肝機能とは?原因・症状・対処を内科医が解説
健康診断で「肝機能異常」と指摘されても、自覚症状がないため軽視されがちです。しかし肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、かなり傷んでも症状が出にくい特徴があります。本記事では、肝機能の基本から検査数値の見方、原因・症状・日常生活での対処まで、消化器内科医の視点でわかりやすく解説します。健診結果が気になる方はぜひ参考にしてください。
肝機能とは?まずは「肝臓の働き」をやさしく理解する
肝臓が担う主な役割
肝臓は腹部の右上に位置する、体内最大の臓器です(成人で約1〜1.5kg)。主な働きは大きく3つあります。
- 代謝:食事で摂取した栄養素(糖質・タンパク質・脂質)を体が使いやすい形に変換する
- 解毒:アルコールや薬剤、体内で生じた有害物質を分解・無害化する
- 胆汁の生成:脂肪の消化を助ける胆汁を生成し、十二指腸へ送る
このほか、血液凝固因子やアルブミン(血液中のタンパク質)の合成も行っており、生命維持に欠かせない臓器です。
「肝機能」とは何を指すのか
「肝機能」とは、肝臓がこれらの働きを正常に行えているかどうかを示す概念です。医療現場では、血液検査で肝臓の状態を示す複数の数値(酵素・色素など)を総合的に評価します。
健康診断で「肝機能」を見る理由
肝臓の細胞が何らかの原因でダメージを受けると、細胞内の酵素が血液中に漏れ出し、数値が上昇します。自覚症状が出る前に異常値として現れることが多いため、健康診断での定期的なチェックが早期発見につながります。
肝機能でよく見る検査項目と数値の意味
AST(GOT)とは
肝細胞・心筋・骨格筋などに含まれる酵素。基準値は概ね10〜40 U/L。肝炎や脂肪肝、心筋梗塞でも上昇するため、ALTとの比較が重要です。
ALT(GPT)とは
主に肝細胞に含まれる酵素で、肝臓の炎症・障害をより特異的に反映します。基準値は概ね5〜45 U/L。詳しくはALTとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もご参照ください。
γ-GTPとは
胆道・肝臓に多く含まれる酵素。アルコールや薬剤の影響を受けやすく、飲酒習慣がある方で高くなりやすい指標です。基準値は男性50 U/L以下、女性30 U/L以下が目安です。γ-GTPについてさらに詳しく知りたい方はγ-GTPとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】をご覧ください。
ALPとは
胆道系・骨・小腸などに分布する酵素。胆汁の流れが滞る胆道疾患や骨疾患で上昇します。基準値は38〜113 U/L(成人、測定法により異なる)。
ビリルビンとは
赤血球が分解されるときに生じる色素で、肝臓で処理されて胆汁に排泄されます。基準値は総ビリルビン0.2〜1.2 mg/dL。上昇すると黄疸の原因となります。
数値が高い・低いときに考えること
数値の高低だけでなく、どの項目が・どの程度・どの組み合わせで異常かを総合的に判断することが重要です。単一の数値だけで病気を断定することはできないため、医師による総合的な評価が必要です。
肝機能異常が起こる主な原因
脂肪肝・アルコールの影響
脂肪肝は肝機能異常の最も多い原因のひとつです。過食・運動不足による非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と、過度の飲酒によるアルコール性肝障害に大別されます。詳しくは脂肪肝とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】をご参照ください。
ウイルス性肝炎
B型・C型肝炎ウイルスへの感染は慢性肝炎の主要原因です。国内では特にC型肝炎が慢性化しやすく、肝硬変・肝がんへの進行リスクがあります。自覚症状が乏しいケースも多く、血液検査による確認が重要です。
薬剤やサプリメントの影響
処方薬・市販薬・健康食品・サプリメントの成分が肝臓に負担をかける「薬物性肝障害」が起こることがあります。摂取開始から数週間後に発症する場合もあり、思い当たる場合は医師に相談が必要です。
自己免疫性肝疾患や胆道系の病気
自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎など、免疫の異常が肝臓・胆道を傷める疾患も存在します。特に中高年の女性に多い傾向があります。
体重増加・生活習慣との関係
肥満・糖尿病・脂質異常症・メタボリックシンドロームは肝機能異常と深く関連します。生活習慣全体の見直しが治療・予防の基本となります。
肝機能が悪いときに現れることがある症状
初期は症状が出にくい理由
肝臓には予備能力があり、機能の多くが失われるまで自覚症状が出にくい特徴があります。これが「沈黙の臓器」と呼ばれる理由です。
だるさ・食欲不振・吐き気など
肝機能低下が進むと、全身のだるさ、食欲不振、吐き気、右上腹部の重い感じなどが現れることがあります。ただし、これらは他の多くの疾患でも見られる非特異的な症状です。
黄疸・尿の色の変化・かゆみ
ビリルビンが増加すると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、尿が濃い茶色になる、皮膚のかゆみ(胆汁酸の蓄積による)が現れることがあります。
受診を急いだほうがよい症状
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 明らかな黄疸(皮膚・眼球の黄色化)
- 急激な腹部膨満・腹痛
- 意識の混濁・言動の変化(肝性脳症の可能性)
- 吐血・下血
健康診断で肝機能異常を指摘されたときの対処
まず確認したい健診結果の見方
健診結果には「要観察」「要再検査」「要精密検査」などの区分があります。どの項目が・どの程度・どの判定区分かを確認しましょう。
再検査・精密検査が必要になるケース
- 複数の肝機能項目が同時に異常
- 数値が基準値の2〜3倍以上
- 前年より数値が悪化傾向
- 「要精密検査」と明記されている
上記に該当する場合は内科・消化器内科への受診をお勧めします。
自己判断で放置しないほうがよい理由
一時的な疲労・飲酒でも数値が変動しますが、継続的な異常は肝炎・脂肪肝・胆道疾患などの早期サインである可能性があります。「症状がないから大丈夫」と放置せず、医師に相談することが大切です。
肝機能を整えるために日常生活でできること
飲酒量を見直す
厚生労働省が示す「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」は純アルコール換算で1日あたり男性40g以上、女性20g以上とされています(参考:健康日本21)。休肝日を設けることも有効とされています。
食事内容を整える
- 糖質・脂質の過剰摂取を控える
- 野菜・食物繊維・タンパク質をバランスよく摂る
- 高カロリーな間食・加工食品を減らす
体重管理と運動習慣
BMI 25以上の肥満は脂肪肝のリスクを高めます。ウォーキングや軽い有酸素運動を週3〜5回、1回30分程度継続することが生活習慣病の改善に有効とされています(日本肝臓学会のガイドラインでも推奨)。
薬・サプリの使用を見直す
健康食品・サプリメントも薬物性肝障害の原因となりえます。複数のサプリを併用している場合は、医師・薬剤師に相談してください。
睡眠や生活リズムを整える
睡眠不足・不規則な生活は代謝機能の低下につながります。1日7〜8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。
内科受診の目安と、受診先の選び方
どの診療科を受診すべきか
肝機能異常の疑いがある場合は、内科・消化器内科を受診するのが一般的です。かかりつけ医がいる場合はまず相談し、必要に応じて専門医に紹介してもらいましょう。
受診時に伝えるとよい情報
- 健診結果のコピー(数値の推移がわかれば理想的)
- 飲酒習慣・喫煙歴
- 内服中の薬・サプリメント
- 家族の肝疾患歴
検査で確認されること
初診では問診・血液検査が基本となり、必要に応じて腹部超音波検査(エコー)やCT・MRIなどの画像検査が追加されます。これにより脂肪肝・胆石・腫瘍などの有無を確認します。
肝機能異常を放置するとどうなる?
慢性化・進行のリスク
肝機能異常を放置すると、慢性肝炎へと進行するリスクがあります。慢性肝炎は長期間にわたって肝細胞の炎症・壊死が続く状態です。
肝硬変や肝がんとの関係
慢性肝炎が長期化すると、肝臓の線維化が進み肝硬変に至ることがあります。肝硬変はさらに肝細胞がんのリスクを高めます。国内の肝がんの多くが、B型・C型肝炎ウイルスや脂肪肝を背景に発症しています(日本肝臓学会の報告より)。
早めの対応が大切な理由
肝臓には高い再生能力がありますが、それは早期に原因を取り除いた場合に限られます。進行した線維化は完全には元に戻りにくいため、異常を指摘された段階での受診・精査が重要です。
当院での肝機能異常の診療について
問診・血液検査・必要に応じた画像検査
当院では、問診による生活習慣・既往歴の確認、血液検査による各肝機能マーカーの測定を実施しています。さらに必要に応じて腹部超音波検査を行い、肝臓・胆嚢・膵臓などの状態を画像で確認します。
原因に応じた治療方針の考え方
脂肪肝であれば生活習慣の改善指導、ウイルス性肝炎であれば専門機関との連携、薬物性肝障害であれば原因薬剤の中止・代替検討など、原因に応じた個別の対応を行います。
継続的な経過観察の重要性
肝疾患は数値が一時的に改善しても、生活習慣が変わらなければ再悪化するケースがあります。定期的な血液検査・画像検査による経過観察が、長期的な肝臓の健康管理につながります。
よくある質問(FAQ)
肝機能の数値が高いと言われたら、すぐ治療が必要ですか?
数値の程度・組み合わせ・症状の有無によって対応は異なります。軽度の上昇であれば生活習慣の改善と経過観察になる場合もありますが、まずは医師に相談し、原因を確認することが重要です。自己判断で「様子を見る」だけの状態は避けてください。
自覚症状がなくても受診したほうがよいですか?
はい。肝臓は症状が出にくい臓器のため、自覚症状がないこと自体は安心の根拠になりません。健診で「要再検査」「要精密検査」と指摘された場合は、症状の有無にかかわらず受診をお勧めします。
肝機能は食事や運動で改善しますか?
脂肪肝や肥満が原因の場合、食事・運動・禁酒などの生活習慣改善によって数値が改善することが多いとされています。ただしウイルス性肝炎や自己免疫性疾患など、生活習慣以外が原因の場合は医療的な介入が必要なこともあります。原因の特定が先決です。
γ-GTPだけ高いのはなぜですか?
γ-GTPはアルコールや薬剤の影響を特に受けやすい指標です。飲酒習慣がある方では、ASTやALTが正常でもγ-GTPだけ上昇することがあります。ただし、胆道疾患が隠れている場合もあるため、継続して高い場合は医療機関への相談をお勧めします。詳しくはγ-GTP基準値とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もご参照ください。
肝機能異常はどれくらいで再検査すべきですか?
「要再検査」の場合は概ね1〜3か月以内、「要精密検査」の場合はできるだけ早め(数週間以内)の受診が目安です。ただし数値の程度や症状によって異なるため、健診結果の判定区分と医師の指示に従ってください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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