腹式呼吸とは?|内科医がわかりやすく解説
腹式呼吸とは、横隔膜を主に動かしてお腹をふくらませながら行う呼吸法です。リラックス効果や呼吸を深めるはたらきが期待されており、日常のセルフケアとして広く活用されています。本記事では、腹式呼吸の仕組み・やり方・注意点を内科医の監修のもと、わかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 腹式呼吸は横隔膜を主に使い、お腹を動かしながら行う呼吸法
- 胸式呼吸より深い呼吸を意識しやすく、リラックスに役立つことがある
- 鼻から吸って、口からゆっくり長く吐くのが基本
- 無理に行う必要はなく、苦しさやめまいがあれば中止する
- 呼吸のしづらさや胸痛がある場合は医療機関への相談が大切
大切な注意
腹式呼吸は日常のセルフケアとして役立つことがありますが、医療的な治療の代わりではありません。呼吸困難、胸痛、動悸などの症状がある場合は、自己判断せず医師に相談してください。
腹式呼吸とは?
腹式呼吸の基本的な考え方
腹式呼吸は、胸ではなくお腹の動きを主体にした呼吸法です。息を吸うときにお腹がふくらみ、吐くときにお腹がへこむという動きが特徴です。特別な道具は不要で、座った状態・横になった状態など、さまざまな姿勢で実践できます。
胸式呼吸との違い
一般的な日常呼吸は「胸式呼吸」と呼ばれ、主に胸部の筋肉(肋間筋)を使って胸郭を広げることで空気を取り込みます。一方、腹式呼吸では横隔膜を積極的に上下させることで、より深く空気を肺に取り込みやすくなります。緊張時や浅い呼吸が続いているときは胸式が優位になりやすいため、意識的に腹式呼吸に切り替えることで呼吸のバランスを整える助けになるとされています。
腹式呼吸で使う筋肉と呼吸の仕組み
横隔膜がどのように動くのか
横隔膜は、胸腔と腹腔を隔てるドーム状の筋肉です。息を吸う際に横隔膜が収縮して下方に押し下げられ、肺が広がることで空気が流れ込みます。息を吐く際は横隔膜が弛緩して元の位置に戻り、肺が縮んで空気が排出されます。
お腹がふくらむ理由
横隔膜が下方に動くと、腹腔内の臓器が圧迫されてお腹が外側にふくらみます。これが腹式呼吸の際にお腹が動いているように見える理由です。肺そのものが腹部にあるわけではなく、横隔膜の動きが腹壁に伝わっているということを覚えておくとよいでしょう。
腹式呼吸で期待できること
リラックスしやすくなる理由
腹式呼吸でゆっくり深く呼吸を行うと、副交感神経のはたらきが高まりやすくなるとされています。副交感神経は「休息・回復」を担う自律神経の一方であり、心拍数の安定や筋肉の緊張緩和に関与します。ただし、効果には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
呼吸が深くなりやすい
浅い呼吸が続くと、換気効率が低下することがあります。腹式呼吸では横隔膜を大きく動かすことで、1回あたりの換気量を確保しやすくなります。呼吸が浅いと感じている方にとって、意識的に腹式呼吸を取り入れることが一助になる場合があります。
日常生活や運動時に役立つ場面
歌唱・管楽器演奏・ヨガ・ピラティスなど、腹式呼吸が意識的に活用されている場面は多くあります。また、緊張場面での気持ちの落ち着けや、軽い運動前後のクールダウンにも取り入れやすい方法です。食道裂孔ヘルニアの症状緩和においても、腹式呼吸が補助的に活用されることがあります。詳しくは親ピラー記事「食道裂孔ヘルニアとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】」もご参照ください。
腹式呼吸のやり方
基本の姿勢を整える
椅子に浅く腰かけ、背筋を自然に伸ばします。仰向けに横になった姿勢でも行えます。肩の力を抜き、お腹に手を添えると動きを確認しやすくなります。
鼻から息を吸う
鼻からゆっくりと息を吸い、お腹が前方にふくらむことを意識します。目安は3〜4秒程度。胸はなるべく動かさず、お腹だけが動くイメージで行いましょう。
口からゆっくり息を吐く
口をすぼめて、吸った時間の約2倍(6〜8秒程度)をかけてゆっくり吐き出します。お腹が自然にへこんでいくのを感じながら行います。息を吐ききることを意識すると、次の吸気がスムーズになります。
初心者が意識したい回数と時間
最初は1回3〜5分・1日1〜2回程度から始めるとよいでしょう。慣れてきたら少しずつ時間を延ばすことも可能です。継続することが重要ですが、無理は禁物です。
腹式呼吸を行うときのコツ
肩や胸に力を入れすぎない
呼吸に集中するあまり肩に力が入ると、かえって胸式呼吸に近づいてしまいます。意識的に肩を下げ、リラックスした状態を保ちましょう。
吸うことより吐くことを意識する
しっかり吐ききることで横隔膜が上がり、次の吸気で自然に空気が入りやすくなります。「吐く」動作に意識を向けると、全体的にスムーズになります。
無理のないペースで続ける
過度に力んだり、急いで呼吸したりする必要はありません。自分の心地よいペースを見つけながら続けることが大切です。
腹式呼吸がうまくできないときのチェックポイント
お腹が動いているか確認する
手をお腹の上に置いて、吸うときに手が持ち上がるかどうか確認します。手が動かない場合は、胸式呼吸が優位になっている可能性があります。
胸ばかり動く場合の見直し方
仰向けに横になり、膝を立てた姿勢で行うと重力の影響でお腹が動かしやすくなります。まずこの姿勢で練習してから、座位・立位へと移行するとよいでしょう。
練習しても難しいときに考えたいこと
腹式呼吸が難しい場合、姿勢の問題や呼吸筋の使い方の習慣が影響していることがあります。呼吸のしづらさが続く場合は、自己判断せずに医師へご相談ください。
腹式呼吸を行う際の注意点
注意したいポイント
- めまい・苦しさ・しびれがあるときは中止する
- 呼吸器疾患・心疾患・高血圧などの持病がある場合は医師に相談する
- 妊娠中や高齢の方は無理のない範囲で行う
めまい・苦しさがあるときは中止する
過換気(呼吸しすぎ)による手足のしびれ、めまい、頭がぼーっとする感覚が生じた場合はすぐに中止してください。
持病がある場合は自己判断せず医師に相談する
呼吸器疾患・心疾患・高血圧などの持病がある方は、腹式呼吸を始める前に担当医へご相談ください。呼吸法の種類や強度によって体への負荷が異なる場合があります。
妊娠中や高齢の方が気をつけたいこと
妊娠中や高齢の方は、体への影響を考慮し、無理のない範囲で行うことが大切です。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
腹式呼吸が向いている場面・向いていない場面
リラックス目的で取り入れやすい場面
就寝前・入浴後・軽いストレッチの後など、心身がある程度ゆったりしているときに行いやすいです。また、喉の違和感や緊張感を感じるときの一助としても活用されることがあります。詳しくは「喉の違和感とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】」もご覧ください。
体調不良時に無理して行わないほうがよい場面
発熱・強い倦怠感・息苦しさが強いときは、腹式呼吸の練習を優先するより体を休めることが重要です。体調が落ち着いてから再開することをお勧めします。
受診の目安
呼吸のしづらさが続くとき
安静時でも呼吸が苦しい、深呼吸ができないなどの症状が数日以上続く場合は医療機関を受診してください。
胸の痛みや強い動悸を伴うとき
胸痛・強い動悸・失神感などが伴う場合は、速やかに医師の診察を受けてください。腹式呼吸の練習よりも原因の確認が優先されます。
いつもの呼吸と違うと感じるとき
「なんとなく呼吸が変」「以前より息が続かない」と感じる場合も、早めにご相談いただくことをお勧めします。
医師が伝えたい、腹式呼吸を取り入れるときの考え方
治療の代わりではなく補助的に使う
腹式呼吸は、医療的な治療の代替手段ではありません。あくまでも日常のセルフケアや症状の補助的な管理として位置づけ、必要な治療と並行して活用することが大切です。
不安が強い場合は医療機関で相談する
「呼吸が正しくできているか不安」「症状があって怖い」と感じる場合は、独自に判断せず、医療機関でご相談いただくことをお勧めします。PPIなどの薬物療法との併用が適切かどうかも含めて、医師がご説明します。詳しくは「ppiとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】」もご参考ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 腹式呼吸は毎日やってもよいですか?
はい、体調に問題がなければ毎日行っていただけます。習慣として続けることで、自然な呼吸パターンとして身についていきます。
Q. 1回何分くらい行えばよいですか?
まずは3〜5分程度から始めることをお勧めします。慣れてきたら10〜15分程度に延ばすことも可能ですが、苦しさを感じない範囲で行ってください。
Q. 寝ながら腹式呼吸をしてもよいですか?
問題ありません。仰向けに寝た姿勢はお腹の動きを感じやすく、初心者にも取り組みやすい体勢です。就寝前のリラックスにも活用されています。
Q. 腹式呼吸でお腹がへこむのですが、間違いですか?
息を吐くときにお腹がへこむのは正しい動きです。吸うときにふくらみ、吐くときにへこむというサイクルが基本です。吸気時にもへこんでいる場合は、逆腹式呼吸になっていないか確認してみてください。
Q. どんなときに医師へ相談すべきですか?
呼吸の苦しさが続く・胸痛や動悸がある・腹式呼吸をしても症状が改善しない・持病があって試してよいか不明、といった場合は医師へのご相談をお勧めします。ご予約・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
関連記事
本記事の監修医師
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。腹式呼吸に関するご不明点や、呼吸のしづらさ・胃腸の症状など、受診の目安や検査についてお気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。