AST・ALTを下げるには?原因・症状・対処を内科医が解説
健康診断でAST・ALTの数値が高いと指摘され、「下げるにはどうすればよいか」と悩んでいる方は少なくありません。AST・ALTは肝臓の状態を把握するための代表的な指標であり、数値の上昇には脂肪肝・飲酒・ウイルス性肝炎・薬剤など、さまざまな原因が関わっています。まず大切なのは「原因を正しく把握し、それに応じた対処を行うこと」です。本記事では、AST・ALTの基礎知識から、数値を改善するための生活習慣のポイント、受診の目安まで、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
AST・ALTとは?肝機能をみる代表的な数値
ASTとALTの違い
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、いずれもアミノ酸の代謝に関わる酵素です。肝細胞が何らかの原因でダメージを受けると、これらの酵素が血液中に漏れ出し、血液検査の数値として検出されます。
ALTは肝臓に比較的特異的に存在するため、肝機能の指標として重視されます。一方ASTは肝臓のほか、心筋・骨格筋・赤血球にも存在するため、肝臓以外の原因でも上昇することがあります。
基準値の目安と、検査結果の見方
一般的な基準値の目安(施設により多少異なります)は以下の通りです。
| 項目 | 基準値の目安 |
|---|---|
| AST | 10〜40 U/L 程度 |
| ALT | 5〜45 U/L 程度(男女差あり) |
日本人間ドック学会のガイドラインでは、ASTおよびALTともに30 U/L以下を「基準範囲」としています。数値が基準を超えていても、1回の検査だけで診断が確定するわけではなく、経過・背景・他の検査値と合わせた総合的な評価が必要です。
AST・ALTが高いときに考えられること
数値の上昇が軽度(基準値の1〜3倍程度)か、中等度以上かによって緊急性が異なります。また、ASTとALTのどちらが高いか、その比率(AST/ALT比)も原因推定の手がかりになります。
AST・ALTが高くなる主な原因
脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患を含む)
日本で最も多い原因のひとつが脂肪肝です。過食・運動不足・肥満・糖尿病・脂質異常症などを背景に、肝細胞に中性脂肪が蓄積します。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/MASLD)は飲酒習慣がなくても発症し、AST・ALTが軽度〜中等度に上昇します。脂肪肝の詳細については脂肪肝とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
アルコールの飲みすぎ
過剰な飲酒は肝細胞に直接的な障害を与えます。アルコール性肝障害ではAST>ALTとなりやすく、γ-GTPの上昇を伴うことが多いのが特徴です。
ウイルス性肝炎
B型・C型肝炎ウイルスへの感染は、自覚症状がないまま肝機能異常が続くことがあります。健診でAST・ALTが繰り返し高い場合は、ウイルス性肝炎の検査も重要です。
薬剤性肝障害
処方薬のほか、市販薬や健康食品・サプリメントが原因で肝障害が起こることがあります。服用開始後に数値が上昇した場合は、必ず主治医に相談してください。
激しい運動や筋肉のダメージでも上がることがある
ASTは筋肉にも存在するため、激しい運動(マラソン・筋力トレーニングなど)の後に一時的に上昇することがあります。この場合はALTはあまり上がらず、CK(クレアチンキナーゼ)の上昇を伴うことが多いです。
AST・ALTを下げるには?まず行うべき対処
原因を確認するために医療機関で評価を受ける
自己判断で対処を始める前に、まず医療機関での評価が重要です。原因によって対処法が大きく異なるため、数値が高い場合は受診して背景を確認することをお勧めします。
食事を見直す
過食・高脂質・高糖質の食事は脂肪肝を悪化させます。野菜・魚・大豆製品を中心としたバランスの良い食事を心がけ、揚げ物や甘い飲み物を控えることが肝機能の改善につながると考えられています。
飲酒習慣を見直す
アルコール性肝障害が疑われる場合は、禁酒または節酒が有効です。日本肝臓学会は1日のアルコール摂取量として「純アルコール換算20g以下」を目安としています(ビール中瓶1本相当)。
運動習慣を整える
週3〜5回・1回30分程度の有酸素運動(ウォーキング・水泳など)は、内臓脂肪の減少を通じて肝機能改善に寄与することが報告されています。急激な激しい運動はかえって数値を乱すことがあるため、無理のない範囲から始めましょう。
体重管理・内臓脂肪対策を意識する
体重の5〜10%の減量により、脂肪肝の改善やAST・ALTの低下が見込めるとされています(日本消化器病学会ガイドラインより)。BMIの適正化を意識した生活改善が有効です。
服薬中の薬やサプリを自己判断で続けない
薬剤性肝障害の可能性がある場合、自己判断で服薬を継続・中断することは避け、医師に相談してください。ALTとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】では、ALTの変動に関する詳細も解説しています。
受診の目安|内科を受診したほうがよいケース
健診でAST・ALTの異常を指摘されたとき
「要観察」や「要検査」と記された場合は、自己判断で放置せず内科を受診して原因を確認することが望まれます。
数値が高い状態が続くとき
1回のみの軽度上昇は必ずしも緊急を要しませんが、複数回の検査で継続的に高い場合は精密検査が必要です。
倦怠感・黄疸・食欲低下などの症状があるとき
強い倦怠感・皮膚や白目の黄染(黄疸)・急激な食欲低下・右上腹部の痛みなどを伴う場合は、肝臓に何らかの問題が起きているサインの可能性があります。このような症状がある際は早めに受診を検討してください。
飲酒量が多い、持病がある、薬を飲んでいる場合
これらのリスク因子がある方は、定期的に肝機能をチェックすることが重要です。
検査で何を調べる?受診時に行う主な検査
血液検査で確認する項目
AST・ALTのほか、γ-GTP・ALP・総ビリルビン・アルブミン・PT(プロトロンビン時間)・B型・C型肝炎ウイルスマーカーなどを確認します。γ-GTP基準値とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせて参考にしてください。
腹部エコーなどの画像検査
腹部超音波(エコー)検査は、脂肪肝・肝硬変・肝腫瘍などを非侵襲的に評価するのに有用です。被ばくもなく外来で行えます。
必要に応じて追加する精密検査
CT・MRI・肝生検・フィブロスキャン(肝臓の硬さを測定する検査)などが必要に応じて追加されます。
AST・ALTが高いときに避けたいこと
自己判断で放置すること
「また数値が高かっただけ」と思い込んで放置すると、背景に進行性の肝疾患が隠れている場合に発見が遅れる可能性があります。
極端な食事制限や無理な運動
急激な体重減少(短期間に体重の10%以上の減少など)はかえって肝臓に負担をかけることがあります。緩やかな生活改善が基本です。
サプリメントの過剰摂取
「肝臓に良い」と謳う健康食品やサプリメントの中には、過剰摂取により薬剤性肝障害を起こすリスクがあるものもあります。摂取する場合は医師・薬剤師にご相談ください。
生活改善で意識したいポイント
肝臓に負担をかけにくい食生活
糖質・脂質の過剰摂取を避け、食物繊維・良質なタンパク質(魚・豆腐・卵など)・ビタミンを意識的に摂ることが勧められます。清涼飲料水や菓子類の摂りすぎにも注意が必要です。
続けやすい運動の考え方
「毎日30分のウォーキング」など、無理なく継続できる運動を選びましょう。強度より継続性が重要です。
飲酒との付き合い方
週2日以上の休肝日を設け、1日の飲酒量を適切にコントロールすることが推奨されています。
早めの受診で原因を見つけることが大切
数値だけでなく背景をみて判断する必要がある
AST・ALTの数値は、背景にある疾患・生活習慣・服薬状況などと合わせて総合的に評価することが重要です。数値だけで一喜一憂せず、医師の指導のもとで対応することが大切です。
診断・治療は医師の診察が前提
本記事で紹介した情報はあくまでも一般的な説明であり、個別の診断・治療方針は医師の診察をもとに判断されます。数値が気になる方は、まず医療機関にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
ASTだけ高い場合、ALTだけ高い場合は何が違いますか?
ALTは肝臓に比較的特異的であるため、ALTが単独で高い場合は肝臓由来の可能性が高いと考えられます。一方、ASTだけが高い場合は、筋肉ダメージ(激しい運動・心筋梗塞など)や溶血が関与することもあります。どちらが高いか、比率はどうかを含めて、医師が総合的に判断します。
どのくらいの数値なら受診したほうがよいですか?
一般的な目安として、ASTまたはALTが基準値の上限(約40 U/L)を超えた場合は受診を検討してください。特に100 U/Lを超える場合や、複数回連続して異常値が続く場合は早めの受診が勧められます。ただし、数値のみで緊急性が決まるわけではないため、症状がある場合はためらわずに受診してください。
AST・ALTは食事で下がりますか?
脂肪肝が原因の場合、食事改善(過食・高脂質・高糖質の是正)と適度な運動により数値が改善することがあります。ただし、ウイルス性肝炎や薬剤性肝障害など、食事改善のみでは対処できない原因も多いため、まず原因を確認することが重要です。
健診で「少し高い」と言われたら様子見でよいですか?
軽度の上昇(基準値の1〜1.5倍程度)であっても、そのまま放置すると見逃しのリスクが生じることがあります。「少し高い」と指摘された場合は、生活改善を行いつつ、内科で一度評価を受けることをお勧めします。
サプリや市販薬で下げられますか?
「肝機能を改善する」と謳うサプリメントが市販されていますが、その効果は製品によって異なり、過剰摂取によって薬剤性肝障害を招くリスクもあります。また、原因に応じた治療なしに数値だけを下げようとしても根本的な改善にはなりません。自己判断での使用は避け、医師に相談したうえで検討することが安全です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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