・治療・日常生活での注意点を、消化器外科専門医の観点からわかりやすくご説明します。なお、記事の内容はあくまでも一般的な医学情報であり、個々の症状への対応については必ず医師の診察を受けてください。


びらん性胃炎とは

びらん性胃炎(erosive gastritis)とは、胃の内壁を覆う粘膜に「びらん(erosion)」と呼ばれる浅いただれが生じた状態です。胃潰瘍のように粘膜の深い層にまで達していないものの、粘膜の表面が傷つき、赤みや出血を伴うことがあります。

胃炎は内視鏡(胃カメラ)による肉眼所見や病理組織の所見をもとに分類されており、びらん性胃炎はそのなかのひとつです。急性のものと慢性のものがあり、原因や経過によって異なる対応が求められます。


びらん性胃炎の主な原因

びらん性胃炎には、複数の原因が関与することが知られています。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染
ピロリ菌は胃の粘膜に定着し、慢性的な炎症を引き起こす細菌です。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、ピロリ菌が各種胃炎・胃潰瘍の主要な原因のひとつとして示されています。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用
いわゆる「痛み止め」として広く使用されるNSAIDs(アスピリン、ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)は、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの産生を抑制するため、継続使用によって粘膜が傷つきやすくなります。

飲酒・喫煙
アルコールは胃粘膜を直接刺激し、粘膜バリアを損傷させます。喫煙も胃粘膜の血流を低下させ、炎症を悪化させる要因として知られています。

強いストレス
身体的・精神的なストレスが続くと、胃酸の分泌バランスが乱れ、粘膜が傷つきやすくなることがあります。集中治療室で管理が必要な重篤な疾患時には「ストレス潰瘍」と呼ばれる重篤なびらん・潰瘍が起こることも知られています。

その他
食生活の乱れ(過食・不規則な食事)、刺激物の過剰摂取なども、粘膜に負担をかける要因として挙げられます。


びらん性胃炎でみられる症状

びらん性胃炎の症状は多様であり、個人差があります。代表的なものとして以下が挙げられます。

  • みぞおちの痛み・不快感:食後や空腹時に感じやすい傾向があります
  • 胃もたれ・膨満感:食事のあとに胃が重く感じる
  • 吐き気・嘔吐:症状が強い時期に現れることがあります
  • 胸やけ:胃酸が逆流することで生じる場合があります
  • 食欲低下:胃の不快感が続くことで食欲が落ちることがあります

なお、症状がほとんどなく、内視鏡検査ではじめてびらんが見つかる場合もあります。症状の有無や程度だけで重症度を判断することは難しいため、気になる場合は医師の診察を受けることが大切です。


びらん性胃炎と他の胃炎との違い

似た名称の診断が複数あるため、整理してご説明します。

診断名 粘膜の状態の特徴
表層性胃炎 粘膜の最表層のみに炎症がある状態。びらんを伴わないことが多い
びらん性胃炎 粘膜にただれ(びらん)が生じているが、筋層には達していない
萎縮性胃炎 粘膜が萎縮(薄くなる)した状態。ピロリ菌感染との関連が深い
胃潰瘍 びらんよりも深く、粘膜筋板を超えた欠損(潰瘍)が生じている状態

萎縮性胃炎は、ピロリ菌感染が長期間続いた場合に進行しやすく、胃がんリスクとの関連でも注目されている状態です。また、胸やけや逆流症状が目立つ場合は逆流性胃炎(逆流性食道炎)との鑑別も重要となります。


びらん性胃炎の診断方法

びらん性胃炎の診断には、医師による総合的な評価が必要です。

問診
症状の内容・期間・使用中の薬(特にNSAIDs)・飲酒量・喫煙習慣・ストレスの有無などを詳しく確認します。

内視鏡検査(上部消化管内視鏡・胃カメラ)
確定診断のために最も重要な検査です。胃粘膜の状態を直接観察し、びらんの部位・数・形態を確認します。必要に応じて生検(組織の一部を採取して病理検査)を行います。

ピロリ菌検査
内視鏡時の生検検体を用いた迅速ウレアーゼ試験や、呼気試験・便抗原検査・血中抗体検査など、複数の方法があります。

血液検査
炎症の程度や貧血の有無(出血を伴う場合)などを評価するために行われることがあります。


びらん性胃炎の治療

治療は原因の除去と粘膜の回復促進が基本です。主な治療法を整理します。

原因の除去
NSAIDsを使用中の場合は、担当医と相談のうえで変更や中止、胃粘膜保護薬との併用を検討します。飲酒・喫煙の見直しも重要です。

胃酸を抑える薬(酸分泌抑制薬)
プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などが使用されます。胃酸の過剰分泌を抑え、粘膜の修復を助けます。

粘膜保護薬
胃粘膜を保護・修復する薬(スクラルファート、レバミピドなど)が併用されることがあります。

ピロリ菌除菌療法
ピロリ菌感染が確認された場合、抗菌薬と酸分泌抑制薬を組み合わせた除菌治療が行われます。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌陽性の胃炎に対して除菌治療が推奨されています。除菌成功後に炎症が改善されるケースが多いとされています。

薬の種類・用量・期間は病状によって異なり、自己判断で中断することは再発や悪化につながる可能性があります。必ず医師の指示に従って服薬してください。


日常生活で気をつけたいこと

治療と並行して、日常生活の見直しも症状の改善や再発予防に役立つことがあります。

  • 飲酒の節制:アルコールは胃粘膜への刺激が強いため、治療中は控えることが望ましいとされます
  • 禁煙または減煙:喫煙は胃粘膜の回復を妨げる可能性があります
  • NSAIDsの取り扱い:痛み止めが必要な場合は自己判断でなく医師・薬剤師に相談し、必要に応じて胃薬との併用を検討します
  • 食事の工夫:刺激物(辛いもの・酸味の強いもの)・脂っこい食事・炭酸飲料などを控え、規則正しく適量を食べることが基本です
  • ストレス管理と睡眠の確保:十分な休養と睡眠は、自律神経のバランスを整えることにつながります
  • コーヒー・緑茶の過剰摂取に注意:カフェインは胃酸分泌を促進する可能性があります

なお、食事の注意点は症状や体質によって異なります。具体的な食事指導については、受診時に医師・管理栄養士にご相談ください。


放置するとどうなるか

「胃炎だから様子を見よう」と自己判断で経過を観察することには注意が必要です。

びらん性胃炎を放置した場合、炎症が繰り返されることで潰瘍(より深い欠損)に進展したり、出血が持続して貧血をきたしたりするリスクが生じることがあります。また、ピロリ菌感染に伴う慢性炎症が長期間続くと、萎縮性胃炎へと進展し、胃がんリスクが高まる可能性があることが国内外の研究から示されています。

さらに、胃の症状に似た症状を呈する別の疾患(胃潰瘍、胃がん、機能性ディスペプシアなど)が隠れている場合もあります。症状が続く場合は自己判断を避け、医療機関を受診することをお勧めします。


受診の目安

以下のような状況では、早めに消化器科・内科を受診されることをお勧めします。

  • 胃の痛みや不快感が2週間以上続く
  • 症状が繰り返し起こる
  • 黒い便(タール便)・吐血がある(この場合は速やかに受診を)
  • 体重が意図せず減少している
  • 食事がほとんど摂れない状態が続いている
  • 市販の胃薬を服用しても改善しない

特に黒い便や吐血は消化管出血のサインである可能性があり、速やかな対応が必要です。


びらん性胃炎に関するよくある質問

Q. 市販の胃薬で対応できますか?
A. 軽度の胃の不快感に対して市販薬が一時的に症状を和らげることはありますが、びらんの原因(ピロリ菌感染・NSAIDs使用など)は市販薬だけでは解決できません。症状が続く場合や繰り返す場合は、内視鏡検査を含む医師の診察が必要です。

Q. 食事はどんなものに気をつければよいですか?
A. 刺激物・アルコール・脂っこい食事・炭酸飲料などを控え、消化のよいものをゆっくりよく噛んで食べることが基本です。ただし、食事内容の詳細は症状や体質によって異なるため、医師や管理栄養士にご相談ください。

Q. 必ず内視鏡検査を受けないといけませんか?
A. 症状が長引く場合や、ピロリ菌の有無を確認したい場合、重篤な病気を除外したい場合などには内視鏡検査が有用です。内視鏡でなければ粘膜の状態を正確に把握することが難しいため、医師が必要と判断した場合は受けることをお勧めします。

Q. ピロリ菌を除菌したら治りますか?
A. 除菌に成功すると炎症の軽減・再発率の低下が期待できるとされています。ただし、除菌後も定期的なフォローアップが推奨される場合があります。除菌の効果や経過は個人差がありますので、治療後の経過は医師と相談しながら確認してください。

Q. びらん性胃炎と機能性ディスペプシアはどう違いますか?
A. 機能性ディスペプシアは、内視鏡検査で明らかな異常が認められないにもかかわらず、胃の痛みや胃もたれなどの症状が続く状態です。びらん性胃炎は内視鏡でびらんが確認された状態であり、両者は診断の根拠が異なります。症状だけで区別することは難しいため、内視鏡検査が診断の要となります。


まとめ

びらん性胃炎は、胃粘膜のただれを特徴とする胃炎の一種であり、ピロリ菌感染・NSAIDs・飲酒・ストレスなど複数の要因が関与します。症状は胃痛・胃もたれ・吐き気など多岐にわたりますが、無症状のこともあります。

診断には内視鏡検査が重要であり、原因に応じた治療(酸分泌抑制薬・粘膜保護薬・ピロリ菌除菌など)と日常生活の改善が基本となります。症状が続く場合や繰り返す場合は、自己判断を避け、早めに医師の診察を受けることが大切です。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。


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