便秘でお腹が痛い原因と対処法|受診のタイミングも医学博士が解説
便秘が続くと、お腹の痛みや張り感に悩まされることがあります。「ただの便秘だから様子を見ればよい」と思いながらも、痛みが強いと不安になる方も少なくありません。
本記事では、消化器外科専門医の視点から、便秘に伴う腹痛の仕組みや原因、自宅でできる対処法、そして見逃してはいけない症状について整理します。あくまで一般的な医学情報の提供を目的としており、診断・治療は必ず医師の診察に基づいて行われる必要があります。
- 便秘でお腹が痛いのはなぜ?まず知っておきたい基本
- 便秘と腹痛で考えられる主な原因
- 痛みのタイプで見分けるポイント
- 自宅でできる対処法
- 便秘薬を使うときの考え方
- 受診を急いだほうがよい症状
- どの診療科を受診すればよいか
- 便秘と腹痛を繰り返さないための予防のコツ
- よくある質問
- 受診の目安・まとめ
便秘でお腹が痛いのはなぜ?まず知っておきたい基本
便秘とは、一般的に排便の回数が減少したり、便が硬くなって排出しにくくなった状態を指します。日本消化器学会の慢性便秘症診療ガイドラインでも、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
便が腸内に長くとどまると、腸管が引き伸ばされたり、ガスが蓄積したりして、痛みや不快感が生じることがあります。また、腸が内容物を押し出そうとして過剰に収縮すると、けいれんのような差し込む痛みが起こることもあります。便秘に伴う腹痛については、便秘 腹痛でもさらに詳しく解説しています。
便秘と腹痛で考えられる主な原因
便が腸内にたまっている
便が大腸内に長期間停滞すると、腸壁が継続的に伸張されます。腸管の壁には痛覚に関わる神経が存在するため、この伸張が鈍い痛みや圧迫感として感じられることがあります。
ガスがたまっている
便が滞留すると、腸内細菌による発酵が進み、ガスが増加しやすくなります。ガスが腸管内にたまると腹部の膨満感や張り感につながり、場合によっては痛みを伴うこともあります。おならやガスに関連した不快感については、便秘じゃないのにおならが臭いも参考にしてみてください。
腸のけいれんや動きの乱れ
便秘の際には、腸が内容物を押し出そうとする蠕動(ぜんどう)運動が乱れることがあります。過剰な収縮(けいれん)が起こると、波状の差し込む痛みが生じることがあります。過敏性腸症候群(IBS)の便秘型でも同様のメカニズムで痛みが現れることがあります。
痛みのタイプで見分けるポイント
受診時に症状を正確に伝えるために、痛みの性質や場所を把握しておくと役立ちます。
お腹全体が重く張る
腹部全体の膨満感と重い感じは、便とガスの貯留による腸管全体の拡張が主な原因と考えられます。便秘に最も多く見られる訴えのひとつです。
左下腹部が痛い
大腸のS状結腸は左下腹部に位置しており、便がたまりやすい場所のひとつです。左下腹部の鈍痛や圧迫感は、この部位への便の停滞に関連していることがよくあります。
右下腹部や強い局所痛
右下腹部の痛みは、虫垂炎などの便秘以外の疾患でも現れることがあります。便秘のみで説明できない強い局所的な痛みがある場合は、他の病気を排除するためにも早めの受診が望まれます。
波のある痛み・けいれん様の痛み
波が来たり引いたりする痛みは、腸管の過剰な収縮(けいれん)が関係していることがあります。IBS(過敏性腸症候群)でも見られる症状です。
自宅でできる対処法
症状が軽い場合は、まず生活習慣の見直しから始めることが基本です。ただし、痛みが強い場合や嘔吐・血便などを伴う場合は、自己対処を優先せず医療機関への相談を検討してください。
水分をこまめにとる
水分が不足すると便が硬くなり、排出しにくくなります。一般的に1日1.5〜2リットル程度(食事からの水分も含む)を目安にこまめに水分を補給することが勧められています。特に朝起きたときにコップ一杯の水を飲む習慣は、腸の動きを促すきっかけになることがあります。
食事内容を整える
食物繊維は腸内容物の量を増やし、便の通過を助ける働きがあります。水溶性食物繊維(海藻・果物・大麦など)と不溶性食物繊維(野菜・豆類・玄米など)をバランスよく摂ることが推奨されています。また、食事を規則的にとることで腸の蠕動リズムが整いやすくなります。
軽い運動やお腹を温める
ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、腸の蠕動運動を促す効果が期待されています。また、腹部を温めることで腸の筋肉がリラックスし、不快感が和らぐことがあります。ただし、発熱がある場合や腹部に炎症が疑われる場合は温めることで症状が悪化することもあるため、注意が必要です。
排便習慣を整える
便意を感じたときに我慢を続けると、直腸の感受性が低下して便秘が悪化しやすくなります。朝食後は胃腸反射によって腸が活発になるため、この時間帯にトイレに行く習慣をつけることが助けになることがあります。
市販薬を使う前の注意点
市販の便秘薬を使用する際は、添付文書の用法用量を確認することが大切です。症状の原因を確認せずに安易に使用すると、腸閉塞など便秘以外の病気の発見が遅れることも考えられます。
便秘薬を使うときの考え方
便秘薬の種類と特徴
便秘薬には大きく分けて以下のような種類があります。
- 刺激性下剤(センノシド、ビサコジルなど):腸を刺激して蠕動を促すタイプ。即効性があるが、連用で慣れが生じることがある
- 浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、ラクツロースなど):腸内の水分量を増やして便をやわらかくするタイプ。比較的穏やかな作用
- 上皮機能変容薬(リナクロチド、ルビプロストンなど):医療機関で処方される薬で、慢性便秘症の治療に使用される
- 坐薬・浣腸:即効性があるが、頻回の使用は避けることが望ましい
使い続ける前に確認したいこと
便秘薬の長期使用は薬の種類によっては腸への影響が生じることがあります。また、他の薬との相互作用や、基礎疾患によっては使用に注意が必要な場合があります。2週間以上使用しても改善がない場合や、症状が変化した場合は、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
受診を急いだほうがよい症状
以下の症状がある場合は、便秘以外の重篤な病気が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関を受診することが重要です。
- 強い腹痛が続く
- 吐き気・嘔吐がある
- お腹が強く張る・ガスも出ない
- 血便、黒い便、発熱がある
- 急に便秘と腹痛が始まった
強い腹痛が続く
日常生活に支障が出るほどの腹痛が続く場合は、自己判断で様子を見ることは避けてください。
吐き気・嘔吐がある
嘔吐を伴う場合は、腸閉塞(イレウス)など緊急性が高い病態の可能性があります。
お腹が強く張る・ガスも出ない
ガスも便も全く排出されない状態は、腸の通過が障害されているサインである場合があります。
血便、黒い便、発熱がある
血便や黒色便は消化管からの出血を示すことがあり、大腸がんや炎症性腸疾患なども鑑別が必要です。発熱を伴う腹痛も感染や炎症の可能性があります。
急に便秘と腹痛が始まった
これまでと全く異なるパターンで便秘と腹痛が始まった場合は、腸の器質的な疾患(腫瘍や癒着など)の原因精査が必要なことがあります。特に2週間以上便秘が続いても症状の軽重だけで判断せず、受診を検討してください。詳細は便秘 2週間 苦しくないもあわせてご参照ください。
どの診療科を受診すればよいか
- まず内科・消化器内科:慢性的な便秘や腹痛が続く場合の第一選択
- 消化器外科:腫瘍や腸閉塞など手術を要する疾患が疑われる場合
- 救急外来:強い腹痛・嘔吐・発熱・ガスも出ない状態が急に起こった場合は救急受診を検討
迷う場合は、かかりつけ医やクリニックに相談することが最初のステップとして適しています。
便秘と腹痛を繰り返さないための予防のコツ
食事と水分の習慣化
食物繊維と水分をバランスよく、毎日継続して摂ることが基本です。一度だけ意識するのではなく、日々の食習慣として定着させることが大切です。
運動不足を減らす
エレベーターの代わりに階段を使う、一駅歩くなど、日常生活の中で無理なく体を動かす工夫が腸の活動を支えることにつながります。
ストレスと睡眠を整える
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経の影響を強く受けます。ストレスや睡眠不足が続くと腸の蠕動が乱れやすくなるため、休息と睡眠の質を意識することも便秘予防の一環です。
よくある質問
便秘でお腹が痛いとき、何を食べればよいですか
腸に負担をかけないよう、消化のよい食事(おかゆ、やわらかく煮た野菜など)を中心にしつつ、水溶性食物繊維を含む食品(バナナ、りんご、海藻、オートミールなど)を少しずつ取り入れることが参考になります。脂っこいものや刺激の強い食べ物は一時的に控える方が無難です。
便秘の腹痛は温めると楽になりますか
腹部を温めることで腸がリラックスし、痛みや不快感が和らぐことがある方もいます。ただし、虫垂炎などの炎症が原因の腹痛では温めると悪化することがあるため、発熱を伴う場合や痛みが強まるときは中止して受診を検討してください。
便秘薬は毎日飲んでも大丈夫ですか
薬の種類や個人の体質によって異なります。刺激性下剤の長期連用は、腸の感受性に影響を与えることがあると指摘されています。自己判断で長期間継続する前に、薬剤師や医師に相談することをお勧めします。
どのくらい便が出ないと受診すべきですか
日数だけで判断するよりも、腹痛・嘔吐・発熱・血便などの症状の有無を合わせて判断することが重要です。たとえ3〜4日の便秘でも、強い痛みや嘔吐を伴う場合は早めに受診してください。一方で2週間以上排便がない場合は、症状の軽重にかかわらず医師への相談を検討するとよいでしょう。
受診の目安・まとめ
便秘に伴うお腹の痛みは、腸管の伸張、ガスの貯留、腸のけいれんなどさまざまな原因で起こります。多くの場合は生活習慣の改善で対処できますが、強い腹痛・嘔吐・血便・発熱・ガスも出ない状態など「いつもと違う」症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
「便秘だから大丈夫」と自己判断せず、気になる症状は専門医に相談してください。便や腸の働きについてより詳しく知りたい方は、うんこの解説ページもあわせてご覧ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
AIプラスクリニックたまプラーザ 診療のご案内
便秘や腹痛が続いている、繰り返す、あるいは「いつもと違う」と感じる症状がある場合は、消化器外科専門医にお気軽にご相談ください。自己判断で様子を見続けることなく、まず専門医による診察を受けることが、安心への第一歩です。
受診・診療に関する詳細は、まず診療案内・受診のご案内をご確認ください。
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