
胃がんは日本人に最も多いがんの一つで、年間約12万人が新たに診断されています。早期発見できれば5年生存率は95%以上ですが、大腸がんや膵臓がんと同様に、初期段階ではほとんど症状がありません。
消化器外科専門医として30年以上の臨床経験から、見逃してはいけない胃がんの7つの警告サインと、最新のエビデンスに基づく診断・治療法について、わかりやすく解説します。
目次
1. 胃がんとは?基礎知識と疫学
1.1 胃がんの定義と分類
胃がん(gastric cancer)は、胃の粘膜から発生する悪性腫瘍です。組織学的には以下のように分類されます:
【組織型分類(Lauren分類)】
1.2 日本における胃がんの疫学
日本は世界的に見ても胃がんの罹患率が高い国の一つです(日本のがん統計参照):
【最新統計データ(2023年)】
近年、ピロリ菌除菌治療の普及により、胃がんの罹患率・死亡率は緩やかに減少傾向にあります。しかし依然として、肺がん、大腸がんに次ぐ主要ながんです。
1.3 胃がんの発生メカニズム
胃がんの発生は、多段階発がん(multistep carcinogenesis)のプロセスを経ます:
このプロセスには通常数年〜数十年かかるため、定期的な胃カメラ検査により前がん病変(異形成)の段階で発見することが可能です。
2. 胃がんの初期症状|7つの警告サイン
2.1 見逃してはいけない7つの警告サイン
以下の症状が2週間以上持続する場合、または複数の症状が同時に現れる場合は、早急に消化器内科・外科を受診してください:
【警告サイン1】上腹部の痛み・不快感
💡 胃潰瘍、逆流性食道炎、急性胃炎と症状が重なるため、2週間以上続く場合は必ず胃カメラ検査を。
【警告サイン2】食欲不振・早期満腹感
- 特徴:
- メカニズム:
- 鑑別診断:うつ病、不安障害、機能性ディスペプシア、慢性胃炎、薬剤性
【警告サイン3】体重減少
⚠️ 急激な体重減少(月3kg以上)は進行がんの可能性が高いため、即座に受診を。
【警告サイン4】悪心・嘔吐
- 特徴:
- 進行がんの場合:
【警告サイン5】胸やけ・呑酸
- 特徴:
- 鑑別のポイント:
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)での改善が乏しい
- 嚥下困難(食べ物のつかえ感)を伴う
- 体重減少を伴う
- 症状が進行性(徐々に悪化)
【警告サイン6】貧血症状
- 症状:
- メカニズム:
- 重要性:原因不明の貧血は必ず上部・下部内視鏡検査を
【警告サイン7】黒色便(タール便)
2.2 他の疾患との鑑別
上記の症状は、以下の良性疾患でも出現します:
2.3 こんな時はすぐに受診を
6. 胃がんのステージ分類と予後
6.1 TNM分類とステージング
胃がんのステージ分類は、UICC(国際対がん連合)のTNM分類(第8版)に基づいて行われます:
【TNM分類の構成要素】
6.2 ステージ別5年生存率(日本胃癌学会 2021年)
5年生存率は、診断から5年後に生存している患者さんの割合です。早期発見が予後を大きく左右します。
【胃がんステージ別5年生存率】
| ステージ | 5年生存率 | 特徴 | 主な治療法 |
|---|---|---|---|
| IA | 97〜98% | T1N0M0(早期がん) | 内視鏡的切除(ESD) |
| IB | 90〜95% | T1N1M0 または T2N0M0 | 胃切除術+D1+リンパ節郭清 |
| IIA | 80〜85% | T1N2M0、T2N1M0、T3N0M0 | 胃切除術+D2リンパ節郭清 |
| IIB | 70〜75% | T1N3aM0、T2N2M0、T3N1M0、T4aN0M0 | 胃切除術+D2郭清+術後補助化学療法 |
| IIIA | 55〜60% | T2N3aM0、T3N2M0、T4aN1M0、T4bN0M0 | 胃切除術+D2郭清+術後補助化学療法 |
| IIIB | 35〜45% | T1N3bM0、T3N3aM0、T4aN2M0、T4bN1M0 | 術前化学療法→手術、または化学療法単独 |
| IIIC | 20〜30% | T2〜4N3bM0、T4aN3aM0、T4bN2〜3M0 | 術前化学療法→手術、または化学療法単独 |
| IV | 7〜15% | 任意のT・N、M1(遠隔転移あり) | 緩和的化学療法+支持療法 |
6.3 予後因子
胃がんの予後に影響する因子:
9. 患者さんからよくある質問(FAQ)
Q1. 胃がんは完治できますか?
Q2. 胃がんと胃潰瘍の症状はどう違いますか?
Q3. ピロリ菌を除菌すれば、胃がんにならないのですか?
Q4. 胃を全部摘出した後の生活はどうなりますか?
10. まとめ|胃がんの早期発見が生存率を左右する
本記事の重要ポイント
【1】早期発見が生存率を決定づける
- 早期ステージ(IA):5年生存率 97〜98%
- 進行ステージ(IV):5年生存率 7〜15%
- 早期発見により生存率が約90%向上
【2】見逃してはいけない7つの警告サイン
2週間以上持続する場合は消化器内科を受診
【3】ピロリ菌除菌の効果
【4】生活習慣の改善
- 減塩:食塩摂取量 6g/日未満
- 野菜・果物:1日350g以上の野菜、200g以上の果物
- 禁煙:胃がんリスク1.5〜2倍を回避
- 適度な飲酒:日本酒換算で1〜2合/日まで
- 適度な運動:週180分程度の中強度運動
【5】最新治療の進歩
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💡 専門医からのアドバイス
胃がんの最大のリスク因子はピロリ菌感染です。ピロリ菌陽性者の胃がんリスクは陰性者の約5〜10倍。除菌に成功すると、発症リスクを30〜40%低減できます(エビデンスレベル:高)。
40歳以上の方は、ピロリ菌検査と除菌治療を強く推奨します。