急性胃腸炎(感染性胃腸炎)の対処法|正しい水分補給と受診の目安
急性胃腸炎は、嘔吐・下痢・腹痛などの症状を引き起こす消化管の炎症です。原因としてウイルスや細菌による感染が多く、特に冬季に流行するノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎が代表的です。適切な対処と水分補給が重要であり、症状や状況によっては早めの受診が必要な場合もあります。
1. 胃腸炎の主な原因
ウイルス性胃腸炎
- ノロウイルス:冬季に流行、嘔吐・下痢が主症状、感染力が非常に強い
- ロタウイルス:主に乳幼児に感染、水様性下痢・嘔吐・発熱を引き起こす
- アデノウイルス:年間を通じて発生、発熱を伴うことが多い
細菌性胃腸炎
- サルモネラ菌:生肉・卵などから感染、発熱・下痢・腹痛が特徴
- カンピロバクター:鶏肉などから感染、腹痛が強く、血便が見られることも
- 病原性大腸菌:O157など、激しい腹痛・水様性下痢・血便
これらの原因によって生じる下痢症状は、感染源や個人の免疫状態によって重症度が異なります。
2. 症状の経過
急性期(発症直後~2日目)
- 嘔吐:突然始まることが多く、特にノロウイルスでは激しい
- 下痢:水様性で頻回、日に10回以上のこともある
- 腹痛:腸の蠕動運動亢進による痛み
- 発熱:原因によっては38℃以上の発熱を伴う
回復期(3~5日目)
- 嘔吐は通常1~2日で落ち着く
- 下痢は徐々に回数・量が減少
- 食欲が少しずつ回復
ほとんどの急性胃腸炎は5~7日程度で自然に治癒しますが、脱水や二次感染には注意が必要です。症状が長引く場合や異常な腸症状がある場合は受診をお勧めします。
3. 脱水のサイン
急性胃腸炎で最も注意すべきは脱水症状です。以下のサインに注意しましょう。
軽度~中等度の脱水サイン
- 喉の渇き
- 尿量減少・尿の色が濃くなる
- 唇・口内の乾燥
- 疲労感・倦怠感
重度の脱水サイン(すぐに医療機関へ)
- 皮膚の弾力低下(つまむと戻りが遅い)
- 目が窪む・涙が出ない
- 乳児の場合、頭頂部のくぼみ(大泉門)が陥没
- 強い倦怠感、意識障害
- 6時間以上尿が出ない
特に乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方は脱水になりやすく、症状も重篤化しやすいため注意が必要です。
4. 家庭での対処法
水分補給の方法
- 経口補水液(OS-1など):水分と電解質をバランスよく補給できる
- 代替法:水1Lに対し砂糖大さじ4~6杯、塩小さじ1/2を溶かす
- 少量ずつこまめに摂取する(一度に大量に飲むと嘔吐を誘発)
食事の再開
- 最初は消化のよいおかゆ、重湯、スープなど
- 回復に合わせて徐々に普通食へ移行
- 脂っこい食事、乳製品、香辛料の強い食品は避ける
市販薬の使用
- 整腸剤:腸内環境を整える(ビオフェルミンなど)
- 制吐剤:吐き気を抑える(コリスチンなど)
- 注意:下痢止め(ロペラミドなど)は感染性胃腸炎では使用を控える(毒素を体内に留める可能性)
安静にして体力を回復させ、症状に応じた対処を行いましょう。
5. 受診の目安
以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
すぐに受診すべき症状
- 血便・黒色便
- 激しい腹痛(特に右下腹部の痛み)
- 39℃以上の高熱が続く
- 重度の脱水症状(前述)
- 嘔吐物や便に大量の血液が混じる
特に注意が必要な方
- 乳幼児(特に1歳未満)
- 高齢者(65歳以上)
- 妊婦
- 基礎疾患(糖尿病・腎臓病・心疾患など)のある方
- 免疫抑制剤服用中の方
症状が2~3日以上改善しない場合や、様子がおかしいと感じた場合も受診をお勧めします。早めのご予約で適切な治療を受けましょう。
6. 予防法
感染予防の基本
- 手洗いの徹底:特に調理前、食事前、トイレの後は必ず
- 食品の十分な加熱:中心温度85℃・1分以上
- 調理器具の消毒:まな板・包丁は使い分けるか、よく洗浄・消毒
- アルコール消毒:ノロウイルスにはあまり効果がないため、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が効果的
患者が出た場合
- 嘔吐物・便の適切な処理:ビニール手袋・マスクを着用し、ペーパータオル等で拭き取り、密閉して廃棄
- 汚染された場所の消毒:次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤を薄めたもの)
- タオル・食器の共用を避ける
7. よくあるご質問
Q. 感染性胃腸炎は抗生物質が必要ですか?
A. ウイルス性胃腸炎には抗生物質は効果がありません。細菌性でも、多くの場合は自然に回復するため不要ですが、重症例や特定の細菌(赤痢菌やO157など)では医師の判断で抗生物質が処方されることがあります。
Q. 嘔吐が続いて水分が取れない場合はどうすれば?
A. 小さじ1杯程度の水分を5-10分おきにゆっくり摂るようにしてみてください。それでも吐いてしまう場合や、6時間以上水分が摂れない場合は医療機関を受診してください。点滴による水分補給が必要な場合があります。
Q. 学校・保育園・職場への復帰の目安は?
A. 主な症状(嘔吐・下痢)が治まってから48時間経過するまでは、集団感染防止のために自宅で休養することをお勧めします。特にノロウイルス感染症は症状が治まった後も1-2週間はウイルスを排出している可能性があります。
Q. 胃腸炎は家族にうつりますか?
A. 感染性胃腸炎、特にノロウイルスやロタウイルスは非常に感染力が強く、家族内での二次感染が多く見られます。患者の排泄物や嘔吐物の処理は手袋・マスクを着用し、手洗い・消毒を徹底して行ってください。
まとめ
急性胃腸炎は適切な水分補給と休養で回復することが多い疾患です。しかし、脱水や重症化のリスクもあるため、症状や状況に応じて医療機関への受診を検討しましょう。特に高齢者や乳幼児は注意が必要です。日頃からの手洗いと食品衛生の徹底が予防の基本となります。
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監修:佐藤 靖郎 医師(医学博士)
最終更新日:2025年11月8日