胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因と治療
胃潰瘍・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)は、胃や十二指腸の粘膜に傷がついて深いくぼみができる疾患です。主な原因はピロリ菌感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用です。適切な治療を行わないと、出血や穿孔などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
当院では最新の内視鏡機器とAI診断支援システムを導入し、消化性潰瘍の早期発見・早期治療に取り組んでいます。このページでは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の病態、症状、検査、治療について詳しくご紹介します。
1. 病態
消化性潰瘍は、胃酸や消化酵素による粘膜の防御機能と攻撃因子のバランスが崩れることで発生します。
主な原因
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染:胃粘膜に感染し、炎症を引き起こす
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):アスピリンやロキソニンなどの長期服用
- ストレス:重度の身体的ストレス(重症疾患、大きな手術、重度のやけどなど)
- 過剰な胃酸分泌:ゾリンジャー・エリソン症候群など
- 喫煙:胃粘膜の血流低下、粘液分泌減少
- 過度の飲酒:胃粘膜への直接的なダメージ
胃潰瘍と十二指腸潰瘍では、発生メカニズムや臨床的特徴に若干の違いがあります。十二指腸潰瘍は主に胃酸分泌過多が関与し、胃潰瘍はピロリ菌やNSAIDsの影響が強いとされています。
2. 症状
消化性潰瘍の症状は多様で、無症状の場合もあります。典型的な症状には以下のようなものがあります。
胃潰瘍の症状
- みぞおちの痛み(食後に悪化することが多い)
- 胸やけ・もたれ感
- 吐き気・嘔吐
- 食欲不振
十二指腸潰瘍の症状
- みぞおちの痛み(空腹時に悪化し、食事で改善することが多い)
- 夜間の腹痛で目が覚める
- 胸やけ
- 膨満感
高齢者では典型的な症状を示さないことも多く、無症状のまま合併症を起こす場合もあるため注意が必要です。
3. 合併症
消化性潰瘍の主な合併症には以下のようなものがあります。これらは緊急治療を要する場合が多いため、注意が必要です。
出血
潰瘍が血管を侵食することで出血が起こります。吐血(血を吐く)や黒色便(消化された血液による)として現れることがあります。重度の出血では貧血やショック症状を引き起こす可能性があります。
穿孔
潰瘍が胃や十二指腸の壁を貫通して穴が開く状態です。激しい腹痛や腹部の硬直、発熱などの症状が現れ、緊急手術が必要となることが多いです。
狭窄
潰瘍の治癒過程で瘢痕組織が形成され、胃の出口や十二指腸が狭くなる状態です。嘔吐や腹部膨満感、食後の不快感などの症状が現れます。
悪性化
稀ですが、胃潰瘍の一部は胃がんである場合があります。また、長期間の慢性胃潰瘍が胃がんのリスク因子になる可能性も指摘されています。
4. 検査
消化性潰瘍の診断には以下の検査が用いられます。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
胃カメラ検査は、消化性潰瘍の確定診断に最も信頼性の高い検査方法です。潰瘍の位置、大きさ、深さなどを直接観察でき、同時に組織検査(生検)も行えます。当院では検査前の準備についても丁寧にご説明します。
ピロリ菌検査
- 内視鏡時の生検:胃の組織を採取してピロリ菌の有無を調べます
- 尿素呼気試験:ピロリ菌が産生する酵素を利用した検査
- 血液検査:ピロリ菌に対する抗体を検出
- 便検査:ピロリ菌の抗原を検出
その他の検査
- 血液検査:貧血の有無、肝機能・腎機能、炎症マーカーなど
- 上部消化管X線検査(バリウム検査):内視鏡検査が困難な場合に選択されることがあります
内視鏡検査の費用や流れについては詳細ページをご覧ください。当院では鎮静剤を使用した「楽な胃カメラ検査」も提供しています。
5. 治療
消化性潰瘍の治療は原因に応じて異なります。
ピロリ菌除菌療法
ピロリ菌陽性の場合、除菌治療が基本となります。プロトンポンプ阻害剤(PPI)と抗菌薬を組み合わせた治療を行います。
- 一次除菌:PPI + アモキシシリン + クラリスロマイシン(7日間)
- 二次除菌:一次除菌が失敗した場合、PPI + アモキシシリン + メトロニダゾール(7日間)
薬物療法
- プロトンポンプ阻害剤(PPI):胃酸分泌を強力に抑制
- H2受容体拮抗薬:胃酸分泌を抑制
- 制酸剤:胃酸を中和
- 粘膜保護剤:胃粘膜を保護
内視鏡的止血術
出血を伴う潰瘍に対しては、内視鏡を用いた止血処置を行います。クリップ法、熱凝固法、局注法などの方法があります。
外科的治療
以下のような場合には外科的治療が検討されます。
- 内視鏡的に止血できない出血
- 穿孔(腹膜炎)
- 高度の狭窄
- 悪性腫瘍の疑い
6. 食事と予防
食事療法
急性期には消化の良い食事を摂り、回復期には以下の点に注意します。
- 規則正しい食事:空腹状態の長時間継続を避ける
- 過食を避ける:一度に大量の食事をしない
- 刺激物を控える:辛いもの、酸味の強いもの、カフェイン、アルコール
- よく噛んで食べる:消化を助ける
生活習慣の改善
- 禁煙:喫煙は潰瘍治癒を遅らせ、再発リスクを高める
- アルコール摂取の制限:胃粘膜を刺激する
- ストレス管理:リラクゼーション法の実践など
- NSAIDs使用の注意:医師の指示に従い、胃粘膜保護剤との併用を検討
再発予防
消化性潰瘍は再発しやすい疾患です。以下の点に注意しましょう。
- ピロリ菌の除菌確認:除菌治療後の検査で確実に除菌されたことを確認
- 定期的な検診:特に高リスク者(喫煙者、NSAIDs長期服用者など)
- 薬の服用:医師の指示通りに服用し、自己判断で中止しない
7. 受診の目安
以下のような症状がある場合は、消化器内科の受診をご検討ください。
- 2週間以上続くみぞおちの痛みや胸やけ
- 食後の不快感が持続する
- 夜間に腹痛で目が覚める
- 市販薬で症状が改善しない
以下の場合は緊急受診が必要です。
- 吐血(血を吐く)
- 黒色便(タール便)
- 激しい腹痛が突然発生
- 冷や汗、立ちくらみなどのショック症状
8. よくある質問
Q. ストレスだけで潰瘍はできますか?
A. 現在の医学的見解では、ストレスだけで消化性潰瘍が発生することは稀とされています。ほとんどの潰瘍はピロリ菌感染かNSAIDsの使用が関与しています。ただし、ストレスは症状を悪化させたり、治癒を遅らせたりする可能性があります。
Q. ピロリ菌の除菌後も潰瘍は再発しますか?
A. ピロリ菌の除菌に成功すると、消化性潰瘍の再発率は大幅に低下します。ただし、NSAIDsを継続して使用している場合や、喫煙、過度の飲酒などのリスク因子がある場合は再発の可能性があります。
Q. 胃カメラ検査は痛いですか?
A. 当院では、患者様の希望に応じて鎮静剤を使用した「楽な胃カメラ検査」を提供しています。鎮静下では眠っているような状態で検査を受けられるため、ほとんど苦痛を感じません。鎮静なしの場合も、現代の細い内視鏡と咽頭麻酔により、昔ほどの苦痛はありません。
Q. 治療期間はどのくらいですか?
A. 一般的に、薬物療法で4〜8週間程度で潰瘍は治癒します。ピロリ