クローン病の症状を医学博士が徹底解説|腹痛・下痢から合併症まで完全ガイド
1. クローン病とは?基礎知識と疫学
1-1. クローン病の定義
クローン病(Crohn’s disease)は、消化管の粘膜から深層(筋層、漿膜)まで及ぶ全層性の慢性肉芽腫性炎症を特徴とする疾患です。以下の特徴があります:
クローン病の主な特徴
- 病変部位: 口腔から肛門まで消化管全域(特に回腸末端・結腸に多い)
- 炎症パターン: 非連続性・区域性(skip lesion: 飛び石状病変)
- 深達度: 全層性(粘膜から漿膜まで)
- 経過: 再燃・寛解を繰り返す慢性疾患
- 合併症: 狭窄、瘻孔、膿瘍形成
1-2. 日本における疫学データ
厚生労働省の特定疾患医療受給者証交付件数(2023年度)によると、クローン病患者数は以下のように推移しています:
| 項目 | データ |
|---|---|
| 日本の患者数 | 約77,000人(2023年度) |
| 年間新規発症数 | 約4,000〜5,000人 |
| 発症年齢(ピーク) | 10〜20代(若年層) |
| 男女比 | 約2:1(男性に多い) |
| 好発部位 | 回腸末端(60〜70%)、大腸型(25〜30%)、小腸型(5〜10%) |
※参考: 厚生労働省「難病情報センター」、日本消化器病学会ガイドライン
2. クローン病の主要症状|医学的に詳しく解説
クローン病の症状は、炎症の部位・程度・経過によって多様です。以下、臨床で最も頻繁に見られる症状を解説します。
2-1. 腹痛(最も頻度の高い症状)
📌 症状の特徴
- 部位: 右下腹部痛(回腸末端病変の典型)、下腹部全体、臍周囲
- 性質: 持続性の鈍痛、食後の増悪、痙攣性の痛み
- 頻度: クローン病患者の70〜90%に出現
- 増悪因子: 食事摂取後、ストレス、疲労
🔬 発生メカニズム
- 炎症による腸管壁の肥厚 → 腸管内腔の狭窄
- 炎症性サイトカインの放出 → 痛覚神経の刺激
- 腸管蠕動の亢進 → 痙攣性疼痛
- 腸管壁の伸展刺激 → 持続性鈍痛
⚠️ 急性腹症との鑑別が重要
右下腹部痛は急性虫垂炎との鑑別が必要です。以下の点で区別します:
- 虫垂炎: 発熱(38℃以上)、嘔吐、反跳痛(+)、McBurney点圧痛
- クローン病: 慢性経過、下痢併発、発熱は軽度、反跳痛(−)
2-2. 下痢(第2位の頻度)
📌 症状の特徴
- 頻度: 1日3〜10回以上(重症例では15回以上)
- 性状: 水様便、粘液便、時に血便
- 出現率: クローン病患者の60〜80%
- 特徴: 慢性持続性(3週間以上)、夜間下痢も多い
🔬 発生メカニズム
- 小腸粘膜の炎症 → 吸収面積の減少 → 水分・電解質の吸収不良
- 胆汁酸の吸収障害(回腸病変) → 大腸への胆汁酸流入増加 → 分泌性下痢
- 炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β)の分泌 → 腸管蠕動亢進
- 腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis) → 発酵・浸透圧性下痢
💡 臨床的ポイント: 回腸末端病変では脂肪便(便が水に浮く、油っぽい)が特徴的です。ビタミンB12吸収障害による巨赤芽球性貧血も合併します。
2-3. 体重減少(栄養吸収障害の指標)
📌 症状の特徴
- 程度: 6ヶ月で5〜15kg以上の減少(活動期)
- 原因: 炎症による栄養吸収障害、食事摂取量の減少、慢性炎症による異化亢進
- 出現率: クローン病患者の40〜70%
🔬 栄養障害のメカニズム
- 小腸粘膜の広範な炎症 → 栄養素吸収面積の減少
- 食事摂取量の低下 → 腹痛・下痢を恐れて食事を控える
- 蛋白漏出性腸症 → 血清アルブミン値の低下
- 炎症性サイトカイン → 基礎代謝の亢進、筋肉分解の促進
合併しやすい栄養障害
- 鉄欠乏性貧血: 慢性出血、鉄吸収障害
- ビタミンB12欠乏: 回腸末端病変による吸収障害 → 巨赤芽球性貧血
- ビタミンD欠乏: 脂溶性ビタミン吸収障害 → 骨粗鬆症
- 低蛋白血症: アルブミン3.0 g/dL以下 → 浮腫
- 亜鉛欠乏: 味覚障害、皮膚炎
2-4. 発熱(炎症活動性の指標)
📌 症状の特徴
- 程度: 微熱(37〜38℃)が多い、活動期には38℃以上の高熱も
- パターン: 持続性または間欠性
- 出現率: クローン病患者の30〜50%
🔬 発熱のメカニズム
腸管の慢性炎症により炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)が産生され、視床下部の体温調節中枢を刺激します。また、膿瘍形成や細菌感染の合併により高熱を呈することもあります。
⚠️ 緊急受診が必要な発熱
- 38.5℃以上の高熱が持続
- 悪寒・戦慄を伴う
- 腹部の激痛・腹膜刺激症状(腹部全体が硬い)
→ 腹腔内膿瘍、穿孔、敗血症の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。
2-5. 血便・粘血便
📌 症状の特徴
- 頻度: クローン病患者の20〜40%(潰瘍性大腸炎より低い)
- 性状: 暗赤色便、粘液混じり、時に鮮血便
- 部位: 大腸型クローン病で頻度が高い
🔬 出血のメカニズム
腸管粘膜の深い潰瘍形成により血管が露出し、出血します。クローン病の潰瘍は縦走潰瘍や敷石状外観(cobblestone appearance)を呈するのが特徴です。
2-6. 肛門部病変(クローン病に特徴的)
📌 症状の特徴
- 頻度: クローン病患者の50〜80%に出現(特に大腸型)
- 種類:
- 痔瘻(最多): 難治性、複雑痔瘻、再発を繰り返す
- 裂肛: 治癒が遅い、外側に多い(通常は後方)
- 肛門周囲膿瘍: 発熱・腫脹・疼痛
- 肛門部潰瘍: 深い潰瘍、疼痛が強い
- skin tag: 浮腫状の皮垂
💡 肛門部病変がクローン病の初発症状となることも
若年者(10〜30代)で難治性痔瘻や複雑痔瘻を繰り返す場合、クローン病を疑い大腸内視鏡検査を行うことが推奨されます。
3. 腸管外合併症|全身性の症状
クローン病は消化管だけでなく、全身の様々な臓器に合併症を引き起こします。これは免疫異常が関与していると考えられています。
3-1. 関節症状(最多の腸管外合併症)
📌 症状の特徴
- 頻度: クローン病患者の15〜30%
- 種類:
- 末梢性関節炎: 大関節(膝・足関節・手関節)の腫脹・疼痛
- 脊椎関節炎: 腰痛、仙腸関節炎
- 強直性脊椎炎: 進行性の脊椎可動域制限
- 特徴: 非対称性、移動性、腸炎の活動性と連動することが多い
3-2. 皮膚症状
📌 主な皮膚病変
- 結節性紅斑(頻度5〜15%): 下腿の有痛性紅色結節
- 壊疽性膿皮症(頻度1〜2%): 難治性の皮膚潰瘍、下腿に多い
- 口腔内アフタ(頻度10〜20%): 再発性の口内炎
3-3. 眼症状
📌 主な眼病変
- ぶどう膜炎(頻度2〜5%): 眼痛、視力低下、充血
- 強膜炎: 眼球の痛み、視力障害
- 虹彩炎: 羞明、流涙
⚠️ 眼症状は失明のリスク
眼症状が出現した場合は、速やかに眼科受診が必要です。放置すると永続的な視力障害を残す可能性があります。
3-4. 肝胆道系合併症
📌 主な病変
- 原発性硬化性胆管炎(PSC)(頻度3〜5%): 胆管狭窄、黄疸、肝硬変へ進行
- 脂肪肝: ステロイド治療、栄養障害による
- 胆石症: 回腸病変による胆汁酸吸収障害
3-5. その他の合併症
- 腎・尿路結石(頻度10〜15%): 腎結石、尿路結石
- 骨粗鬆症: ステロイド治療、ビタミンD欠乏、慢性炎症
- 血栓症: 深部静脈血栓症、肺塞栓
- アミロイドーシス: 長期炎症による続発性アミロイドーシス
※関連記事: ストレス性胃痛の対処法、善玉菌を増やす方法
4. クローン病の重症度分類(CDAI・IOIBD)
クローン病の重症度評価には、国際的に以下の指標が使用されます。
4-1. CDAI(Crohn’s Disease Activity Index)
最も広く使用される活動性評価指標です。以下の8項目を点数化します:
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 1. 下痢回数 | 過去7日間の1日平均回数 × 2 |
| 2. 腹痛 | 過去7日間の腹痛スコア(0〜3)× 5 |
| 3. 全身状態 | 過去7日間の全身状態スコア(0〜4)× 7 |
| 4. 腸管合併症 | 瘻孔・膿瘍・腸閉塞など(あり: +20点) |
| 5. 止痢薬使用 | 使用あり: +30点 |
| 6. 腹部腫瘤 | あり: +10点 |
| 7. ヘマトクリット値 | 性別・年齢別の標準値との差 × 6 |
| 8. 体重 | 標準体重との差(%)× 1 |
🔢 CDAI スコアの解釈
- 150点未満: 寛解期(症状なし〜軽度)
- 150〜220点: 軽症活動期
- 220〜450点: 中等症活動期
- 450点以上: 重症活動期(入院治療を要する)
4-2. IOIBD重症度分類(国際炎症性腸疾患機構)
より簡便な臨床的重症度分類として、IOIBDスコアが使用されます:
軽症
- 外来治療可能
- 経口摂取可能
- 体重減少<10%
- 発熱・頻脈なし
- 腹部腫瘤なし
中等症
- 軽症の治療に反応しない
- 発熱・体重減少・腹痛・貧血のいずれかあり
- 重症には該当しない
重症
- 以下のいずれかを満たす:
- 39℃以上の高熱
- 持続する嘔吐
- 腸閉塞の徴候
- 腹膜刺激症状
- 悪液質(cachexia)
- 腹腔内膿瘍
5. クローン病の診断基準と検査
5-1. 診断の流れ
クローン病の確定診断には、以下の総合的評価が必要です:
- 臨床症状(腹痛・下痢・体重減少・肛門病変)
- 血液検査(炎症マーカー、栄養状態)
- 画像検査(内視鏡、CT、MRI)
- 病理組織検査(生検による確定診断)
5-2. 血液検査
📌 炎症マーカー
- CRP(C反応性蛋白): 0.5 mg/dL以上で陽性(活動期は5〜10 mg/dL以上)
- 赤沈(ESR): 亢進(活動期)
- 白血球数: 増加(10,000/μL以上)
📌 栄養状態の評価
- 血清アルブミン: 3.5 g/dL以下で低蛋白血症
- ヘモグロビン: 貧血の評価(男性<13 g/dL、女性<12 g/dL)
- ビタミンB12: 200 pg/mL以下で欠乏
- 血清鉄・フェリチン: 鉄欠乏性貧血の評価
5-3. 大腸内視鏡検査(確定診断に最重要)
📌 内視鏡所見の特徴
- 縦走潰瘍(longitudinal ulcer): クローン病に特徴的
- 敷石状粘膜(cobblestone appearance): 正常粘膜と潰瘍が混在
- 非連続性病変(skip lesion): 正常部分を挟んで病変が散在
- アフタ様潰瘍: 初期病変
- 狭窄: 進行期の慢性炎症による
5-4. CT・MRI検査
📌 画像検査の目的
- 小腸病変の評価: 内視鏡では到達困難な小腸を評価
- 腸管壁の肥厚: 炎症の程度を評価
- 合併症の検出: 膿瘍、瘻孔、狭窄の有無
- 腸管外合併症: 肝胆道系、腎尿路系の評価
💡 MRエンテログラフィー
小腸クローン病の評価に最適な検査です。造影剤を飲んでMRI撮影を行い、小腸全体の炎症・狭窄・瘻孔を詳細に評価できます。
5-5. 病理組織検査
📌 組織学的特徴
- 全層性炎症: 粘膜から漿膜まで炎症が及ぶ
- 非乾酪性類上皮肉芽腫: クローン病に特異的(出現率30〜50%)
- リンパ球浸潤: 慢性炎症の所見
※関連記事: 消化不良の症状、過敏性腸症候群の症状
6. クローン病の治療法|最新のアプローチ
クローン病の治療目標は、炎症のコントロール、症状の寛解導入・維持、合併症の予防、QOLの向上です。治療は以下の段階的アプローチ(Step-up療法)が基本です。
6-1. 栄養療法
📌 経腸栄養療法(EN: Enteral Nutrition)
特に小児・若年者の軽症〜中等症に推奨される第一選択治療です。
- 成分栄養剤(エレンタール®): アミノ酸ベースの栄養剤
- 半消化態栄養剤(エンシュア®、ラコール®): ペプチドベース
- 効果: 腸管の安静、炎症の軽減、栄養状態の改善
- 寛解導入率: 60〜80%(軽症〜中等症)
📌 完全静脈栄養(TPN: Total Parenteral Nutrition)
重症例や腸閉塞、広範な小腸病変で経口摂取困難な場合に適応されます。
6-2. 薬物療法
🔹 5-ASA製剤(メサラジン)
- 商品名: ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®
- 作用: 抗炎症作用(腸粘膜局所)
- 適応: 軽症の大腸型クローン病(小腸型には効果限定的)
- 用法: 1日2,000〜4,000mg 分2〜3
🔹 ステロイド(副腎皮質ホルモン)
- 全身性ステロイド: プレドニゾロン(PSL) 30〜40mg/日
- 局所作用型ステロイド: ブデソニド(ゼンタコート®) 9mg/日
- 適応: 中等症〜重症の活動期、寛解導入
- 注意: 長期使用による副作用(骨粗鬆症、糖尿病、感染症、ムーンフェイス)
🔹 免疫調節薬(IMD: Immunomodulators)
- アザチオプリン(イムラン®、アザニン®): 1〜2mg/kg/日
- 6-メルカプトプリン(ロイケリン®): 0.5〜1.5mg/kg/日
- メトトレキサート(リウマトレックス®): 週1回15〜25mg 皮下注射
- 作用: T細胞の増殖抑制、抗炎症作用
- 適応: ステロイド依存例、寛解維持療法
- 効果発現: 3〜6ヶ月(即効性なし)
🔹 生物学的製剤(Biologics)
中等症〜重症、従来治療抵抗例に使用される最新の治療薬です。
| 分類 | 薬剤名 | 作用機序 | 投与法 |
|---|---|---|---|
| 抗TNF-α抗体 | インフリキシマブ(レミケード®) アダリムマブ(ヒュミラ®) |
TNF-αを中和し炎症抑制 | 点滴静注(8週毎) 皮下注射(2週毎) |
| 抗IL-12/23抗体 | ウステキヌマブ(ステラーラ®) | IL-12/23を阻害 | 点滴→皮下注射(8〜12週毎) |
| 抗α4β7インテグリン抗体 | ベドリズマブ(エンタイビオ®) | 腸管へのリンパ球遊走を阻害 | 点滴静注(8週毎) |
| JAK阻害薬 | ウパダシチニブ(リンヴォック®) フィルゴチニブ(ジセレカ®) |
JAK酵素を阻害し炎症抑制 | 経口(1日1回) |
💡 生物学的製剤の効果
- 寛解導入率: 50〜70%
- 粘膜治癒率: 30〜50%(1年後)
- 瘻孔閉鎖率: 30〜50%
- 注意点: 感染症リスク(結核、ニューモシスチス肺炎など)、定期的な感染症スクリーニングが必要
6-3. 外科治療
📌 手術適応
クローン病患者の70〜80%が生涯に1回以上の手術を受けると報告されています。
- 絶対的適応: 穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、腸閉塞(完全閉塞)
- 相対的適応: 内科治療抵抗性の狭窄、難治性瘻孔、膿瘍形成、癌化
📌 主な手術術式
- 狭窄形成術(strictureplasty): 腸管を切除せず狭窄部を拡張
- 腸管切除術: 病変部の切除(最小限の切除範囲が原則)
- 瘻孔切除術・膿瘍ドレナージ
- 人工肛門造設術: 重症肛門病変、直腸病変
💡 術後管理
手術は根治療法ではないため、術後再発予防が極めて重要です。
- 術後3ヶ月以内に内視鏡検査(再発の早期発見)
- 免疫調節薬または生物学的製剤による維持療法
- 禁煙(喫煙は再発リスクを2倍以上に増加)
7. クローン病と日常生活|QOL向上のポイント
7-1. 食事療法の基本
📌 基本原則
- 低脂肪食: 脂質25〜30g/日以下が目安(脂肪は腸管を刺激)
- 低残渣食: 食物繊維を控える(狭窄がある場合)
- 高カロリー・高蛋白: 体重維持、筋肉量維持
- ビタミン・ミネラル補給: 特にビタミンB12、鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンD
📌 避けるべき食品(活動期)
- 脂肪の多い食品: 揚げ物、ラード、バター、生クリーム
- 刺激物: 香辛料、アルコール、カフェイン、炭酸飲料
- 不溶性食物繊維: ごぼう、たけのこ、きのこ、海藻、玄米
- 乳製品: 乳糖不耐症がある場合
📌 推奨される食品(寛解期)
- 低脂肪蛋白質: 鶏ささみ、白身魚、卵白、豆腐
- 消化の良い炭水化物: 白米、うどん、食パン
- 水溶性食物繊維: バナナ、りんご、にんじん(ペースト状)
- 成分栄養剤: エレンタール®(寛解維持に有効)
💡 1日の食事例(寛解期)
- 朝食: 白米のおかゆ、白身魚の煮付け、卵豆腐、味噌汁(具なし)
- 昼食: うどん(具は鶏ささみ・にんじん)、バナナ
- 夕食: 白米、鶏胸肉のソテー(油控えめ)、豆腐の煮物、りんごのコンポート
- 間食: エレンタール®、ビスケット(低脂肪)
7-2. ストレス管理
ストレスはクローン病の再燃因子として知られています。以下の方法でストレスを管理しましょう:
- 十分な睡眠: 1日7〜8時間
- 適度な運動: ウォーキング、ヨガ、ストレッチ(活動期は避ける)
- リラクゼーション: 瞑想、深呼吸、音楽療法
- 心理カウンセリング: 認知行動療法(CBT)、マインドフルネス
- 患者会への参加: 同じ病気を持つ仲間との交流
7-3. 禁煙の重要性
⚠️ 喫煙はクローン病を悪化させる最大の因子
- 再燃リスク: 2倍以上
- 手術リスク: 2〜3倍
- 術後再発率: 2倍以上
- 生物学的製剤の効果: 減弱
禁煙は最も重要な治療の一つです。禁煙外来の利用をお勧めします。
7-4. 定期通院と検査
寛解期でも定期的なフォローアップが不可欠です:
- 外来受診: 2〜3ヶ月毎
- 血液検査: CRP、血算、肝機能、腎機能(2〜3ヶ月毎)
- 大腸内視鏡検査: 1〜2年毎(粘膜治癒の確認、癌サーベイランス)
- 画像検査(CT/MRI): 必要に応じて(小腸病変、合併症の評価)
7-5. 妊娠・出産
適切な治療により、クローン病患者でも妊娠・出産は可能です。
📌 妊娠のタイミング
- 寛解期に妊娠: 妊娠前に少なくとも6ヶ月以上の寛解が推奨
- 活動期の妊娠は避ける: 流産・早産リスクが増加
📌 妊娠中の薬物療法
- 継続可能: 5-ASA、多くの生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ等)
- 注意が必要: メトトレキサート(禁忌)、一部の免疫調節薬
必ず主治医と産科医の連携の下で妊娠・出産を計画してください。
※関連記事: 胃に優しい食べ物の選び方、胃もたれ解消法
8. こんな症状が出たら医療機関へ|受診のタイミング
⚠️ 以下の症状は緊急受診が必要です
- 激しい腹痛が持続(6時間以上)
- 大量の血便(便器が真っ赤になる)
- 38.5℃以上の高熱が続く
- 嘔吐を繰り返し、水分も摂取できない
- 腹部全体が硬く、触ると激痛(腹膜刺激症状)
- 意識がもうろうとする、立ちくらみが強い
→ 穿孔、腸閉塞、大量出血、敗血症の可能性があります。直ちに救急外来を受診してください。
📅 早めの受診が推奨される症状
- 腹痛・下痢が2週間以上続く
- 体重が1ヶ月で3kg以上減少
- 血便・粘血便が続く
- 肛門部の痛み・膿が出る
- 発熱(37.5℃以上)が3日以上続く
- 関節痛・皮膚症状・眼症状が出現
9. クローン病の予後と長期管理
9-1. 長期予後
クローン病は慢性疾患であり、根治は困難ですが、適切な治療により良好なQOLを維持できます。
📊 長期経過データ
- 10年生存率: 95%以上(一般人口とほぼ同等)
- 寛解維持率: 生物学的製剤使用で50〜70%(1年後)
- 手術率: 発症後10年で50%、20年で70〜80%
- 再手術率: 初回手術後10年で30〜50%
- 就労率: 適切な治療により80%以上が就労可能
9-2. 合併症のリスク
📌 長期的な合併症
- 腸管狭窄(30〜40%): 慢性炎症による線維化
- 瘻孔形成(20〜30%): 腸管同士、腸管-皮膚、腸管-膀胱など
- 膿瘍(10〜20%): 腹腔内、肛門周囲
- 大腸癌リスク: 発症後8〜10年で一般人口の2〜3倍(定期的な内視鏡サーベイランスが重要)
9-3. 治療ゴール(Treat to Target)
現代のクローン病治療では、単に症状を抑えるだけでなく、粘膜治癒を目指す「Treat to Target」戦略が推奨されています。
🎯 治療目標
- 短期目標(3〜6ヶ月): 症状の消失(CDAI<150)
- 中期目標(6〜12ヶ月): 炎症マーカーの正常化(CRP<0.5 mg/dL)
- 長期目標(1年以上): 粘膜治癒(内視鏡的寛解)、合併症の予防
粘膜治癒を達成すると、手術率・入院率が大幅に減少し、長期予後が改善します。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. クローン病は完治しますか?
A. 現時点では完治する治療法はありませんが、適切な治療により症状をコントロールし、通常の生活を送ることが可能です。寛解期を長く維持することが治療の目標です。生物学的製剤など新しい治療法の進歩により、予後は大きく改善しています。
Q2. クローン病と潰瘍性大腸炎の違いは?
A. どちらも炎症性腸疾患(IBD)ですが、以下の違いがあります:
クローン病: 消化管全域(口腔〜肛門)に発症、全層性炎症、非連続性病変、肛門病変が多い
潰瘍性大腸炎: 大腸のみに発症、粘膜層の炎症、連続性病変、血便が主症状
Q3. クローン病の原因は何ですか?
A. 明確な原因は不明ですが、以下の複合的要因が関与すると考えられています:
① 遺伝的素因(NOD2遺伝子変異など)
② 免疫異常(腸内細菌に対する過剰な免疫反応)
③ 環境因子(喫煙、食事、ストレス、衛生仮説)
④ 腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)
Q4. 仕事は続けられますか?
A. 適切な治療により、多くの患者さんが就労可能です。寛解期には通常の業務ができます。ただし、以下の点に配慮が必要です:
① 過度の肉体労働や長時間労働を避ける
② ストレス管理
③ 定期通院の確保
④ 職場への病気の説明(必要に応じて)
障害者手帳の取得や、産業医との連携も検討しましょう。
Q5. 生物学的製剤の副作用は?
A. 主な副作用は感染症のリスク増加です:
① 結核(投与前に結核スクリーニング必須)
② ニューモシスチス肺炎(予防内服が推奨される場合も)
③ 帯状疱疹
④ インフュージョンリアクション(点滴中のアレルギー反応)
定期的な血液検査と感染症モニタリングが重要です。
まとめ|クローン病と向き合うために
クローン病は慢性疾患ですが、適切な治療と自己管理により、通常の生活を送ることが十分可能です。以下のポイントを押さえましょう:
- 早期診断・早期治療が予後を左右します
- 定期通院と検査を欠かさず、主治医と良好な関係を築く
- 禁煙は最も重要な治療の一つ
- 食事療法(低脂肪・低残渣)を実践
- ストレス管理と十分な休息
- 生物学的製剤など最新治療を積極的に活用
- 粘膜治癒を目指した「Treat to Target」戦略
- 患者会や支援団体を活用し、情報交換・心理的サポートを得る
腹痛・下痢・体重減少などの症状が続く場合、早めに消化器内科を受診してください。30年以上の臨床経験を持つ専門医として、クローン病患者さんのQOL向上を全力でサポートいたします。
免責事項
本記事は医学的情報の提供を目的としており、特定の治療法や医薬品の使用を推奨するものではありません。症状や治療法については、必ず医師にご相談ください。自己判断での治療中断や薬の変更は危険です。