ガスが溜まる腹痛とは?原因・症状・対処を内科医が解説
お腹にガスが溜まって痛い、張って苦しい——そのような症状は、食事習慣や便秘、ストレスなど日常的な原因から生じることが多く、適切な対処で改善が期待できます。一方で、繰り返す腹痛や強い症状の場合には、過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患など、医療機関での精査が必要な疾患が背景にある場合もあります。本記事では、ガスによる腹痛の仕組みから原因・対処法・受診の目安まで、消化器内科の観点からわかりやすく解説します。
ガスが溜まると腹痛が起こるのはなぜ?
お腹にガスが溜まる仕組み
腸内には通常、食べ物の消化・発酵で生じるガス(水素・二酸化炭素・メタンなど)が存在します。このガスは主に腸内細菌の働きによって産生され、ゲップやおならとして体外に排出されます。しかし、産生量が増えたり排出がうまくいかなかったりすると、腸内にガスが蓄積した状態(ガスだまり)が生じます。
腸が張って痛みを感じるメカニズム
腸管内にガスが過剰に溜まると、腸壁が物理的に引き伸ばされます。腸には内臓痛を感じる感覚神経が張り巡らされており、この伸展刺激が鈍い痛みや差し込むような痛みとして感じられます。特に腸の動きが低下している場合や、腸が過敏になっている場合には、少量のガスでも不快感や痛みを感じやすくなります。
ガスが溜まりやすいときにみられる症状
お腹の張り・膨満感
腹部全体または特定の部位が張って苦しい感覚が生じます。食後に悪化することが多く、ベルトや衣服が締め付けられるように感じる方もいます。
ゲップやおならが増える
溜まったガスが上部から排出されるとゲップ、下部から排出されるとおならとなります。おならの増加についてはお腹にガスが溜まるとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】も参考にしてください。
差し込むような腹痛・鈍い痛み
腸管の収縮(蠕動運動)にともなって、ガスが移動するときに差し込むような痛みが起こることがあります。数分で和らぐ場合が多いですが、繰り返す場合は注意が必要です。
便秘や下痢を伴うことがある
便秘があるとガスが排出されにくく、症状が悪化しやすくなります。一方、下痢と便秘を繰り返す場合は過敏性腸症候群の可能性も考えられます。
ガスが溜まる腹痛の主な原因
食べ方や生活習慣によるもの
食物繊維の多い食品(豆類・キャベツ・ブロッコリーなど)は腸内発酵を促しガス産生を増やします。これ自体は必ずしも問題ではありませんが、急激に摂取量を増やすと症状が出やすくなります。
便秘でガスが排出されにくい場合
便秘になると腸内に便が停滞し、腸内細菌による発酵が長時間続くためガスが増加します。また、便がガスの排出経路を塞ぐことも症状を悪化させる要因となります。
ストレスや自律神経の乱れ
自律神経は腸の蠕動運動を調節しています。ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、腸の動きが不規則になりガスが溜まりやすくなります。ストレスと腸の関係についてはおならが多いとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご覧ください。
早食いや炭酸飲料、ガムなどの影響
食事中に空気を多く飲み込む(嚥下空気症)ことでガスが増加します。早食い・炭酸飲料の多飲・ガムを頻繁に噛む習慣は、飲み込む空気の量を増やす原因となります。
女性に多い月経周期との関連
月経前から月経中にかけてプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で腸の蠕動運動が低下し、便秘やガス溜まりが起きやすくなることが知られています。女性特有のおならや腹部膨満については女性おならよく出るとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もご参照ください。
受診を考えたほうがよい病気
過敏性腸症候群(IBS)
腹痛・腹部不快感と便通異常(下痢・便秘・その交替)が慢性的に続く機能性疾患です。ガスによる腹痛の原因として頻度が高く、日本消化器病学会のガイドラインでも生活習慣改善や薬物療法が推奨されています。
胃腸炎や感染症
細菌やウイルスによる感染性胃腸炎では、腸内環境が乱れてガス産生が増加し、腹痛や下痢が生じます。発熱・嘔吐を伴う場合は早めの受診が望まれます。
腸閉塞などの緊急性が高い病気
腸閉塞(イレウス)では、ガスや便が腸内に停滞し、強い腹痛・腹部膨満・嘔吐が起こります。便やガスがまったく出ない場合は緊急性が高く、速やかに受診する必要があります。
炎症性腸疾患などが隠れている場合
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患でも、腹痛・腹部膨満・下痢などの症状が現れます。長期間にわたって症状が続く場合には、専門的な検査が必要になることがあります。
自宅でできる対処法
お腹を温めてリラックスする
腹部を温めると腸の血流が改善し、蠕動運動が促進されることが期待されます。湯たんぽやカイロを用いて横になりながらリラックスするのも一つの方法です。
軽い運動やストレッチをする
ウォーキングなどの軽い有酸素運動は腸の動きを活発にし、ガスの排出を促す効果が期待されます。食後30分ほど歩く習慣も有用と考えられています。
便秘対策として水分と食物繊維を見直す
水分不足や食物繊維の不足は便秘の原因となります。1日1.5〜2L程度の水分摂取と、野菜・海藻・きのこなどの食物繊維を意識的に摂ることが推奨されます。
食べるスピードをゆっくりにする
よく噛んでゆっくり食べることで、飲み込む空気の量を減らすことができます。一口ごとに箸を置く、食事時間を20分以上確保するなどを意識しましょう。
ガスをためにくい食習慣を意識する
豆類・炭酸飲料・人工甘味料(ソルビトールなど)・乳製品(乳糖不耐症の方)はガス産生を増やしやすい食品です。症状が強いときは一時的に量を調整してみることも一つの対処法です。
市販薬を使う前に知っておきたいこと
整腸薬や消泡薬の考え方
ビフィズス菌・乳酸菌などを含む整腸薬は腸内環境を整える目的で使用されます。シメチコンなどの消泡薬はガスの泡を壊して排出を助けるとされています。ただし、症状の原因によって適切な薬剤は異なります。
便秘薬を使うときの注意点
市販の便秘薬を長期間使用すると、腸が薬に依存しやすくなる場合があります。1〜2週間使用しても改善が見られない場合や、腹痛を伴う強い下剤の使用は医師に相談することをお勧めします。
持病や内服薬がある場合の確認ポイント
高血圧・糖尿病・心疾患などの持病がある方や、他の薬を服用している方は、市販薬との相互作用や禁忌事項を薬剤師または医師に確認してから使用してください。
こんな症状があるときは早めに受診を
強い腹痛が続く
安静にしていても治まらない強い腹痛、または数時間以上続く腹痛は、単純なガス溜まり以外の原因が考えられます。
発熱・嘔吐・血便がある
これらの症状を伴う場合は、感染症・炎症性腸疾患・腸管出血など医療機関での評価が必要な状態の可能性があります。
お腹が強く張って便やガスが出ない
腸閉塞の可能性があります。腹部が板のように硬くなる場合には緊急受診が必要です。
体重減少や食欲低下を伴う
意図しない体重減少や食欲不振が続く場合は、消化管の炎症や腫瘍など、精密検査が必要な疾患のサインである可能性があります。
症状を繰り返して日常生活に支障がある
慢性的に症状が続いて仕事・学業・日常生活に支障をきたしている場合は、一度消化器内科を受診してご相談ください。
病院ではどんな診察や検査をする?
問診で確認する内容
症状の始まった時期・痛みの場所・性状・食事との関係・排便状況・ストレスの有無・服用中の薬などを詳しく伺います。
必要に応じて行う検査
腹部の触診・聴診に加え、血液検査・腹部X線・腹部超音波検査などを行うことがあります。炎症性腸疾患やポリープ・腫瘍が疑われる場合には、大腸内視鏡検査が検討されます。
消化器内科・内科を受診する目安
腹痛・腹部膨満・排便異常が2週間以上続く場合や、上記の危険なサインがある場合は消化器内科または内科への受診をご検討ください。
再発を防ぐために日常生活でできる工夫
食事内容と食べ方を整える
ガスを産生しやすい食品を把握し、バランスよく食べることが大切です。発酵食品(ヨーグルト・味噌・納豆など)は腸内細菌のバランスを整える助けになる可能性があります。
便秘を放置しない
便秘は腸内環境を悪化させてガス産生を増やします。毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけることも有用です。
ストレスケアと睡眠を見直す
十分な睡眠・適度な休養・趣味や運動によるリフレッシュは、自律神経の安定につながります。
症状日記をつけて傾向を把握する
何を食べたとき・どんな状況のときに症状が出やすいかを記録することで、原因の特定や医師への情報提供に役立ちます。
たまプラーザ周辺で受診を検討している方へ
受診先の選び方
腹痛・腹部膨満・排便異常が続く場合は、消化器内科または内科を標榜するクリニックへの受診が適しています。内視鏡検査や腹部超音波に対応した施設を選ぶと、必要な検査をスムーズに受けることができます。
相談しやすい症状の伝え方
受診の際は「いつから」「どこが」「どのように痛むか」「排便状況」「食事との関係」を整理してお伝えいただくと、診察がスムーズです。「ガスが溜まる」「お腹が張って痛い」という言葉そのままで構いませんので、気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
ガスが溜まる腹痛は放置しても大丈夫ですか?
一時的な食べ過ぎや便秘によるガス溜まりであれば、生活習慣の改善で落ち着くことが多いです。ただし、強い痛みが続く・発熱や血便がある・便やガスがまったく出ないなどの場合は早めに医療機関を受診してください。
何科を受診すればよいですか?
消化器内科または内科を受診されることをお勧めします。かかりつけ医がいる場合はまずそちらにご相談ください。
便秘がなくてもガスで腹痛は起こりますか?
はい。腸内細菌によるガス産生の増加、飲み込む空気の増加、腸の過敏性の亢進(IBSなど)により、便秘がなくてもガスによる腹痛は起こりえます。
ストレスだけでお腹にガスが溜まることはありますか?
あります。ストレスは自律神経を介して腸の蠕動運動に影響を与えるため、腸内のガス産生や排出に影響することがあります。精神的緊張が続くと過敏性腸症候群の症状が出やすくなることも知られています。
市販薬で様子を見てもよいケースはありますか?
軽度の腹部膨満感やガス溜まりで、発熱・血便・強い腹痛などの症状がなく、日常生活に大きな支障がない場合は、整腸薬などで一時的に様子を見ることも考えられます。ただし、1〜2週間改善が見られない場合や症状が強くなる場合は、医師への相談をお勧めします。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)/医師(医学博士)
AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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