胃腸炎のときに飲むべき飲み物・避けるべき飲み物|脱水を防ぐ補水の基本
胃腸炎になると、嘔吐や下痢によって体内の水分と電解質が急速に失われます。このとき「何を飲めばよいか」「何を避けるべきか」を正しく知っておくことが、症状の悪化を防ぐうえで重要です。本記事では、消化器外科専門医の観点から、胃腸炎における飲み物の選び方・飲み方の基本を医学的根拠に基づいて解説します。なお、診断や治療の判断はかならず医師の診察を前提としてください。
胃腸炎のとき「何を飲めばいいか」を最初に確認
胃腸炎の際に飲み物が重要視される最大の理由は、脱水の予防です。嘔吐・下痢・発熱が重なると、水分だけでなくナトリウムやカリウムといった電解質も同時に失われます。水だけを補給しても電解質の不均衡が残るため、まず「何を・どのように飲むか」を意識することが回復への第一歩となります。
急性胃腸炎の原因や全体像についても、あわせてご参照ください。
胃腸炎で起こりやすい脱水の仕組み
胃腸炎では、嘔吐・下痢・発熱の三重の要因から水分が失われます。発熱時は不感蒸泄(皮膚・呼吸から蒸発する水分)も増加します。日本消化器病学会のガイドラインでも、急性胃腸炎における脱水は重症度を左右する重要な因子として位置づけられており、軽度の脱水でも倦怠感・頭痛・集中力低下などを招くことがあります。
胃腸炎のときに基本となる飲み物
経口補水液が向いている場面
経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、WHO(世界保健機関)が推奨する水分・電解質補給の基本製剤です。水と電解質・糖分のバランスが腸管での吸収に最適化されており、嘔吐・下痢があるときに最も優先して検討すべき飲み物です。
飲み方の基本は「少量・頻回」。一度に大量に飲もうとすると胃が刺激されて嘔吐を誘発することがあります。ティースプーン1〜2杯程度(5〜10 mL)から始め、5〜10分おきに継続するのが基本的な方法です。
水・白湯・麦茶の使い分け
吐き気がおさまり、少量なら口にできる状態になったら、刺激の少ない常温〜ぬるめの水・白湯・麦茶が選択肢になります。冷たすぎる飲み物は胃腸を刺激することがあるため、できるだけ常温か人肌程度を目安にしてください。麦茶はカフェインを含まず胃腸への刺激が少ない点で使いやすい飲み物のひとつです。
スープやみそ汁は飲んでもよいか
薄めの澄んだスープや薄いみそ汁は、塩分(ナトリウム)を補う観点で活用できる場合があります。ただし、脂質が多いコンソメスープや、濃いみそ汁は胃腸への負担になることがあるため、症状が強い段階では薄めて少量から試すことが望ましいと考えられます。
症状があるときに避けたい飲み物
嘔吐が強いときに控えたいもの
- 冷たすぎる飲み物:胃腸を刺激し、嘔吐を誘発しやすい
- 一気飲み:胃に急激な負担をかける
- 炭酸飲料:炭酸ガスが胃を膨らませ、嘔吐を誘発することがある
- 香料・刺激の強い飲み物(スパイス入り飲料など)
下痢が目立つときに控えたいもの
- 糖分の多い清涼飲料・果汁飲料:高浸透圧の飲み物は腸管の水分をさらに引き出し、下痢を悪化させることがある
- アルコール:腸粘膜を直接刺激し、症状を長引かせる可能性がある
- コーヒー・紅茶・緑茶などカフェインを含む飲み物:腸のぜん動運動を促進し、下痢を悪化させることがある
- 乳製品(牛乳・ミルク系飲料):急性胃腸炎後に一時的に乳糖不耐症と類似した状態になりやすく、下痢を悪化させることがある
胃腸炎のときの飲み方のコツ
吐き気があるときの飲み方
嘔吐後すぐに飲もうとすると再び吐いてしまうことがあります。嘔吐後は15〜30分ほど安静にし、落ち着いてから5〜10 mLの少量を口に含むようにしましょう。問題なく飲めるようなら、5〜10分おきに量を少しずつ増やしていきます。「飲んでも吐く」状態が続く場合は自己対処の限界として、医療機関への受診を検討してください。
下痢があるときの飲み方
下痢では水分だけでなくナトリウム・カリウムなどの電解質も失われます。水のみで補給すると「希釈性低ナトリウム血症」のリスクが生じる場合もあるため、電解質を含む経口補水液の利用が基本です。食事が取れない状態でも補水は継続し、排泄量に見合った水分摂取を意識することが重要です。
年齢や体調による注意点
子どもの場合
乳幼児・小児は体重あたりの体液量の割合が大きく、脱水が急速に進みやすい特徴があります。「泣いても涙が出ない」「口の中が乾いている」「おしっこの回数が極端に減った」「ぐったりして目のうつろな様子」などは脱水が進んでいるサインです。これらが見られる場合は速やかに受診を検討してください。子ども用の経口補水液(市販品)を活用する場合も、年齢や体重に応じた量を守ることが重要です。
高齢者の場合
高齢になると口渇感が低下するため、「喉が渇かない」と感じていても脱水が進んでいることがあります。尿量の低下、ふらつき、皮膚の張りの低下(ツルゴールの低下)などは脱水のサインとして意識してください。高齢者では軽い脱水でも意識障害や転倒リスクが高まるため、こまめな水分補給を周囲がサポートすることが望ましいとされています。
持病がある場合
腎疾患・心疾患・糖尿病などをお持ちの方は、飲み物の種類や量に特別な配慮が必要です。腎疾患ではカリウムの制限が必要なことがあるため、カリウムを含む経口補水液が適さない場合があります。心疾患ではナトリウムの過剰摂取を避ける必要があることもあります。糖尿病の方は糖分の多い飲み物に注意が必要です。持病をお持ちの場合は、かかりつけ医に事前に相談したうえで対応方針を確認しておくことをおすすめします。
胃腸炎で「食べられない・飲めない」ときの対応
食欲がない場合は無理に食べる必要はありません。まず補水を最優先とし、経口補水液や水・白湯を少量ずつ継続することを目指してください。飲み物が口にできるようになったら、お粥・うどん・トーストなど消化のよい食べ物から少量ずつ再開していくのが一般的な流れです。「絶食して腸を休める」考え方もありますが、現在のガイドラインでは過度な絶食よりも、可能な範囲で早期に水分・栄養を補給することが推奨されています。
なお、胃腸炎 ストレスが関与している場合も、まず水分補給と体の安静を優先することが基本となります。
こんなときは医療機関を受診する
以下のような症状・状態が見られる場合は、自己対処の範囲を超えている可能性があります。無理をせず医療機関を受診することを検討してください。
- 飲んでも吐き続け、水分が全くとれない状態が数時間以上続く
- 尿量が著しく減った(8時間以上出ていない)
- 血便・黒色便がある
- 激しい腹痛が持続する
- 38.5℃以上の高熱が続く
- ぐったりして意識がはっきりしない
- 乳幼児・高齢者で上記症状のいずれかが見られる
よくある質問
スポーツドリンクでも代用できますか
スポーツドリンクは経口補水液に比べて糖分が多く、電解質(ナトリウム)の濃度が低い場合がほとんどです。症状が軽度で、食事もある程度できる状態であれば一定の水分補給として活用できることもありますが、嘔吐・下痢が強い状況では経口補水液のほうが適しています。また、糖分の多いスポーツドリンクは下痢を悪化させることがあるため、状況に応じた選択が必要です。
お茶やコーヒーは飲んでも大丈夫ですか
カフェインを含む緑茶・紅茶・コーヒーは、腸のぜん動を促進し下痢を悪化させる可能性があります。症状が強い間は控えめにするか、麦茶など代替のカフェインフリーの飲み物を選ぶことが無難です。症状が落ち着いてきた段階では、少量であれば問題になりにくいことも多いですが、体調と相談しながら再開してください。
氷をなめるのはよいですか
吐き気が非常に強く飲み物を口にすること自体がつらい場合、小さな氷のかけらをゆっくりなめることで微量の水分を補給する方法は活用できることがあります。ただし、冷たさが胃腸を刺激することもあるため、胃腸への負担が少ない常温の水分が口にできるようになったら、そちらに切り替えることをおすすめします。
乳酸菌飲料やヨーグルトドリンクは飲んでよいですか
乳酸菌が腸内環境の回復に関与する可能性を示す研究もありますが、急性期(症状が強い時期)に積極的に勧める根拠は現時点では限られています。また、乳製品に対する過敏性が一時的に高まっている状態では、腹部症状が悪化することもあります。症状が軽快してきた回復期に少量から試す程度にとどめ、体調の変化を見ながら判断することが望ましいと考えられます。
まとめ:胃腸炎の飲み物は「少量ずつ、刺激の少ないもの」が基本
胃腸炎における飲み物の基本原則は、刺激の少ないもの・電解質を含むもの・少量ずつこまめに補給することの三点です。嘔吐・下痢が強い時期は経口補水液を優先し、症状が落ち着いてきたら水・白湯・麦茶へと移行しながら、食事も消化のよいものから再開していきましょう。アルコール・カフェイン・炭酸・乳製品・糖分の多い飲料は症状を悪化させることがあるため、回復するまでは控えることが望ましいです。
胃腸炎 うつるのリスクを防ぐ観点からも、感染性胃腸炎が疑われる場合は早期に医療機関を受診し、感染拡大への対応についても相談することをおすすめします。
自己判断で対処が難しい場合や、脱水・強い症状が見られる場合は早めに受診してください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)
AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
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