機能性ディスペプシア(FD)の症状と治療|胃もたれ・心窩部痛の正しい向き合い方
当院では最新の診断基準に基づき、患者様一人ひとりに合わせた治療方針を提案しています。このページでは機能性ディスペプシアの症状や治療法について詳しくご紹介します。
目次
1. 機能性ディスペプシア(FD)とは
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)は、上部消化管内視鏡検査などで器質的な異常が認められないにもかかわらず、みぞおちの痛みや胃もたれ、食後の膨満感などの症状が慢性的に続く機能性消化管障害です。
国際的な診断基準である「ローマⅣ基準」では、以下の条件を満たす場合にFDと診断されます:
- 食後の膨満感、早期満腹感、みぞおちの痛み・焼ける感じのうち1つ以上の症状がある
- 症状が少なくとも3ヶ月以上持続している(発症は6ヶ月以上前)
- 内視鏡検査などで症状を説明できる器質的疾患が認められない
2. 症状の特徴
機能性ディスペプシアは、症状のタイプによって大きく2つのサブタイプに分類されます:
食後愁訴症候群(PDS)
- 食後の膨満感:食後に胃が膨らむ感覚
- 早期満腹感:少量の食事でも満腹になる
- 通常は食事との関連が強い症状
心窩部痛症候群(EPS)
- みぞおち(上腹部中央)の痛み
- みぞおちの焼けるような感覚
- 必ずしも食事と関連しない場合もある
多くの患者様はこれらのサブタイプが混在していることが一般的です。また、腹部膨満感、吐き気、げっぷ、食欲不振などの症状を伴うこともあります。
3. 警告症状(内視鏡検査が必要なサイン)
以下の症状がある場合は、機能性ディスペプシアではなく、他の疾患の可能性があるため、早急に胃カメラ(内視鏡検査)を受けることをお勧めします:
- 50歳以上で新たに発症した消化器症状
- 嚥下困難(食べ物を飲み込みにくい)
- 持続的な嘔吐
- 進行性の体重減少
- 黒色便や血便
- 貧血の症状(疲労感、めまいなど)
- 腹部腫瘤の触知
- 家族歴に胃がんや食道がんがある
当院では、内視鏡検査の前処置や検査当日の流れについて詳しくこちらでご案内しています。検査への不安がある方も、ご相談ください。
4. 診断と除外すべき疾患
機能性ディスペプシアの診断は、類似した症状を呈する器質的疾患を除外することで行います。以下の検査が一般的に行われます:
検査
- 問診と身体診察
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
- 血液検査(貧血、炎症マーカーなど)
- ピロリ菌検査
- 必要に応じて腹部超音波検査
除外すべき主な疾患
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃炎(特にピロリ菌関連胃炎)
- 逆流性食道炎(GERD)
- 胃がん・食道がん
- 胆石症・胆嚢炎
- 膵炎・膵がん
5. 治療法
機能性ディスペプシアの治療は、症状のタイプや重症度に応じて個別に計画します。以下の治療法が一般的です:
生活習慣の改善
- 少量多食:一度に多量の食事を摂らず、少量ずつ回数を分けて食べる
- ゆっくり食べる:急いで食事を摂らない
- 刺激物の制限:辛い食べ物、アルコール、カフェインの摂取を控える
- 禁煙:喫煙は症状を悪化させることがある
- ストレス管理:リラクゼーション法の実践
薬物療法
- 酸分泌抑制薬:プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2受容体拮抗薬
- 消化管運動調整薬(プロキネティクス):胃の動きを改善
- 制酸薬:胃酸を中和する薬
- 漢方薬:六君子湯など
- 抗うつ薬(低用量):脳腸相関に作用し、痛みの知覚を調整
薬物療法は症状によって選択され、複数の薬剤を組み合わせることもあります。医師の指示に従って服用することが重要です。
6. 再発予防のポイント
機能性ディスペプシアは再発しやすい疾患です。以下のポイントを心がけることで、再発リスクを軽減できます:
- 規則正しい食生活を維持する
- 十分な睡眠をとる
- 適度な運動を継続する
- ストレスマネジメント法を実践する
- 症状日記をつけて、悪化要因を特定する
- 医師の指示に従って定期的に受診する
特に食生活とストレスの管理は、症状コントロールに大きく関与します。ご自身の体調変化を観察し、悪化要因を把握することが重要です。
7. 受診の目安
以下のような場合は、当院の消化器内科を受診することをお勧めします:
- 上腹部の不快感や痛みが2週間以上続く場合
- 食後の膨満感や早期満腹感が食事を楽しめないほど強い場合
- 市販薬を使用しても症状が改善しない場合
- 症状により日常生活に支障をきたしている場合
- 前述の警告症状(赤信号)がある場合は早急に受診してください
当院では、消化器内科専門医による丁寧な診察と、必要に応じた検査を提供しています。症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
8. よくあるご質問
Q. 機能性ディスペプシアは完治しますか?
A. 機能性ディスペプシアは「機能性」の病態であるため、明確な治癒という概念よりも、症状のコントロールを目標とします。適切な治療と生活習慣の改善により、多くの患者様は症状の大幅な改善を経験しますが、ストレスなどのきっかけで再発することもあります。長期的な管理が必要な慢性疾患と考えるとよいでしょう。
Q. どのくらいの期間、薬を飲み続ける必要がありますか?
A. 治療期間は症状の重症度や反応によって異なります。一般的には4〜8週間の薬物療法を行い、症状が改善したら徐々に減量していきます。症状が持続する場合は、薬の種類を変更したり、併用療法を検討したりします。長期的な服薬が必要な場合もありますが、医師と相談しながら最適な治療期間を決定します。
Q. 食事制限は厳しく行う必要がありますか?
A. 極端な食事制限は必要ありません。ただし、個人によって症状を悪化させる食品は異なるため、症状日記などをつけて自分に合わない食品を特定することが役立ちます。一般的には辛い食べ物、高脂肪食、カフェイン、アルコールなどは控えめにし、少量多食を心がけることが推奨されます。
Q. ストレスと機能性ディスペプシアは関係ありますか?
A. はい、密接な関係があります。脳と腸は神経・ホルモン・免疫系を介して相互に影響し合う「脳腸相関」が存在します。ストレスにより消化管の運動や知覚が変化し、症状が悪化することがあります。ストレス管理は治療の重要な要素であり、リラクゼーション法や場合によっては心理療法も効果的です。
まとめ
機能性ディスペプシアは、生活の質に大きく影響する症候群ですが、適切な診断と治療により症状をコントロールすることが可能です。症状が続く場合は、自己判断せずに専門医に相談することをお勧めします。当院では患者様一人ひとりの症状に合わせた治療方針を提案し、長期的なサポートを行っています。
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監修:佐藤 靖郎 医師(医学博士)
最終更新日:2025年11月8日