膵臓がん痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説
膵臓がんは、みぞおち・背中・腰にかけての鈍い痛みや重だるさで気づかれることがあります。ただし、初期には自覚症状が乏しいケースも多く、「痛みがあるから膵臓がんだ」とも「痛みがないから大丈夫」とも断言できないのが実情です。本記事では、膵臓がんの痛みの特徴・他の病気との見分け方・受診の目安を、医学的根拠をもとにわかりやすく解説します。
膵臓がんの痛みとは?まず知っておきたいポイント
膵臓がんで痛みが出るしくみ
膵臓は胃の裏側、背骨の前方に位置する臓器です。消化酵素やインスリンなどを分泌する重要な役割を担っています。膵臓がんが進行すると、腫瘍が周囲の神経(腹腔神経叢など)や隣接する臓器・組織を圧迫・浸潤することで痛みが生じやすくなります。また、膵管や胆管が閉塞することで内圧が高まり、不快感や痛みを引き起こすこともあります。
痛み以外にあわせて起こりやすい症状
痛みとともに現れやすい症状として、体重減少・黄疸(皮膚や白目の黄染)・食欲不振・倦怠感・褐色尿・灰白色便などが知られています。これらが重なる場合は、消化器内科・内科への受診を検討することが望まれます。
膵臓がんで起こる痛みの特徴
みぞおち・背中・腰に出やすい痛み
膵臓がんの痛みは、みぞおち(上腹部中央)から背中・腰にかけて広がるように感じられることがあります。膵臓が後腹膜に接しているため、背部や腰部に痛みが放散しやすい解剖学的な特徴があります。
鈍い痛み、重だるさ、締めつけられるような痛み
鋭い刺すような痛みよりも、持続する鈍痛・重だるさ・圧迫感として表現されることが多い傾向があります。夜間に増強する、あるいは安静にしていても続くといった訴えが聞かれることもあります。
食事や姿勢で変化することがある痛み
食後に痛みが増したり、前かがみの姿勢(前屈位)で和らぐと感じたりすることがあります。仰向けに寝ると痛みが強くなりやすいという報告もあります。ただし、これらの変化は膵臓がんに特有のものではなく、他の疾患でも見られます。
痛みが出やすい場所
みぞおちの痛み
上腹部中央のみぞおちに鈍痛や重圧感が出ることがあります。胃のトラブルと混同されることも少なくありません。
背中の痛み
膵臓が後腹膜に近い位置にあるため、背中(特に左右の肩甲骨下部から腰椎周囲)に痛みが現れることがあります。
腰の痛み
腫瘍が大きくなるにつれ、腰部に及ぶ痛みが出ることがあります。腰痛と誤認されるケースもあるため注意が必要です。
左右どちらに出るかの傾向
膵臓は膵頭部・膵体部・膵尾部に分かれており、がんの発生部位によって痛みの出る場所が異なります。膵頭部がんではみぞおちや右上腹部、膵体尾部がんでは左上腹部から背中にかけての症状が出やすいとされています。
膵臓がんの痛みは初期から起こる?
初期にみられることがある症状
膵臓がんは早期には自覚症状が出にくいとされており、「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。ただし、一部の方では比較的早い段階からみぞおちや背中の不快感、食欲低下、体重減少を経験することがあります。
進行すると痛みが強くなりやすい理由
腫瘍が腹腔神経叢や周囲組織へ浸潤するにつれ、痛みの強さや持続時間が増すことがあります。また胆管閉塞が加わると黄疸が出現し、病態がより複雑になります。
他の病気との違い
胃炎・胃潰瘍との違い
胃炎や胃潰瘍でも上腹部痛が出ますが、制酸薬(PPI など)で改善することが多く、内視鏡検査で粘膜病変が確認できます。PPIについて詳しくはこちら。一方、膵臓がんによる痛みは制酸薬で改善しにくく、体重減少や黄疸を伴うことがあります。
胆のう・胆管の病気との違い
胆石症・胆のう炎では右上腹部の比較的鋭い痛み(疝痛発作)が典型的で、食後の脂質摂取後に悪化しやすい特徴があります。超音波検査で結石や炎症所見が確認されることが多いです。
腰痛や筋肉痛との違い
整形外科的な腰痛は体の動きや姿勢と関連しやすく、安静で和らぐことが多いです。一方、膵臓がんによる腰痛は安静時にも持続し、体重減少・黄疸・消化器症状を伴うことがある点が異なります。
膵炎との違い
急性膵炎は激しい上腹部痛・嘔吐・血清アミラーゼ上昇が特徴です。慢性膵炎では反復する腹痛・下痢・脂肪便が見られます。膵臓がんと膵炎は画像検査・腫瘍マーカー等で鑑別します。
受診の目安
どのような痛みなら早めの受診が望ましいか
以下のような場合は、早めに医療機関にご相談ください。
- みぞおちや背中の鈍痛が数週間以上続いている
- 痛みに加えて体重が明らかに減っている
- 食欲不振が続いている
痛みに加えて注意したい症状
黄疸(皮膚・白目の黄染)・褐色尿・灰白色便・発熱・著しい倦怠感が加わった場合は、速やかな受診が望まれます。
何科を受診すべきか
消化器内科・内科が最初の相談窓口として適切です。必要に応じて専門的な画像検査や追加検査が行われます。
病院ではどのように調べる?
問診と診察で確認すること
痛みの性状・部位・持続期間・食事との関係・体重変化・既往歴(糖尿病・膵炎・家族歴など)を詳しく確認します。
血液検査
肝機能・膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)・胆道系酵素・血糖、および腫瘍マーカー(CA19-9・CEAなど)を調べます。腫瘍マーカーは補助的な指標であり、単独では診断確定の根拠にはなりません。
画像検査で確認すること
腹部超音波検査(エコー)が簡便な初期スクリーニングとして行われます。CT検査・MRI検査・MRCP(MR胆管膵管造影)などで腫瘍の位置・大きさ・周囲への広がりを評価します。
必要に応じて行う追加検査
超音波内視鏡(EUS)・内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)・組織生検などが必要に応じて実施されます。
痛みへの対処はどうする?
市販薬を使う前に注意したいこと
市販の鎮痛薬で一時的に痛みが和らいでも、原因疾患の診断が遅れる可能性があります。症状が繰り返される・改善しない場合は自己判断で様子を見続けず、医療機関を受診してください。
医療機関で行う痛みの管理
医療機関では、痛みの原因・程度に応じた薬物療法(NSAIDs・オピオイド鎮痛薬など)が検討されます。進行がんによる難治性疼痛には腹腔神経叢ブロックが行われることもあります。痛みの管理は専門医の診察・指示のもとで行うことが前提です。
日常生活でできる負担の軽減
食事は少量に分けて摂取する、脂質の多い食事を控える、前かがみ姿勢でのクッション使用など、日常生活での工夫が一定の緩和につながることがあります。ただし、これらはあくまで補助的な対応です。
膵臓がんが疑われるときに知っておきたいこと
痛みだけで判断できない理由
同様の痛みは胃炎・胆石・膵炎・腰椎疾患など多くの疾患で生じます。痛みの性状だけで膵臓がんを特定することは医師による診察・検査なしには困難です。
早期発見のために大切な視点
膵臓がんのリスク因子(糖尿病の急激な悪化・慢性膵炎・家族歴・喫煙など)がある方は定期的な検診・検査を主治医と相談することが推奨されます。気になる症状があれば、早めに内科・消化器内科を受診することが大切です。
たまプラーザ周辺で受診を検討する方へ
内科で相談できる症状
みぞおち・背中・腰の持続する痛み、体重減少、食欲不振、黄疸など、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。腹部超音波検査・血液検査など、必要な初期検査を院内で行うことができます。
受診時に伝えるとよい内容
- 痛みが始まった時期・部位・性状(鈍痛か鋭痛か)
- 食事・姿勢との関係
- 体重変化・黄疸・食欲不振の有無
- 既往歴(糖尿病・膵炎・胆石など)・服薬中の薬
これらを事前にメモしておくと、診察がスムーズに進みます。ご予約・お問い合わせはこちらからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
膵臓がんの痛みはどの場所に出やすいですか?
みぞおち(上腹部)・背中・腰に出ることが多いとされています。がんの発生部位(膵頭部か膵体尾部か)によって、痛みの場所がやや異なる場合があります。
膵臓がんの痛みはどのくらい続きますか?
断続的ではなく、持続する鈍痛として続くことが多い傾向があります。数週間以上にわたって改善しない腹部・背部の痛みは、医療機関での診察が望まれます。
背中の痛みだけで膵臓がんを疑うべきですか?
背中の痛みの原因は筋肉・骨格・腎臓・胆道など多岐にわたります。背中の痛みだけで膵臓がんと判断することはできませんが、体重減少・黄疸・食欲不振などを伴う場合は消化器内科への受診が望まれます。
痛みがない膵臓がんもありますか?
はい。特に早期の膵臓がんでは自覚症状がほとんどない場合もあります。痛みがないからといって安心できるわけではなく、リスク因子がある方は定期的な検査が大切です。
市販の痛み止めで様子を見ても大丈夫ですか?
市販薬で一時的に痛みが緩和されることがあっても、原因の確定には医療機関での検査が必要です。症状が繰り返される・長引く場合は、自己判断で様子を見続けることは避け、内科・消化器内科を受診してください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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